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第1話「氷の女王」 冬の国デンドロン
6.違う空、違う風、違う神
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まるでよくなついている子犬のよう、、、。
リリアスのジュードの印象だ。
驚異的に回復してからは、ジュードはリリアスの側にぴったりとついている。
ムハンマドはムッツリ黙りこみ、ノアールは呆れ、バードは目から殺人光線をだし、リヒターははじめから取り合わない。
「わたしがこうして元気にいられるのも、リリアスさまのお陰なのです」
と、ことあるごとにいう。
今のなつく状況をつくったムハンマドは牽制されるのだ。
彼らは3日、馬で北へ移動し国境を超えたようである。
まばらだった樹木が増え、気候が湿潤になる。
さらに進むと気温がグッと下がる。海に出る。
ここまで、1週間。
海に出れば、港町を探す。
港町からは船を借りて、さらに北を目指す。
バラモンやパリスの大陸を離れるとき、ムハンマドやバラー、バード、リリアスの胸に、ある種の感慨と感傷を味わう。
「遠くにきたな、、」
ムハンマドは呟く。
リリアスをしっかり、外套でくるむ。海風を遮る。
ここまで北に来ると風が冷たい。
「うん。ムハンマド、あのね」
「なんだ?」
「僕から離れないで」
ムハンマドはははっと笑う。
「わたしがあなたから離れるはずがないだろう?
あの鬱陶しい子犬がじゃまなだけだ。
氷1㌧につられたが、早く女王の氷をとやらを溶かして帰ろう」
ムハンマドはいう。
リリアスは風を頬に感じ、空を見上げる。
少し不安なざわめきが胸にある。
「空が違う、風がちがう、、。
違う理に従う違う精霊、違う神がいるような気がする。
加護の力が使えないかもしれない」
「そうか?」
ムハンマドは己の胸の炎を確認する。
彼はそもそも精霊の力を頼ったり使ったりはしない。
特に、リリアスが不安になるようなことは何もなかった。
「リリアス、大丈夫だ。あなたが精霊の力を使うことはないから安心して、、」
頭にキスを落とす。
リリアスは顔を向け、二人は自然とキスをかわすと、ふわっと加護紋様が現れ、冷たい海の、くすんだ空に消えた。
ジュードはそんなふたりをみて、溜め息をつく。
「素敵だな。あんなカップルになりたい」
「はあ?リリアスにはムハンマドがいる。お前に1ミリも付け入る隙間はないぞ」
とバード。
リリアスの次に、飄飄としたバードはジュードには話しやすい。
年も変わらないぐらいなのに、どこか達観した感じがついなんでも話したくなるのだ。
「わたしには、心を決めた方がいるから、リリアスが素敵でも、なびくことはない。そもそもリリアスは男だから、男になびくことは許されない」
(十分なついているぞ、おいこら)
と内心バードは突っ込みをいれる。
「心を決めた方って、アデュラリア女王か?」
ぱっとバードに向く。
顔が真赤だ。
本当に20になっているかと思う。
「なんでわかったんだ、バード!アデュラリアさまは美しい。強くて、激しくて、、いつもわたしはいじめられていて、、、」
(はあっ??アデュラリアっていったい、いや、いじめっこを好きになるこいつはいったい、、)
ふたたび内心つっこむ。
「だけど、アデュラリアさまはわたしの兄が好きだったんだ。
薔薇の花のような笑顔で、彼女が笑うと春が早く訪れるんだ。
草木も芽吹き、花が咲く。生き物たちは動きだし、愛の歌をうたいだす、、」
ジュードは遠い月日を思って目を細めた。
「その、お前の兄はどうなったんだ?」
バードは大事なことを聞いたような気がした。
これは大事なことだ。
「兄はアデュラリア女王の第一の騎士だった。それが二年前、氷河で滑落して死んだんだ。
それ以来デンドロンには春がこない。
女王から笑顔が消えた。アイスブルーの瞳は、すべてを凍てつかせる、、わたしの想いは届くことはない、、」
ジュードは少し厳しい顔をする。
「それに、砂漠の大陸と違ってこの地は、同性のカップルに厳しいんだ。
バードから伝えて。あんまりくっつかないように。デンドロンの冬は厳しくて春の季節は短いから、命を繋ぐことに寄り道はしないんだ」
「俺にどっちにどう告げよというんだよ!」
とうとう、バードは突っ込みをいれた。
(リリー!男装を女装に変えた方が良いみたいだ)
バードはリリーに念話しようとした。
風が動かない。
バードは耳の中の音を感じる部分に風を送って震わせて、言葉を伝えていた。
その念話ができなくなっていることに、気がついた。
「違う常識、違う理、違う神、、、これは厄介かも」
バードは気を引き締める。
風の精霊の力をバードは封じられてしまった。
リリーを守るのに、頼りになるのは己の生身の力のみ。
バラーは一人感傷モードにひたり、各地の風土や伝承を集めるのが趣味な吟遊詩人のノアールはリヒターに話を聞いている。
彼だけが元気だ。
彼らの前に、青く輝く氷河が現れた。
その下には雪を被る白い街が広がる。
その数100万人。バラモンの大きな領国ぐらいの規模、国としては小さいながら、厳しい環境を盾に古くから独立を保っている。
とうとう、凍てつく大地、冬の国デンドロン王国に彼らは着岸した。
ジュードとリヒターと出会ってから2週間は経っていた。
リリアスのジュードの印象だ。
驚異的に回復してからは、ジュードはリリアスの側にぴったりとついている。
ムハンマドはムッツリ黙りこみ、ノアールは呆れ、バードは目から殺人光線をだし、リヒターははじめから取り合わない。
「わたしがこうして元気にいられるのも、リリアスさまのお陰なのです」
と、ことあるごとにいう。
今のなつく状況をつくったムハンマドは牽制されるのだ。
彼らは3日、馬で北へ移動し国境を超えたようである。
まばらだった樹木が増え、気候が湿潤になる。
さらに進むと気温がグッと下がる。海に出る。
ここまで、1週間。
海に出れば、港町を探す。
港町からは船を借りて、さらに北を目指す。
バラモンやパリスの大陸を離れるとき、ムハンマドやバラー、バード、リリアスの胸に、ある種の感慨と感傷を味わう。
「遠くにきたな、、」
ムハンマドは呟く。
リリアスをしっかり、外套でくるむ。海風を遮る。
ここまで北に来ると風が冷たい。
「うん。ムハンマド、あのね」
「なんだ?」
「僕から離れないで」
ムハンマドはははっと笑う。
「わたしがあなたから離れるはずがないだろう?
