信濃の大空

ypaaaaaaa

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それは海中から

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第2航空戦隊は敵空母2隻撃沈という報告を聞いてはっきり言って浮かれていた。
「これでさっきの借りは返したぞ!」
中曽根すら浮かれていた。
「馬鹿者が!警戒をおこたるな!」
そのどすの効いた声に周りは静まる。
「まだ、戦闘中であるぞ!いつ何時アメリカが我々に攻撃を仕掛けてくるか分からない!」
中曽根も黙りこんだ。
だが、信濃の浮かれた空気までは払しょくしきれていなかった。
阿部がいる信濃でさえこうなのだから他の3空母はそのままだった。


「艦長!敵艦隊を発見しました!」
アルバコアの艦長であるリマー少佐は思わずガッツポーズをした。
マリアナ沖海戦では前哨戦の夜間強襲により空母が撃沈されたことに衝撃を受けた司令部から撤退を命令されていた。
「魚雷を一気に3発だす。これであの中央の空母を狙うぞ。」
静かに潜望鏡を海上にだす。
そして十分に狙いを定めてから魚雷を発射した。


「大鳳が被雷しただと!?」
指令室の空気は先ほどと打って変わって重たかった。
「2発命中なので沈没はしないでしょうが…。」
それでも阿部の周りの空気は変わらない。
沈まないにしても稼働できる装甲空母が1隻減ってしまった。
阿部は今後の戦闘を憂いていた。


外からの判断とは裏腹に大鳳の内部では激しい火災に見舞われえていた。
「大尉!鎮火がなかなかできません!このままだと他の部位までも…。」
大鳳は従来の日本空母に比べて格納庫などが密閉されていた。
これは波の侵入を防ぐ一方、火災などは外に逃がすことができなかった。
なのでアメリカ空母は開放型格納庫を採用しているが、こちらはこちらで波の影響をもろに受けてしまう。
嵐などが多い太平洋では戦闘前に損傷してしまうことも多く、どちらも一長一短だった。
そして、大鳳はその短の部分がもろに出てしまう。
爆発の衝撃で破壊されたタンクから気化した燃料に、火災が到達し大爆発を起こした。
脱出できたものはわずかに50名だった。


「大鳳は…だめか。」
大爆発を起こした空母はそれだけで将兵たちに悲壮感を与えた。
先ほどまで勝利の余韻に浸されていたのもあり艦隊の士気は下がっていた。
そこに攻撃隊が帰還した。
本来戻るはずの母艦がない大鳳の搭乗員は混乱と無力感でいぱいだった。


「敵の空母を撃沈!」
艦内で歓声が沸き上がる。
それもそうだ。
空母部隊が全戦力を費やして1隻だけしか撃沈できなかった空母を自分たちがやすやすと撃沈できたのだから。
そしてそのままハワイに撤退していった。
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