女王の剣と旅の騎士

阿部敏丈

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第八話 ドルバン上陸作戦

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ドルバン上陸作戦


ユスター暦 1485年12月9日

「お~い アラン 生きている?」エミリがアランの部屋のドアを叩く。返事はない。「まっ 寒いもんね~」エミリにはアランが寒さを理由にベッドから出てこない光景が、見て取れた。
アランが古代都市セレウキアを離れて4ヶ月が経ち、世界は12月に入ったのだ。ホライズン号はフランドルの北部にある港湾都市、カルラに到着している。

メルカゲン・インスデテュートの戦いの直後、ホライズン号の操縦、電子機器管理、ナビゲーション、艦内環境管理と全てを引き受けていたシルフが消えてしまった。
しかし女王マリオンから、進軍を続けるよう指示されたので、アラン達はホライズン号を分担で運用することとなったが、それは手探り作業であった。操縦はエミリが一番上手だったが、武装のないホライズン号にとって制空権は欠かせない。空を飛べるエミリとシュウは対空行動を担当する事になる。そして艦に残って操艦や動力管理を担当するのはアランとムサシだ。

ホライズン号の役割分担が十分に取れていない事は解っているが、アラン達には時間がない。時が経てば経つほどアングランテ王国だけでなく、世界の混乱が進むからだ。

フランドルとアングランテ王国の間にはカルラ・ドル海峡がある。そこを渡ればアランの母国である、アングランテ王国の都市ドルバンにたどり着く。しかし海峡は秋に入ると一気に気温が下がり、冬には波が荒く潮流が不規則になる。それは空の上でも同じだ。日が経てば海峡を渡るのにリスクが大きくなるので、海峡を渡るのはなるべく早い方が良い。しかもこれまでのアラン達の行動を宰相は危険視して「メルカゲン・インスデテュートを破壊したテロリスト」として、アラン、エミリ、ムサシ、シュウを指名手配した。その鎮圧の為にマルスへ王立機動艦隊を率いるよう命じ、ドルバンの軍港へ艦船を集めている。この時代のアングランテ王国ではテレビ放送が一般化されていたが、情報は統制されておりマルスは国を守る英雄として報道されていた。

「ドルバン上陸作戦だ」アランは艦内のパネルマップを開き、カルラ・ドル海峡の先にある港湾都市ドルバンを指さした。
「皆が知っている通り この時期のカルラ・ドル海峡は荒波だ これからもっと海は荒れるだろう 空もな ここを渡るには今しか無い」アランの指はカルラ、海峡、ドルバンを囲う様に指で円を描いた。
「冬に海峡を渡るのはリスクが大きいわけね」エミリは画面をじっと見ながら応える。右手の指でゴーグルをつまんでいる。
「しかも王立艦隊が続々と海峡に集まっている 空も海も隙間がな無いくらいにな」アランは王都ガルスダットからスッと指を動かし、再びドルバンの地をトンと指した。
「しかし俺達は艦隊戦には慣れてはいない まして 荒波や突風の中なら無謀だぞ」ムサシは口を開いた。
「それ以前に この船に武装はないからな」シュウは脚を組んで両方の手のひらを上へ向けて開いた。
「そうだ けどこの船は足が速い だから戦う必要はない」アランはシュウの目を見て応える。
「ならどうする」シュウは頬杖を付く。
「陽動作戦さ」アランは切り札を出すように言った。
「ここからは私がお話します」
オスカーがアランの隣に立った。
「私は若い頃に この地に滞在しました 当時この地は大きな都市計画が有ったのです」
エミリ、シュウ、ムサシは身を乗り出した。
「アングランテ王国とフランドルをトンネルでつなぐ国家計画です」3人は目を開きお互いを見ながら首を振る。
「皆様がご存知ないのは当然です この計画は20年前に開始されましたが 宰相が反対して 5年前に計画は頓挫しましたからな」オスカーが世界を巡っていた経験が、最も活かされた瞬間だった。
「宰相はあの時にはもう クーデターの為に 手を回していたんだろうな クーデターを起こした時に 反対派がフランドル方面からトンネルを通って進軍して来たら困るだろうからね」アランが続けて言った。
「なるほどね 4年近く前のクーデターの時はちょうどクリスマスだったな 冬の海峡は海も空も荒れるから フランドルからの進軍はない…か」
シュウが納得するとアランは頷いた。
「しかしトンネルはもう繋がっているのです 整備がされていないので かなり傷んではいますがね」

