皇国の栄光

ypaaaaaaa

文字の大きさ
上 下
25 / 57

ABDAと酒好き大男の駆逐艦

しおりを挟む
1942年2月27日。
蘭印作戦の梅雨払いとしてABDA艦隊との海戦が発生した。
直前の四航戦の空襲などでABDA艦隊は損傷を受けていたのに対し、第三艦隊は超甲巡などを中核とし準備万端だった。
高木武雄は超甲巡の洞爺にて指揮を執っていた。
「提督。敵艦隊接近中とのことです。」
高木は冷静に言った。
「もしかするとスラバヤに退避するだけかもしれん。偵察機を出して逐一、敵艦隊の情報を報告させろ。」
「はっ。」
その後、ABDA艦隊は高木艦隊に接近してきたため高木も2,4水戦と共に迎撃を開始した。
日本海海戦後初めての本格的な砲撃戦が始まろうとしていた。


「敵重巡4隻を中核とする艦隊発見!接近してきます!」
ドルーマン少将は難しい顔をしながらも命令をだす。
「我が艦隊も敵艦隊に接近する!我々が今まで受けてきた屈辱を晴らせ!」


その後、一時は形勢不利となったものの羽黒の砲弾がエクセターに、洞爺の砲弾がパースに命中。
これを機にABDA艦隊は遁走を開始。
だが無傷では逃げれず、エクセター、ヒューストン、パース他駆逐艦が撃沈された。


ドールマンはなんとか撤退していた。
「我々は敵になんら損害を与えられなかった…。奴らは化け物か何かなのか?」
思わず言葉が出る。
「我々はその化け物とよく200年もなかよくできたものですね。」
「まったくだ。」
そう話していると敵艦隊発見の報が入る。
「今の我が艦隊の戦闘能力は日本艦隊に大きく劣っている。どうする?」
彼は副官に尋ねる。
「逃げても追いつかれるでしょうな。」
副官は肩を竦めて言う。
「ならば選択肢は一つしかないな。」
そういうとドールマンは無線を手に取った。
『我、敵艦に肉薄す。全艦続け!』
それが彼の最後の命令となった。


翌日、駆逐艦雷は昨夜海戦があった海域に通りかかった。
「艦長!前方に浮遊物多数発見いたしました!」
そう聞いた工藤俊作は双眼鏡でのぞく。
「あれは人か。おそらく昨夜の開戦の生き残りだろうな。」
「では攻撃しますか?」
そう下士官が言うと工藤は激しく憤慨した。
「馬鹿者が!すでに戦えなくなった相手にたいして攻撃するなど武士道の精神に反する!我々は彼らは救助する!」
「ですが彼らは我々の乗組員の数倍に当たります!暴動でも起こされでもしたら…。」
「その点はおそらく大丈夫だろう。彼らは戦意を喪失している。夜中、海の中にいたのだからな。」
その後、工藤はおよそ564名を救助し彼らの前でこう言った。
「貴官らはよく戦った。敬意を表す!今からあなた方は我々日本海軍の客人である!」
彼らは少し安堵したような顔をした。
なかには眠りこけるものまでいた。
それに笑って布団代わりの布をかぶせた日本軍人達。
工藤は久しぶりに平和というものを見た気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

空母鳳炎奮戦記

ypaaaaaaa
歴史・時代
1942年、世界初の装甲空母である鳳炎はトラック泊地に停泊していた。すでに戦時下であり、鳳炎は南洋艦隊の要とされていた。この物語はそんな鳳炎の4年に及ぶ奮戦記である。 というわけで、今回は山本双六さんの帝国の海に登場する装甲空母鳳炎の物語です!二次創作のようなものになると思うので原作と違うところも出てくると思います。(極力、なくしたいですが…。)ともかく、皆さまが楽しめたら幸いです!

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

女神の太平洋戦争記(無職艦隊の原型没案)

中七七三
SF
女神がやってきて、日本を太平洋戦争に勝たせろと無理ゲーをいう女神と、ひねくれた研究者崩れの塾講師の話。

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

帝国夜襲艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。 今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!

処理中です...