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第九話 女の作法
91-1、スクール初日 ②
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食事のために部屋を出ると、隣の部屋のジュリアと鉢合わせをする。
髪は一筋の乱れもない。完璧なよそおいはさすがである。
ジュリアは若い女官を連れていた。
女子たちは女官に朝の準備を手伝わせているようだった。
若い女官はララにお辞儀をし、ジュリアを残して退席する。
ロゼリアはジュリアとにこやかに挨拶をかわす。
ジュリアはロゼリアの女官が誰であるかを知ると眼を丸くした。
「おはようございます。ジュリアさま。アメリアさまからロゼリアさまのご担当に申し付かりました」
「そうなの。それは、そうなのね、でも、だからといって、どういうことなのかしら?」
ジュリアがロゼリアとララを交互に見て、言いよどむ。
はっきりしないジュリアは珍しいような気がした。
ロゼリアにはジュリアの戸惑いの理由がわからない。
「ララが、わたしの担当になることに何か問題がありましたか?」
「いえ、そうではなく。ララはとても頼りになる女官ですから。母がララをあなたに付けたということは、そういうつもりなのでしょう」
「そういうつもりとはどういうことですか?」
意味が分からずロゼリアは聞き直した。
その答えを聞く前に、女子たちが合流してくる。
この時間帯はジュリアの取り巻きたちと食事にいく時間のようである。
「まあ!アンジュさまかと思いましたわ!ここは女子の階ですから先日お越しになられた妹姫さまですのね!」
最初に声をかけてきたのは、イリスという大人びた娘。
肉感的な唇にグロスをたっぷりと乗せている。
「しばらく滞在なさいますの?アデールの姫さまはジルコンさまに会いにこられたのですか?」
「ロゼリアと申します。兄は体調が悪く今朝がた、帰国いたしました。その代わりにわたしが残りスクールに通うことになりまして」
「まあ!お別れもできませんでしたわ」
他の合流してきた娘たちも矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
女子たちは一様にロゼリアがアンジュにそっくりなこと、見事な髪であることをほめそやし、そのまま食堂へ流れていく。
ロゼリアはジュリアの友人たちに囲まれながらお盆を手にした。
だがそこで食堂までの移動の間、無言であったララが大きな胸を突き出すようにして割ってはいった。
「申し訳ありません、これから、ロゼリアさまの食事指導がございますので」
「食事指導!?」
驚いたのはロゼリアだけではない。
「こちらは自分で選んで食事をする形式ですね。ロゼリアさまにはご自分の体調と食事の関係性について理解してもらわないといけませんので」
「ララ、わたしには食事指導は不要だと思う。偏食はしてないつもりだけど。いちいち食べるものに口出しをされるのは……」
ロゼリアは咄嗟に回避しようした。
「ロゼリアさまはすっきりしたお体をしているので食事指導は不要ではないですか?」
口々にロゼリアに同意する声が上がる。
「細ければいいと思っておられるのでしたらそれは間違っていると申しておきます」
ララは艶やかな笑顔できっぱりといい、彼女たちを黙らせた。
ロゼリアに低く言った。
「朝のお着換えの時に思いましたが、ロゼリアさまはもう少しホルモンの状態を整えた方がよいと思います。女性の生命力は腰回りにつくといいますが、柳腰でありますし胸もそんなにあるわけではありません。正直、足りておりません。生理もきちんと毎月こられていないのではないですか?」
いきなり個人的なことに踏み込まれ面食らう。
ララに再び母の影がちらちらよぎる。
かなり苦手なタイプである。
「何回かとんで、つい最近きたけど……」
「そうでしょう。女性ホルモンを整えるのには黒いものをとるといいと申します。黒豆、黒キクラゲ、海のものは手に入りにくいのですが、ヒジキなどもいいでしょう。それにナッツ類もぜひ。ヒジキは料理長に加えてもらえるようにお願いしておきましょう」
ララは、次々と小皿を選んでロゼリアのお盆に置いていく。
「それから、生理がそのような状態なら、血の量も少ないかもしれません。血を補う食材にはニンジン、ホウレン草、マグロ、レバー、ナツメ、クコの実。合わせて血の巡りをよくする食材も取り入れましょう。タマネギ、ニラ、ネギ、ラッキョウ、ナス。それから取り入れた食事を体内で消化を促進するために、生姜入りのお茶もいいでしょう。そしてデザートは、気持ちをリラックスさせる柑橘類を召し上がれば完璧です」
お盆の上には小皿ばかり10皿ほどが並べられることになった。
「これを朝から食べるには、量が多いと思うんだけど」
