お隣さんはヤのつくご職業

古亜

文字の大きさ
上 下
48 / 67

貴公子の微笑み2

しおりを挟む
「あ、佐伯さん。急だったのにありがとう」

待ち合わせ場所に来てみると、すでに到着していた佐々木さんがその眩しい微笑みで迎えてくれた。

「いえ、こちらこそ楽しみです」

なんだか緊張する。どうしよう顔が見れない。
今さらだけどどうして私?たまたま廊下で会ったからみたいだけど、佐々木さんの1日を私が一緒でいいのかな。
確かに佐々木さんのことは好きだけど憧れに近い好きというか……

「佐伯さん、大丈夫?いきなり誘ったからね、もし体調悪いとかなら無理しなくていいよ?」
「いえ、大丈夫です。その、カフェとかあまり行かないので……」

せっかくの土日はカフェに時間を使うより寝ていたいし。今日は別だけど!

「ならいいけど、予約の時間もあるし行こうか」

佐々木さんは腕時計を確認して進み始める。
それを追いかける感じになる……かと思いきや佐々木さんは私の横に並んで歩いてくれた。

「貴重な休みにごめんね。一緒に行く予定だった姉さんが彼氏とケンカしたとかで急に一人旅行っちゃって」
「それは……大変ですね」

一人旅って、行動力すごいなお姉さん。私なんて年に数回の帰省が旅行扱いですよ。

「まあいい温泉でも入って美味しいもの食べて寝れば元に戻ると思うんだけどね」

そう言って佐々木さんは困ったように笑う。この人はどんな笑い顔でも様になるから不思議だ。さすが王子。

「佐伯さんは普段休みの日って何してるの?」

寝て、起きて食べてスマホいじってまた寝てます!
……なんてド正直に言えるわけがない。そう話題、話題を広げないと。
私昨日の夜何してたっけ?えっと……ええっと……

「ごはん食べてお風呂入って……じゃなくて、雑誌読んだりとかですね」

前半趣味とかでもなく単に生活習慣。とりあえず事実を言っておこう。

『とりあえずこれでも読んどけ』

そう言って吉崎さんに手渡された本。よく本屋さんや喫茶店の雑誌コーナーで見かける某雑誌、LemonPageのお弁当特集号だった。
そういえば実家にも何冊か置いてある。お正月料理とかおもてなし料理の参考資料として母が読んでいた、奥様の強い味方……吉崎さんも読んでたのか。うん、違和感ない。
渡されたそれは夜のうちにひと通り読んで、お弁当作りのポイントとかは抑えた。さあ、どんとこい!

「そう言えば今日行くところなんだけど、パンケーキとプリンが有名なんだって。佐伯さんはどっちが好き?」

あれ……違った?
まあいっか。あんまり突っ込まれてもボロが出るだけだし、できることなら料理の話題は避けたほうがいいか。
そうしてカフェの話と仕事の話をしていたらそのカフェに着いた。
お洒落な雰囲気の入り口には順番待ちの列ができている。置かれているベンチは埋まっていて立って待っている人もいるくらいだ。
これ、並んだらどれくらい待つんだろう。今回は佐々木さんが予約してたみたいだけど、こういうカフェが回転の良いイメージはないから軽く1時間とか?私にはそこまでできないな。プリンならコンビニで買う。あの吉崎さんもコンビニのプリンで十分美味しいって言ってたし。

「どうぞ、こちらです」

佐々木さんが店員さんに何かを言ってからしばらくして、可愛らしい感じのエプロンの店員さんが奥の予約の席に案内してくれた。
案内された席に座って佐々木さんと向かい合う。
もしかしなくてもすごくデートっぽい。いや、佐々木さんとはそんなことないんだけど。おこがましいなと思っているけど。
変な緊張を紛らわすために店員さんに手渡されたメニューを眺める。
これは人気メニューの一覧かな。
フレッシュフルーツ&ホイップタワーパンケーキ、ココア×ベリー4種のパンケーキ、チョコミント×ミントパンケーキ、キヌア&全粒粉のヘルシーパンケーキ、スピルリナ&国産蜂蜜のもっちりパンケーキ。トッピングにはチョコソースに追加ホイップ、ココナッツパウダー、蜂蜜、ビーポーレン……などなど。
うん、いくつか全く未知の言語があった。
キヌアはギリギリ聞いたことあるけど、スピルリナ?ビーポーレン?流行りのスーパーフードってやつなのか。ここで一回食べるだけで肌綺麗とかあり得るのかな。まあ意識高い人は棚に常備してあらゆるものにかけて食べているのかもしれない。
確かに食事は美容と大いに関係してる。最近それを痛感しているから。だって吉崎さんにごはん作ってもらうようになってから明かに体の調子がいいし肌荒れとかニキビも減った。
……とまあ関係ないこと考えてないで、食べるもの決めよう。写真を見る限りパンケーキは生クリーム多くてボリュームもある。夕ご飯のこと考えるとやめた方がいいかな。じゃあプリンにしよう。お洒落なのよりもわかりやすいやつ……これかな。

「決まった?」
「私はこの玉子のプリンと紅茶にします」
「そうなんだ。僕はどうしようかな……パンケーキで悩んでるんだけど」

どうやら佐々木さんはあのよくわからないけどスーパーフードを使ったパンケーキで悩んでいらっしゃるっぽい。
そのまま数分間悩んだ末に佐々木さんはスピルリナとやらが入ったパンケーキに決めていた。
そのオーダーを伝えてしばらくすると、大きな白いお皿が運ばれてきた。
パンケーキかな、そう思っていたらそのお皿は私の目の前に置かれた。

「おぉ……」

そんな女子力の欠片もない声を出してしまう。
ここはかわいいー!とか、すごーいとか、女子っぽい反応するべきだったのでは。今さら遅いけど。
てっきりプリンだけかと思っていたら、色とりどりのフルーツがお皿の上に散りばめられて、プリンが入っていると思しきカップはホイップクリームがいっぱい乗って、さらに季節限定の苺ソースがかかっている……という、想像の数倍すごいプリンが運ばれてきた。
そのすぐ後に佐々木さんが注文したパンケーキが運ばれてきた。なんだか生地が緑色をしている。スピルリナって抹茶とかお茶の一種なのかな。
これにもホイップクリームがふんだんに乗っている。普通でこれって、ホイップタワーとやらはいったいどれだけクリームが乗っているんだろうか。

「SNSに載ってたのは見てたけど、実物お洒落だね。食べる前に写真撮らなきゃ」

そう言って写真を撮る始める佐々木さん。角度とか私のプリンも映るようにとか、とにかくこだわっているのが窺える。周りのシャッター音が途切れることがないから、ここではこれが普通なのかな……?
とりあえず私も撮っておこう。一枚だけ。
うん、微妙だね。写真撮るのとかきっと向いていないに違いない。

「佐伯さん、悪いんだけど少しこっち向けてもらってもいい?」
「あ、はい」

……佐々木さん、私よりよっぽど意識が高いのでは。まあ、知ってましたけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

FLORAL-敏腕社長が可愛がるのは路地裏の花屋の店主-

さとう涼
恋愛
恋愛を封印し、花屋の店主として一心不乱に仕事に打ち込んでいた咲都。そんなある日、ひとりの男性(社長)が花を買いにくる──。出会いは偶然。だけど咲都を気に入った彼はなにかにつけて咲都と接点を持とうとしてくる。 「お昼ごはんを一緒に食べてくれるだけでいいんだよ。なにも難しいことなんてないだろう?」 「でも……」 「もしつき合ってくれたら、今回の仕事を長期プランに変更してあげるよ」 「はい?」 「とりあえず一年契約でどう?」 穏やかでやさしそうな雰囲気なのに意外に策士。最初は身分差にとまどっていた咲都だが、気づいたらすっかり彼のペースに巻き込まれていた。 ☆第14回恋愛小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございました。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...