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第三話 ジルコンの憂鬱
23、王子たちの距離 ②
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アヤははじめのうちは、ジルコン王子とロゼリアと同じ部屋の別のテーブルで、同じ箱の彩ゆたかな弁当を食べていたのだが、既に食べ終わって随分たつのに、二人の王子は食べ物の話で盛り上がって一向に食べ終わる様子がない。
そして彼女の主は、なぜか調子に乗っていて、普段はしないような単品での注文もしている。
しまいには、昼間からアンズの酒でも頼むのではないかと思われた。
案の定、ジルコンはロゼリアの食事の様子を目を細めてみていたが、思い出したかのように若女将に声を掛けたのであった。
「若女将、この見事なアンズの花の酒があったのではないか?」
「ございますよ。何種類かございますよ。薬効高いのは、アンズの実の核を酒に漬けたものですし、アンズの実を酒に漬けたものもございます。デザート酒の感じでいただけますよ。それから、最近開発しているのが、酒を造るのに酵母を使うのですが、この酵母をアンズの花由来のもので作っておりまして、そうするとその酒はどこか花の香りがするような爽やかな酒になるのです、、、」
アヤは聞いていられなくなって席を立ったのである。
「あれは何よ!殿下も殿下じゃない?いままでわたしの中で作り上げた孤高のイメージが崩れてしまう」
「アヤ、何を怒ってるんだ?」
アヤはジムを誘い、ずんずんと床を踏みしめて外に向かう。
ふたりが並ぶと、大人と子供が歩いているようである。
黒騎士の衣装を脱ぎ、くつろぎ用の服に上だけ着替えている。
黒服姿は一般の者たちの中では目立ちすぎるのだ。彼らは権威を見せるときと、紛れるときと、時折衣装を使い分けている。
今の黒騎士たちは、白地に上品にグレーの刺繍が施されたものである。
「何って、あの、アデールの田舎ものが目障りでしょうがないのよ!王子というだけで、わたしたちのジルさまを独り占めじゃないの?」
「そうだな、、、。だけど、しょうがないじゃないか?アンジュさまはあの通りきれいな方だし、双子の姫は婚約者でもあるだろう?それに、森の奥で育った人らしく、無邪気に好奇心を抱かれる姿には、ジルコンさまでなくても好感を持てるのではないか?」
アヤはむすっとする。
男たちの反応はどうやらアヤとは違うようである。
「何それ。ジムはあの田舎者の味方でもしようというの?婚約者は婚約者。あの王子とは全く別物よ。
あの姿を衆目にさらし続けるのならば、ジルさまの評判が地におちてしまうのではないの?」
ジムは首をかしげる。
「そうか?夏スクールのメンバーたちとも、王子は仲良くされているようだが。こんな程度ではびくともしないだろ」
「夏スクールのメンバーとあの田舎者との扱いの違いが、王子騎士でありながらあんたにはわからないっていうの?」
アヤは吠えた。
これだけ感情的になるのも久々である。
これは、一波乱を起さないとアヤの気持ちがおさまらない。
「おい、なにかっかしてるんだ?アヤ姫?」
アヤは姫とからかわれると怒るのだが、今はもう腹の立つ度合いも最上級になっているので、そのからかいに怒れる分は残っていない。
「あの王子、わたしたちがジルさまを守るように自分も守ってもらえると図々しく思っているんじゃない?ロサン、彼を守れと命令された?」
アヤの剣幕はロサンに向けられた。
ロサンも離れから出てきている。
「いや命令されていないが、田舎の国といえどもジルさまが預かった賓客だろ?俺らが命をかけて守る意義はあるんじゃあ、、、」
「正確にはこれっぽっちもないわ!わたしたちが、ジルさまを守り抜かなければならないとき、わたしは最優先にジルさまを守り抜く。そうなれば彼は丸裸で賊?の前にでることになるわ。それで無残に賊にやられたなら、ジルさまは、彼を招いたエール国として、形式的にも責任を取らなくてはいけなくなる。
