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第三話 開拓地と実験場
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ユスター暦 8月10日 7:30
「アラン様 アメルック大陸のザットランに到着しましたぞ」アランの部屋のドアをオスカーがノックする。
「うぅ…なんてダルいんだ」アランは苦しげに言う。
ホライズン号の起床時間はシルフが7:00と決めており,
それまでにエミリは服だけでなく、軽い化粧を済ませる。ムサシは6:00には起床し、甲板で朝稽古をする。シュウはムサシの隣で、オーケストラの指揮者が使うタクトを振りながら風の声を聴いている。
それぞれの朝の迎え方があるが、アランは朝が弱い。寝坊をして誰かに起こされることが多い。
「この土地はもう湿度が高いの 起きるのが億劫なのよ」シルフが皆の不満をなだめる。
「遅いわよ」服を着替えてはいるが、金髪の頭に寝癖の残るアランが船室に入って来た。作戦を立てるパネルを水平にして、テーブル代わりに使う。
「生活にはメリハリが要る 武人なら尚の事」ムサシは金剛武士の刀を左の手のひらでぱちんと鳴らして言う。彼は他人に厳しいが、自分にはもっと厳しい。
「まあ まあ 温かいうちに食べようぜ」シュウが食事の前の祈りの言葉を延べると皆が食べ始めた。
ホライズン号は南北アメルック大陸の中央より少し上にある港湾都市のザットランに到着した。ホリネス島からの移動時間は1日だ。湿度の高さが急激に変わり、エアコンが完備された船内でも身体的負担が高くなる。さらに船外に出れば害虫に襲われるため、アラン達は情報収集以外の外出は控えていた。
ザットランの街からアメルックの北東3000kmの場所にノイミ研究所という施設がある。ここはドクトル・ノヴァクが支配するメルカゲン・インスデテュートの出先機関がある。この世界のアメルック大陸はまだ開拓中で、現地人と開拓民は綿密な交渉をしながら都市化と農地化を進めていた。天空騎士団は治安の為に、アングランテ王国の国王であったハイラム10世の命によりクーデターよりも前に派遣されていた。その後クーデターが起きる直前に、ヒノクニから南北アメルック大陸の境い目にあるモンタニア・シティに影の騎士が来ている。その場所には建設中の運河がある。
「アメルックの開拓事業は宰相のクーデターで中断 それどころか土地を荒らされてしまったから マイナスね」エミリはマップを開いて言う。
「クーデター直後は アイツラ 運河に来なかったけど 2年前にノイミ研究所から出て来たドクトル・ノヴァクのバケモノが暴れ初めてさ 俺達は逃げたんだ」シュウもマップに映し出された、南北アメルック大陸の接点を指さして言う。
「私が聞き込みをしたところ ノイミ研究所は汚れた水や有毒な煙を 周辺に撒き散らしているそうです」オスカーはマップにあるノイミ研究所の場所を人差し指でくるりと回した。
「フロンティアを 汚染させてしまうなんて アイツら酷いわね」エミリは怒りを抑えながら言った。
「先ずはアメルック大陸の解放だな この大陸で暴れている宰相軍の拠点を叩く ノイミ研究所を抑える訳だ」アランが口を開く。
「あそこを落とせば 汚染も暴力も治まる」ムサシも目標を定めた。
「シルフ ノイミ研究所の内部地図はある?」アランはシルフに声をかけた。
「ええ あるわよ」シルフはマップを拡大させて、ノイミ研究所を上から見た写真を映し出す。そこには施設を構成する細かなエリア分けと役割が書いてあった。
「施設は完全な円で囲まれているわ これは加速器と言って エネルギーを生み出す場所 その中央は生み出されたエネルギーを制御するコントロールセンター そして隣接する工場ではメカノイドが作られて 擬似アームノイドがいるわ」
「シルフ 擬似アームノイドって 宰相のクーデターの時にマリオン様の前に現れたとか言う 10体の正体不明のアームノイドか?」アランは緑色の瞳をシルフに向けた。シルフは無言で頷いた。
「あれか…」オスカーは腕を組みつぶやいた。彼は3年前、マリオンと近衛騎士団、避難民と行動を共にしていた。彼の脳裏には不気味な10体の擬似アームノイドが、騎士団を容赦なく襲っていた光景が残っている。
