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【第3部 チェンジ】第七話 乱闘
67-2,立食パーティー②
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ジルコンとジュリアを中心にして盛り上がる話を少し離れたところで一人、早くもデザートをつついて聞いている者がいる。
パジャン派のレオである。
その会話を耳にしながら思ったことは、ジルコンにアデールの王子に対する寵愛ぶりやウォラスに気を付けろというよりもむしろ、女子たちが彼を取り囲んで他愛もないおしゃべりを楽しんでいるその状況の方が、エール派もパジャン派も関係なく男子全体からの嫉妬を買うのではないかということである。
もちろん、思っても口にすることはない。
レオは持ち回りホストのこのパーティーが大の苦手だった。
毎回、あぶれたものがなんとなくレオのところで会話を少ししては、再び賑やかな輪の中にもどっていくのを見送ることしかしていなかった。ある意味、ひとりにならないための避難所のような役目をレオは果たしている。
ただ、こうして背を壁に同化させんばかりにたたずんでいれば、おのずと人間関係の糸が見えてくる。
常に近くにいる者同士。
どこかに行っては戻っていくところ。
近くにいくことはないが、常にその動きに目を向けているもの……。
多くの視線はジルコンやラシャールに、ジュリアに集まっている。
ジルコンとラシャールは言葉こそ多くは交わさないが、互いの動きには注意を向けているようだった。
他にも、互いに意識しているような視線が飛び交っている。
それらを目に見えるように線をひいていけば面白いことになりそうだった。
誰と誰が影で付き合っているというようなことも当てられそうである。
さらに、彼はあなたのことを気になさっておられますよ、などいってあげれれば喜ばれそうでもある。
もっとも、実際に伝えれば気持ち悪がられて、空気扱いではなくて、珍獣扱いされるだろうが。
レオは自虐的な笑みを浮かべた。
そんな表情をしていても、どうしたんだと聞いてくれる友人などいないのだが。
良くても悪くても目立たないことが、長年の習性のようになってしまっている。
そういうレオは、人の輪からはなられたアデールの王子を追う。
何か思い出したことがあったようで、一人でいたエストに話しかけに行ったのだった。
エストは最近、ノルやバルドたちと何かあったようだった。
彼らと一緒にいることがなくなった。
先ほどノルやバルドたちは連れ立って外に出たがエストを誘うことはない。
その時、自分以外にアデールの王子の動きを目で追う者に気が付いた。
ジルコン王子である。
彼のお気に入りぶりは、レオから見ても危ういぐらいである。双子の妹と似すぎていて、ジルコン王子の中で認識の混乱が生じているのかもしれない。あの目は、好きなものを追うような熱い視線だからだ。
さらにレオは、アデールの王子にちらりちらりと注がれるもう一つのまなざしに気が付いた。
ラシャールである。
レオは自分が見て取ったものを信じられない。
確かに、ラシャールは今も続く朝練の初日に参加しようとしていたこともあった。
玉投げ勝負ではアデールの王子に甘い球でアウトにしていた。
パジャンとエールの二つの強国の王子が一人の王子を取り合うことなんてことがあるのだろうかと、そんな可能性にレオは愕然としたのである。
「……まさかそんなことは。だって彼は男だし……」
レオはつぶやいていた。
誰にも聞き止められることはないと思っていた言葉は、突然拾われた。
「レオ!さっきから、眼を白黒させて百面相してるとおもったら、今度は何ぶつぶつ言っているの!?顔も赤いわよ、ちょっと外で新鮮な空気でも吸ってきなさいよ!?」
そうレオに声をかけたのはベラである。
豊かな胸を突き出して、強引に腕を組んでくる。
そういう彼女の顔も酒のせいか赤い。
「もしかして、僕を見ていて?独り言を聞いてくれたの?」
「見ようと思ってみたわけではないし、言葉は勝手に聞こえてくるものでしょう?わたしも外に行きたいところだったから、一緒いってあげるわ!」
「え、ええ~!?」
レオは自分の顔を誰かが注目していることに全く気が付かなかった。
