4 / 118
4.彼女が笑った日
しおりを挟む
orz 言っちゃったよ、俺。
『別に、自惚れているつもりはない。
お前が俺に惚れるのは、ただの自然の法則だ。
だからお前も全力で来い。
この俺をお前に惚れさせてみろよ』
なんか自分で言ってて、悲しすぎてわらけてくるわ。
『お前が俺に惚れるのは、ただの自然の法則だ』
って、おいおい俺自慢じゃないけど、
10年間こいつに片思いしてるんだぜ?
自然の法則って何?
終わった……。
完全に終わった……。
グッバイ! 俺の初恋。
ウォルフは心の中で、とめどなく幻の涙を流した。
車内には重い沈黙の空気が流れる。
車はウォルフの屋敷の近くのショッピング街までやってきた。
「小物買うから、付き合え」
ウォルフはユウラにぶっきら棒にそう言って、車を停めさせた。
休日のショッピング街は、親子連れやカップルで賑わっている。
ウォルフはユウラの手を取った。
「お前はこっち側を歩け」
そういってウォルフはユウラを歩道側に誘導する。
ユウラはふと、あまりにもナチュラルに繋がれてしまった自分の手に視線をやった。
(この男、相当慣れていやがるっ!)
ウォルフのこの行動が、ユウラの闘争心に火をつけた。
「きゃ♡ あのマグカップ超かわいい」
そういってユウラは、ウォルフの腕にしがみついた。
(ぬぉぉぉぉ! この女の胸の弾力が、弾力がぁっ……、腕にぃぃぃぃ)
ウォルフは心の中で、断末魔の叫びを上げる。
「ん? なんだ? ユウラはこのマグカップが気に入ったのか?」
そういってウォルフは、ユウラが可愛いと言ったマグカップを手に取った。
ハートマークが斜めに入ったピンクとブルーのお揃いのマグカップだ。
(悪くないっ!)
ウォルフの瞳がカッと見開かれた。
速攻で支払を済ます。
「うふふ~♡ 捕まえてごらんなさ~い」
そう言ってユウラが、ひらりとウォルフを躱すと、
「あはは~待てよ~ハニー♡」
そう言ってウォルフがユウラを追いかける。
周りが見るとカップルの他愛ない触れ合いの様に見えるが、
二人の目は決して笑ってはいない。
しかも体力バカ二人の戯れなので、何気に全力疾走だ。
「ゼー、ゼー……。
なかなかやるわね」
死相を浮かべたユウラが、ウォルフに言った。
「ショッピングモールで何気に全力疾走してるんじゃねぇよっ!
他のお客に迷惑だろうがっ!」
そういってユウラは再びウォルフに手を繋がれた。
「ちゃんとはぐれないように、俺の隣にいろ」
そう言ってウォルフがユウラを引き寄せると、
「わ……わかったわよ」
ユウラは赤面した。
二人の間に微妙な沈黙が流れる。
「ねぇ、どうしてあなたは昔から私の手を繋ぐの?」
ユウラの質問に、ウォルフの目が半眼になった。
「お前、幼少期からさんざん人ごみで迷子になってきたという、
自分の経歴を忘れたか?」
しかもユウラは極度の方向音痴だ。
自力では、まず戻れない。
その度に自分をはじめ、まわりの者たちがどれだけ心配してきたことか。
「うん、まあ、そうなんだけどさ。
この年になると、世間一般の男女は恋人でない限り
あんまり手は繋がないものなんだということを最近知ったっていうか」
ユウラが不思議そうに言った。
「なんだ? お前」
ウォルフは怪訝そうな顔をした。
「そもそも、ウォルフって私のこと好きなの? それとも嫌いなの?
ときどき分からなくなるんだよね。
いきなりキレるし、でもキレたらいきなりキスするし」
orz 死ぬほど好きですが、何か?
「好きか嫌いかで言ったら、まあ……好きなんじゃねぇの?」
ウォルフはソッポを向いて赤面してそう言った。
「そうなんだよね、私もウォルフのことは
好きか嫌いかで言ったら、まぁ好きなんだと思う」
ユウラの言葉にウォルフの時が止まった。
エライこっちゃ! エライこっちゃ! エライこっちゃ!
脳内で自分の分身たちが踊り狂う。
「ただね、私騎士になりたいんだ」
ユウラが真剣な眼差しをウォルフに向けた。
「なればいいんじゃねぇの?」
ウォルフは反射的にそう言った。
「いいの?」
ユウラが目を瞬かせた。
「良いも悪いも……なりたいのなら、なればいいんじゃねぇの?」
ごく何でもないことのようにウォルフがそう言った。
「え? でも私はあなたの許嫁でこれから
行儀見習いとしてあなたの屋敷に入らないといけないのでしょう?」
ユウラがキョトンとした顔をする。
「そんなもん、両立すればいいだけの話だろ?
うちの屋敷からアカデミーに通えば?」
そう言ったウォルフの首に、ユウラが抱きついた。
「ウォルフ大好き」
そういって微笑んだユウラに、ウォルフは完全にノックアウトされてしまった。
ゆえにこの二人の一本勝負はつまり、相打ちだ。
ウォルフもぎこちなくユウラの背に腕を回す。
「機嫌直ったか?」
ウォルフがそう問うとユウラが頷いた。
ウォルフは愛おしそうに、ユウラの額に口付けた。
「そうか、それは良かった。
じゃあ、帰ろうか」
空には一番星が輝き、日の入りと共に下弦の月が夜空に浮かぶ。
ウォルフはユウラの手を自身のコートのポケットに突っ込んだ。
信号待ちの交差点で、思わずウォルフはユウラに口付けた。
「ずっとお前のことが好きだった」
『別に、自惚れているつもりはない。
お前が俺に惚れるのは、ただの自然の法則だ。
だからお前も全力で来い。
この俺をお前に惚れさせてみろよ』
なんか自分で言ってて、悲しすぎてわらけてくるわ。
『お前が俺に惚れるのは、ただの自然の法則だ』
って、おいおい俺自慢じゃないけど、
10年間こいつに片思いしてるんだぜ?
