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航空艦隊実現に向けて
山本=ヒトラー会談
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1934年9月20日に山本は第二次ロンドン海軍軍縮条約の予備交渉に差し向けられていた。
ただし政府はすでにワシントン海軍軍縮条約の破棄を決定していおり、当然第二次ロンドン海軍軍縮条約も端から決裂を狙っていたものだった。
それでも山本は真剣にことに当たった。
この間、内地では大角人事が行われた。
これはロンドン海軍軍縮条約の批准に努力した者たちを予備役へ追いやることを目的としていた。
しかし、堀に関してはこの憂き目を逃れた。
既に親友の山本の権力は海軍内で無視できない者であり、軍令部総長である伏見宮も山本に一目を置いていた。
もし堀を予備役に編入すれば山本やそれを支持する勢力からの大反発を喰らうのは必至だった。
(1人ぐらいなら誤差だ)
大角はそう割り切った。
予備交渉は案の定決裂した。
本来なら山本の役目はこれで終わりなのだが軍令部、とりわけ伏見宮はもう1つ山本に役割を与えた。
1934年中に中将へ昇進した山本は年が明けてもなおロンドンにいた。
(まさかいきなりヒットラーに会うことになるとはな…)
日独親善のためであった。
ドイツ側も”是非ヤマモトと総統との会談を!”と意気込んでいた。
反対意見は出たものの軍令部総長である伏見”宮”がこの会談を強く支持したことで霧散した。
伏見宮はキール海軍大学校の出でありドイツの事を高く評価していた。
なにはともあれ、1935年1月にはロンドンを出てベルリンへ向かった。
会談は総統官邸の来賓室で行われた。
「貴方が山本提督か」
「その通りでございます。総統」
2人の会話は通訳を通したものだった。
山本はヒトラーと話していくうちにヒトラーの知識量の多さに驚いた。
(こいつは天才なんだろうな)
山本は密かにそう思った。
会話を重ねていくうちにヒトラーの顔にも笑顔が見え始める。
山本もまた無意識のうちに政治手腕を発揮していたのである。
ここで山本の脳内がひらめいた。
(おそらく、こいつは海軍の再建についても興味があるに違いない)
「総統、1つよろしいですか」
「なんだね」
「ありがとうございます。ではまずレーダー提督以外の人払いをお願いいたします」
するとヒトラーは瞬間的に”海軍に関係する”と分かり、すぐに人払いを命じた。
レーダーは総統の傍らに寄り添った。
「将来的に、我が国の戦艦や重巡は全て空母に改装されます」
これを聞いたヒトラーとレーダーは目を丸くする。
「そんなことをして…大丈夫なのか?」
「問題ありません。これからは航空機の時代です」
ヒトラーはレーダーの方を見るがレーダーも難しい顔をしていた。
「そのため、現在我々が装備している砲塔が浮くのです。これをそのままスクラップにするのはもったいない。ですので貴国に”格安で”提供したします。その代わりとして日独間での技術協定を秘密裏に結んでいただきたく」
これにはヒトラーも大いに悩んだ。
だが日本も満州事変以降、国際的に孤立し始めているため将来的に同盟国になる可能性が高かった。
「…分かった。あなたの言う通りにしよう。山本提督」
「ありがとうございます」
山本は手を差し出す。
これにヒトラーも満面の笑みで応じた。
ただし政府はすでにワシントン海軍軍縮条約の破棄を決定していおり、当然第二次ロンドン海軍軍縮条約も端から決裂を狙っていたものだった。
それでも山本は真剣にことに当たった。
この間、内地では大角人事が行われた。
これはロンドン海軍軍縮条約の批准に努力した者たちを予備役へ追いやることを目的としていた。
しかし、堀に関してはこの憂き目を逃れた。
既に親友の山本の権力は海軍内で無視できない者であり、軍令部総長である伏見宮も山本に一目を置いていた。
もし堀を予備役に編入すれば山本やそれを支持する勢力からの大反発を喰らうのは必至だった。
(1人ぐらいなら誤差だ)
大角はそう割り切った。
予備交渉は案の定決裂した。
本来なら山本の役目はこれで終わりなのだが軍令部、とりわけ伏見宮はもう1つ山本に役割を与えた。
1934年中に中将へ昇進した山本は年が明けてもなおロンドンにいた。
(まさかいきなりヒットラーに会うことになるとはな…)
日独親善のためであった。
ドイツ側も”是非ヤマモトと総統との会談を!”と意気込んでいた。
反対意見は出たものの軍令部総長である伏見”宮”がこの会談を強く支持したことで霧散した。
伏見宮はキール海軍大学校の出でありドイツの事を高く評価していた。
なにはともあれ、1935年1月にはロンドンを出てベルリンへ向かった。
会談は総統官邸の来賓室で行われた。
「貴方が山本提督か」
「その通りでございます。総統」
2人の会話は通訳を通したものだった。
山本はヒトラーと話していくうちにヒトラーの知識量の多さに驚いた。
(こいつは天才なんだろうな)
山本は密かにそう思った。
会話を重ねていくうちにヒトラーの顔にも笑顔が見え始める。
山本もまた無意識のうちに政治手腕を発揮していたのである。
ここで山本の脳内がひらめいた。
(おそらく、こいつは海軍の再建についても興味があるに違いない)
「総統、1つよろしいですか」
「なんだね」
「ありがとうございます。ではまずレーダー提督以外の人払いをお願いいたします」
するとヒトラーは瞬間的に”海軍に関係する”と分かり、すぐに人払いを命じた。
レーダーは総統の傍らに寄り添った。
「将来的に、我が国の戦艦や重巡は全て空母に改装されます」
これを聞いたヒトラーとレーダーは目を丸くする。
「そんなことをして…大丈夫なのか?」
「問題ありません。これからは航空機の時代です」
ヒトラーはレーダーの方を見るがレーダーも難しい顔をしていた。
「そのため、現在我々が装備している砲塔が浮くのです。これをそのままスクラップにするのはもったいない。ですので貴国に”格安で”提供したします。その代わりとして日独間での技術協定を秘密裏に結んでいただきたく」
これにはヒトラーも大いに悩んだ。
だが日本も満州事変以降、国際的に孤立し始めているため将来的に同盟国になる可能性が高かった。
「…分かった。あなたの言う通りにしよう。山本提督」
「ありがとうございます」
山本は手を差し出す。
これにヒトラーも満面の笑みで応じた。
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