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第1段階
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コンビニ事件から2週間後、そんなこともあったなぁと記憶も薄れてくる頃のはずだけど。
「美耶が昨日上げてた短編さぁ、あれ続き無いの?1話完結ってなってたから、考えてない?」
大学の講義の帰り道、友人の白戸ののかがスマホを眺めながら言う。
「あー、あれね、息抜きの落書きみたいなもんだから……」
ねこみやの新作短編。「交錯ファイリング」という、平凡な男子校生が道ですれ違ったヤバそうな男と派手にぶつかり、手荷物が交換されてしまう。その中身は拳銃。平凡だった男子校生はそのまま極道の争いに巻き込まれ、なんやかんやで気に入られ愛されるという、冒頭だけはつい最近経験したような気がしなくもないシュチュエーションである。
「出てくるヤクザの方、なんかヤバそうでヤバいよね。何あの頬の傷痕。設定?過去設定ありのキャラデザなの?」
「傷は、なんとなく……」
現実の方で突然降って沸いたシュチュエーション、その際の最重要人物がそのまんまモデルになってる。一回本物見た後にわざわざ劣化版のキャラデザにしちゃうの勿体無いし……思い返してみても、ヤクザキャラとして完成されてたもんあの人。
だから頬の傷とか目付きの悪さを参考にさせていただきました。傷の位置はなんとなく左右逆にしたけど。
まあ今時顔に傷のある目付き悪い設定のヤクザなんてあっちこちに転がってるでしょう。そもそもヤクザさんがBL、それも私の作品読んでるわけないし。
「続きありそうな終わり方だったよね」
「勢いだったから、正直続き浮かばないんだよね。溺愛エンドは全てを丸く終着させる。まあでも確かにあれは雑か……」
武器の運び屋と勘違いされて敵対組織に捕まったところを助けられ、匿われたその夜に食べられて気に入られて終わり。冒頭の設定を使いたかっただけというのは否めない。
「私はハピエンならなんでもいいよ」
ののかはそう言って笑う。ののかは基本的に読む専門だけど、こうして色々話の合ういい友達だ。
「そういえば黒きつね先生の投稿見た?あれ一枚イラストだけど、フートとトゥーナの関係が一枚に収まってて、神っ……ってなったよね」
「いいよね黒きつね先生……イベント参加するっぽいから、絶対回らな、きゃ……」
「美耶、どうしたの?」
私が目を見開いて固まったので、ののかが心配そうに腕を突いてくる。
視線の先には、なんだか目つきの悪いマスクの男が立っていた。
校門に寄りかかるようにして立っているその人と目が合う。
「何あの人、なんかめっちゃこっち睨んでない?学務の人呼ぶ?ってか、どっかで見たような……」
「そ、そう……」
見たことがあるも、あの目付きは先ほどの創作BL短編に出したヤクザさんのモデルのご本人!?え、私何かしましたっけ。確かに書類入れ替わったときにあちらの内容もちらっと見てしまったけど、内容ほぼ記憶にないし、ちゃんと全部返したは、ず……
その時、やたらとタイミング良くスマホの通知音が鳴る。
ポケットからスマホを出して通知の内容を確認。
『yaakuuzさんからのメッセージ』と、ねこみやのTmitterアカウントに見慣れないIDからの通知が。恐る恐る開けてみる。
『話がある。そこの喫茶店に来い』
うわぁぁぁぁっ!!
口に出して叫ばなかったこと褒めたい。口元に手を当てて、反対の拳を握り締めてたらののかに変な目で見られた。
変出者、もといヤクザらしき人は私に向かって目配せをして、喫茶店のある方向を指差して歩き去っていった。
「あ、いなくなった。そうだ、レポートやるならウチ来て一緒にやらない?美耶の好きなサークルの新刊、通販在庫あったからポチったの、届いてるよ」
……と、会話が普通に戻っていったけど、推しサークルの新刊、滅茶苦茶気になるけど、レポートもやらなきゃいけないけど、これは無視してはいけないやつなのでは。
ねこみやのアカウントに直接メッセージが来たという事は、ヤクザさん相手に私、垢バレしたの?ついでに大学の校門前にいたって事は、個人情報も筒抜け?
「ののか、ごめん。ちょっと今日は人生の分岐点っぽいから……」
「え?」
私は校門の方へ駆け出した。
「レポートはソロで頑張る。でも新刊読み終わったら見せてっ!」
そう叫びながら振り返ると、ののかは両手で丸を作ってくれる。持つべきものは良い友だ……今度の誕生日は推しカラーの何かとイラストを差し上げよう。
……この先、生き延びることができたなら。
なお、この数分後にののかから『そういえば今日は推しの作家さんの生配信あるって言ってたよね。楽しんで~』というメッセージが届いていた。
勘違いしてくれてありがとう。けどメッセージに気付いたのは夜中だったので、生配信はしっかり見逃しました。
「美耶が昨日上げてた短編さぁ、あれ続き無いの?1話完結ってなってたから、考えてない?」
大学の講義の帰り道、友人の白戸ののかがスマホを眺めながら言う。
「あー、あれね、息抜きの落書きみたいなもんだから……」
ねこみやの新作短編。「交錯ファイリング」という、平凡な男子校生が道ですれ違ったヤバそうな男と派手にぶつかり、手荷物が交換されてしまう。その中身は拳銃。平凡だった男子校生はそのまま極道の争いに巻き込まれ、なんやかんやで気に入られ愛されるという、冒頭だけはつい最近経験したような気がしなくもないシュチュエーションである。
「出てくるヤクザの方、なんかヤバそうでヤバいよね。何あの頬の傷痕。設定?過去設定ありのキャラデザなの?」
「傷は、なんとなく……」
現実の方で突然降って沸いたシュチュエーション、その際の最重要人物がそのまんまモデルになってる。一回本物見た後にわざわざ劣化版のキャラデザにしちゃうの勿体無いし……思い返してみても、ヤクザキャラとして完成されてたもんあの人。
だから頬の傷とか目付きの悪さを参考にさせていただきました。傷の位置はなんとなく左右逆にしたけど。
まあ今時顔に傷のある目付き悪い設定のヤクザなんてあっちこちに転がってるでしょう。そもそもヤクザさんがBL、それも私の作品読んでるわけないし。
「続きありそうな終わり方だったよね」
「勢いだったから、正直続き浮かばないんだよね。溺愛エンドは全てを丸く終着させる。まあでも確かにあれは雑か……」
武器の運び屋と勘違いされて敵対組織に捕まったところを助けられ、匿われたその夜に食べられて気に入られて終わり。冒頭の設定を使いたかっただけというのは否めない。
「私はハピエンならなんでもいいよ」
ののかはそう言って笑う。ののかは基本的に読む専門だけど、こうして色々話の合ういい友達だ。
「そういえば黒きつね先生の投稿見た?あれ一枚イラストだけど、フートとトゥーナの関係が一枚に収まってて、神っ……ってなったよね」
「いいよね黒きつね先生……イベント参加するっぽいから、絶対回らな、きゃ……」
「美耶、どうしたの?」
私が目を見開いて固まったので、ののかが心配そうに腕を突いてくる。
視線の先には、なんだか目つきの悪いマスクの男が立っていた。
校門に寄りかかるようにして立っているその人と目が合う。
「何あの人、なんかめっちゃこっち睨んでない?学務の人呼ぶ?ってか、どっかで見たような……」
「そ、そう……」
見たことがあるも、あの目付きは先ほどの創作BL短編に出したヤクザさんのモデルのご本人!?え、私何かしましたっけ。確かに書類入れ替わったときにあちらの内容もちらっと見てしまったけど、内容ほぼ記憶にないし、ちゃんと全部返したは、ず……
その時、やたらとタイミング良くスマホの通知音が鳴る。
ポケットからスマホを出して通知の内容を確認。
『yaakuuzさんからのメッセージ』と、ねこみやのTmitterアカウントに見慣れないIDからの通知が。恐る恐る開けてみる。
『話がある。そこの喫茶店に来い』
うわぁぁぁぁっ!!
口に出して叫ばなかったこと褒めたい。口元に手を当てて、反対の拳を握り締めてたらののかに変な目で見られた。
変出者、もといヤクザらしき人は私に向かって目配せをして、喫茶店のある方向を指差して歩き去っていった。
「あ、いなくなった。そうだ、レポートやるならウチ来て一緒にやらない?美耶の好きなサークルの新刊、通販在庫あったからポチったの、届いてるよ」
……と、会話が普通に戻っていったけど、推しサークルの新刊、滅茶苦茶気になるけど、レポートもやらなきゃいけないけど、これは無視してはいけないやつなのでは。
ねこみやのアカウントに直接メッセージが来たという事は、ヤクザさん相手に私、垢バレしたの?ついでに大学の校門前にいたって事は、個人情報も筒抜け?
「ののか、ごめん。ちょっと今日は人生の分岐点っぽいから……」
「え?」
私は校門の方へ駆け出した。
「レポートはソロで頑張る。でも新刊読み終わったら見せてっ!」
そう叫びながら振り返ると、ののかは両手で丸を作ってくれる。持つべきものは良い友だ……今度の誕生日は推しカラーの何かとイラストを差し上げよう。
……この先、生き延びることができたなら。
なお、この数分後にののかから『そういえば今日は推しの作家さんの生配信あるって言ってたよね。楽しんで~』というメッセージが届いていた。
勘違いしてくれてありがとう。けどメッセージに気付いたのは夜中だったので、生配信はしっかり見逃しました。
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