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番外編(この章は、これより上の本編とは繋がっていない短編集です)

これは、ゲームではなく本当の世界 5(ソフィ視点)

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 そして、翌日。

「お兄様、よろしいでしょう? 私、同年代のお友達が欲しいのです」

首を振る兄に、私は不意に火の玉を打ち込んだ。これはルートヴェング家のルールである。

 相手に自らの願いを聞いてもらいたいのなら、武力(魔法攻撃)でもって従わせよ。

 ちょーっとどうかとは思うけれど、これは正真正銘ルートヴェング家に代々受け継がれているルールなのだ。

「……危ないだろ、あといきなり訪ねたら迷惑になると思うし……」

「では、外で待っています。了承が出なければ勝手に転移で帰りますから」

私だってこんなに突然訪ねたくなんてなかった。だが、仕方ないのである。実を言うと、兄は明日から王宮から呼び出しを受けて急遽魔法師団の手伝いに一ヶ月間駆り出されることになったのだ。今日行かなければ、しばらくミカエル・フィレネーゼとコンタクトを取ることは叶わない。

 広げてみせた手のひらからバチバチと火花の散っている雷を出して見せる。不満があるなら掛かってこい、の意である。

「……分かった、分かったからそれ直して。少しでも駄目だって言われたら帰ってもらうからね?」

「ふふ、ありがとうございます、お兄様」

やれやれといった感じでたぶんものすごく呆れられているが、見なかったことにしてにこりと微笑みかける。

 兄はそんな私の様子を見て諦めたのか、ほら、と手を差し出してエスコートをし、庭前に止められていた馬車に乗せてくれた。



『来ていいよ』

馬車待機を命じられて待つこと数分。兄からテレパシーが来た。……どうにかして知らせるっていうのはこれか、成る程。魔力はありえないほど消費するけど確かにこういうときは便利。今まで使い道ないじゃんテレパシーとか思ってたのが少し申し訳なくなった。

 お邪魔します、とだけ小声で断って、少々申し訳ないが兄の居場所を魔力で特定して一気にテレポートする。微妙に兄から位置をずらしたのでちょうど二人のいるドアの外だ。

「こんにちは、ミカエル・フィレネーゼ様。わたくしはソフィア・ルートヴェングと申します」

失礼しますね、とそっと扉を開き、頭を下げる。……わぁ、かわいい。サラッサラの白銀の髪にサファイヤみたいにきらきらしたきれーな瞳、顔の造形はもちろん整っている。ゲームでいくら知っていたとはいっても、実際対面したら思っていた以上にかわいい。もうポーカーフェイスで隠すのに必死だ。

「こちらこそよろしくお願いします」

「ミカエル、と呼んでもよろしくて? 私のことはソフィアでもソフィでも大丈夫よ」

「はいっ、同年代のお友達はいないのでとても嬉しいです。ソフィと呼ばせていただきますね!」

にこっと邪気のない、本当に嬉しそうな表情でそう言ってくれる。……おぉう、ゲームじゃ私に敵対的だったのに優しい。これってやっぱり疑いって杞憂だったのかしら。

「お兄様、出て行って下さる? 女の子同士でお話がしたいと思いますの」

もう見当違いの悩みを抱えていたんじゃ、とほぼ確信に至ったが、一応カマをかけることにした。

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