「宰相の寄こしたメカノイドの空挺部隊が来た時 私は伯父から12歳で この剣を受け継いだわ 空挺部隊が大陸に降下する前に 空中で撃墜するはずだった」
エミリがたった12歳で騎士団を任されていた事実は皆知らなかったので、驚きつつエミリに視線を向けた。彼女は皆の目を見ながら続けた。
「天空騎士団にはメカノイドは居なくてね 私はエンジェルで戦闘機と爆撃機を連れて 宰相が送り込んだ空挺部隊の中枢を撃墜 混乱に乗じて戦闘機と爆撃機が揚陸艦を沈める手筈だったの」
アメルック大陸のアトランゼ側にある都市バステンをエミリは指さした。
「けど宰相の軍隊は カラタン・パシフィッコから攻めてきた」シュウが話に加わり、エミリが戦うはずだった場所とは反対側の港湾都市を指さした。アメルック大陸は広い。
「そう 私は戦う前に背後を突かれて 市民と土地を奪われた 宰相の軍隊は私の投降を要求したけど 戦闘機に乗っていた伯父とパイロットの皆はね 私を逃がす為に宰相の軍と戦った いつか大陸を奪還する願いを託して…」
「辛かったな」ムサシはエミリの過去に共感した。敵に国を奪われた無念は分かる。
「シュウ お前の居た運河の攻撃って エミリの時より後なんだろ?」アランは尋ねた。
「ああ 俺はあそこで産まれた現地の子供だ」アランは特に意識していなかったが、シュウの肌は褐色だ。
「開拓民と俺の部族は厳しい自然を相手に運河を作っていたんだ クーデターの直前に影の騎士がヒノクニから来て 現地の住民と開拓民を守っていたけど 2年前にバケモノがメカノイドと一緒に攻めてきて 影の騎士はみんなを連れて テアナ高地に逃げた」彼もまた故郷を奪われたのだった。
「俺もテアナ高地に行った」ムサシは過去を遡るように天井を見た。
「私もね」エミリも付け加えた。
3人が集まった場所テアナ高地はアメルック南部にある山岳地帯にあり、開拓どころか調査もされていない場所だ。密林に囲まれ雷雨や突風が起きる場所は、空からも陸からも到達は難しく危険が大きい。
「影の騎士が連れて来てくれた シュウはともかく エミリとムサシは どうやって来たんだ」アランは3人を見回して尋ねた。
「俺はヒノクニから南下した とある場所で 仲間の武士達と修行をしていた 半年前にそこにシルフが現れて 刀を受け継ぐ俺をテアナ高地に連れて行ってくれた」ムサシは答えた。
「私はクーデターの時に 戦場から逃げる所を シルフが拾ってくれたの だから私が一番初めに テアナ高地に着いたわ」エミリが台地をトントンと軽く叩いた。
シルフの導きでエミリが来て、シュウが来て、ムサシがテアナ高地に集まる。そしてアランの住んでいたセレウキアに3人を連れて来た。誰の意思なのかは分からないが、世界を変える為に4人の騎士を集めたのだ。
アランはノイミ研究所の攻略作戦をはじめた。
「ノイミ研究所の話に戻ろう シルフ あの場所は加速器のエネルギーで 動いているんだな」アランの緑色の目が船内の壁面に視線を移すとシルフが答えた。
「ええ 加速器を一部でも破壊出来たら 研究所のエネルギー供給は止まるわね けど予備のエネルギーはあるから 加速器よりもコントロールセンターを無力化するほうが早いかも」
アランに助言をする。
「けど 輪っかの中心だから 奇襲は難しいと思うけどな~」シュウはシルフに視線を向けた。
アランはシュウを向いて頷くとエミリに視線を移す。
「加速器を破壊して 予備エネルギーに切り替える前に 急降下攻撃ってのはどうだ?エミリ お前ならできるよな」
「うん コントロールセンターからは気付かれないくらいの高高度で移動して 音速で急降下すれば 対空砲火も追いつかないわ」いつも明るいエミリの表情は真剣だった。
「そうね 真上はレーダーにとってゼニスギャップと言って 索敵能力はほぼ無いわよ」
シルフが解説をした。
エミリは堂々とした態度を見せて、言葉を使わずに「任せて」と言わんばかりの視線で他の3人に送る。彼女の覚悟は十分伝わった。
とはいえ、シュウはエミリの危険な役割を心から心配していた。
「かなり重力がかかるけど お前 大丈夫なのか?」と彼は問いかける。
エミリは微笑みを返した。
「私は騎士よ 天空の騎士 急降下ぐらい平気よ」
「ここは任せよう」アランは彼女の決断を信じた。
「地上から攻撃だと 加速器の守りは 固いよな」シュウがシルフに尋ねた。
