神速艦隊

新八八艦隊計画

大戦争

1914年6月28日。
サラエボから驚くべき知らせが届いた。
オーストリア＝ハンガリー帝国の皇太子が暗殺されたのである。
これを受けオーストリア＝ハンガリー帝国はセルビアに向けて最後通牒を突き付けた。
だがセルビアは真っ向から戦う姿勢を見せており動員を開始。
複雑に絡み合った安全保障条約によりその動員の波は瞬く間に欧州全土に拡大した。
そして7月28日。
オーストリア＝ハンガリー帝国がセルビアに戦線布告。
すぐさまドイツ、フランス、ロシアが参戦しここに”大戦争”が勃発した。


「始まったか」
東郷は欧州から送られてくる報告に目を通していた。
報告によるとドイツ軍はベルギーやルクセンブルクを攻撃する予定のようだ。
そして日本の同盟国であるイギリスはおそらく看過しないだろう。
「我々も戦力を出す必要がありますな」
秋山も東郷と同じ考えだった。
「艦隊編成に関しては追々決めるとしてだ。その艦隊を指揮する提督を誰にするかが問題だ」
東郷を自分で出向くことも考えてたがいつまでも自分が出張っていたは後進が育たないと早々にこの考えをかき消していた。
「それならば宮様に艦隊司令官になってもらうのは如何でしょうか？」
あまりにも突飛なことをいう物だから東郷は椅子から転げ落ちそうになる。
「君、宮様がもし戦死あそばされなさったらどうするつもりだ」
「確かにそうなれば世論からの海軍批判は沸騰するでしょう。ですが、宮様は他の皇族方とは違い現場勤務をお好みになっておりまた海軍内で唯一の皇族の方でもあらせられるので将来の海軍を率いていただくことになるかもしれません。ならば最新の戦争をその目で見ていただくことはいい機会なのではないでしょうか？」
そういわれると東郷も言い返す言葉が見つからなかった。
「…一度宮様にお伺いを立てる」


伏見宮博恭王は東郷からその話を聞かされて食い入るように同意した。
「私はそう簡単に死にません。行かせてください！」
こうも強く出られると東郷としても伏見宮の欧州派遣艦隊司令長官就任を認めざるを得なかった。


事前の予想通りドイツはベルギーやルクセンブルクに侵攻。
これに対しイギリスは宣戦布告を行い、同盟関係を理由に日本も8月23日にドイツに対して宣戦布告。
10月には英米の対日世論の鎮静化を受け南洋諸島占領作戦を始動させた。


「制式に我が国へイギリスから艦隊派遣の要請が届いた」
東郷は山本からそうきかされた。
「では来月には諸々の準備を終わらせ出撃させます」
東郷は淡々と言った。