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第3章 魔獣の棲家 編
第49話 野外泊での再会
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イグナシア王国の王都ロドスを出て、最初に辿りつた街道沿いの街オットーで、いつの間にか『国王巡察使』の叙任を受けていたと気付いたレイヴン。
モヤモヤとした気分を抱えながら、翌朝には馬車に乗って次の街を目指した。
今度の街へは、これまでのペースで見積もると三日はかかる道のり。
進む道は王国管理で整備されている街道だけあり、途中、宿場と呼ばれる宿泊施設がいくつか存在する。一般の旅人にも安心して旅が、できるような仕組みになっていた。
但し、人気のない宿場は、なかなか路銀が落ちないせいか設備が悪い。いや、設備が悪いから人気がないのか・・・
どちらかは分からないが、特に不人気の宿場は、女性の旅人から敬遠されることが多かった。
レイヴン一行の女性の比率は五分の三だが、男の実数は、ほぼレイヴン一人。となると、女性側の意見をより多く取り入れることになる。
つまり、そういった不便な宿場はスルーして、通過することに決まるのだ。
というのも、レイヴンの『金庫』の中には、ダネス砂漠で使用したコテージが入っている。
「何もわざわざ、トイレは共同利用で、シャワーもない宿場に泊まる必要がある?」と、女性側から強く主張されれば、反論することはできなかった。
というか、言い争うのが面倒くさく、実際、レイヴンとしてはどっちでもいいのである。
同じ理由か分からないが、意外と野外泊を選択する人は多い。そういった人たちのために、テントを立てるスペースも街道には用意されていた。
街道を整備することは、物の流通を活性化させ経済を発展させる肝である。この辺のラゴス王の政治手腕は、実に見事であった。
レイヴンは馬車を進めるうち、手ごろなスペースを見つけたため、そこに女性陣待望のコテージを設置する。
これで快適に休めるかと思いきや、思わぬ邪魔が入った。
そのコテージがあまりにも立派な外観をしていたため、道行く旅行者の中には、新しくできた宿場と勘違いする人が出たのである。
本当にコテージを訪ねてくる人が、何人も続出したため、レイヴンは断るのがいちいち面倒になるのだった。その煩わしさを解消するために、表に『一泊、白金貨10枚』と書いた看板を立てる事にする。
金貨10枚でも、高級ホテル並み。それが白金貨でとなると、さすがに訪ねて来る人は皆無となった。
我ながら、いいアイデアだと思い、皆で夕食を食べているところ、玄関をノックする音が聞こえる。
日も落ちて、看板が見えづらくなったかと思ったレイヴンがドアを開けると、そこには見知った顔が並んでいた。
なんとスカイ商会の会長ニックが立っていたのである。その後ろには夫人が寝ているケントを抱きかかえていた。
「おや、ここはレイヴンさんが経営する宿場だったのか?」
「いや、完全なプライベートのコテージですよ」
ここで、三人を中に招き入れて、外にある看板について説明する。ニックと夫人は笑いながら納得するのだった。
「我々も旅の途中でね。部下の者たちがテントを用意してくれてはいるんだが、立派な建物が見えたものだがから、ついやって来てしまったんだよ」
コテージの外では、大きく立派なテント・・・というより遊牧民が使用する、ゲルに近い天幕を建ててる最中である。
おそらく完成する前にケントが寝てしまったため、こちらに避難して来たというのが本当のところだろう。
「看板に書かれている料金を支払うから、一泊させてもらえないだろうか?」
「いや、ニックさんから、お金は取れないですよ。友人として、泊まっていって下さい」
そこに空いている部屋でケントを寝かしつけてきた夫人が、リビングにやって来た。
以前、一度、市場で会ってはいるものの、ここで初めて名前を紹介される。