「そんなことはありません。朝食は一日の活動を支え体をつくるために十分とることが必要です。今日から食事時はわたしも同席させていただきます。食事についてロゼリアさまのご理解が十分に深まり、わたしがいいと判断するまで」
髪は一筋の乱れもない。完璧なよそおいはさすがである。
ジュリアは若い女官を連れていた。
女子たちは女官に朝の準備を手伝わせているようだった。
若い女官はララにお辞儀をし、ジュリアを残して退席する。
ロゼリアはジュリアとにこやかに挨拶をかわす。
ジュリアはロゼリアの女官が誰であるかを知ると眼を丸くした。
「おはようございます。ジュリアさま。アメリアさまからロゼリアさまのご担当に申し付かりました」
「そうなの。それは、そうなのね、でも、だからといって、どういうことなのかしら?」
ジュリアがロゼリアとララを交互に見て、言いよどむ。
はっきりしないジュリアは珍しいような気がした。
ロゼリアにはジュリアの戸惑いの理由がわからない。
「ララが、わたしの担当になることに何か問題がありましたか?」
「いえ、そうではなく。ララはとても頼りになる女官ですから。母がララをあなたに付けたということは、そういうつもりなのでしょう」
「そういうつもりとはどういうことですか?」
意味が分からずロゼリアは聞き直した。
その答えを聞く前に、女子たちが合流してくる。
この時間帯はジュリアの取り巻きたちと食事にいく時間のようである。
「まあ!アンジュさまかと思いましたわ!ここは女子の階ですから先日お越しになられた妹姫さまですのね!」
最初に声をかけてきたのは、イリスという大人びた娘。
肉感的な唇にグロスをたっぷりと乗せている。
「しばらく滞在なさいますの?アデールの姫さまはジルコンさまに会いにこられたのですか?」
「ロゼリアと申します。兄は体調が悪く今朝がた、帰国いたしました。その代わりにわたしが残りスクールに通うことになりまして」
「まあ!お別れもできませんでしたわ」
他の合流してきた娘たちも矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
女子たちは一様にロゼリアがアンジュにそっくりなこと、見事な髪であることをほめそやし、そのまま食堂へ流れていく。
ロゼリアはジュリアの友人たちに囲まれながらお盆を手にした。
だがそこで食堂までの移動の間、無言であったララが大きな胸を突き出すようにして割ってはいった。
「申し訳ありません、これから、ロゼリアさまの食事指導がございますので」
「食事指導!?」
驚いたのはロゼリアだけではない。
「こちらは自分で選んで食事をする形式ですね。ロゼリアさまにはご自分の体調と食事の関係性について理解してもらわないといけませんので」
「ララ、わたしには食事指導は不要だと思う。偏食はしてないつもりだけど。いちいち食べるものに口出しをされるのは……」
ロゼリアは咄嗟に回避しようした。
「ロゼリアさまはすっきりしたお体をしているので食事指導は不要ではないですか?」
口々にロゼリアに同意する声が上がる。
「細ければいいと思っておられるのでしたらそれは間違っていると申しておきます」
ララは艶やかな笑顔できっぱりといい、彼女たちを黙らせた。
ロゼリアに低く言った。
「朝のお着換えの時に思いましたが、ロゼリアさまはもう少しホルモンの状態を整えた方がよいと思います。女性の生命力は腰回りにつくといいますが、柳腰でありますし胸もそんなにあるわけではありません。正直、足りておりません。生理もきちんと毎月こられていないのではないですか?」
いきなり個人的なことに踏み込まれ面食らう。
ララに再び母の影がちらちらよぎる。
かなり苦手なタイプである。
「何回かとんで、つい最近きたけど……」
「そうでしょう。女性ホルモンを整えるのには黒いものをとるといいと申します。黒豆、黒キクラゲ、海のものは手に入りにくいのですが、ヒジキなどもいいでしょう。それにナッツ類もぜひ。ヒジキは料理長に加えてもらえるようにお願いしておきましょう」
ララは、次々と小皿を選んでロゼリアのお盆に置いていく。
「それから、生理がそのような状態なら、血の量も少ないかもしれません。血を補う食材にはニンジン、ホウレン草、マグロ、レバー、ナツメ、クコの実。合わせて血の巡りをよくする食材も取り入れましょう。タマネギ、ニラ、ネギ、ラッキョウ、ナス。それから取り入れた食事を体内で消化を促進するために、生姜入りのお茶もいいでしょう。そしてデザートは、気持ちをリラックスさせる柑橘類を召し上がれば完璧です」
お盆の上には小皿ばかり10皿ほどが並べられることになった。
「これを朝から食べるには、量が多いと思うんだけど」
「そんなことはありません。朝食は一日の活動を支え体をつくるために十分とることが必要です。今日から食事時はわたしも同席させていただきます。食事についてロゼリアさまのご理解が十分に深まり、わたしがいいと判断するまで」
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