「地上にはメカノイドが常に40000動いているわ その中に擬似アームノイドが2体 レーダー補足範囲は空中だと500kmで地表だと森林を伐採してある半径100kmまで けどそこからはホライズン号も丸見えね」シルフはマップに赤い円を描いた。
「じゃあ 超音速で一気に接近しても ダメかな」シュウはマップをなでるように手のひらを動かす。
「難しいかな…音速で着地するのは アームノイドでも負担があると思う」
「なら確実に地上で行こう ドクトルのメカノイドは物量に頼っているだけだ 物の数ではない…」
ムサシは鋭い視線でマップを見つめる。
シルフはムサシを見て頷くと赤で囲った半径100kmをクローズアップさせて、研究所のコントロールセンターの真上に青い「⬇」のマークを表した。
「問題は擬似アームノイド2体だな 俺達は空に1騎 地上に3騎だ 攻撃力の高い俺とムサシで2体の相手をする シュウはメカノイドの攻撃をすり抜けながら 加速器を壊してくれ」アランは一人ひとりの目を見つめてから話す。
「了解だ シノビの俊足と隠密行動を 見せてやる」シュウは緊張した面持ちであったが、任務を遂行する決意を固める。
エミリもムサシもアランの言葉に無言で頷く。
「決まりだ シルフが600kmまで近付いたら エンジェルは出来るだけ高く飛んでくれ 攻撃力の高いザ・ナイトとカブトは150km手前から地上を前進だ 派手に暴れようぜ その間にシノビが加速器まで近づいて攻撃 皆それで良いか?」
「いいわよ」
「OK」
「あぁ」
それぞれの返事があった。
「アラン様 私の役目は…」
「オスカーはホライズン号で待機してバックアップだ」アランの指示で、オスカーは張り切った。剣士としての血が騒ぐ事よりも、自分が指導した若者が成長した姿に喜んでいたのだった。
王都ガルスダット…
ストルジャー城の王の間では、上空から監視する「王の目」によりアメルック大陸を移動しているホライズン号が映し出された。
「4人の騎士達は アメルック大陸に上陸しました 目的地はノイミ研究所です いつの間にか あそこもメルカゲン・インスデテュートみたいに 汚れはじめました」女王マリオンはブルーとヘーゼルカラーの瞳で、黒煙を出すノイミ研究所を見つめた。
「世界は技術革命を続けているのです 市民が求めるものを 彼等は提供している それだけでしょう」宰相ベルメッドはノイミ研究所の加速器を両手で囲う様に輪を作って、マリオンの言葉を返した。
「ノイミ研究所は貴方のクーデターの直後に作られていますね 貴方の周到さには感心します しかし影の騎士がアメルックに上陸していたのは 誤算だったのではないですか?」ベルメッドにある思考の深淵を見るようにマリオンは尋ねる。
「確かに ヒノクニから影の騎士が出国していたことは 想定外でした 金剛武士と手を組んでヒノクニを守ると思っていたのは事実です」彼の雄弁は変わらない。
「なるほど…ヒノクニにも 未来を知る存在があるわけですね 王家である私達も 全知全能ではありませんしね」物事を理解するには一方向から見ただけでは不十分だ。
ユスター暦 3月7日 20:00
アメルック大陸…
ホライズン号は高度10000メートルでノイミ研究所に近づくと、作戦通り距離6000kmでエンジェルを飛び立たせた。次はなるべく低空に高度を落とし距離150kmで空中停止した。
「行くぞ‼」アランの声で3人の騎士は甲板から飛び降り、叫んだ。
「シクロプタル」
空から3本の火柱が起きて3機のアームノイドが現れた。アランとムサシは全速力で森林を駆け抜け、その後方から静かにシノビが進んで行く。
ノイミ研究所…
「2騎のアームノイドが研究所の南西部に 侵入しました」コントロールセンターの中央司令室内にあるモニターから、自動音声が発せられた。モニターだけが光る薄暗い室内で、音声を聞く者が一人居た。ドクトル・ノヴァクだ。
「1日前 アメルックに向かう 高速艦を補足したと 宰相殿より報告を受けたが ワシが思った通り こちらに来たか」彼はニヤリと笑うとマイクを通して研究所全体に司令を出した。
「全てのメカノイドに告げる アームノイド共に長距離弾道攻撃をして 奴らの動きを鈍らせろ」ドクトルはマイクを切りかえて別の者に命令を下した。
「 お前達はアームノイドの破壊だ 準備せよ」施設中のサーチライトが灯り、夜空、伐採された地面を照らす。
マイクがオフになると、コントロールセンターの真下に火柱が生じた。そして炎の中から、不気味に光る目を持つ2つの人型が動き出す。個性を持たない全く同じ姿の、擬似アームノイドだ。