「メアリーです。いつぞやは、ケントの怪我を治していただき、ありがとうございました」
「すでにニックさんから、過分なお礼をいただいていますから」
ここで、レイヴンはカーリィとメラ。アンナのことも紹介した。また、冒険者ギルドやロンメルにも依頼した内容と同じこともニックに相談する。
どんな事でもいい。『梟』に関する情報であれば、何でも集めたいのだ。
その点、商人が持つ情報網というのは、相当、あてにできるはずなのである。
おおよその事情を理解したニックは、レイヴンの相談を請け負う約束をした。
『梟』という組織の思想、目的など、不明な点は多いが、四大秘宝を盗んで集めているという段階で、危険と判断したようである。
レイヴンの依頼話が終わると、次はニックの商売の話となった。
聞くと最終目的地は同じ西海岸の港町ダールド。そこで、海産物を仕入れるらしい。
但し、途中の街でも商売をしていくため、ともに行動するのは難しいそうだ。
運ぶ荷物の関係で、一日に移動できる距離も短いとの事。つまり、翌朝からもう別行動となりそうである。
それならば、もう少し話がしたいというニックのリクエストに応えて、メアリーが休んだ後も、男、二人で夜遅くまで話し込むのだった。
そのせいで、やや寝不足のレイヴンは、朝から元気のいいケントに寝ているところ、飛び乗られては、無理矢理起こされる。
「レイヴンさん、おはようございます」
「・・・おう、おはよう。分かったら、降りてくれ」
身支度をすませたレイヴンがリビングに行くと、キッチンの方から黄色い声が聞こえた。
メアリーを含めた女性たちで、朝食の準備をしているようである。
程なくして、テーブルに並べられたボリューム満点の朝食を、みんなでいただいた後、ニックが珍しい果物を提供してくれた。
南国のフルーツで、その果実はクリームのように柔らかく、口に入れるとまったりと広がる滑らかさがある。
ただ、難点は匂いだった。美味しいことは美味しいのだが、腐った玉ねぎのような匂いには、好みが分かれるところ。
提供してくれたニックも、初めて食べたそうだが、微妙な顔をしていた。
「ドリアンというらしいのですが、商品にするには工夫が必要ですね」
結局、折角、カットしたフルーツもテーブルの上に余っており、勿体ないから、レイヴンは『金庫』の中に入れておくことにする。
味自体は、非常に気に入ったのだ。
食事を終えると、一行は出発の準備を始める。ここで、スカイ商会の面々とは、一旦、お別れとなった。
「それじゃあ、俺たちは先に出ます。道中、変な奴らがいたら、露払いしておきますよ」
「うちも護衛には自信はあるけど、無駄な争いはできるだけ、避けたいからね。助かるよ」
メアリーとケントにも別れを告げて、コテージをしまうとイグナシア王国の紋章付きの馬車を走らせる。
レイヴンの体調を気にしてか、メラが御者の役を買って出てくれた。あくびを噛み殺しながら、気遣いにレイヴンは感謝する。
キャビンの中で揺られること、数時間。馬車は人気の少ない山間の道に差し掛かる。
すると、不穏な集団が現れ、囲まれるのだった。
王家の紋章をつけていながら、護衛の姿がまったく見受けられない不思議な馬車。
野盗どもは密かに監視を続けて、襲うかどうか検討していたのだが、御者が女性と分かると舌なめずりでして、姿を現したのだ。
「皆さん、お客さんが登場しました」
野盗の襲来を、メラは慌てることなく、仲間に知らせる。
車窓から覗いたレイヴンが、ざっと人数を数えると、二十人程度の野盗団だと分かった。
どうやら、先回りもされており、街道に障害物が置かれている。面倒だが、馬車を停車させて、相手をするしかないようだ。
仕方なく、一行は一戦交えるため、馬車を降りる。
そこでキャビンの中から、出てきたのは赤髪にスタイル抜群の女性と、フードを目深に被っている女の子。そして、御者をしていたショートカットの女性である。
