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学園編

自宅待機と久しぶり(?)

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「手紙が届いております」

アンナが、お母様から課題を課せられたせいでひたすらに刺繍をする羽目になっていた私のもとに、そう言って封筒を渡しに来た。刺繍には飽き飽きしていたので、いそいそと受け取って手紙を開ける。

 中には便箋が一枚。馬鹿みたいに超高級な紙が使われているのでおそらく送ってきたのは公爵家以上。そして、こういう個人的なお手紙を送れるのはその中でソフィくらいだ。ネロは仲はいいが男性なので、婚約者でもない男性と密通していると噂されることになるとそれなりに外聞が良くないからできないのだ。

 便箋をピラリと開く。中には達筆に、一行だけ。

『今日の午後、フィレネーゼ邸にお邪魔するね』

差出人は書いていないが、この字はソフィだな。

「アンナ、今日の午後、ルートヴェング公爵令嬢が屋敷にいらっしゃるので茶菓子だけ用意しておいてくれる?」

「承知いたしました」

なにか情報を得たのだろうか。外出禁止が未だ続いているせいで余儀なく家から出られなくなってしまったので詳しいことは分からないが、毎日報告に来てくれるネロによるとここ数日とても忙しそうに動き回っていたらしい。

 気長に待つか、と私は諦めたくて仕方ない刺繍をもう一度手に取り、針を動かし始めた。



 午後、だいたい私が刺繍の課題を終えたくらいの頃にソフィは私の部屋にやってきた。友だちになってから数年間、あまりにも毎日のようにしフィがうちに来すぎたせいで、正当な門から来たのにも関わらず、身分証明などは一切無しでそのまま私の部屋に通されたらしい。笑いながら報告してくれた。

 忙しいのはやはりどうやら終わったようで、上等な絹のドレスを身に纏い、濃紺の長い髪を複雑に結い上げていた。表情もリラックスしていて柔らかい。

 私はアンナにジェスチャーで人払いを命じる。さすがアンナは優秀で、部屋の中でセッティングをしていた全員のメイドをサッと部屋から退かせてくれた。

「久しぶりってほどでもないけど久しぶりやんね。いやぁ、大変だったわー」

「お疲れ様。そこ、座って。おそらくお疲れであろうソフィのために今日は特別にお茶菓子出してあげたから、好きに食べちゃってねー」

「いつも出してやー フィレネーゼのお菓子美味しいから、夫人が開催する茶会だけは毎回出るようにしてるほどなのに」

「無理ですー 毎回出してたらうちの財政が破綻するわ。ただでさえ週三ペースなのに」

ふふふーと軽口を叩いてから、そろそろ本題に入ることになった。

「さてと、セレナーデから軽く聞き出してきたで。じゃ、話していくな――」


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