「俺とオスカーはこのトンネルを通って アングランテ王国に入る そしてドルバンの中心街でザ・ナイトを起動する」
「圧政に苦しむ市民の前で 最上級騎士様のご帰還だって 彼等に伝えるの?」エミリは口を半開きにした。
「そうだ 国王の命令に従わず 自分自身の正義 市民の為なら 反抗も許される それがザ・ナイトの役目だからな けど市民が圧政から立ち上がるかどうか…彼等が決める事だ」
「私は市民達を後押しします それとトンネルの件ですが…」オスカーは内容を打ち明けた。




昨日の話…
オスカーは一人でカルラの街に出た。既にフランドルの地にも、指名手配者の顔写真が街中に貼られていたからだ。
オスカーは古い友人で地元で土木業を行っていた人物に会う。この友人は国家計画が頓挫したので、負債を抱えて破産状態に陥っていた。現在の政治には不信感を持つ。
「久しぶりだな ゴルド 生活が厳しくなったとは聞いていたが 思っていたよりも大変な様子だな」オスカーはゴルドと呼ばれる男がかつて経営していたカフェに入り、身なりが良くない男に話しかけた。

「ああ 宰相殿が工事を中止させたお陰で こっちは食いっぱぐれだ おまけにクーデターなんか起こしちまったせいで 街の経済も火の車だよ」男は右手で何かを遠ざけるように手を振り応じる。
「実はな 俺はその宰相殿の政治を変えるために とある騎士様と行動を共にしているのだ」オスカーは声を小さく耳打ちするように語った。
「とある騎士って お尋ね者の4人かね?」男は目を大きく広げた。
「そうだ まだ若いが立派な騎士様達だよ」オスカーは自慢げに言う。
「話を聞こうか」男は座り直すと自分の顔をオスカーに近づけた。
オスカーはアランが立てた作戦を説明した。手の内を全て。
「金に困っているこの俺が お前らの情報を宰相殿に売るとは思わんのか?」男は人を試すように質問をした。
「お前がそんな男ではないから こうして来たんだよ もちろんお前は商人だ タダではない」

ホライズン号で…
「え~ホライズン号を担保にして 取引しているの?」エミリは無謀とも言える駆け引きに驚いた。

「そうだ どのみちここで足止めを食らっては 俺達の負けだ 船もヘッタクレもない だがこの船は足が速くて上昇力も優れた新型艦だ 取引にはうってつけだろ」アランは得意げに言う。
「ホライズン号はエミリ シュウ ムサシだけで海峡に出て 海軍の目を引いてくれ 場合によってはエンジェルが空から挑発しても良い 奴等が攻撃して来たら直ぐに退却する」アランはマップのカルラと海峡の間を指で行ったり来たりさせる。
「その間に 俺とオスカーはトンネルを抜けて ドルバン側から決起した市民を率いて 王国海軍軍港を占拠する 俺の力だけで十分だ」アランは指先をドルバンから海峡へ移動させながら、確信をもって言った。
「それまで 俺たちが時間を稼げば良いんだな」ムサシは頷く。
「しかし 何度も同じ手は効かないぜ 」シュウは言葉を返す。
「海峡の幅は33キロメートルだから ドルバンからカルラを砲撃することも可能だ しかしカルラの街を壊すわけにはいかない 難しいな 俺達があまり挑発しすぎると なりふり構わず撃って来るかもしれん まあ 3度と言ったところだろう 」ムサシは予測を立てた。
「女王様が言ったろ 俺達と市民を試すってさ 時間はない 出港は明日の7時 俺とオスカーは今夜の23時にトンネルに入る 港を占拠したら…そうだな 竜殺しの銃を艦隊にブチかます」アランは言い終わるとパネルマップをパンと叩いた。
「祝砲だな」いつもシュウはネガティブな発言が多いのだが、今回は珍しく明るい未来予測をした。