思わぬ上玉とあって、野盗どもは歓喜に湧いた。
その前に黒髪緋眼の青年も、ちゃんと馬車を降りているのだが、レイヴンの事は誰も興味がない。
「おい、兄ちゃん。痛い目にあいたくなかったら、女と金目の物を置いて、どこかへ行け」
この野盗団の頭だろうか?ひと際、大柄な男が話しかけてきた。
大男の台詞が気にくわなければ、付き従う子分の下品な笑い声も、嫌悪感の極みとしか言いようがない。
それはカーリィの表情を見れば、一目瞭然だった。
「あんたが頭かい?」
「おう、『剛腕』のモーブさまとは、俺のこ・・・」
話している途中で、野盗の頭は力が抜けたように、その場に座り込んでしまう。
それはカーリィの白い紐に捕まり、スキルを封じられた上、脱力感に襲われたためだ。
このモーブのありさまに野盗どもは騒ぎ出すが、もう遅い。
『借りる』
呪文を唱えたレイヴンが、力一杯、殴りつけると、盗賊の頭は遥か遠くまで飛んでいくのだ。
「まだ、やる?」
その言葉を聞くや否や、盗賊どもは一斉に逃げだそうとする。
ところがレイヴンは、『金庫』の中から壁を出して、盗賊たちの退路を塞ぐのだ。
「逃げる前にやることあるだろ?」
そう言うと、盗賊どもに街道にある障害物の撤去を命じる。
強い者には従順になる習性があるのか、野盗どもは素直に従って、自分たちが置いた木や瓦礫を取り除く作業を始めた。
作業が終わると、レイヴンは野盗どもを一列に並べて説教を始める。最後には『剛腕』のまま、全員にデコピンを喰らわせた。
「いいか、この後、スカイ商会のキャラバンも通る。もし、手を出したら、全員、命はないからな」
ここで、レイヴンは『国王巡察使』の襟章を見せる。
賊どもには、それが何の役職かは分かりっこないが、脅しには十分な効果があったようだ。
王国の特殊任務を与えられている腕利きに、睨みを利かされたと思い込んでいる。
「じゃあ、解散しろ」
その号令で、野盗どもは、姿かたちが見えなくなるところまで逃げていくのだった。
これで、ニックたちも安心だろうと思うと、再び、キャビンの中に入り込む。
メラには申し訳ないが、次の休憩地点まで休むことを決めるレイヴンだった。
モヤモヤとした気分を抱えながら、翌朝には馬車に乗って次の街を目指した。
今度の街へは、これまでのペースで見積もると三日はかかる道のり。
進む道は王国管理で整備されている街道だけあり、途中、宿場と呼ばれる宿泊施設がいくつか存在する。一般の旅人にも安心して旅が、できるような仕組みになっていた。
但し、人気のない宿場は、なかなか路銀が落ちないせいか設備が悪い。いや、設備が悪いから人気がないのか・・・
どちらかは分からないが、特に不人気の宿場は、女性の旅人から敬遠されることが多かった。
レイヴン一行の女性の比率は五分の三だが、男の実数は、ほぼレイヴン一人。となると、女性側の意見をより多く取り入れることになる。
つまり、そういった不便な宿場はスルーして、通過することに決まるのだ。
というのも、レイヴンの『金庫』の中には、ダネス砂漠で使用したコテージが入っている。
「何もわざわざ、トイレは共同利用で、シャワーもない宿場に泊まる必要がある?」と、女性側から強く主張されれば、反論することはできなかった。
というか、言い争うのが面倒くさく、実際、レイヴンとしてはどっちでもいいのである。
同じ理由か分からないが、意外と野外泊を選択する人は多い。そういった人たちのために、テントを立てるスペースも街道には用意されていた。
街道を整備することは、物の流通を活性化させ経済を発展させる肝である。この辺のラゴス王の政治手腕は、実に見事であった。
レイヴンは馬車を進めるうち、手ごろなスペースを見つけたため、そこに女性陣待望のコテージを設置する。
これで快適に休めるかと思いきや、思わぬ邪魔が入った。
そのコテージがあまりにも立派な外観をしていたため、道行く旅行者の中には、新しくできた宿場と勘違いする人が出たのである。