「しかし レーダーには2騎のアームノイドしか表示されてはおらん 残りふたつはどこだ…お前達もアームノイドの目と耳で探れ」ドクトルは警戒して、擬似アームノイドでアランとムサシに応戦することを控えた。彼は急降下を狙うエンジェルもシュウが潜む影も、気づいていない。天空と影、彼にとって大きな盲点だった。しかしアランのザ・ナイトとムサシのカブトはメカノイドの砲撃をもろともせずに、速度を落とさず研究所の加速器へと近付いている。しびれを切らしたドクトルは擬似アームノイドを向かわせる事にした。
「お前達 侵入者を即刻倒し すぐに戻ってこい 良いな」
命令が下されると、2体の擬似アームノイドはメカノイドの射撃が降り注ぐ中、全速力でザ・ナイトとカブトに突進した。友軍の誤爆など気にしてはいない。戦闘が開始された。
2体の擬似アームノイドはやはり同じ形のレーザーライフルを具現化させると、それぞれザ・ナイトとカブトに発射した。しかしザ・ナイトもカブトもライフルが現れた時点で攻撃を予測していた為、襲いかかる光線を回避できた。2射目も回避。3射目を撃つ前に2騎のアームノイドが間合いを詰めた為、2体はレーザーライフルを収納した。代わりに大型のアーミーナイフを具現化させた。接近戦だ。アランもムサシも剣技には自信がある。ふたりはそれぞれバーニングソードと烈風の刀を具現化させた。そしてバーニングソードが炎を起こすと、烈風の刀がジェット気流で炎を前方へ飛ばした。炎は火炎放射のように2体の擬似アームノイドへ命中した。燃え上る2体だがダメージは軽い。焼けた装甲は直ぐに修復されていく。
「させるかよ‼」アランが叫ぶとザ・ナイトはバーニングソードを擬似アームノイドのひとつを突き刺そうとする。しかし異端の剣が作り上げた擬似アームノイドの戦闘力は高い。シールドを張りバーニングソードの剣先を弾かせた。
ムサシはカブトの両手で水竜の刀を具現化させて、一度素振りをする。すると大粒の雨が降り始めた。大地はぬかるみ、メカノイド達からの砲弾もバラバラになる。しかしバーニングソードの炎には水は効かない。その炎はかつて緑の海を統治していた大帝国が使っていたとされる、水の火薬が生み出したものだ。水たまりの上を炎が広まり、擬似アームノイドを取り囲むと焼こうとする。自己修復が追いつかずボディを焼きながらも突進を続けた擬似アームノイド達だったが、突然研究所敷地内のサーチライトが消えて全てのエネルギーが途絶えた。シュウのシノビが短刀で加速器に傷をつけたのだ。
「加速器が破損しました 予備エネルギーに切り替えます」機械の音声を聞いたドクトルは、そのまま攻撃を指示した。しかし直後に真上から大きな衝撃が起こり、コントロールセンターの天井に穴が空いた。エンジェルだ。エンジェルのニードルがコントロールセンターの天井を突き破ったのだ。
「これだけじゃ無いわよ エコー‼」エミリが叫ぶと、超音波が敷地内に響き研究所の所々にヒビが入る。シノビが傷つけた加速器の一部も破損が広がっていく。
「影の騎士と天空の騎士か…まさにその名の通りだったな やるではないか お前達 引き上げるぞ」
ドクトルは生きていた。彼は座席に座ったまま、足元に付けられたレバーを引くと、座席がそのまま下へ落ちる。その先には超高高度用偵察艦が配備されていた。ドクトルが右手の指を弾くと、2体の擬似アームノイドはコントロールセンターの中に逃げ込み姿を消していった。
コントロールセンターが揺れその瓦礫から飛行艇が急上昇する。スピーカーからドクトルの声が鳴った。
「勝負はお預けだ この施設は爆破させる とっとと逃げるのだな」
ドクトルは笑い声を残し、超高高度偵察艦で消えて行った。
「ここが爆発するだと シルフ 爆破範囲は分かるか?」アランはホライズン号の回線を開いた。
「アラン様 エミリ様 ムサシ様 シュウ様 真上をご覧なさい」オスカーの声だ。銀色に光るホライズン号はエンジェルを追尾しており、退却を余儀なくされた場合を予測していたのだ。
「飛び乗るぞ‼」アラン達はアームノイドを剣に収めて着陸したホライズン号に飛び乗った。
「急上昇よ~」爆破がはじまり火炎が飛び交う中、シルフは勝利に酔ったように楽しげにホライズン号を飛び立たせた。
煙が立ち昇り閃光が広がると、研究所は伐採していた土地よりも大きい範囲で大爆発が起こる。
