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第4章 呪われた森 編
第105話 アンナの状態
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『森の神殿』。
ファヌス大森林の中央にある風の精霊シルフが祀られるこの神殿は、今、災難から逃げ延びてきた森の民たちの避難先となっていた。
ある日、突然、恵み溢れる豊かな自然が、アンデット系モンスターが住む暗黒世界に一変してしまったのである。
他者と抗う術を持たぬ森の民たちが、寄る辺として頼ったのが、この神殿だったのだ。
但し、いかに大精霊が守る聖域とはいえ、秘宝『風の宝石』を失った状態のままでは、アンデット系モンスターを完全に排除する力がない。
その弱点を補って、この『森の神殿』を安全地帯へと昇華させたのは、小さな女の子。
森の民の救世主となった彼女は、神殿の奥にある一室の寝台の上で、顔をシーツに埋め肩を震わせている。
アンナは、短いながらも濃密な時間を過ごした仲間との再会に、流れ落ちる涙を止めることができなかったのだ。
それは嬉しさが半分と申し訳ない気持ちが半分。
何とも複雑な心境だった。
森の民の少女はシーツから顔を上げると、まずは謝罪から始める。
彼女は仲間を裏切り、勝手に『水の宝石』を持ち出していたのだ。
皆がどう感じているか分からないが、アンナを許されないことをしたと思い込んでいる。
「皆さん、この度は、勝手な行動をとってしまい申し訳ありませんでした」
どんな罵声でも受け入れようと思う彼女は、深々と頭を下げたまま動かなかった。
沈黙が続き、アンナにとって、とても長い時間が続く。
永久に続くと思われた時間は、人の温もりで破られた。森閑とした部屋の中、ふと人の体温を頭の上に感じたのである。
むせび泣く少女が、再び顔を上げた先には、黒髪緋眼の青年の笑顔があった。
「・・・レイヴンさん」
「分かっている」
優しさを感じるその大きな手は、二度ほどアンナの頭の上で軽く弾む。続いて、今度はその手の主が天井を見上げるのだった。
打って変わって、少々、厳しい表情をしている。
「シルフ、いるのなら答えてくれ。あんたがいながら、どうして、アンナはこんなにも疲弊しているんだ?」
風の精霊を責めるような口調は、聞いている他の仲間からすれば、冷や汗ものだが、アンナを想う気持ちは同じだ。
他の森の民たちと違って、なぜ、彼女だけが寝台に横たわるほどに、疲労していなければならないのか?その理由を知りたい。
しかし、シルフからの答えはなかった。
風の精霊が『森の神殿』の中にいないわけがない。この部屋からでは、自分の声が届かないのか?
レイヴンが、そんな事を考えていると、アンナがその疑問に答える。
「・・・きっと、私のせいです。今、心が乱れていますから・・・」
よく分からない理由に、レイヴンをはじめとした仲間たちが首を傾げた。
だが、もしかしたら、自分たちが急にやって来た事に原因があるのかもと考える。
「ごめんなさい。驚かせちゃったかな」
カーリィが声をかけると、それがきっかけとなり、アンナを囲むように仲間たちの輪ができ上るのだった。
メラ、モアナ、ライ。
いずれも、一様に心配そうな表情をしており、非難の目で見る者は、誰一人いなかった。
アンナは、物理的には来てもらったのだが、精神的には同じ場所に戻ってこられたという想いで、感極まる。
彼女の中で、張りつめていたものから、やっと解放されたのだ。
アンナは、一番、近くにいたカーリィの胸に顔を埋めて泣きじゃくる。年上で、姉貴分を自認する彼女は、そのまま優しく抱きしめるのだった。
一方、天井を見上げたままのレイヴンは、シルフからの返答を待っていたのだが、埒が明かないと諦めかける。
森の民の少女の台詞が分からずじまいだが、あの祭壇まで戻れば、何とかなるだろうと考えたのだ。
再会に喜ぶ仲間たちを残して、一人、出て行こうとした時、明らかに部屋の空気が変わったことを感じ取る。
これは、今まで火の精霊サラマンドラや水の精霊ウンディーネと会った時と酷似している雰囲気であった。
すると、やはり小さな声ながらも、凛として澄み切った声が、皆の耳に届く。風の精霊シルフの登場だった。
「私を呼ぶのは、そこの黒髪の青年ですか?」
「そうだ。俺の名は、レイヴン。先ほどの問いに対する答えを聞かせてほしい」
だが、答えはすぐには返って来なかった。それは、何ももったいぶっているからではなく、別の理由からである。
もっとも、それは後からレイヴンが知ることになるのだが・・・