本当にコテージを訪ねてくる人が、何人も続出したため、レイヴンは断るのがいちいち面倒になるのだった。その煩わしさを解消するために、表に『一泊、白金貨10枚』と書いた看板を立てる事にする。
金貨10枚でも、高級ホテル並み。それが白金貨でとなると、さすがに訪ねて来る人は皆無となった。
我ながら、いいアイデアだと思い、皆で夕食を食べているところ、玄関をノックする音が聞こえる。
日も落ちて、看板が見えづらくなったかと思ったレイヴンがドアを開けると、そこには見知った顔が並んでいた。
なんとスカイ商会の会長ニックが立っていたのである。その後ろには夫人が寝ているケントを抱きかかえていた。
「おや、ここはレイヴンさんが経営する宿場だったのか?」
「いや、完全なプライベートのコテージですよ」
ここで、三人を中に招き入れて、外にある看板について説明する。ニックと夫人は笑いながら納得するのだった。
「我々も旅の途中でね。部下の者たちがテントを用意してくれてはいるんだが、立派な建物が見えたものだがから、ついやって来てしまったんだよ」
コテージの外では、大きく立派なテント・・・というより遊牧民が使用する、ゲルに近い天幕を建ててる最中である。
おそらく完成する前にケントが寝てしまったため、こちらに避難して来たというのが本当のところだろう。
「看板に書かれている料金を支払うから、一泊させてもらえないだろうか?」
「いや、ニックさんから、お金は取れないですよ。友人として、泊まっていって下さい」
そこに空いている部屋でケントを寝かしつけてきた夫人が、リビングにやって来た。
以前、一度、市場で会ってはいるものの、ここで初めて名前を紹介される。
「メアリーです。いつぞやは、ケントの怪我を治していただき、ありがとうございました」
「すでにニックさんから、過分なお礼をいただいていますから」
ここで、レイヴンはカーリィとメラ。アンナのことも紹介した。また、冒険者ギルドやロンメルにも依頼した内容と同じこともニックに相談する。
どんな事でもいい。『梟』に関する情報であれば、何でも集めたいのだ。
その点、商人が持つ情報網というのは、相当、あてにできるはずなのである。
おおよその事情を理解したニックは、レイヴンの相談を請け負う約束をした。
『梟』という組織の思想、目的など、不明な点は多いが、四大秘宝を盗んで集めているという段階で、危険と判断したようである。
レイヴンの依頼話が終わると、次はニックの商売の話となった。
聞くと最終目的地は同じ西海岸の港町ダールド。そこで、海産物を仕入れるらしい。
但し、途中の街でも商売をしていくため、ともに行動するのは難しいそうだ。
運ぶ荷物の関係で、一日に移動できる距離も短いとの事。つまり、翌朝からもう別行動となりそうである。
それならば、もう少し話がしたいというニックのリクエストに応えて、メアリーが休んだ後も、男、二人で夜遅くまで話し込むのだった。
そのせいで、やや寝不足のレイヴンは、朝から元気のいいケントに寝ているところ、飛び乗られては、無理矢理起こされる。
「レイヴンさん、おはようございます」
「・・・おう、おはよう。分かったら、降りてくれ」
身支度をすませたレイヴンがリビングに行くと、キッチンの方から黄色い声が聞こえた。
メアリーを含めた女性たちで、朝食の準備をしているようである。
程なくして、テーブルに並べられたボリューム満点の朝食を、みんなでいただいた後、ニックが珍しい果物を提供してくれた。
南国のフルーツで、その果実はクリームのように柔らかく、口に入れるとまったりと広がる滑らかさがある。
ただ、難点は匂いだった。美味しいことは美味しいのだが、腐った玉ねぎのような匂いには、好みが分かれるところ。
提供してくれたニックも、初めて食べたそうだが、微妙な顔をしていた。
「ドリアンというらしいのですが、商品にするには工夫が必要ですね」
