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第2話アデュラリア女王
12.帰途(「氷の女王」完)
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あれから数日の間に、ま白い景色が一変し、草木が芽吹き、気の早い花は一気に咲き始めていた。
小鳥の囀ずりがどこでも聞かれ、春の陽気に人々は閉じ籠っていた穴ぐらのような家の扉という扉を全開にし、さらにそこから飛び出して目まぐるしく働いていた。
笑顔は陽気で、楽しいおしゃべりが町に城に溢れていた。
止まった時間が音をたてて動いていた。
「本当にありがとうございます。皆様のお陰です」
銀髪の壮年のリヒターは破顔で何度も繰り返す。
「来年もお迎えに参りますので是非来てください!」
それにはムハンマドは丁寧に、しかし断固とした口調でお断りをいれる。
ノアールはリヒターと意気投合して、いろんな北国の伝説や伝統を仕入れたようでほくほくのようだ。
町角の楽しいお祭り騒ぎにはノアールはいつもたて琴をつま弾く姿があった。
バラーは、どこにいっても白い肌の女性に大人気で、顔の刀傷は赤い口紅でわからなくなるほど。
バードは12人の騎士の誰かを捕まえて、剣術の勝負を挑んでいるようだった。もっとも騎士たちも、恋人と愛を語らうのに忙しそうであったが。
アデュラリア女王とジュードは、クリードを改めて埋葬する。
クリードの指にはアデュラリアの指輪が輝く。アデュラリアもクリードからの指輪を身に付ける。
ジュードはアデュラリアからもう離れない。
最後の別れの挨拶に現れたジュードの、優しい顔立ちは、厳しさを伴う大人の男の顔になっていた。
春をもたらさなかったアデュラリア女王への処分は喪があけてから検討される。
ジュードは固い抱擁を一行と交わす。
リリアスもすっかり馴染んだ末っ子との別れを惜しんで思わず涙。
おでこに、まぶたに、頬に、手のひらに、最後に軽く唇に、別れのキスを送る。
「最後に教えてください。あなたははじめから女性だったのですか?」
ジュードは真剣な目で尋ねる。
女性だったら何かが変わっていただろうか?と夢想する。
それでも、何も変わらなかった気もするのだ。アデュラリアへの想いは変わらない。
リリアスは再び男装姿だ。
「はじめから僕は女だよ。アデュラリアを離さないで!あなたとアデュラリアの道が愛で満たされていますように!また会いましょう!」
「わたしの舞姫は無茶をする」
ムハンマド一行は海上に、帰りは豪華な船上の人だった。砂漠の一番近くまで送ってくれる予定だ。
海には彼らを歓迎し、巨大な海の主や、陽気なイルカが並走する。
海から登る太陽も美しく、ノアールの歌心を刺激する。
しかし、ムハンマドとリリアスはどこまでも続く海を飽きるほど眺める時間がなかった。
船上の揺れは恋人達の二人のまどろみに大変心地がよくて、必要最低限以外に客室から出ることがなかったからだ。
デンドロン国の友好の印の氷は10年を過ぎても大量に届けられ、その氷を利用したムハンマド王弟のかき氷は大ヒット。
乾いた砂漠に涼しい一時をもたらしたのだった。
第3部 いにしえの約定
第1話 「氷の女王」完
第2話 「王族の子」に続きます。
小鳥の囀ずりがどこでも聞かれ、春の陽気に人々は閉じ籠っていた穴ぐらのような家の扉という扉を全開にし、さらにそこから飛び出して目まぐるしく働いていた。
笑顔は陽気で、楽しいおしゃべりが町に城に溢れていた。
止まった時間が音をたてて動いていた。
「本当にありがとうございます。皆様のお陰です」
銀髪の壮年のリヒターは破顔で何度も繰り返す。
「来年もお迎えに参りますので是非来てください!」
それにはムハンマドは丁寧に、しかし断固とした口調でお断りをいれる。
ノアールはリヒターと意気投合して、いろんな北国の伝説や伝統を仕入れたようでほくほくのようだ。
町角の楽しいお祭り騒ぎにはノアールはいつもたて琴をつま弾く姿があった。
バラーは、どこにいっても白い肌の女性に大人気で、顔の刀傷は赤い口紅でわからなくなるほど。
バードは12人の騎士の誰かを捕まえて、剣術の勝負を挑んでいるようだった。もっとも騎士たちも、恋人と愛を語らうのに忙しそうであったが。
アデュラリア女王とジュードは、クリードを改めて埋葬する。
クリードの指にはアデュラリアの指輪が輝く。アデュラリアもクリードからの指輪を身に付ける。
ジュードはアデュラリアからもう離れない。
最後の別れの挨拶に現れたジュードの、優しい顔立ちは、厳しさを伴う大人の男の顔になっていた。
春をもたらさなかったアデュラリア女王への処分は喪があけてから検討される。
ジュードは固い抱擁を一行と交わす。
リリアスもすっかり馴染んだ末っ子との別れを惜しんで思わず涙。
おでこに、まぶたに、頬に、手のひらに、最後に軽く唇に、別れのキスを送る。
「最後に教えてください。あなたははじめから女性だったのですか?」
ジュードは真剣な目で尋ねる。
女性だったら何かが変わっていただろうか?と夢想する。
それでも、何も変わらなかった気もするのだ。アデュラリアへの想いは変わらない。
リリアスは再び男装姿だ。
「はじめから僕は女だよ。アデュラリアを離さないで!あなたとアデュラリアの道が愛で満たされていますように!また会いましょう!」
「わたしの舞姫は無茶をする」
ムハンマド一行は海上に、帰りは豪華な船上の人だった。砂漠の一番近くまで送ってくれる予定だ。
海には彼らを歓迎し、巨大な海の主や、陽気なイルカが並走する。
海から登る太陽も美しく、ノアールの歌心を刺激する。
しかし、ムハンマドとリリアスはどこまでも続く海を飽きるほど眺める時間がなかった。
船上の揺れは恋人達の二人のまどろみに大変心地がよくて、必要最低限以外に客室から出ることがなかったからだ。
デンドロン国の友好の印の氷は10年を過ぎても大量に届けられ、その氷を利用したムハンマド王弟のかき氷は大ヒット。
乾いた砂漠に涼しい一時をもたらしたのだった。
第3部 いにしえの約定
第1話 「氷の女王」完
第2話 「王族の子」に続きます。
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クロネコ屋さん
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