あの鬱陶しい子犬がじゃまなだけだ。
氷1㌧につられたが、早く女王の氷をとやらを溶かして帰ろう」
ムハンマドはいう。
リリアスは風を頬に感じ、空を見上げる。
少し不安なざわめきが胸にある。
「空が違う、風がちがう、、。
違う理に従う違う精霊、違う神がいるような気がする。
加護の力が使えないかもしれない」
「そうか?」
ムハンマドは己の胸の炎を確認する。
彼はそもそも精霊の力を頼ったり使ったりはしない。
特に、リリアスが不安になるようなことは何もなかった。
「リリアス、大丈夫だ。あなたが精霊の力を使うことはないから安心して、、」
頭にキスを落とす。
リリアスは顔を向け、二人は自然とキスをかわすと、ふわっと加護紋様が現れ、冷たい海の、くすんだ空に消えた。
ジュードはそんなふたりをみて、溜め息をつく。
「素敵だな。あんなカップルになりたい」
「はあ?リリアスにはムハンマドがいる。お前に1ミリも付け入る隙間はないぞ」
とバード。
リリアスの次に、飄飄としたバードはジュードには話しやすい。
年も変わらないぐらいなのに、どこか達観した感じがついなんでも話したくなるのだ。
「わたしには、心を決めた方がいるから、リリアスが素敵でも、なびくことはない。そもそもリリアスは男だから、男になびくことは許されない」
(十分なついているぞ、おいこら)
と内心バードは突っ込みをいれる。
「心を決めた方って、アデュラリア女王か?」
ぱっとバードに向く。
顔が真赤だ。
本当に20になっているかと思う。
「なんでわかったんだ、バード!アデュラリアさまは美しい。強くて、激しくて、、いつもわたしはいじめられていて、、、」
(はあっ??アデュラリアっていったい、いや、いじめっこを好きになるこいつはいったい、、)
ふたたび内心つっこむ。
「だけど、アデュラリアさまはわたしの兄が好きだったんだ。
薔薇の花のような笑顔で、彼女が笑うと春が早く訪れるんだ。
草木も芽吹き、花が咲く。生き物たちは動きだし、愛の歌をうたいだす、、」
ジュードは遠い月日を思って目を細めた。
「その、お前の兄はどうなったんだ?」
バードは大事なことを聞いたような気がした。
これは大事なことだ。
「兄はアデュラリア女王の第一の騎士だった。それが二年前、氷河で滑落して死んだんだ。
それ以来デンドロンには春がこない。
女王から笑顔が消えた。アイスブルーの瞳は、すべてを凍てつかせる、、わたしの想いは届くことはない、、」
ジュードは少し厳しい顔をする。
「それに、砂漠の大陸と違ってこの地は、同性のカップルに厳しいんだ。
バードから伝えて。あんまりくっつかないように。デンドロンの冬は厳しくて春の季節は短いから、命を繋ぐことに寄り道はしないんだ」
「俺にどっちにどう告げよというんだよ!」
とうとう、バードは突っ込みをいれた。
(リリー!男装を女装に変えた方が良いみたいだ)
バードはリリーに念話しようとした。
風が動かない。
バードは耳の中の音を感じる部分に風を送って震わせて、言葉を伝えていた。
その念話ができなくなっていることに、気がついた。
「違う常識、違う理、違う神、、、これは厄介かも」
バードは気を引き締める。
風の精霊の力をバードは封じられてしまった。
リリーを守るのに、頼りになるのは己の生身の力のみ。
バラーは一人感傷モードにひたり、各地の風土や伝承を集めるのが趣味な吟遊詩人のノアールはリヒターに話を聞いている。
彼だけが元気だ。
彼らの前に、青く輝く氷河が現れた。
その下には雪を被る白い街が広がる。
その数100万人。バラモンの大きな領国ぐらいの規模、国としては小さいながら、厳しい環境を盾に古くから独立を保っている。
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