翌朝7時…
エミリ、シュウ、ムサシはホライズン号に乗り、カルラ・ドル海峡をへと向かう。そこには王立海軍旗艦バーナードⅡ世が中央を進み、横一列に巡洋艦を広げて、その両端は戦艦ハルロド・ウィドー号と同型艦アイザック・デンバル号が挟んでいた。

バーナードⅡ世の艦内に警報がなった。
「航空偵察艦より報告 小型艇が前方12時の方向より 速度60ノットで接近を始めました 高度0㍍です」
艦内ブリッチでは、ハンズライサ艦長が目を閉じて報告を聞いていたが、開眼すると右手の指を上から前方に振り下ろした。
「航空部隊に命じる 直ちに上空から急降下爆撃を行え 命中よりも足止めが先だ 距離を取って波を起こせ」
司令を出した艦長は後ろを向く。そこにはマルスが静かに座っていた。
「高い位置から攻撃して 敵の足を止める 的確な判断だ 艦長 しかしあの船には4人の騎士達が乗っている 接近戦になれば こちらが不利になる 油断はするな」艦内は慌ただしく船員が行き来するが、ブリッジは彼を恐れているのか静かだった。



「おいでになったぞ‼」シュウは急降下部隊が放った爆弾を見上げて叫んだ。風を切る高い音を出しながら爆弾が多数落下してくる。
「急上昇するぞ エミリはこちらに来る爆弾を射落として 隙間を作ってくれ 俺の操艦でそこをくぐる シュウは落ちるなよ」
「了解」
エミリは応えると艦内の天井にあるハッチを開けて、シスターのレーザーライフルを人間が扱えるサイズに縮小させて具現化した。
「アームノイドのサイズより威力はないけど 十分よ ターゲットロックオン 照射‼」
3本の光線が大気に穴を開け、3つの爆弾に命中すると空中爆発が起きた。その爆煙を抜けてホライズン号は急上昇して行った。



航空部隊よりもずっと高く…そして後退。
「先ずは一回目」椅子の上で体を屈んでいたシュウが顔を上げて言った。

海底トンネル…
爆弾の破裂音は海中を抜けてトンネルを揺らした。
「始まりましたな」オスカーはトンネルのヒビから落ち来る水滴を払った。
「急ごう」アラン達の足場は悪いが歩みを速めた。

カルラ・ドル海峡…
カルラの港へ戻るホライズン号だったが、その速度はゆっくりだ。航空部隊は追ってこないからだ。後は時間を稼ぐ為の移動なのだ。
「アランの兄ちゃんって めちゃくちゃ射撃が上手かったんだろ マルスのジェネレールも 射撃が上手なのかな?」シュウが心配そうに二人の顔を見る。
「分からない メルカゲン・インスデテュートの決闘の時はアランよりも上手な剣術だったけど 射撃はどうなんだろうなぁ」エミリも大きく息を吐きながら言う。
「まあ アランの兄上 ケイン殿みたいな腕はないと思う あの時アランを倒すなら 距離をとって狙撃していたろうからな どのみち俺達は陽動作戦を 手を変え品を変えてやり続ける」
「だよな」シュウは椅子の背もたれに体重をかけリラックスした。

王国海軍旗艦バーナードⅡ世…
「正面から来ても 我々との戦力差は歴然だ そのまま攻撃をしない理由は分かるが その裏でどんな手を考えているのか 見せてもらおう」
ハンズライサ艦長は足を組み、腕組みをしながら言った。
「敵はアームノイド4騎だが 天空騎士のエンジェル以外は空を飛べない こちらの陣形が崩れたところで旗艦に乗り込み 接近戦で我々に向かう 今はそう考えられる 様子を見よう」マルスは落ち着いた声で言う。