音速を超えたホライズン号は衝撃波を残して戦場を後にした。
「アラン様 アメルック大陸のザットランに到着しましたぞ」アランの部屋のドアをオスカーがノックする。
「うぅ…なんてダルいんだ」アランは苦しげに言う。
ホライズン号の起床時間はシルフが7:00と決めており,
それまでにエミリは服だけでなく、軽い化粧を済ませる。ムサシは6:00には起床し、甲板で朝稽古をする。シュウはムサシの隣で、オーケストラの指揮者が使うタクトを振りながら風の声を聴いている。
それぞれの朝の迎え方があるが、アランは朝が弱い。寝坊をして誰かに起こされることが多い。
「この土地はもう湿度が高いの 起きるのが億劫なのよ」シルフが皆の不満をなだめる。
「遅いわよ」服を着替えてはいるが、金髪の頭に寝癖の残るアランが船室に入って来た。作戦を立てるパネルを水平にして、テーブル代わりに使う。
「生活にはメリハリが要る 武人なら尚の事」ムサシは金剛武士の刀を左の手のひらでぱちんと鳴らして言う。彼は他人に厳しいが、自分にはもっと厳しい。
「まあ まあ 温かいうちに食べようぜ」シュウが食事の前の祈りの言葉を延べると皆が食べ始めた。
ホライズン号は南北アメルック大陸の中央より少し上にある港湾都市のザットランに到着した。ホリネス島からの移動時間は1日だ。湿度の高さが急激に変わり、エアコンが完備された船内でも身体的負担が高くなる。さらに船外に出れば害虫に襲われるため、アラン達は情報収集以外の外出は控えていた。
ザットランの街からアメルックの北東3000kmの場所にノイミ研究所という施設がある。ここはドクトル・ノヴァクが支配するメルカゲン・インスデテュートの出先機関がある。この世界のアメルック大陸はまだ開拓中で、現地人と開拓民は綿密な交渉をしながら都市化と農地化を進めていた。天空騎士団は治安の為に、アングランテ王国の国王であったハイラム10世の命によりクーデターよりも前に派遣されていた。その後クーデターが起きる直前に、ヒノクニから南北アメルック大陸の境い目にあるモンタニア・シティに影の騎士が来ている。その場所には建設中の運河がある。
「アメルックの開拓事業は宰相のクーデターで中断 それどころか土地を荒らされてしまったから マイナスね」エミリはマップを開いて言う。
「クーデター直後は アイツラ 運河に来なかったけど 2年前にノイミ研究所から出て来たドクトル・ノヴァクのバケモノが暴れ初めてさ 俺達は逃げたんだ」シュウもマップに映し出された、南北アメルック大陸の接点を指さして言う。
「私が聞き込みをしたところ ノイミ研究所は汚れた水や有毒な煙を 周辺に撒き散らしているそうです」オスカーはマップにあるノイミ研究所の場所を人差し指でくるりと回した。
「フロンティアを 汚染させてしまうなんて アイツら酷いわね」エミリは怒りを抑えながら言った。
「先ずはアメルック大陸の解放だな この大陸で暴れている宰相軍の拠点を叩く ノイミ研究所を抑える訳だ」アランが口を開く。
「あそこを落とせば 汚染も暴力も治まる」ムサシも目標を定めた。
「シルフ ノイミ研究所の内部地図はある?」アランはシルフに声をかけた。
「ええ あるわよ」シルフはマップを拡大させて、ノイミ研究所を上から見た写真を映し出す。そこには施設を構成する細かなエリア分けと役割が書いてあった。
「施設は完全な円で囲まれているわ これは加速器と言って エネルギーを生み出す場所 その中央は生み出されたエネルギーを制御するコントロールセンター そして隣接する工場ではメカノイドが作られて 擬似アームノイドがいるわ」
「シルフ 擬似アームノイドって 宰相のクーデターの時にマリオン様の前に現れたとか言う 10体の正体不明のアームノイドか?」アランは緑色の瞳をシルフに向けた。シルフは無言で頷いた。
「あれか…」オスカーは腕を組みつぶやいた。彼は3年前、マリオンと近衛騎士団、避難民と行動を共にしていた。彼の脳裏には不気味な10体の擬似アームノイドが、騎士団を容赦なく襲っていた光景が残っている。
「宰相の寄こしたメカノイドの空挺部隊が来た時 私は伯父から12歳で この剣を受け継いだわ 空挺部隊が大陸に降下する前に 空中で撃墜するはずだった」
エミリがたった12歳で騎士団を任されていた事実は皆知らなかったので、驚きつつエミリに視線を向けた。彼女は皆の目を見ながら続けた。
