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季節話
龍神様と清掃
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「龍平、今日は掃除をしようぞぉ。」
屋敷でいつものように代わり映えのしない生活をしていた龍平に、龍神様は声を掛けました。今日は清掃の日、という都合の良い口実を使って龍平を共同作業をするためでしたが、
「掃除ならいつもしていますが?」
龍平はいつもすることがない、もとい落ち着いた生活を送っているので、清掃は日常的に行っているのでした。毎日行っていることを改めてしようと言われても困惑するだけです。
「むぅ、そうかぁ。それはいつもありがとう。」
「はぁ...。何がしたいのか知りませんけど、じゃあいつもはしない細かなところまで掃除しますか。」
「おっ、そうだな。そうしよう。」
もとは龍平と共同作業がしたかっただけの龍神様です。作業内容はともかく龍平と同じことをしていることに幸せを感じます。
「では龍神様は戸の縁の土を払ってください。俺は鍋の黒ずみを落とします。」
「うむ。任せろぉ。」
こうして龍平と龍神様はそれはそれは細かな作業を始めました。しかし、細かで地味な作業とは集中力を削ぎ、ありていに言えばすぐに飽きるものです。じっとしていることも不快に感じてきます。龍神様も例に漏れず、段々と退屈してきました。
「龍平、戸の縁はこんなものでいいだろう。お主も、鍋はもう十分綺麗だ。そろそろ切り上げようぞぉ。」
「何をぬるいこと言っているのですか、龍神様?」
「龍平?」
ひたすらずっと鍋を綺麗にすることだけに集中していた龍平の集中力は荒ましいもので、龍平の目つきはまるで狩人のそれになっていました。
「掃除に終わりなどないですよ...。この鍋も、もっと磨けばもっと綺麗になります。戸も!何を満足しているのですか!もっともっと!塵ひとつない清潔な状態にするんですよ!」
「お、おぉ...。」
龍平は細かな作業もコツコツ続けられる凝り性な人間でした。たくましい筋肉に負けないほどの熱意も相まって、清掃に賭ける情熱が常人を超えておりました。
結局この日は龍平と共同作業をする、と言う目標は達成したものの、その何倍もの疲労が溜まった龍神様でした。しかし、我に返った龍平は龍神様に頭を下げ、腕によりをかけて美味しい疲労回復料理を作ってくれたので、大変満足して夜を明かしました。
屋敷でいつものように代わり映えのしない生活をしていた龍平に、龍神様は声を掛けました。今日は清掃の日、という都合の良い口実を使って龍平を共同作業をするためでしたが、
「掃除ならいつもしていますが?」
龍平はいつもすることがない、もとい落ち着いた生活を送っているので、清掃は日常的に行っているのでした。毎日行っていることを改めてしようと言われても困惑するだけです。
「むぅ、そうかぁ。それはいつもありがとう。」
「はぁ...。何がしたいのか知りませんけど、じゃあいつもはしない細かなところまで掃除しますか。」
「おっ、そうだな。そうしよう。」
もとは龍平と共同作業がしたかっただけの龍神様です。作業内容はともかく龍平と同じことをしていることに幸せを感じます。
「では龍神様は戸の縁の土を払ってください。俺は鍋の黒ずみを落とします。」
「うむ。任せろぉ。」
こうして龍平と龍神様はそれはそれは細かな作業を始めました。しかし、細かで地味な作業とは集中力を削ぎ、ありていに言えばすぐに飽きるものです。じっとしていることも不快に感じてきます。龍神様も例に漏れず、段々と退屈してきました。
「龍平、戸の縁はこんなものでいいだろう。お主も、鍋はもう十分綺麗だ。そろそろ切り上げようぞぉ。」
「何をぬるいこと言っているのですか、龍神様?」
「龍平?」
ひたすらずっと鍋を綺麗にすることだけに集中していた龍平の集中力は荒ましいもので、龍平の目つきはまるで狩人のそれになっていました。
「掃除に終わりなどないですよ...。この鍋も、もっと磨けばもっと綺麗になります。戸も!何を満足しているのですか!もっともっと!塵ひとつない清潔な状態にするんですよ!」
「お、おぉ...。」
龍平は細かな作業もコツコツ続けられる凝り性な人間でした。たくましい筋肉に負けないほどの熱意も相まって、清掃に賭ける情熱が常人を超えておりました。
結局この日は龍平と共同作業をする、と言う目標は達成したものの、その何倍もの疲労が溜まった龍神様でした。しかし、我に返った龍平は龍神様に頭を下げ、腕によりをかけて美味しい疲労回復料理を作ってくれたので、大変満足して夜を明かしました。
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