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パリスの闇
37、新王の誕生
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「あなたは誰ですか?このまま夢の中で、答えなさい」
ゲーレンは深い声で問いかける。
「わたしはリリアス。樹海の森の神官長の三人目の妻の息子。樹海で育った。
その後はバラモンでムハンマド王弟の愛人として王都国立に通う、、」
リリアスは夢の中でも、愛人というとき、眉を寄せ、辛い顔をする。
「息子?あなたは娘に見える」
「僕はプロトタイプだ。
最近、完全体であることがわかった。それまでは不安だった。
男か女かどちらになるかで、身の振り方が変わってくるから、、ムハンマドの妻になるか、親衛隊か側近になるか、、」
ゲーレンは興奮する。
完全体のプロトタイプはここ数世代生まれていなかったからだ。
ようやく捕らえた現王のプロトタイプは結局男性化していた。
加護の力のあるものとのまぐわいよりも、プロトタイプとのまぐわいの方が、癒す力は強い。
「ルージュ王子との出会いを教えてほしい」
問われてリリアスは語る。
ルージュ王子と樹海で出会ったこと。
約定の取引として次期王のものになったこと。
いったんは、その約定から自由になったつもりでいたけど、夢にルージュが現れるので、きちんと話をしなければならないと思い続けていたこと。
「夢にみるということは、ルージュさまのことを心の奥で想っていた、ということではないのですか?」
ゲーレンは聞く。
うまく答えが引き出せれば、彼女を自分のものにするのを渋るルージュの気持ちを揺さぶれるかもしれないと、計算が働く。
リリアスは夢見ながらも答えを探る。
「その可能性もある。
ルージュは僕の初恋だったから。
もしくは、ルージュが石の力を使って夢に現れたのかと思っていた。
樹海で彼が得たあの十二個の石は力がある。
加護の力を強めたりする以外にいろいろ。僕も知らない力を持っていると感じる。
石は使うものを選ぶ、、」
リリアスは少し間を開ける。
「もしくは、ルシルかもしれない」
「なんですって!?」
「ルシル、、パリスの王。いやリシュアの初恋の相手でリヒターから僕をうばった。彼が、夜毎ルージュを足掛かりに、時を超えて僕のもとに訪れる、、」
「なんと、懐かしい名がでてくる!古い古い記憶を思い出した。あなたは、あの女に重なっていたものだな。
影なのにきらきら輝いていた!この時代からきていて無事に戻っていたのか!なるほど、生身はあの女に負けずに美しい」
リリアスは体を起こした。
瞳は半眼のまま、顔をルージュに向ける。
「ルシルも来ている。彼にぴったり重なっていないか?」
はっとゲーレンはルージュを振り返ってみた。
ルージュはゲーレンに覚えのある笑みを浮かべていた。
「ルシルさま、まさか!?」
ルシルはルージュにぴったり重なっていた。リリアスがリシュアに重なっていたように。
「ルシルだが、ルージュで良い。
わたしはこの娘を囲うつもりはない。
体と心の健康?そんなもの、どうだっていい。
わたしは彼女を再びこの腕で愛することができれば、その恩恵などどうだってよい。
三百年も末になっても、そんなことを続けているとはパリスの恥だな。
ゲーレンはそうやって生き続けているのか?
醜悪の極みだとは思わないか?
今すぐ塵にでもなれば、まだましだが」
ルージュはルシルの眼で、リリアスをみる。
既にゲーレンがかけた暗示は意味をなさず、リリアスに歩み寄る。
手を伸ばして頬を撫でた。
「あなたは、いつの世でもきれいだ。この時代でもあなたを奪いにきた。目覚めのキスをおくれ」
(目覚めのキス、、)
リリアスとルージュは唇を深く重ねる。
その時、大きな鐘が鳴り響く。
パリスの者なら誰もが知っている鐘の音。
数を数える。
十回。
その音を聞いたものは、それが意味することを理解する。
現王が崩御されたことを伝えていた。
にわかに、王宮、神殿、パリスの王都は騒がしくなる。
「王が亡くなられた!」
「どちらが次の王に?」
長いキスの後、ルージュは宣言した。
「わたしが王になる!そして彼女を王妃に。ブリュッセルの娘とは離縁する!」
リリアスは目覚めのキスで目覚めたが、まだ夢の中にいるようだった。
ルージュはルシルになっていた。
ルシルはもう一度、パリスの王になろうとしていた。そして、自分を王妃に据えようとしていた。
彼は強引で、傲慢で、強かった。
ルシルはリシュアを妻にするのに五年もかけた。そして、リシュアの生まれかわりのリリアスを得るのに三百年もかけた。
夢にでてくる頃に、ルージュと重なったとしたら、三年。
再度、生まれかわりを妻にしたいと思うのは、ルシルとリシュアの最期はあまり幸せではなかったのかもしれなかった。
ルージュはリリアスを起こした。
「これから神に誓う!神殿の最奥の間へ。
王座よりも先にあなたを妻にしたい!」
「ルシルさま!先に王座を宣言なさいませ!」
ゲーレンは言う。
「宣言?誰もが聞かぬのに宣言してどうする?」
「輝石に誓いなさいませ!その石は計り知れない力を持っている。それに誓えば、覆すことは難しくなる!」
ルージュは輝石を袋ごと胸元から取り出した。