「天空騎士団にはメカノイドは居なくてね 私はエンジェルで戦闘機と爆撃機を連れて 宰相が送り込んだ空挺部隊の中枢を撃墜 混乱に乗じて戦闘機と爆撃機が揚陸艦を沈める手筈だったの」
アメルック大陸のアトランゼ側にある都市バステンをエミリは指さした。
「けど宰相の軍隊は カラタン・パシフィッコから攻めてきた」シュウが話に加わり、エミリが戦うはずだった場所とは反対側の港湾都市を指さした。アメルック大陸は広い。
「そう 私は戦う前に背後を突かれて 市民と土地を奪われた 宰相の軍隊は私の投降を要求したけど 戦闘機に乗っていた伯父とパイロットの皆はね 私を逃がす為に宰相の軍と戦った いつか大陸を奪還する願いを託して…」
「辛かったな」ムサシはエミリの過去に共感した。敵に国を奪われた無念は分かる。
「シュウ お前の居た運河の攻撃って エミリの時より後なんだろ?」アランは尋ねた。
「ああ 俺はあそこで産まれた現地の子供だ」アランは特に意識していなかったが、シュウの肌は褐色だ。
「開拓民と俺の部族は厳しい自然を相手に運河を作っていたんだ クーデターの直前に影の騎士がヒノクニから来て 現地の住民と開拓民を守っていたけど 2年前にバケモノがメカノイドと一緒に攻めてきて 影の騎士はみんなを連れて テアナ高地に逃げた」彼もまた故郷を奪われたのだった。
「俺もテアナ高地に行った」ムサシは過去を遡るように天井を見た。
「私もね」エミリも付け加えた。
3人が集まった場所テアナ高地はアメルック南部にある山岳地帯にあり、開拓どころか調査もされていない場所だ。密林に囲まれ雷雨や突風が起きる場所は、空からも陸からも到達は難しく危険が大きい。
「影の騎士が連れて来てくれた シュウはともかく エミリとムサシは どうやって来たんだ」アランは3人を見回して尋ねた。
「俺はヒノクニから南下した とある場所で 仲間の武士達と修行をしていた 半年前にそこにシルフが現れて 刀を受け継ぐ俺をテアナ高地に連れて行ってくれた」ムサシは答えた。
「私はクーデターの時に 戦場から逃げる所を シルフが拾ってくれたの だから私が一番初めに テアナ高地に着いたわ」エミリが台地をトントンと軽く叩いた。
シルフの導きでエミリが来て、シュウが来て、ムサシがテアナ高地に集まる。そしてアランの住んでいたセレウキアに3人を連れて来た。誰の意思なのかは分からないが、世界を変える為に4人の騎士を集めたのだ。
アランはノイミ研究所の攻略作戦をはじめた。
「ノイミ研究所の話に戻ろう シルフ あの場所は加速器のエネルギーで 動いているんだな」アランの緑色の目が船内の壁面に視線を移すとシルフが答えた。
「ええ 加速器を一部でも破壊出来たら 研究所のエネルギー供給は止まるわね けど予備のエネルギーはあるから 加速器よりもコントロールセンターを無力化するほうが早いかも」
アランに助言をする。
「けど 輪っかの中心だから 奇襲は難しいと思うけどな~」シュウはシルフに視線を向けた。
アランはシュウを向いて頷くとエミリに視線を移す。
「加速器を破壊して 予備エネルギーに切り替える前に 急降下攻撃ってのはどうだ?エミリ お前ならできるよな」
「うん コントロールセンターからは気付かれないくらいの高高度で移動して 音速で急降下すれば 対空砲火も追いつかないわ」いつも明るいエミリの表情は真剣だった。
「そうね 真上はレーダーにとってゼニスギャップと言って 索敵能力はほぼ無いわよ」
シルフが解説をした。
エミリは堂々とした態度を見せて、言葉を使わずに「任せて」と言わんばかりの視線で他の3人に送る。彼女の覚悟は十分伝わった。
とはいえ、シュウはエミリの危険な役割を心から心配していた。
「かなり重力がかかるけど お前 大丈夫なのか?」と彼は問いかける。
エミリは微笑みを返した。
「私は騎士よ 天空の騎士 急降下ぐらい平気よ」
「ここは任せよう」アランは彼女の決断を信じた。
「地上から攻撃だと 加速器の守りは 固いよな」シュウがシルフに尋ねた。
「地上にはメカノイドが常に40000動いているわ その中に擬似アームノイドが2体 レーダー補足範囲は空中だと500kmで地表だと森林を伐採してある半径100kmまで けどそこからはホライズン号も丸見えね」シルフはマップに赤い円を描いた。
