メンズスーパーモデルの東雲くんは、ビン底メガネキャラの西枝くんにご執心!メガネをはずした西枝くんが眩し過ぎる件

萌菜加あん

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第五話 東雲唯人は西枝時宗の唇を強引に奪ってみた。

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体調もだいぶ戻ってきたので、
西枝時宗は休んでいた塾通いを再開することにした。

その帰り道、

駅へと続くメインストリートの街頭サイネージに、
でかでかと東雲唯人の顔が映し出されると

「っ!」

西枝時宗が分かりやすく蹴躓く。

「し……東雲くんじゃないか」

これまで気にも留めなかった、
東雲唯人の情報が、最近やたらと目に入ってきてしかたがない。

「はぁ~、やっぱりかっこいいな」

西枝時宗は素直にそう呟てしまった。

「世の中の女子がみんな彼に恋をするのが、
なんだか分かるような気がするなぁ」

金髪碧眼のその容姿は、
昔母が読み聞かせてくれた童話のなかの王子様そのものの様に思えた。

「まあ、中身はちょっとアレなんだけど……」

西枝時宗は東雲唯人の日ごろの言動を思い出して、
思案に暮れる。

令和の時代に昭和のガリ勉キャラを貫く自分に、
東雲唯人は毎日とんでもない愛を囁く。

あるときはこの手の甲に口づけて、
『俺の女神』と言われたことがある。

西枝時宗はじっと己の手を見つめ、
小さく吐息を吐いた。

「きっと僕のことを揶揄っているんだろうけど……」

そしてまた小さくため息を吐く。

見上げたサイネージの東雲唯人の
はだけだ白いシャツからのぞく、
薄く筋肉のついた完璧ボディーをチラリと見て、

「うわ~」

西枝時宗はなぜだか罪悪感を覚えて、視線を逸らした。

「か……彼はあくまで、僕の良き友人であって……」

そう呟いて、ブンブンと頭を振る。

だが先ほどチラリと見てしまった、東雲唯人の完璧ボディーが
鮮烈に記憶に焼きついて、離れない。

「こんなっ……こんなっ……どうしよう、僕……。
東雲くんに申し訳ないよ」

西枝時宗は軽く泣きたくなった。

その時スマホのバイブが鳴った。

「のわっ!」

焦った西枝時宗は、
取り出したスマホを危うく落としそうになった。

「どうしたの? 西枝くん、何かあった?」

着信の主は、他ならぬ東雲唯人であった。

「し……ししし東雲くん? べっべべ別に、何もないよ。
それより、どうしたの? こんな夜遅くに」

動揺しまくった西枝時宗の声が妙な感じで裏返ってしまった。

「どう……っていうか」

東雲唯人が言葉を切った。

「声が聞きたかったんだ」

ぽつりと呟く。

「そっか……東雲くんは一人暮らしだものね、
ホームシックかな? 寂しくなっちゃった?」

西枝時宗の言葉に、スマホ越しの東雲唯人が苦笑した。

「まあ、そんな感じかな。西枝くんは今何をしているの?」

そう問われて、西枝時宗は少し焦った。

(駅の街頭サイネージに映し出された君の姿に見惚れてました。
なんて、しっ死んでも言えないっ!)

「塾の帰りだよ」

なんとか平穏を装い、言葉を発する。

「え? こんな時間に? 大丈夫なの?
迎えに行こうか?」

その声色から、
東雲唯人が真剣に自分のことを案じてくれているのが、
伝わった。

「大丈夫だよ。東雲くんは心配性だなぁ。
それよりも君は大丈夫なの? 東雲くん」

そう問うと、スマホの向こうで
東雲唯人が小さく笑った。

「いや……全然大丈夫じゃない。
ヤバイ……ダメかも……」

その切羽詰まった声色に、
西枝時宗が目を見開いた。

「どっ……どうしたの? 東雲くんっ!
何かあったの? ねぇっ! ねぇったらっ!」

西枝時宗がスマホ越しに声を荒げる。

「……会いたい」

苦し気にそう呟いた東雲唯人に、

「分かった、今から会いに行く。
だから君がどこにいるのか、僕に教えて!」

西枝時宗はきっぱりとした口調で言い切った。

「……」

しかし東雲唯人は答えない。
二人の間に沈黙の時が流れる。

「お願いだから、何か言って。東雲くん、
なんでもいいから僕に話して!」

西枝時宗がスマホ越しに、必死に東雲唯人に呼びかけると、

「ああ、でも、これ言っちゃうと、絶対引かれちゃうよな……」

心底泣きそうになっている、東雲唯人の声が聞こえた。

「約束する。引かない。だから教えて、君は今どこにいるの?」

西枝時宗の問いに、
再び沈黙の時が流れる。

「東雲くん!、東雲くんっ!!」

西枝時宗はスマホに向かって、必死に呼びかけると、

「君の……後ろにいる」

東雲唯人の意外な返答に

「へっ?」

さすがに面食らった。

振り返ると、後方100メートルくらいのコンビニの前から、
こちらに向かって歩いてくる人物がいる。

「ちょっ……東雲くんっ!」

西枝時枝がその人物に走り寄る。

「ごめんね……西枝くん」

そう力なく呟く東雲唯人の目が赤くなっている。

「ひょっとして泣いていたの? 東雲くん」

図星だったのか、東雲唯人は恥ずかしそうに西枝時宗から、
顔を背けた。

「いきなりで悪いんだけどさ、抱きしめてもいいかな?
西枝くん」

唐突な東雲唯人の申し出に

「う…うん、僕で良ければ……どうぞ」

西枝時宗は、躊躇いながらも頷いた。

「では……失礼します」

東雲唯人はそう言って、ぎこちなく西枝時枝を抱きしめた。

そしてその肩口に頭を乗せて下を向く。
西枝時宗は無言のままに、東雲唯人の背中を撫でてやる。

「なにか辛いことがあった? なんでも話してよ。
僕たち友達だろ?」

西枝時宗の言葉に、東雲唯人がすすり泣く。

「何が悲しいって、今の言葉が一番悲しかったよ……
告白する前から、撃沈って……」

その言葉に、

「えっ? 僕何か東雲くんを悲しませるようなことを言った?」

西枝時宗が心底驚いて、目を丸めている。

「あのね、西枝くん、落ち着いて聞いて欲しい。
俺は……君のことが好きなんだ」

ひどく思いつめたように言葉を紡ぐ東雲唯人に、

「そりゃあ、僕たちは友達なんだから、
僕だって、東雲くんのことは好きだよ。
当たり前じゃないか」

きょとんとした表情をする西枝時宗に、
東雲唯人は焦れた。

「どうやら君と俺との好きの定義にズレがあるようだね。
俺の君に対する好きっていうのは、つまりこういうこと」

東雲唯人は西枝時宗の腰を引き寄せて、
強引にその唇を奪った。

















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