自然の法則って何?
終わった……。
完全に終わった……。
グッバイ! 俺の初恋。
ウォルフは心の中で、とめどなく幻の涙を流した。
車内には重い沈黙の空気が流れる。
車はウォルフの屋敷の近くのショッピング街までやってきた。
「小物買うから、付き合え」
ウォルフはユウラにぶっきら棒にそう言って、車を停めさせた。
休日のショッピング街は、親子連れやカップルで賑わっている。
ウォルフはユウラの手を取った。
「お前はこっち側を歩け」
そういってウォルフはユウラを歩道側に誘導する。
ユウラはふと、あまりにもナチュラルに繋がれてしまった自分の手に視線をやった。
(この男、相当慣れていやがるっ!)
ウォルフのこの行動が、ユウラの闘争心に火をつけた。
「きゃ♡ あのマグカップ超かわいい」
そういってユウラは、ウォルフの腕にしがみついた。
(ぬぉぉぉぉ! この女の胸の弾力が、弾力がぁっ……、腕にぃぃぃぃ)
ウォルフは心の中で、断末魔の叫びを上げる。
「ん? なんだ? ユウラはこのマグカップが気に入ったのか?」
そういってウォルフは、ユウラが可愛いと言ったマグカップを手に取った。
ハートマークが斜めに入ったピンクとブルーのお揃いのマグカップだ。
(悪くないっ!)
ウォルフの瞳がカッと見開かれた。
速攻で支払を済ます。
「うふふ~♡ 捕まえてごらんなさ~い」
そう言ってユウラが、ひらりとウォルフを躱すと、
「あはは~待てよ~ハニー♡」
そう言ってウォルフがユウラを追いかける。
周りが見るとカップルの他愛ない触れ合いの様に見えるが、
二人の目は決して笑ってはいない。
しかも体力バカ二人の戯れなので、何気に全力疾走だ。
「ゼー、ゼー……。
なかなかやるわね」
死相を浮かべたユウラが、ウォルフに言った。
「ショッピングモールで何気に全力疾走してるんじゃねぇよっ!
他のお客に迷惑だろうがっ!」
そういってユウラは再びウォルフに手を繋がれた。
「ちゃんとはぐれないように、俺の隣にいろ」
そう言ってウォルフがユウラを引き寄せると、
「わ……わかったわよ」
ユウラは赤面した。
二人の間に微妙な沈黙が流れる。
「ねぇ、どうしてあなたは昔から私の手を繋ぐの?」
ユウラの質問に、ウォルフの目が半眼になった。
「お前、幼少期からさんざん人ごみで迷子になってきたという、
自分の経歴を忘れたか?」
しかもユウラは極度の方向音痴だ。
自力では、まず戻れない。
その度に自分をはじめ、まわりの者たちがどれだけ心配してきたことか。
「うん、まあ、そうなんだけどさ。
この年になると、世間一般の男女は恋人でない限り
あんまり手は繋がないものなんだということを最近知ったっていうか」
ユウラが不思議そうに言った。
「なんだ? お前」
ウォルフは怪訝そうな顔をした。
「そもそも、ウォルフって私のこと好きなの? それとも嫌いなの?
ときどき分からなくなるんだよね。
いきなりキレるし、でもキレたらいきなりキスするし」
orz 死ぬほど好きですが、何か?
「好きか嫌いかで言ったら、まあ……好きなんじゃねぇの?」
ウォルフはソッポを向いて赤面してそう言った。
「そうなんだよね、私もウォルフのことは
好きか嫌いかで言ったら、まぁ好きなんだと思う」
ユウラの言葉にウォルフの時が止まった。
エライこっちゃ! エライこっちゃ! エライこっちゃ!
脳内で自分の分身たちが踊り狂う。
「ただね、私騎士になりたいんだ」
ユウラが真剣な眼差しをウォルフに向けた。
「なればいいんじゃねぇの?」
ウォルフは反射的にそう言った。
「いいの?」
ユウラが目を瞬かせた。
「良いも悪いも……なりたいのなら、なればいいんじゃねぇの?」
ごく何でもないことのようにウォルフがそう言った。
「え? でも私はあなたの許嫁でこれから
行儀見習いとしてあなたの屋敷に入らないといけないのでしょう?」
ユウラがキョトンとした顔をする。
「そんなもん、両立すればいいだけの話だろ?
うちの屋敷からアカデミーに通えば?」
そう言ったウォルフの首に、ユウラが抱きついた。
「ウォルフ大好き」
そういって微笑んだユウラに、ウォルフは完全にノックアウトされてしまった。
ゆえにこの二人の一本勝負はつまり、相打ちだ。
ウォルフもぎこちなくユウラの背に腕を回す。
「機嫌直ったか?」
ウォルフがそう問うとユウラが頷いた。
ウォルフは愛おしそうに、ユウラの額に口付けた。
「そうか、それは良かった。
じゃあ、帰ろうか」
空には一番星が輝き、日の入りと共に下弦の月が夜空に浮かぶ。
ウォルフはユウラの手を自身のコートのポケットに突っ込んだ。
信号待ちの交差点で、思わずウォルフはユウラに口付けた。
「ずっとお前のことが好きだった」
11
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる