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転生編
異世界にもブラック企業は健在らしい
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「さ、こっち。行くよ」
さっと手を引かれて連れていかれる。アンナが後ろで慌てて走り出しているのがちらっと見えた。……ごめんね。
話を聞いたところ、彼はどうやらこっそりと勉強中に抜けてきたらしく見つかったら怒られるらしい。だからとても人が通れるとは言い難い道なき道を通っていった。木の上、藪の僅かな隙間、城の隠し通路のようなところ。
「ちょっ、待ってくださ」
ミカエルには天性の運動神経の良さが備わっているらしい。滅茶苦茶な所を通っているのにも関わらず、傷一つない。前世とはえらい違いだ。
彼に手を引かれてただひたすら走り続ける。ミカエルの体自体は全くと言っていいほど疲れていない、むしろ元気なのだが、精神的疲労がすごい。死にそうだ。
「はい、着いた」
数分して、やっと着いたときには私は疲れはてていた。この人、ゲームを攻略していた時とは違う意味で面倒だ。ドSも困るが、こうやって変な行動を取られて振り回されるのも困る。……あ、この振り回しが、数年後に人が困るのを見て楽しむドSへと変化するのか。納得。
「王子!」
白髪の推定七十代くらいな女性が全力でこちらへ走ってきている。あの女性は多分王子の教育係なのだろう。全力で走る様子は傍から見ればシュールな絵面だ。
「またいつか」
クシャッと軽く私の頭を撫で、白髪の女性から逃げていく王子。……もう会わなくていいからね。むしろ来ないでください。
「お嬢様、ご無事でしょうか!?」
泣きそうな表情でアンナが駆け寄ってきていた。……ごめんなさい。
「ええ、大丈夫です!」
アンナを心配させないよう出来るだけ笑顔で言った。
「良かったです…… では、書類を渡しに行きましょう」
うん、行こう。……はぁ、なんでお父様に忘れていった書類を届けるだけでこんなに疲れるんだ。
「失礼いたします」
国王が仕事をしているはずの部屋へ軽くノックして遠慮なく入る。お父様はゲーム設定では国の宰相。お偉いさんなのである。
「ミカエルじゃないかい。どうしたんだ?」
「お父様が家に書類を忘れていらっしゃったからお母様に届けに来ましたの」
王子がちょっとばかり渋い感じなイケオジになったような見た目をしたやつれている男性、恐らくは王様を放ってお父様が寄ってきた。部屋に書類が積まれているのを見る限り相当な執務が溜まっているんだろう。お父様も疲れ切ったような表情をしていた。……そんな状況で王様放っておいていいの?
「イーサン…… 戻ってきてくれないか? 仕事が終わらん」
王様が遠いところを見て、虚ろな目で言った。……これがブラック企業(?)か。異世界にもあるのね。
「ああ、持ってきてくれてありがとうなミカエル。助かったよ。今日これがなかったら怒られるところだった」
相当重要だったのだろう、安心したような顔になった。
「アンナ、少し執務を手伝ってくれ」
そう言われてアンナは渋々といった感じで執務を始める。成程、超ハイスペックなアンナに手伝ってもらうことで早く終わらせようという魂胆か。……あれ、それじゃ私はどうやってアンナのいない中帰ればいいんだ? アンナが居なかったら馬車が出せないのだが。
「ミカエル・フィレネーゼ嬢」
王様に突然名を呼ばれる。
「イーサンの仕事が終わるまで城の中で自由に遊んでいてくれて構わないぞ」
まるで心を見透かしたようにそう言ってきた。……楽しそう。ワクワクしてくる。幾つになっても探検は楽しいものなのである。たとえ前世での年齢が十八を超えていたとしても。
「ではお言葉に甘えて」
自由に城の中を探索するといたしましょうか。
さっと手を引かれて連れていかれる。アンナが後ろで慌てて走り出しているのがちらっと見えた。……ごめんね。
話を聞いたところ、彼はどうやらこっそりと勉強中に抜けてきたらしく見つかったら怒られるらしい。だからとても人が通れるとは言い難い道なき道を通っていった。木の上、藪の僅かな隙間、城の隠し通路のようなところ。
「ちょっ、待ってくださ」
ミカエルには天性の運動神経の良さが備わっているらしい。滅茶苦茶な所を通っているのにも関わらず、傷一つない。前世とはえらい違いだ。
彼に手を引かれてただひたすら走り続ける。ミカエルの体自体は全くと言っていいほど疲れていない、むしろ元気なのだが、精神的疲労がすごい。死にそうだ。
「はい、着いた」
数分して、やっと着いたときには私は疲れはてていた。この人、ゲームを攻略していた時とは違う意味で面倒だ。ドSも困るが、こうやって変な行動を取られて振り回されるのも困る。……あ、この振り回しが、数年後に人が困るのを見て楽しむドSへと変化するのか。納得。
「王子!」
白髪の推定七十代くらいな女性が全力でこちらへ走ってきている。あの女性は多分王子の教育係なのだろう。全力で走る様子は傍から見ればシュールな絵面だ。
「またいつか」
クシャッと軽く私の頭を撫で、白髪の女性から逃げていく王子。……もう会わなくていいからね。むしろ来ないでください。
「お嬢様、ご無事でしょうか!?」
泣きそうな表情でアンナが駆け寄ってきていた。……ごめんなさい。
「ええ、大丈夫です!」
アンナを心配させないよう出来るだけ笑顔で言った。
「良かったです…… では、書類を渡しに行きましょう」
うん、行こう。……はぁ、なんでお父様に忘れていった書類を届けるだけでこんなに疲れるんだ。
「失礼いたします」
国王が仕事をしているはずの部屋へ軽くノックして遠慮なく入る。お父様はゲーム設定では国の宰相。お偉いさんなのである。
「ミカエルじゃないかい。どうしたんだ?」
「お父様が家に書類を忘れていらっしゃったからお母様に届けに来ましたの」
王子がちょっとばかり渋い感じなイケオジになったような見た目をしたやつれている男性、恐らくは王様を放ってお父様が寄ってきた。部屋に書類が積まれているのを見る限り相当な執務が溜まっているんだろう。お父様も疲れ切ったような表情をしていた。……そんな状況で王様放っておいていいの?
「イーサン…… 戻ってきてくれないか? 仕事が終わらん」
王様が遠いところを見て、虚ろな目で言った。……これがブラック企業(?)か。異世界にもあるのね。
「ああ、持ってきてくれてありがとうなミカエル。助かったよ。今日これがなかったら怒られるところだった」
相当重要だったのだろう、安心したような顔になった。
「アンナ、少し執務を手伝ってくれ」
そう言われてアンナは渋々といった感じで執務を始める。成程、超ハイスペックなアンナに手伝ってもらうことで早く終わらせようという魂胆か。……あれ、それじゃ私はどうやってアンナのいない中帰ればいいんだ? アンナが居なかったら馬車が出せないのだが。
「ミカエル・フィレネーゼ嬢」
王様に突然名を呼ばれる。
「イーサンの仕事が終わるまで城の中で自由に遊んでいてくれて構わないぞ」
まるで心を見透かしたようにそう言ってきた。……楽しそう。ワクワクしてくる。幾つになっても探検は楽しいものなのである。たとえ前世での年齢が十八を超えていたとしても。
「ではお言葉に甘えて」
自由に城の中を探索するといたしましょうか。
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