彼の存在自体が迷惑きわまりないことを彼は知っているのかしら」
それは違うだろ。
そうならないように俺らが守るんだよ、アヤのいうことも考えてもジルさまとあの王子はほぼ同格の扱いだよ、とロサンとジムは思うがいまの状態のアヤには何も言わず、自然鎮火を待つのが一番である。
おさまる様子はみえそうにないのだが。
「ねえ、わたしいいこと思いついちゃった。協力してくれない?」
離れを出て外を歩こうとしたアヤは、この沸騰している胸をスカッと冷やせることを思いついたのである。
そして彼女の主は、なぜか調子に乗っていて、普段はしないような単品での注文もしている。
しまいには、昼間からアンズの酒でも頼むのではないかと思われた。
案の定、ジルコンはロゼリアの食事の様子を目を細めてみていたが、思い出したかのように若女将に声を掛けたのであった。
「若女将、この見事なアンズの花の酒があったのではないか?」
「ございますよ。何種類かございますよ。薬効高いのは、アンズの実の核を酒に漬けたものですし、アンズの実を酒に漬けたものもございます。デザート酒の感じでいただけますよ。それから、最近開発しているのが、酒を造るのに酵母を使うのですが、この酵母をアンズの花由来のもので作っておりまして、そうするとその酒はどこか花の香りがするような爽やかな酒になるのです、、、」
アヤは聞いていられなくなって席を立ったのである。
「あれは何よ!殿下も殿下じゃない?いままでわたしの中で作り上げた孤高のイメージが崩れてしまう」
「アヤ、何を怒ってるんだ?」
アヤはジムを誘い、ずんずんと床を踏みしめて外に向かう。
ふたりが並ぶと、大人と子供が歩いているようである。
黒騎士の衣装を脱ぎ、くつろぎ用の服に上だけ着替えている。
黒服姿は一般の者たちの中では目立ちすぎるのだ。彼らは権威を見せるときと、紛れるときと、時折衣装を使い分けている。
今の黒騎士たちは、白地に上品にグレーの刺繍が施されたものである。
「何って、あの、アデールの田舎ものが目障りでしょうがないのよ!王子というだけで、わたしたちのジルさまを独り占めじゃないの?」
「そうだな、、、。だけど、しょうがないじゃないか?アンジュさまはあの通りきれいな方だし、双子の姫は婚約者でもあるだろう?それに、森の奥で育った人らしく、無邪気に好奇心を抱かれる姿には、ジルコンさまでなくても好感を持てるのではないか?」
アヤはむすっとする。
男たちの反応はどうやらアヤとは違うようである。
「何それ。ジムはあの田舎者の味方でもしようというの?婚約者は婚約者。あの王子とは全く別物よ。
あの姿を衆目にさらし続けるのならば、ジルさまの評判が地におちてしまうのではないの?」
ジムは首をかしげる。
「そうか?夏スクールのメンバーたちとも、王子は仲良くされているようだが。こんな程度ではびくともしないだろ」
「夏スクールのメンバーとあの田舎者との扱いの違いが、王子騎士でありながらあんたにはわからないっていうの?」
アヤは吠えた。
これだけ感情的になるのも久々である。
これは、一波乱を起さないとアヤの気持ちがおさまらない。
「おい、なにかっかしてるんだ?アヤ姫?」
アヤは姫とからかわれると怒るのだが、今はもう腹の立つ度合いも最上級になっているので、そのからかいに怒れる分は残っていない。
「あの王子、わたしたちがジルさまを守るように自分も守ってもらえると図々しく思っているんじゃない?ロサン、彼を守れと命令された?」
アヤの剣幕はロサンに向けられた。
ロサンも離れから出てきている。
「いや命令されていないが、田舎の国といえどもジルさまが預かった賓客だろ?俺らが命をかけて守る意義はあるんじゃあ、、、」
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それは違うだろ。
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