信濃の大空

ypaaaaaaa

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身を挺して

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後方にいた空母部隊が派遣した編隊はミッチャーの第2機動群から出撃した攻撃隊だった。
先に接敵するであろう、第3、1機動群の航空隊と挟み撃ちするために回り込もうとしていたのだった。
小沢はそのまま放置してやり過ごそうとしたが、米航空隊が通り過ぎてくれるという保証もなくこれ以上第2航空戦隊に負担をかけてもならないので第2航空艦隊防衛に差し向けていなかった紫電改を発艦させた。


『中隊長!日本の迎撃機が向かってきます!』
サザーランドの声はいつもと同じように聞こえたが、やけに緊張しているのが伝わってきた。
「中隊各機に告ぐ。恐れるな、調子に乗るな、緊張するな。いつも通り行け!」
いつもと変わらないカールの声に中隊の緊張はほぐれる。
そして、続々と3機編隊に分かれ戦闘に赴いていった。


「…ここには、いないみたいだな。」
もちろん、あの悪魔の事だ。
今、戦闘を繰り広げている者たちはいわゆる普通だ。
そえでも厄介なのだが命の危険を感じることもない。
その時、後ろに紫電改が付いた。
「いい技術だ。だが、まかれては意味がない。」
淡々と、回避機動に入った。
紫電改は必死に食いつこうとした。
だが必死過ぎて周りが見えていなかった。
『私がやります!中隊長。』
サザーランドが急降下してきてその紫電改の翼の中央に穴をあける。
そこから燃料が漏れ、火が引火して翼がもげた。


「敵攻撃隊、進路変わらず進撃してきます!」
草鹿はかなり慌てていた。
「そうか。では、対空戦闘用意!」
小沢はそういうしかない。
このままの速度だと、あと20分もしたら目視できるようになるだろう。
迎撃隊も奮闘してくれているがなかなか厳しい。
小沢は翔鶴に懸けたのだった。


『敵空母艦隊発見!』
誰かから情報が飛んでくる。
そして次の報告がすぐに来る。
『敵の空母の数は4隻を超える模様!』
なるほど。
私たちが今から攻撃するのは第1,3機動群が戦った部隊ではないということか。
それでも、変わらない。
彼が操るヘルキャットは超低空で最も先頭の大型空母に狙いを定めた。
先頭は撃沈すると艦隊運動に乱れが生じる。
そうすれば、他の艦も攻撃しやすくなる。
そういう考えを持つものは他にもいたようで攻撃機のほとんどが先頭の空母に攻撃しようとしている。
対空砲火は、昔に比べればかなり厚くなった。
だが、突破はできる。
「魚雷投下!」
彼の魚雷は一直線に先頭の空母に向かっていった。


「魚雷、左舷に3!直撃します!」
「回避急げ!」
小沢は回避できないだろうと思っていた。
いや、指令室にいた全員がそうだった。
だが、爆発音は翔鶴より手前で聞こえ衝撃もない。
「秋月が…守ってくれたぞ!」
秋月は翔鶴を守るため、魚雷3発を引き受けすぐに傾斜し始めた。
「彼らの犠牲を無駄にするな!何としてでもこの艦隊を守るぞ!」
小沢の言葉に指令室は決意に満ち溢れた。
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