神速艦隊

西太平洋戦争

ダグパンを守れ！

マニラ攻撃隊はマニラの港湾施設と航空基地を破壊した。
だが陸攻2機と艦爆1機が対空砲火で撃墜されてしまった。
またダグパンに上陸した山下奉文中将率いる第14軍の先遣隊もダグパン市内を制圧していた。


「ボス、ダグパンが航空隊の攻撃範囲に入りしました」
ハルゼーは間を置かずに命令を下した。
「よし、なら全力出撃だ！」
既に辺りは明るくなりつつあった。
「敵艦隊が出てきた場合はどういたしますか？」
「我々の戦艦で叩き潰す！それまでだ！」
極東艦隊にはハンコック型巡洋戦艦のハンコック、ベニントン、ボクサー、シャングリラ、レプライザル、アンティータム、そしてアイオワ級のアイオワ、ニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシンの計10隻の戦艦が指揮下にあった。
また空母もエンタープライズ、カボット、サン・ジャシント、ベロー・ウッドの4隻があり極東艦隊は太平洋艦隊に比肩する戦力を保持していた。
ただ空母に関してはその艦載機に問題があった。
戦艦の建造に固執してしまったがために航空機の開発が遅れており、戦闘機こそなんとかF4F戦闘機にそろえることが出来たが爆撃機は複葉機のSBC爆撃機が約半数を占め雷撃機はTBDだった。
これでも極東艦隊は日本に最も近いということからまだ優遇されており、後方にある各艦隊の艦載機はF2AやSBCが大半を占めていた。


「最終機、着艦成功！」
マニラ攻撃隊の収容は5時49分に完了した。
宇垣の報告に小沢は頷く。
「搭乗員には悪いがここは耐えてもらうしかない。直掩隊の発進を急げ」
小沢がここまで急ぐのには理由があった。
小沢は午前3時58分ごろに艦攻9機と水偵9機を偵察に出していた。
これは根岸機からの報告からマニラ港外に居る敵極東艦隊の所在を明らかにする必要が出たからだった。
そして午前5時11分に薩摩所属の艦攻が”敵艦見ユ”を母艦に打電していた。
またその艦攻は雲を巧みに利用して敵艦隊に接近し詳細な敵艦隊の陣容と敵攻撃隊が発艦し始めている旨を打電したのである。
小沢はこの報告と今だ敵の偵察機に発見されていないことを勘案して”敵艦隊はダグパンを攻撃しようとしている”と判断。
一刻も早くダバオに直掩隊の零戦を差し向けなければ今後の作戦に多大な影響が出るとしてすでに艦隊直掩の零戦58機を第1陣としてダグパンに向けて発艦させていた。
ただこれだけでは到底数が足りず、マニラ攻撃から帰還し使用不能となった4機を除く118機を大胆にも全てダグパンに送り込むことになっていた。
「間に合ってくれればいいのだが…」
小沢の表情には一抹の不安があった。