しばらく待つと、回線がつながったかのようにシルフが、また話し始めた。
「今はこの結界を張るため、アンナさんの力を借りています。彼女の体力の回復がままならないのは、そのせいでしょう」
「アンナの力を借りているってのは、どういう意味だ?」
それでは、結界を張っている間、彼女の体力は回復しないことになる。
この瘴気が、いつ止まるか分からない現状では、もしかしたら、先にアンナに取り返しがつかない事が起きるかもしれないのだ。
それを避けるためには、この結界にどのように関与しているのかを知る必要がある。
「この結界を張るために『水の宝石』の力を借りています」
シルフの告白は、想定内の話だった。この部屋に来る前の祭壇には、水の精霊の秘宝が設置され、輝きを放っている。
明らかに、何がしかの力を発揮しているのは、一目瞭然であった。
「それとアンナとどういう関係があるんだ?」
「残念ながら、風の元素と水の元素の相性は、あまりよくありません。そこで、彼女の派生スキル『調和』で、バランスをとってもらっているのです」
確かに風のエレメントと水のエレメントは真逆の性質だと聞いたことがある。『水の宝石』を『風の宝石』の代用とするには、何かしらの調整が必要という事のようだ。
シルフの説明から推測すると、その調整の役割をアンナが担っている事になる。
これで、先ほどの彼女の台詞の意味が何となく解けるのだった。レイヴンたちとの再会に心が揺れたせいで、『調和』のスキルも乱れたのだろう。
おそらく、その分の負荷がシルフの方にかかり、応対することができなかったのだ。
しかし・・・
今までの説明を正しく理解すれば、やはり結界を張っている間は、スキルを使いっぱなしという事になる。とんでもない負担を、あの小さな体にかけているのだ。
慣れから、多少、最適化されたとしても、その負荷は余人に計り知れるものではない。
結界を解くという選択肢がない以上、アンナは『森の神殿』に縛りつけられたまま、永遠に体力と精神力を絞り取られる構図だ。
「何か手を考えないと駄目だな」
「・・・申し訳ございません」
シルフも現状の危うさを理解しているだけに素直に謝る。レイヴンは、何とか今のジリ貧状態を脱出する方法を見つけようと、頭を悩ますのだった。
ファヌス大森林の中央にある風の精霊シルフが祀られるこの神殿は、今、災難から逃げ延びてきた森の民たちの避難先となっていた。
ある日、突然、恵み溢れる豊かな自然が、アンデット系モンスターが住む暗黒世界に一変してしまったのである。
他者と抗う術を持たぬ森の民たちが、寄る辺として頼ったのが、この神殿だったのだ。
但し、いかに大精霊が守る聖域とはいえ、秘宝『風の宝石』を失った状態のままでは、アンデット系モンスターを完全に排除する力がない。
その弱点を補って、この『森の神殿』を安全地帯へと昇華させたのは、小さな女の子。
森の民の救世主となった彼女は、神殿の奥にある一室の寝台の上で、顔をシーツに埋め肩を震わせている。
アンナは、短いながらも濃密な時間を過ごした仲間との再会に、流れ落ちる涙を止めることができなかったのだ。
それは嬉しさが半分と申し訳ない気持ちが半分。
何とも複雑な心境だった。
森の民の少女はシーツから顔を上げると、まずは謝罪から始める。
彼女は仲間を裏切り、勝手に『水の宝石』を持ち出していたのだ。
皆がどう感じているか分からないが、アンナを許されないことをしたと思い込んでいる。
「皆さん、この度は、勝手な行動をとってしまい申し訳ありませんでした」
どんな罵声でも受け入れようと思う彼女は、深々と頭を下げたまま動かなかった。
沈黙が続き、アンナにとって、とても長い時間が続く。
永久に続くと思われた時間は、人の温もりで破られた。森閑とした部屋の中、ふと人の体温を頭の上に感じたのである。
むせび泣く少女が、再び顔を上げた先には、黒髪緋眼の青年の笑顔があった。
「・・・レイヴンさん」
「分かっている」
優しさを感じるその大きな手は、二度ほどアンナの頭の上で軽く弾む。続いて、今度はその手の主が天井を見上げるのだった。
打って変わって、少々、厳しい表情をしている。
「シルフ、いるのなら答えてくれ。あんたがいながら、どうして、アンナはこんなにも疲弊しているんだ?」
風の精霊を責めるような口調は、聞いている他の仲間からすれば、冷や汗ものだが、アンナを想う気持ちは同じだ。
他の森の民たちと違って、なぜ、彼女だけが寝台に横たわるほどに、疲労していなければならないのか?その理由を知りたい。
しかし、シルフからの答えはなかった。
風の精霊が『森の神殿』の中にいないわけがない。この部屋からでは、自分の声が届かないのか?
