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第7段階

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今日は漫画の発売日。好きな作家さんの新作と、続きが気になって仕方なかった画家ストの新刊。
大学の帰りに本屋に寄って、表紙が気になって衝動買いした2冊の計4冊を手にルンルン気分で帰宅した時だった。
突然屈強な大男3人に囲まれて、身動きが取れなくなる。

「え、なんですか……?」

もちろん身に覚えはある。深田さん関係だろう。でも本人がいらっしゃらない。しかもこの人たち、袖口から包帯見えてたり顔に痣ができてたり、なんかすごく手負の方々っぽいんですが。

「悪いな、追川さん。こうでもしねぇと安心して話せなくてな」

この声は……あとちらっと見えた綺麗な頭皮は、榎木さん?
ちょっとおっしゃってることの意味がよくわからないけど、とにかく私に用事があるらしい。
単に話があるなら普通に呼び止めていただければ、榎木さんなら逃げずに足を止めますけど……むしろ今はめちゃくちゃ逃げたい。何この厳戒態勢。私、妄想力以外の力は前世に置いてきてますけど?

「えっと、何の御用でしょうか……?」
「移動しながら話す。乗ってくれ」

そう言われて示されたのは、見覚えのある黒い車。これは、乗るしかないのか。うん、まあこの屈強な男性×3プラス榎木さんから逃げられる気しないし。ごねたら実力行使される。
諦めて乗ると、すぐに車が動き出した。
助手席に榎木さん。私の両サイドは屈強な男で固められる。
本当になぜこんな厳戒態勢が?私何かしましたっけ?
静まり返る車内。何となく全員の雰囲気が暗いような……そして向けられている視線が非常に警戒心剥き出しなんですけど。非常に居心地が悪い。
誰か、というか榎木さんそろそろ用事とやらを……と榎木さんを見る。

「頭が刺された」
「……え?」

刺された?え?
意味はわかるんだけど頭に入ってこない。胸が苦しい。どうやら息を止めてしまっていたようだ。心臓がバクバク変な音を立てている。

「傘下の組織の奴らが裏切った。車から降りたら出迎えのふりしていきなり刺してきやがったんだよ」

その声には怒りが滲んでいる。この雰囲気の理由はそれか。

「ふ、深田さんは大丈夫なんですか!?」
「さっき手術が終わったところだ」

ということは、まだ最悪の事態ではない……?
そんな漫画みたいな展開起こるの?まあ、深田さんだしな……

「でも、どうしてそこで私が出てくるんですか」

刺されたって言われても、私にできることなんて祈ること以外ないんですが。知り合いが刺されるなんて初めてだから、どう心配すればいいのかもわからないのに。

「意識を失う直前、俺にあんたを呼んでくるように言ったんだ。心当たりは?」
「え……それは……」

正直、ある。いやでも、命の瀬戸際に気にするところかそれはという思いもある。
でも私に関連する事象なんて、関連しかないよね。

「もしかして、『燃やせ』とかおっしゃってました?」

恐る恐る尋ねてみると、榎木さんは目を見開き、運転手と意味深な目配せを交わす。これは、正解か?

「深田さん、そんなにまずい状況なんですか」
「……ああ。刺し傷が内臓に達してる」

それは……怪我のこととかよくわからないけど、重症なのはわかる。太い血管と内臓を逸れてたから運良く……は、本当に運がいいんだ。
全身に冷水を浴びせられたようなって、こういう感覚なんだな。全身がスッと冷えて、指先がピリピリ震える。

「頭があんたに何かを頼んだってのは、間違い無さそうだな」

榎木さんのその言葉で車内の警戒が少し緩くなる。けれど私の身体の震えは治まらなかった。
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