「じゃあ 超音速で一気に接近しても ダメかな」シュウはマップをなでるように手のひらを動かす。
「難しいかな…音速で着地するのは アームノイドでも負担があると思う」
「なら確実に地上で行こう ドクトルのメカノイドは物量に頼っているだけだ 物の数ではない…」
ムサシは鋭い視線でマップを見つめる。
シルフはムサシを見て頷くと赤で囲った半径100kmをクローズアップさせて、研究所のコントロールセンターの真上に青い「⬇」のマークを表した。
「問題は擬似アームノイド2体だな 俺達は空に1騎 地上に3騎だ 攻撃力の高い俺とムサシで2体の相手をする シュウはメカノイドの攻撃をすり抜けながら 加速器を壊してくれ」アランは一人ひとりの目を見つめてから話す。
「了解だ シノビの俊足と隠密行動を 見せてやる」シュウは緊張した面持ちであったが、任務を遂行する決意を固める。
エミリもムサシもアランの言葉に無言で頷く。
「決まりだ シルフが600kmまで近付いたら エンジェルは出来るだけ高く飛んでくれ 攻撃力の高いザ・ナイトとカブトは150km手前から地上を前進だ 派手に暴れようぜ その間にシノビが加速器まで近づいて攻撃 皆それで良いか?」
「いいわよ」
「OK」
「あぁ」
それぞれの返事があった。
「アラン様 私の役目は…」
「オスカーはホライズン号で待機してバックアップだ」アランの指示で、オスカーは張り切った。剣士としての血が騒ぐ事よりも、自分が指導した若者が成長した姿に喜んでいたのだった。
王都ガルスダット…
ストルジャー城の王の間では、上空から監視する「王の目」によりアメルック大陸を移動しているホライズン号が映し出された。
「4人の騎士達は アメルック大陸に上陸しました 目的地はノイミ研究所です いつの間にか あそこもメルカゲン・インスデテュートみたいに 汚れはじめました」女王マリオンはブルーとヘーゼルカラーの瞳で、黒煙を出すノイミ研究所を見つめた。
「世界は技術革命を続けているのです 市民が求めるものを 彼等は提供している それだけでしょう」宰相ベルメッドはノイミ研究所の加速器を両手で囲う様に輪を作って、マリオンの言葉を返した。
「ノイミ研究所は貴方のクーデターの直後に作られていますね 貴方の周到さには感心します しかし影の騎士がアメルックに上陸していたのは 誤算だったのではないですか?」ベルメッドにある思考の深淵を見るようにマリオンは尋ねる。
「確かに ヒノクニから影の騎士が出国していたことは 想定外でした 金剛武士と手を組んでヒノクニを守ると思っていたのは事実です」彼の雄弁は変わらない。
「なるほど…ヒノクニにも 未来を知る存在があるわけですね 王家である私達も 全知全能ではありませんしね」物事を理解するには一方向から見ただけでは不十分だ。
ユスター暦 3月7日 20:00
アメルック大陸…
ホライズン号は高度10000メートルでノイミ研究所に近づくと、作戦通り距離6000kmでエンジェルを飛び立たせた。次はなるべく低空に高度を落とし距離150kmで空中停止した。
「行くぞ‼」アランの声で3人の騎士は甲板から飛び降り、叫んだ。
「シクロプタル」
空から3本の火柱が起きて3機のアームノイドが現れた。アランとムサシは全速力で森林を駆け抜け、その後方から静かにシノビが進んで行く。
ノイミ研究所…
「2騎のアームノイドが研究所の南西部に 侵入しました」コントロールセンターの中央司令室内にあるモニターから、自動音声が発せられた。モニターだけが光る薄暗い室内で、音声を聞く者が一人居た。ドクトル・ノヴァクだ。
「1日前 アメルックに向かう 高速艦を補足したと 宰相殿より報告を受けたが ワシが思った通り こちらに来たか」彼はニヤリと笑うとマイクを通して研究所全体に司令を出した。
「全てのメカノイドに告げる アームノイド共に長距離弾道攻撃をして 奴らの動きを鈍らせろ」ドクトルはマイクを切りかえて別の者に命令を下した。
「 お前達はアームノイドの破壊だ 準備せよ」施設中のサーチライトが灯り、夜空、伐採された地面を照らす。
マイクがオフになると、コントロールセンターの真下に火柱が生じた。そして炎の中から、不気味に光る目を持つ2つの人型が動き出す。個性を持たない全く同じ姿の、擬似アームノイドだ。
