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信濃の大空
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1945年8月15日。
戦争は終結した。
第2次ミッドウェー海戦の後、戦艦部隊は東南アジアに上陸してきた部隊に対して攻撃を行った。
それまで、防衛隊との死闘を繰り広げていた連合軍にはなすすべがなかった。
結果的に日本軍は5万人を超える死傷者を出したが、20万の連合軍を撃破した。
これはアメリカの世論に大きな影響を与えた。
西部戦線でも、太平洋戦線でも多大な損害をだし太平洋戦線では稼働している空母はゼロといった有様だった。
世論は次第に講和に傾いていった。
そして、8月1日から日米英独ソによる講和会議が始まった。
結果的にドイツはドイツ語圏の国々の確保に成功し、日本はミッドウェー島までの太平洋諸島と東南アジア、ビルマなどの独立に成功した。
ソ連は東欧、バルカン半島全域を支配下に置き、北イタリアにイタリア・ソヴィエト共和国を樹立した。
8月15日には停戦命令が出された。
この戦争での日本の戦死者は80万人だった。
そして、世界は冷戦へと移り変わっていく。
1963年11月29日。
『本日、全体主義に対しての日米同盟締結10周年を記念する式典がハワイ、ホノルルで行われました。また、同時に日米合同観艦式が行われ中曽根中将が率いる空母信濃をはじめとする第2航空戦隊が、バーク大将のエンタープライズをはじめとするアメリカ海軍第5艦隊第2航空群が参加いたしました。』
「今日、こうして我々がともに食卓を囲めることに乾杯。」
バークがそう言うと全員が乾杯した。
「こういうことを日本では因果が巡るというのですな。」
皆が思い思いに意見を交換している時にバークが中曽根に話しかける。
「そうですな。私も20年前に殺しあったあなたとこうやって穏やかに食事ができるとは夢にも思いませんでしたから。」
「それでも、まさか信濃とエンタープライズをまた建造するとは思いもしませんでいたがね。」
「全くです。」
今、中曽根が指揮している信濃は1959年に新造された原子力空母だった。
エンタープライズは1960年に新造されたこちらも同じ原子力空母だった。
「この後、戦没者慰霊碑に向かうつもりですが、ご一緒にどうですか?」
バークからの提案だった。
「もちろん、私も行こうと思っていました。」
ミッドウェーにはそれぞれ両軍の戦死者を弔う慰霊碑が建っていた。
「ん?どうやら先客がいるようですね。」
バークの言葉に中曽根も反応する。
「どうやら…我々になじみがあるもののようですな。」
近づくとそれは確信に変わった。
「坂井、久しぶりだな。」
「これは中将殿、お久しぶりです。」
もう一人はアメリカ人だった。
「君か!サザーランド!」
「ご無沙汰しています。大将。」
「なぜ二人がここに?」
中曽根が質問した。
「報告に来たんです。あなたたちの死は無駄ではなかったということを。」
サザーランドは慰霊碑を見つめた。
「私も同じですね。サザーランドさんとは交流会で知り合いました。最初は険悪でしたがなんとかなりました。」
坂井が明け透けなく言った。
「ふっ。お前ならなんとなく想像がつくよ。」
中曽根はそういうとおもむろに空を見上げた。
「阿部中将、私たちの活躍を信濃の大空から見守っていてください。」
空はどこまでも晴れていた。
戦争は終結した。
第2次ミッドウェー海戦の後、戦艦部隊は東南アジアに上陸してきた部隊に対して攻撃を行った。
それまで、防衛隊との死闘を繰り広げていた連合軍にはなすすべがなかった。
結果的に日本軍は5万人を超える死傷者を出したが、20万の連合軍を撃破した。
これはアメリカの世論に大きな影響を与えた。
西部戦線でも、太平洋戦線でも多大な損害をだし太平洋戦線では稼働している空母はゼロといった有様だった。
世論は次第に講和に傾いていった。
そして、8月1日から日米英独ソによる講和会議が始まった。
結果的にドイツはドイツ語圏の国々の確保に成功し、日本はミッドウェー島までの太平洋諸島と東南アジア、ビルマなどの独立に成功した。
ソ連は東欧、バルカン半島全域を支配下に置き、北イタリアにイタリア・ソヴィエト共和国を樹立した。
8月15日には停戦命令が出された。
この戦争での日本の戦死者は80万人だった。
そして、世界は冷戦へと移り変わっていく。
1963年11月29日。
『本日、全体主義に対しての日米同盟締結10周年を記念する式典がハワイ、ホノルルで行われました。また、同時に日米合同観艦式が行われ中曽根中将が率いる空母信濃をはじめとする第2航空戦隊が、バーク大将のエンタープライズをはじめとするアメリカ海軍第5艦隊第2航空群が参加いたしました。』
「今日、こうして我々がともに食卓を囲めることに乾杯。」
バークがそう言うと全員が乾杯した。
「こういうことを日本では因果が巡るというのですな。」
皆が思い思いに意見を交換している時にバークが中曽根に話しかける。
「そうですな。私も20年前に殺しあったあなたとこうやって穏やかに食事ができるとは夢にも思いませんでしたから。」
「それでも、まさか信濃とエンタープライズをまた建造するとは思いもしませんでいたがね。」
「全くです。」
今、中曽根が指揮している信濃は1959年に新造された原子力空母だった。
エンタープライズは1960年に新造されたこちらも同じ原子力空母だった。
「この後、戦没者慰霊碑に向かうつもりですが、ご一緒にどうですか?」
バークからの提案だった。
「もちろん、私も行こうと思っていました。」
ミッドウェーにはそれぞれ両軍の戦死者を弔う慰霊碑が建っていた。
「ん?どうやら先客がいるようですね。」
バークの言葉に中曽根も反応する。
「どうやら…我々になじみがあるもののようですな。」
近づくとそれは確信に変わった。
「坂井、久しぶりだな。」
「これは中将殿、お久しぶりです。」
もう一人はアメリカ人だった。
「君か!サザーランド!」
「ご無沙汰しています。大将。」
「なぜ二人がここに?」
中曽根が質問した。
「報告に来たんです。あなたたちの死は無駄ではなかったということを。」
サザーランドは慰霊碑を見つめた。
「私も同じですね。サザーランドさんとは交流会で知り合いました。最初は険悪でしたがなんとかなりました。」
坂井が明け透けなく言った。
「ふっ。お前ならなんとなく想像がつくよ。」
中曽根はそういうとおもむろに空を見上げた。
「阿部中将、私たちの活躍を信濃の大空から見守っていてください。」
空はどこまでも晴れていた。
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ypaaaaaaa
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