女性に腕を組まれるのも初めてだった。そのときはじめてレオは、ベラを意識する。
押し当てられた胸が弾力があり柔らかくて、酒のせいではなく眼鏡が曇るぐらいに真っ赤になったのである。
パジャン派のレオである。
その会話を耳にしながら思ったことは、ジルコンにアデールの王子に対する寵愛ぶりやウォラスに気を付けろというよりもむしろ、女子たちが彼を取り囲んで他愛もないおしゃべりを楽しんでいるその状況の方が、エール派もパジャン派も関係なく男子全体からの嫉妬を買うのではないかということである。
もちろん、思っても口にすることはない。
レオは持ち回りホストのこのパーティーが大の苦手だった。
毎回、あぶれたものがなんとなくレオのところで会話を少ししては、再び賑やかな輪の中にもどっていくのを見送ることしかしていなかった。ある意味、ひとりにならないための避難所のような役目をレオは果たしている。
ただ、こうして背を壁に同化させんばかりにたたずんでいれば、おのずと人間関係の糸が見えてくる。
常に近くにいる者同士。
どこかに行っては戻っていくところ。
近くにいくことはないが、常にその動きに目を向けているもの……。
多くの視線はジルコンやラシャールに、ジュリアに集まっている。
ジルコンとラシャールは言葉こそ多くは交わさないが、互いの動きには注意を向けているようだった。
他にも、互いに意識しているような視線が飛び交っている。
それらを目に見えるように線をひいていけば面白いことになりそうだった。
誰と誰が影で付き合っているというようなことも当てられそうである。
さらに、彼はあなたのことを気になさっておられますよ、などいってあげれれば喜ばれそうでもある。
もっとも、実際に伝えれば気持ち悪がられて、空気扱いではなくて、珍獣扱いされるだろうが。
レオは自虐的な笑みを浮かべた。
そんな表情をしていても、どうしたんだと聞いてくれる友人などいないのだが。
良くても悪くても目立たないことが、長年の習性のようになってしまっている。
そういうレオは、人の輪からはなられたアデールの王子を追う。
何か思い出したことがあったようで、一人でいたエストに話しかけに行ったのだった。
エストは最近、ノルやバルドたちと何かあったようだった。
彼らと一緒にいることがなくなった。
先ほどノルやバルドたちは連れ立って外に出たがエストを誘うことはない。
その時、自分以外にアデールの王子の動きを目で追う者に気が付いた。
ジルコン王子である。
彼のお気に入りぶりは、レオから見ても危ういぐらいである。双子の妹と似すぎていて、ジルコン王子の中で認識の混乱が生じているのかもしれない。あの目は、好きなものを追うような熱い視線だからだ。
さらにレオは、アデールの王子にちらりちらりと注がれるもう一つのまなざしに気が付いた。
ラシャールである。
レオは自分が見て取ったものを信じられない。
確かに、ラシャールは今も続く朝練の初日に参加しようとしていたこともあった。
玉投げ勝負ではアデールの王子に甘い球でアウトにしていた。
パジャンとエールの二つの強国の王子が一人の王子を取り合うことなんてことがあるのだろうかと、そんな可能性にレオは愕然としたのである。
「……まさかそんなことは。だって彼は男だし……」
レオはつぶやいていた。
誰にも聞き止められることはないと思っていた言葉は、突然拾われた。
「レオ!さっきから、眼を白黒させて百面相してるとおもったら、今度は何ぶつぶつ言っているの!?顔も赤いわよ、ちょっと外で新鮮な空気でも吸ってきなさいよ!?」
そうレオに声をかけたのはベラである。
豊かな胸を突き出して、強引に腕を組んでくる。
そういう彼女の顔も酒のせいか赤い。
「もしかして、僕を見ていて?独り言を聞いてくれたの?」
「見ようと思ってみたわけではないし、言葉は勝手に聞こえてくるものでしょう?わたしも外に行きたいところだったから、一緒いってあげるわ!」
「え、ええ~!?」
レオは自分の顔を誰かが注目していることに全く気が付かなかった。
女性に腕を組まれるのも初めてだった。そのときはじめてレオは、ベラを意識する。
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