「しかし レーダーには2騎のアームノイドしか表示されてはおらん 残りふたつはどこだ…お前達もアームノイドの目と耳で探れ」ドクトルは警戒して、擬似アームノイドでアランとムサシに応戦することを控えた。彼は急降下を狙うエンジェルもシュウが潜む影も、気づいていない。天空と影、彼にとって大きな盲点だった。しかしアランのザ・ナイトとムサシのカブトはメカノイドの砲撃をもろともせずに、速度を落とさず研究所の加速器へと近付いている。しびれを切らしたドクトルは擬似アームノイドを向かわせる事にした。
「お前達 侵入者を即刻倒し すぐに戻ってこい 良いな」
命令が下されると、2体の擬似アームノイドはメカノイドの射撃が降り注ぐ中、全速力でザ・ナイトとカブトに突進した。友軍の誤爆など気にしてはいない。戦闘が開始された。
2体の擬似アームノイドはやはり同じ形のレーザーライフルを具現化させると、それぞれザ・ナイトとカブトに発射した。しかしザ・ナイトもカブトもライフルが現れた時点で攻撃を予測していた為、襲いかかる光線を回避できた。2射目も回避。3射目を撃つ前に2騎のアームノイドが間合いを詰めた為、2体はレーザーライフルを収納した。代わりに大型のアーミーナイフを具現化させた。接近戦だ。アランもムサシも剣技には自信がある。ふたりはそれぞれバーニングソードと烈風の刀を具現化させた。そしてバーニングソードが炎を起こすと、烈風の刀がジェット気流で炎を前方へ飛ばした。炎は火炎放射のように2体の擬似アームノイドへ命中した。燃え上る2体だがダメージは軽い。焼けた装甲は直ぐに修復されていく。
「させるかよ‼」アランが叫ぶとザ・ナイトはバーニングソードを擬似アームノイドのひとつを突き刺そうとする。しかし異端の剣が作り上げた擬似アームノイドの戦闘力は高い。シールドを張りバーニングソードの剣先を弾かせた。
ムサシはカブトの両手で水竜の刀を具現化させて、一度素振りをする。すると大粒の雨が降り始めた。大地はぬかるみ、メカノイド達からの砲弾もバラバラになる。しかしバーニングソードの炎には水は効かない。その炎はかつて緑の海を統治していた大帝国が使っていたとされる、水の火薬が生み出したものだ。水たまりの上を炎が広まり、擬似アームノイドを取り囲むと焼こうとする。自己修復が追いつかずボディを焼きながらも突進を続けた擬似アームノイド達だったが、突然研究所敷地内のサーチライトが消えて全てのエネルギーが途絶えた。シュウのシノビが短刀で加速器に傷をつけたのだ。
「加速器が破損しました 予備エネルギーに切り替えます」機械の音声を聞いたドクトルは、そのまま攻撃を指示した。しかし直後に真上から大きな衝撃が起こり、コントロールセンターの天井に穴が空いた。エンジェルだ。エンジェルのニードルがコントロールセンターの天井を突き破ったのだ。
「これだけじゃ無いわよ エコー‼」エミリが叫ぶと、超音波が敷地内に響き研究所の所々にヒビが入る。シノビが傷つけた加速器の一部も破損が広がっていく。
「影の騎士と天空の騎士か…まさにその名の通りだったな やるではないか お前達 引き上げるぞ」
ドクトルは生きていた。彼は座席に座ったまま、足元に付けられたレバーを引くと、座席がそのまま下へ落ちる。その先には超高高度用偵察艦が配備されていた。ドクトルが右手の指を弾くと、2体の擬似アームノイドはコントロールセンターの中に逃げ込み姿を消していった。
コントロールセンターが揺れその瓦礫から飛行艇が急上昇する。スピーカーからドクトルの声が鳴った。
「勝負はお預けだ この施設は爆破させる とっとと逃げるのだな」
ドクトルは笑い声を残し、超高高度偵察艦で消えて行った。
「ここが爆発するだと シルフ 爆破範囲は分かるか?」アランはホライズン号の回線を開いた。
「アラン様 エミリ様 ムサシ様 シュウ様 真上をご覧なさい」オスカーの声だ。銀色に光るホライズン号はエンジェルを追尾しており、退却を余儀なくされた場合を予測していたのだ。
「飛び乗るぞ‼」アラン達はアームノイドを剣に収めて着陸したホライズン号に飛び乗った。
「急上昇よ~」爆破がはじまり火炎が飛び交う中、シルフは勝利に酔ったように楽しげにホライズン号を飛び立たせた。
煙が立ち昇り閃光が広がると、研究所は伐採していた土地よりも大きい範囲で大爆発が起こる。
音速を超えたホライズン号は衝撃波を残して戦場を後にした。
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