龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様と苦瓜

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 それは龍平がいつものように夕餉の支度をはじめようとしていた時の事でした。龍平が卵を炒ってると、龍神様が鍋に何かをひょいと入れました。

「わっ!龍神様、卵に何を入れたのですか!?」

「そんなに警戒するなぁ。私が龍平の口にするものに害のあるものを入れると思うかぁ?まぁ、私を信じろぉ。」

「はぁ...分かりました。」

龍平は龍神様に言われるがまま、龍神様の入れた何かと一緒に卵を炒りました。そして夕餉が完成すると、龍平と龍神様は二人で食卓につきました。

「では、頂くかのぉ。」

「はい、頂きます。」

そう言うと、二人は夕餉を食べ始めました。龍平はまず、気になって仕方がなかった炒り卵を一口、食べました。その瞬間、

「にっがああぁぁぁぁぁ!?」

龍平は悲鳴を上げました。龍平の食べた卵は何とも言えない苦さで、卵の味を想像していた龍平はたまらず声を上げたのでした。

「龍平!?とりあえず水を飲め。」

「龍神様!貴方一体何を入れたのですか!?」

龍平は水をがぶがぶと飲みながら龍神様をキッと睨んで言います。龍平は別に怒っているというわけではなかったのですが、あまりの衝撃に沸き起こった感情をどうすることも出来ず、結果、龍神様を睨んだのでした。

「い、入れたのは苦瓜だぁ...。琉球の方でしか食べられない野菜で、卵に絡めると美味しいのだが、まさか龍平がこんなにも苦いものが苦手とは思わんかったぁ。」

「苦瓜...。あまりにも苦かったので草でも入れたのかと思いました。」

「草など入れるわけなかろう。でもなんか、すまなかったぁ。」

龍神様は龍平のあまりにも憔悴した姿に、素直に頭を下げました。龍神様のその様子を見て龍平は、たかだか苦いものを食べただけで悲鳴を上げてしまった自分を少し恥ずかしく思いました。

「い、いえ、これも何か健康に良い野菜とかで、俺に食べさせてくれたんでしょう?こっちこそ、大声上げちゃってすみませんでした。」

「いや、龍平が謝ることは無いぞぉ。だがまあ、苦い!と素直な子どものような反応をしている龍平が可愛いかったからまた食事に入れてみても良いかぁ?」

「断固拒否します!!」


 苦手なものも特になく、毎日龍神様と楽しく食事を囲む龍平でしたが、この日を境に龍平は苦手なものが食事に入ってないか、ほんの少しだけ警戒するようになったのでした。
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