レイヴンが、そんな事を考えていると、アンナがその疑問に答える。
「・・・きっと、私のせいです。今、心が乱れていますから・・・」
よく分からない理由に、レイヴンをはじめとした仲間たちが首を傾げた。
だが、もしかしたら、自分たちが急にやって来た事に原因があるのかもと考える。
「ごめんなさい。驚かせちゃったかな」
カーリィが声をかけると、それがきっかけとなり、アンナを囲むように仲間たちの輪ができ上るのだった。
メラ、モアナ、ライ。
いずれも、一様に心配そうな表情をしており、非難の目で見る者は、誰一人いなかった。
アンナは、物理的には来てもらったのだが、精神的には同じ場所に戻ってこられたという想いで、感極まる。
彼女の中で、張りつめていたものから、やっと解放されたのだ。
アンナは、一番、近くにいたカーリィの胸に顔を埋めて泣きじゃくる。年上で、姉貴分を自認する彼女は、そのまま優しく抱きしめるのだった。
一方、天井を見上げたままのレイヴンは、シルフからの返答を待っていたのだが、埒が明かないと諦めかける。
森の民の少女の台詞が分からずじまいだが、あの祭壇まで戻れば、何とかなるだろうと考えたのだ。
再会に喜ぶ仲間たちを残して、一人、出て行こうとした時、明らかに部屋の空気が変わったことを感じ取る。
これは、今まで火の精霊サラマンドラや水の精霊ウンディーネと会った時と酷似している雰囲気であった。
すると、やはり小さな声ながらも、凛として澄み切った声が、皆の耳に届く。風の精霊シルフの登場だった。
「私を呼ぶのは、そこの黒髪の青年ですか?」
「そうだ。俺の名は、レイヴン。先ほどの問いに対する答えを聞かせてほしい」
だが、答えはすぐには返って来なかった。それは、何ももったいぶっているからではなく、別の理由からである。
もっとも、それは後からレイヴンが知ることになるのだが・・・
しばらく待つと、回線がつながったかのようにシルフが、また話し始めた。
「今はこの結界を張るため、アンナさんの力を借りています。彼女の体力の回復がままならないのは、そのせいでしょう」
「アンナの力を借りているってのは、どういう意味だ?」
それでは、結界を張っている間、彼女の体力は回復しないことになる。
この瘴気が、いつ止まるか分からない現状では、もしかしたら、先にアンナに取り返しがつかない事が起きるかもしれないのだ。
それを避けるためには、この結界にどのように関与しているのかを知る必要がある。
「この結界を張るために『水の宝石』の力を借りています」
シルフの告白は、想定内の話だった。この部屋に来る前の祭壇には、水の精霊の秘宝が設置され、輝きを放っている。
明らかに、何がしかの力を発揮しているのは、一目瞭然であった。
「それとアンナとどういう関係があるんだ?」
「残念ながら、風の元素と水の元素の相性は、あまりよくありません。そこで、彼女の派生スキル『調和』で、バランスをとってもらっているのです」
確かに風のエレメントと水のエレメントは真逆の性質だと聞いたことがある。『水の宝石』を『風の宝石』の代用とするには、何かしらの調整が必要という事のようだ。
シルフの説明から推測すると、その調整の役割をアンナが担っている事になる。
これで、先ほどの彼女の台詞の意味が何となく解けるのだった。レイヴンたちとの再会に心が揺れたせいで、『調和』のスキルも乱れたのだろう。
おそらく、その分の負荷がシルフの方にかかり、応対することができなかったのだ。
しかし・・・
今までの説明を正しく理解すれば、やはり結界を張っている間は、スキルを使いっぱなしという事になる。とんでもない負担を、あの小さな体にかけているのだ。
慣れから、多少、最適化されたとしても、その負荷は余人に計り知れるものではない。
結界を解くという選択肢がない以上、アンナは『森の神殿』に縛りつけられたまま、永遠に体力と精神力を絞り取られる構図だ。
「何か手を考えないと駄目だな」
「・・・申し訳ございません」
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