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開戦前夜

開戦前夜

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「やはり戦争は避けられませんか…。」
井上は一通りの編成を終え、山本の元に出向いていた。
「来栖さんが頑張っているのだが、無理だろうな。」
あれほど対英米戦争に反対していた山本がそう言う。
「近々来栖さんが国務長官と会談する。その結果によって今後の方針が決まるだろう。」
覚悟の決まった山本の顔を見て井上は察した。
日本はすでに立ち返れない段階に進んでしまったいることを。


11月2日。
来栖三郎大使はマーシャル国務長官と会談。
だが会談とは名ばかりであり、”英米共同通牒”を渡してきた。
それは大陸からの前面撤退を要求するものであり、日本側が到底受け入れられるものではなかった。
そして11月24日には御前会議が開かれ、”開戦の止む無し”として開戦が決定された。
すでに交渉の余地はなく、開戦日は12月1日とされ宣戦布告までの攻撃は禁止された。


11月30日午後10時
井上は大和に座上し第2航空艦隊と第1艦隊を率いてサイパン島のタナパグ港に寄港していた。
「航空隊はどうだ?」
井上は樋端に尋ねる。
「各諸島に続々と降り立っています。滑走路は民間用を少し改良したもので事足りました。」
「そうか。それならいい。」
陸海共同航空隊の存在は新・漸減要撃作戦の成否を左右する要点であり井上が注意を払うのは当然だった。
「母艦航空隊も戦意十分です。まぁすぐに出番は来ないでしょうが。」
源田はそういうと井上は大きくうなずいた。
「母艦航空隊にはいずれ大役を担ってもらう。だから今は英気を養ってもらおう。」
こうして最終確認が着々と行われていく。
井上が時計を見ると短針が11と12の間を指していた。
「あと1時間もしないうちに開戦か。」
開戦は12月1日の午前0時と決まっていた。
「すぐにドンパチするわけでもないですが、やはり緊張します。あと1時間もしないうちに我が国は後戻りが出来なくなりますから。」
樋端がそう言うと源田も頷く。
「とにかく、できる限り短期決戦でこの戦争を終わらす。それに対してあらゆる努力は厭わない。」
井上の決意は固かった。
1秒、また1秒と少しづつ開戦が近づく。
「全艦、出港用意!」
井上は大和の艦橋から各艦に伝達させる。
乗員たちの緊張がここからも伝わる。
「出港!」
まだ開戦まで20分ほどある。
だが彼らは上陸船団も伴っていた。
宣戦布告と同時にグアムなどを攻略するためだ。
グアムは日本の委任統治領の中にあり攻略しない手は無かった。
ここで長針が0を指した。
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