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戦線膠着

独ソ講和

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連合軍による反抗作戦の失敗はスターリンを失望させた。
すでに石油が枯渇しつつあり、ソ連1国でドイツに対峙できる力は残っていなかった。
スターリンはスイスを通じてドイツに講和を打診。
数々の戦場で損耗していたドイツもこれを了解した。
もっともヒトラーは最後まで継戦を訴えていたが側近であるヒムラーが説得に成功した。
講和会議はロストフで行われ、バルト、ベラルーシ、ウクライナ、バクーをドイツへ割譲となった。
各地では国家弁務官区が設置され東方生存圏はほぼ達成された。
またトルコはクリミアを併合し露土戦争の雪辱を晴らした。
これはフィンランドにも言え、カレリアなどがソ連から返還された。
ソ連ではドイツに対する復讐戦争の準備が行われているとされているが、連合国の一角が崩れたのは明らかであり枢軸国ではさらに戦意が高揚する一方、イギリスやアメリカでは厭戦気分が増加していった。
その厭戦気分を払拭するために連合国首脳陣は確たる戦果を欲していた。


「予算がここまで増やされるとは予想外だ」
オッペンハイマー博士は驚きを隠せない。
ただ理由は分かっていた。
「早くこの爆弾を完成させろということですか…」
助手も分かっていた。
現在、連合国は劣勢だ。
工業力では枢軸国を上回っていていつかは物量で枢軸国を凌駕できるが、それを運用する人員の練度は枢軸国に及ばない。
そうなれば確たる戦果は見込めず厭戦気分は広がるだけだ。
そのため新型爆弾が早急に必要になったのだ。
「この爆弾を使うとなればどこになるでしょうか?」
助手の問いにオッペンハイマーは少し考え込む。
「おそらくドイツのどこかだろうな」
ただオッペンハイマーも自分で言いながら確証は持てなかった。
ドイツにこの爆弾を使う場合、まずはフランスや低地諸国を越えねばならずそれまでに新型爆弾を搭載した爆撃機が撃墜される可能性が高かった。
その点、太平洋ではほとんどが島であり撃墜される可能性は低かった。
だがドイツではユダヤ人が虐殺されているので大義名分があるが日本にはない。
これがオッペンハイマーの予想の根拠だった。


「独ソが講和したか」
山本は報告書を見る。
「これでドイツが上陸を許すということはほぼなくなりましたな」
井上の言葉に山本も頷く。
「だがそうなると連合軍はこちらに来る可能性がある」
山本は物憂げに言った。
「確かにそうかもしれません。ですがそうなるとハワイになるでしょうか」
「航空隊を増派させる。これと第1航空艦隊で十分だろう」
井上もこれに同意した。


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