ホライズン号は再び艦隊に近づいた。今度は左側方から大回りで行う。
「報告 小型艇が艦隊右端のハルロド・ウィドー号に接近中です 今回も高度0㍍を維持しております」

「今度は真横からか 本艦は加速 ハロルド・ウィドー号は停止 奴らに対して艦船を縦に並べて 艦砲射撃を開始せよ」ハンズライサ艦長は左腕を横に振った。

「今度は大砲だ」シュウが風を読むと、ムサシはほぼ水平に跳ばされる砲弾に対して、まるで螺旋階段を登るようにホライズン号を上昇させて行き再び姿を消した。

ムサシはホライズン号を上昇させたまま航行する。

「今度も空振りか 奴等…何を狙っている?」ハンズライサ艦長は腕を組み苛立ち始めた。

「艦長 このままでは艦隊の陣形が崩れる 全艦を停止させ 今すぐ横一列に陣形を戻せ そして3度目の接近を待つんだ 準備ができたら この戦艦を前進させて船首から船員をどかせ 手を明かさない奴等に 何度も応えるわけにもいかぬ」
艦隊が横一列、横陣に戻ると艦内に警報が鳴り、船員達は艦尾へと避難した。マルスはブリッジから甲板へと移動して、二番砲台の上に立つと近衛騎士の剣を抜いた。
「シクロタプス」無機質な声が船首から聞こえた。

戦艦の砲台に火柱が降りる。そして二番砲台が崩れた場所に、マルスのジェネレールが現れた。ジェネレールはそのまま両手を横に広げると、高エネルギー砲カノーネを具現化させた。船が横転しないようにしゃがんでゆっくりカノーネを構えると、エネルギーを集めだした。



ホライズン号…
ホライズン号は2度目の後退を終了させ艦首を王立艦隊に向けると、その空に火柱があるのをシュウが確認した。強大な心、闘志を感じる。
「おいおい 船の上でジェネレールかよ?」シュウが驚く。
「アイツ 遠距離攻撃でもするの?」エミリも意表を突かれたように言いながら艦内の情報パネルを開く。
「分からん しかし撃ち落とされる前に着水だ」ムサシは操縦桿を下した。
ホライズン号と艦隊の距離は20キロメートルだが艦砲射撃は起きず、一隻の戦艦にエネルギーが蓄積されていた。
「この武装って ジェネレールのカノーネよ ケインさんの得意技」エミリがアップしたパネルに武器の情報が書かれていた。
「ヤバイな」ムサシが歯を噛み締めて言う。
「う~ん 俺がダウンバーストを起こす 雹をまとわせた空気で 拡散できるかな」シュウがタクトを具現化させて空へ向けた。
「人間の状態でやっても 直ぐに蒸発するわよ」エミリが叫びながら返す。
「けど やるしか無いだろ」シュウがタクトを下ろすと、ホライズン号の上空に黒い雲が生じて直ぐに雷と冷風、雹が降ってきた。

バーナードⅡ世号に居るジェネレールはエネルギーを貯め続けた。
「シュウ 私達もアームノイドを使うしかないわよ」エミリはシュウの手を引いて急いで甲板へ出ると、シュウを海へ落とし、自分も海へジャンプした。
「シクロタプス‼」海面から顔を出してと剣を引き抜くと2人は叫ぶ。

空から海面へ火柱が生じてエンジェルとシノビが現れた。
「私はシールド展開するわ シノビはこちらのシールドとカノーネの光線が ぶつかった場所を冷却して」
エンジェルがシールドを張るのを待っていたように、カノーネの光線が直撃した。


大きなエネルギー爆発が生じる。シノビは発熱を低下させるようにダウンバーストを起こした。シノビのダウンバーストなら、簡単に海面を氷山に出来る位の力があるがカノーネの熱量はそれを上回っていた。
「このパワー メルカゲン・インスデテュートの爆発よりも強いよ…」
エンジェルの両手首にヒビが入る。爆破を封じ込めていた前回と違い、今回はエネルギーを上下左右に分散させるだけだが一点の負荷が強い。
「ここだけ冷やしてもダメだ このエネルギーの元 ジェネレールごと冷やしてやる 無理は承知 そうだろ剣よ‼」
シュウは目の前のエネルギーの衝突点から、はるか先にあるカノーネの砲身にまで意識を向ける。するとシノビはシュウの体をスキャンして一度だけ光った後、全く光を反射しない黒い影へと姿を変えた。



「天空騎士の剣さん 私は仲間を守りたいの…お願い」エミリはそっと剣に語り掛けた時、エンジェルの腕が破壊されてシールドが維持できなってしまい、エンジェルはジェネレールの攻撃をまともに食らってしまう。しかしエミリの体をスキャンしボディが一度輝いた後に翼だけでなく本体も透明な姿となる。