結局、折角、カットしたフルーツもテーブルの上に余っており、勿体ないから、レイヴンは『金庫』の中に入れておくことにする。
味自体は、非常に気に入ったのだ。
食事を終えると、一行は出発の準備を始める。ここで、スカイ商会の面々とは、一旦、お別れとなった。
「それじゃあ、俺たちは先に出ます。道中、変な奴らがいたら、露払いしておきますよ」
「うちも護衛には自信はあるけど、無駄な争いはできるだけ、避けたいからね。助かるよ」
メアリーとケントにも別れを告げて、コテージをしまうとイグナシア王国の紋章付きの馬車を走らせる。
レイヴンの体調を気にしてか、メラが御者の役を買って出てくれた。あくびを噛み殺しながら、気遣いにレイヴンは感謝する。
キャビンの中で揺られること、数時間。馬車は人気の少ない山間の道に差し掛かる。
すると、不穏な集団が現れ、囲まれるのだった。
王家の紋章をつけていながら、護衛の姿がまったく見受けられない不思議な馬車。
野盗どもは密かに監視を続けて、襲うかどうか検討していたのだが、御者が女性と分かると舌なめずりでして、姿を現したのだ。
「皆さん、お客さんが登場しました」
野盗の襲来を、メラは慌てることなく、仲間に知らせる。
車窓から覗いたレイヴンが、ざっと人数を数えると、二十人程度の野盗団だと分かった。
どうやら、先回りもされており、街道に障害物が置かれている。面倒だが、馬車を停車させて、相手をするしかないようだ。
仕方なく、一行は一戦交えるため、馬車を降りる。
そこでキャビンの中から、出てきたのは赤髪にスタイル抜群の女性と、フードを目深に被っている女の子。そして、御者をしていたショートカットの女性である。
思わぬ上玉とあって、野盗どもは歓喜に湧いた。
その前に黒髪緋眼の青年も、ちゃんと馬車を降りているのだが、レイヴンの事は誰も興味がない。
「おい、兄ちゃん。痛い目にあいたくなかったら、女と金目の物を置いて、どこかへ行け」
この野盗団の頭だろうか?ひと際、大柄な男が話しかけてきた。
大男の台詞が気にくわなければ、付き従う子分の下品な笑い声も、嫌悪感の極みとしか言いようがない。
それはカーリィの表情を見れば、一目瞭然だった。
「あんたが頭かい?」
「おう、『剛腕』のモーブさまとは、俺のこ・・・」
話している途中で、野盗の頭は力が抜けたように、その場に座り込んでしまう。
それはカーリィの白い紐に捕まり、スキルを封じられた上、脱力感に襲われたためだ。
このモーブのありさまに野盗どもは騒ぎ出すが、もう遅い。
『借りる』
呪文を唱えたレイヴンが、力一杯、殴りつけると、盗賊の頭は遥か遠くまで飛んでいくのだ。
「まだ、やる?」
その言葉を聞くや否や、盗賊どもは一斉に逃げだそうとする。
ところがレイヴンは、『金庫』の中から壁を出して、盗賊たちの退路を塞ぐのだ。
「逃げる前にやることあるだろ?」
そう言うと、盗賊どもに街道にある障害物の撤去を命じる。
強い者には従順になる習性があるのか、野盗どもは素直に従って、自分たちが置いた木や瓦礫を取り除く作業を始めた。
作業が終わると、レイヴンは野盗どもを一列に並べて説教を始める。最後には『剛腕』のまま、全員にデコピンを喰らわせた。
「いいか、この後、スカイ商会のキャラバンも通る。もし、手を出したら、全員、命はないからな」
ここで、レイヴンは『国王巡察使』の襟章を見せる。
賊どもには、それが何の役職かは分かりっこないが、脅しには十分な効果があったようだ。
王国の特殊任務を与えられている腕利きに、睨みを利かされたと思い込んでいる。
「じゃあ、解散しろ」
その号令で、野盗どもは、姿かたちが見えなくなるところまで逃げていくのだった。
これで、ニックたちも安心だろうと思うと、再び、キャビンの中に入り込む。
メラには申し訳ないが、次の休憩地点まで休むことを決めるレイヴンだった。
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