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28話:投資詐欺と癌の重粒子線治療

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 本当にリスクはないのと小さな声で聞くと実は1998年から始めて、まだ一度も問題は起きてないと説明した。つまり証券会社の保証付きなのですと言った。これを聞いて三菱銀行に勤めてる加藤福子は、詐欺だと直感し山倉幸子と帰りましょうと言って席を立った。

 そして会場を後にした。高金利通貨の投資詐欺の話しって本当にあるんだねと2人は話しながらホテルに帰った。そして、明日、日本に帰るので支度をして早めに床についた。翌日は5時に起きて、8時過ぎ発の成田空港行きの飛行機に乗り込んだ。

 その後、飛びたち、成田空港へ17時過ぎに到着して高速バスで東京駅へ戻り19時過ぎにマンションに着いた。そして竜二と加藤家にとっても悪い知らせが続く年になった。癌の切除手術を終えて4年目の2004年1月に直腸が再発。

 その診断を受けて加藤は医師に「手術をしないとしたら、どれくらいもちますか」と聞いた。すると、その医師が、ただ一言、「余命半年です」と告げた。そこで、遂にたまらず、加藤優造は東大時代のコネを使い優良病院を探した。

その後、放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院を紹介され、E医師を訪ねた。E医師から重粒子線治療とは高エネルギー放射線の一種である炭素イオン線・重粒子線を標的に絞って狙い撃ち癌細胞を死滅させると説明された。

 その治療の最大の特徴は一般の放射線・X線などに比べて癌細胞に致命的なダメージを与える「殺細胞効果」が3倍も高い点だと言い、さらに、X線などと違って周囲の正常な臓器を傷つけることなく癌にピンポイントに照射できる。

 その点で、X線などは、体に照射できる総量の上限が決められているが、重粒子線は、条件が合えば何度も照射が、可能となると説明してくれた。その治療に直腸癌術後再発も適応で医療保険が使えるとわかった。

 2003年に先進医療として厚労省の承認を受けているため診察・検査・薬剤・入院料など通常の治療と共通する部分は保険扱いだが先進医療にかかる特別料金は患者全額負担となり重粒子線治療の場合314万円だと言われた。

 それでも、「命には代えられない」と考えて重粒子線治療をする事を決心した。加藤さんの場合、最初2004年1月11日に始まり、この日から4週間に受けた計16回の重粒子線治療が劇的に功を奏し長径5cm、短径4cmの癌の塊が消滅した。

 治療1年後の検査で間違いなく再発病巣が死滅したと知らされ安心した。加藤さんの1回の治療で314万円で2004年1月から2005年10月にかけて実施された。4、5、6回目の重粒子線治療も成功し骨盤内再発癌、左肺の転移癌が一気に退治された。

 最後の7回目の治療は2006年10月11日。またも右肺に顔を出した直径1cmの転移癌に対する7回目の重粒子線治療は、その日に開始され5日間で完了した。治療4週間後での完全寛解という判定で観察できる癌が完全に消失した。

 治療費は、1回314万円で7回の重粒子線治療で2200万円。そこで資産を蓄えていた竜二が2200万円を全額支払い資産残高が18650万円となった。これには加藤夫妻が申し訳ないと、お礼を言い、何としても返すからと言った。

 それに対し、この金は、昔、稼げない時代に株投資で儲けろと加藤さんに教えてもらった株投資で稼いだ金だから恩返しだと告げた。人生、良い時も悪い時もあるさ。今、俺にとって良い時で、加藤さんにとって、悪い時期なのさ。

 俺には、投資残金が、十分あるから返済不要だと笑いながら言った。それを聞いた加藤さんは、ありがとう、本当にありがとうと涙を流した。癌が、完全に治っためでたい日に涙は似合わないと加藤さんの肩をたたいた。

そして、竜二は、加藤さんの手を握り、助かって、本当に良かったと感極まって涙を流した。加藤さんが、竜二に、今度、もし、お前が困った時には、絶対に恩返しするからと、言ってくれた。そして加藤さんは病院を出て自宅に帰ってきた。
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