ぎゅっと握る。
「わたし、ルージュは今ここでパリスの王になる!」
宣言した。
ルージュは王になった。
ゲーレンは深い声で問いかける。
「わたしはリリアス。樹海の森の神官長の三人目の妻の息子。樹海で育った。
その後はバラモンでムハンマド王弟の愛人として王都国立に通う、、」
リリアスは夢の中でも、愛人というとき、眉を寄せ、辛い顔をする。
「息子?あなたは娘に見える」
「僕はプロトタイプだ。
最近、完全体であることがわかった。それまでは不安だった。
男か女かどちらになるかで、身の振り方が変わってくるから、、ムハンマドの妻になるか、親衛隊か側近になるか、、」
ゲーレンは興奮する。
完全体のプロトタイプはここ数世代生まれていなかったからだ。
ようやく捕らえた現王のプロトタイプは結局男性化していた。
加護の力のあるものとのまぐわいよりも、プロトタイプとのまぐわいの方が、癒す力は強い。
「ルージュ王子との出会いを教えてほしい」
問われてリリアスは語る。
ルージュ王子と樹海で出会ったこと。
約定の取引として次期王のものになったこと。
いったんは、その約定から自由になったつもりでいたけど、夢にルージュが現れるので、きちんと話をしなければならないと思い続けていたこと。
「夢にみるということは、ルージュさまのことを心の奥で想っていた、ということではないのですか?」
ゲーレンは聞く。
うまく答えが引き出せれば、彼女を自分のものにするのを渋るルージュの気持ちを揺さぶれるかもしれないと、計算が働く。
リリアスは夢見ながらも答えを探る。
「その可能性もある。
ルージュは僕の初恋だったから。
もしくは、ルージュが石の力を使って夢に現れたのかと思っていた。
樹海で彼が得たあの十二個の石は力がある。
加護の力を強めたりする以外にいろいろ。僕も知らない力を持っていると感じる。
石は使うものを選ぶ、、」
リリアスは少し間を開ける。
「もしくは、ルシルかもしれない」
「なんですって!?」
「ルシル、、パリスの王。いやリシュアの初恋の相手でリヒターから僕をうばった。彼が、夜毎ルージュを足掛かりに、時を超えて僕のもとに訪れる、、」
「なんと、懐かしい名がでてくる!古い古い記憶を思い出した。あなたは、あの女に重なっていたものだな。
影なのにきらきら輝いていた!この時代からきていて無事に戻っていたのか!なるほど、生身はあの女に負けずに美しい」
リリアスは体を起こした。
瞳は半眼のまま、顔をルージュに向ける。
「ルシルも来ている。彼にぴったり重なっていないか?」
はっとゲーレンはルージュを振り返ってみた。
ルージュはゲーレンに覚えのある笑みを浮かべていた。
「ルシルさま、まさか!?」
ルシルはルージュにぴったり重なっていた。リリアスがリシュアに重なっていたように。
「ルシルだが、ルージュで良い。
わたしはこの娘を囲うつもりはない。
体と心の健康?そんなもの、どうだっていい。
わたしは彼女を再びこの腕で愛することができれば、その恩恵などどうだってよい。
三百年も末になっても、そんなことを続けているとはパリスの恥だな。
ゲーレンはそうやって生き続けているのか?
醜悪の極みだとは思わないか?
今すぐ塵にでもなれば、まだましだが」
ルージュはルシルの眼で、リリアスをみる。
既にゲーレンがかけた暗示は意味をなさず、リリアスに歩み寄る。
手を伸ばして頬を撫でた。
「あなたは、いつの世でもきれいだ。この時代でもあなたを奪いにきた。目覚めのキスをおくれ」
(目覚めのキス、、)
リリアスとルージュは唇を深く重ねる。
その時、大きな鐘が鳴り響く。
パリスの者なら誰もが知っている鐘の音。
数を数える。
十回。
その音を聞いたものは、それが意味することを理解する。
現王が崩御されたことを伝えていた。
にわかに、王宮、神殿、パリスの王都は騒がしくなる。
「王が亡くなられた!」
「どちらが次の王に?」
長いキスの後、ルージュは宣言した。
「わたしが王になる!そして彼女を王妃に。ブリュッセルの娘とは離縁する!」
リリアスは目覚めのキスで目覚めたが、まだ夢の中にいるようだった。
ルージュはルシルになっていた。
ルシルはもう一度、パリスの王になろうとしていた。そして、自分を王妃に据えようとしていた。
彼は強引で、傲慢で、強かった。
ルシルはリシュアを妻にするのに五年もかけた。そして、リシュアの生まれかわりのリリアスを得るのに三百年もかけた。
夢にでてくる頃に、ルージュと重なったとしたら、三年。
再度、生まれかわりを妻にしたいと思うのは、ルシルとリシュアの最期はあまり幸せではなかったのかもしれなかった。
ルージュはリリアスを起こした。
「これから神に誓う!神殿の最奥の間へ。
王座よりも先にあなたを妻にしたい!」
「ルシルさま!先に王座を宣言なさいませ!」
ゲーレンは言う。
「宣言?誰もが聞かぬのに宣言してどうする?」
「輝石に誓いなさいませ!その石は計り知れない力を持っている。それに誓えば、覆すことは難しくなる!」
ルージュは輝石を袋ごと胸元から取り出した。
ぎゅっと握る。
「わたし、ルージュは今ここでパリスの王になる!」
宣言した。
ルージュは王になった。
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