2騎のアームノイドが姿を変えると、エンジェルはより強力なシールドを張りカノーネのエネルギーを防ぎきった。
そしてジェネレールの居る王国海軍旗艦を中心に、海面が急激に凍結していった。バーナードⅡ世は氷山に衝突し大きな振動とともに行動不能となった。
「何が起こった?」数々の戦場を生き抜いてきたハンザライサ艦長だったが、海が急に凍結して艦隊が動けなくなった事など経験してはいない。

マルスは凍結してしまったカノーネを、怒りのままに氷面に突き刺した。


ドルバン市街地…
アランとオスカーはかつて古代人達の娯楽として使われていたコロッセオの中心に入っていた。
「ここなら目立つな 闘技場は壊しちゃうけど 街や人に危害はない オスカー行くぞ」
アランは剣を抜き、約束の言葉を唱えた。
「シクロタプス」
コロッセオの中心に火柱が降りてきて、最高位騎士 ザ・ナイトが現れた。



大昔の建造物であるコロッセオが轟音とともに焼けて半壊してしまった事で、ドルバンの市民は皆コロッセオに注目した。
「あれは 最高位騎士様じゃないか?」市民はザ・ナイトを指さしてざわめいた。
「皆さん聞いて欲しい 3年前の宰相が起こしたクーデターにより この国の政治は彼の独裁政治となった この時は最高騎士を継いだアラン・イスカード様はまだ12歳と若すぎ 宰相に捕らえられる恐れがあった為 国を離れた」
オスカーの言葉は「宰相のクーデター」という、市民が口にしてはならない言葉を含み皆は沈黙してしまう。しかしオスカーは話を続けた。
 「最高位騎士様は天空騎士様 影の騎士様 金剛武士様 とともにアメルック大陸の開拓民を解放し 聖騎士様 竜騎士様に勝利した 今のお力なら きっと貴公ら市民達をお守りし 宰相の圧政から 市民をお救いすることが出来るであろう」
オスカーは話を終えるとザ・ナイトの後ろに移動した。
「市民の諸君 宰相のクーデターが起きて3年が経ち もうすぐ4年になる」
アランはザ・ナイトから市民に語りかけた。
「宰相の圧政によく耐えた 長い間待たせたことを詫びよう しかし今こそ宰相を倒す時だ」
アランは市民に問いかけると、ザ・ナイトを剣に収めて自分の姿を見せた。まだ若さが残るが力強い男の姿だった。

「最高位騎士様は 王の意思に逆らうことが出来る 唯一の騎士だ」
「宰相は我々から自由を奪った」
「見張られる生活はウンザリだ」

市民は不満を爆発させ、アランに駆け寄った。
「騎士様 良くぞ戻ってこられました」
「あなたのお力で この街を救って下さい」
「我々も立ち上がります」
市民達は自由を手にするために圧政から立ち上がる決意を示した。その中心すにはアランが居た。

「皆よく立ち上がってくれた これから私は騎士として 王国海軍軍港の拠点 ドルバンの港を制圧する 私とともに行進し 皆で街の自由を取り戻そう」
アランはザ・ナイトを起動せず、市民とともに自分の足でドルバンの軍港まで行進をはじめた。港に近づけば近付くほど行進する市民達は増えていった。
そして軍港のゲートに到着すると、港を警護する兵士達が横並びに立ち、銃を一斉に構えた。
「お前達は 武器を持たない市民達に銃を構えたな その愚かさを身をもって知るが良い」アランは最高位騎士の剣を抜いた。
「シクロタプス」アランの周りに居た市民達も兵隊達もアームノイドの火柱に包みこまれた。しかしその炎は市民達も兵士達も焼くことはなかった。
ザ・ナイトが兵士達の前に現れると、兵士達は武器を捨てて逃げてしまった。
ザ・ナイトは遂に軍港にたどり着いた。そして右手に竜殺しの銃を具現化させると、凍り付いた王国海軍艦隊に向けて引き金を引いた。


竜殺しの銃の衝撃波は、王都ガルスダットのストルジャー城にまで響き渡った。
王の間のガラス窓が衝撃で揺れる様子を眺めながら、女王マリオンは呟いた。
「いよいよですね ザ・ナイト そして…オブサーチャー」
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