5 / 67
お隣さんは吹き飛んだ5
しおりを挟む
「うぉぉ……」
結果、飲みすぎた。
遅刻ギリギリに起きて、二日酔いの頭痛と戦いながら私は会社にダッシュする。
なんとか滑り込んでタイムカードを押す。始業1分前、危なかった。
「はぁ、間に合った……」
デスクに座って思わずそう呟いたら、となりの席の山下くんがなんとも冷めた目で私を見ていた。
「間に合ったじゃないですよ。ただでさえ月末で忙しいんですから、もっと時間に余裕を持ってください」
「す、すみません……」
遅刻しかけたの今日が初めてなんですけど、なんてこのピリピリした状況で言えるはずもなく、私は素直に謝った。まあ、夜中の2時まで飲んでいたのはさすがにまずかったかなと思うけど。
お隣さんが次から次へとおつまみを作って持ってきてくれるものだから、ついついお酒が進んでしまったのだ。
軽く炙った海苔にチーズを挟んだやつ、冷奴、即席のキュウリの漬物、ふわっふわのだし巻き卵……
途中で私の冷蔵庫の中のお酒がなくなったので、その後はお隣さんが出してきた日本酒で宴は続いた。
何かを話したりは特にしていない。たぶん私がひたすら仕事の愚痴をヤクザさん2人にしていただけ。
そう、今思うとあのお2人はなんだか聞き上手だったんだよなぁ。たぶん自分たちのことは喋りにくかったんだろうけど。
このところ忙しすぎて誰かと飲むなんてしてなかったから、聞かれてもいないのにぺらぺら喋ってしまった。
……今さらながら、なんだかすみませんでした。
おかげで二日酔いだけど心は結構すっきりしている。さすがに冷静になって今考えると、もう一度あの方々と飲むということはないだろうけど、割と楽しかった。
大破した壁については、ヤクザさんたちの馴染みの左官屋さんの人が直してくれるとのこと。ヤクザさんの馴染みってなんか怖いけど、腕は確かでバレないようにこそっと直してくれるらしい。
大家さんにバレて私までとばっちり受けたらたまらないし、ヤクザさんと仲良くお酒飲んでたとか言えないので、壁についてはお任せした。まあ、私は壁については何も悪くないですけど!
そんなことを思いながら、私はキーボードを叩く。
うう、二日酔い兼睡眠不足にこれ辛い。
「……佐伯さん、さっきの資料フォントサイズ合ってなかったから修正してよ」
「はい」
「佐伯、メールの返信は終わったのか?」
「はい、今書いてます」
「ちょっと誰か外線出てくれない?」
「はい」
はいはい言いすぎて、何か言われたら自動的にそう返事をしてしまいそうだ。いかんいかん、切り替えないと。
フロアの自動販売機で買った水をぐいっと飲んで、デスクの引き出しに入れてあったのど飴を口に放り込んで噛み砕く。
そうして私は再び作業に戻った。
結果、飲みすぎた。
遅刻ギリギリに起きて、二日酔いの頭痛と戦いながら私は会社にダッシュする。
なんとか滑り込んでタイムカードを押す。始業1分前、危なかった。
「はぁ、間に合った……」
デスクに座って思わずそう呟いたら、となりの席の山下くんがなんとも冷めた目で私を見ていた。
「間に合ったじゃないですよ。ただでさえ月末で忙しいんですから、もっと時間に余裕を持ってください」
「す、すみません……」
遅刻しかけたの今日が初めてなんですけど、なんてこのピリピリした状況で言えるはずもなく、私は素直に謝った。まあ、夜中の2時まで飲んでいたのはさすがにまずかったかなと思うけど。
お隣さんが次から次へとおつまみを作って持ってきてくれるものだから、ついついお酒が進んでしまったのだ。
軽く炙った海苔にチーズを挟んだやつ、冷奴、即席のキュウリの漬物、ふわっふわのだし巻き卵……
途中で私の冷蔵庫の中のお酒がなくなったので、その後はお隣さんが出してきた日本酒で宴は続いた。
何かを話したりは特にしていない。たぶん私がひたすら仕事の愚痴をヤクザさん2人にしていただけ。
そう、今思うとあのお2人はなんだか聞き上手だったんだよなぁ。たぶん自分たちのことは喋りにくかったんだろうけど。
このところ忙しすぎて誰かと飲むなんてしてなかったから、聞かれてもいないのにぺらぺら喋ってしまった。
……今さらながら、なんだかすみませんでした。
おかげで二日酔いだけど心は結構すっきりしている。さすがに冷静になって今考えると、もう一度あの方々と飲むということはないだろうけど、割と楽しかった。
大破した壁については、ヤクザさんたちの馴染みの左官屋さんの人が直してくれるとのこと。ヤクザさんの馴染みってなんか怖いけど、腕は確かでバレないようにこそっと直してくれるらしい。
大家さんにバレて私までとばっちり受けたらたまらないし、ヤクザさんと仲良くお酒飲んでたとか言えないので、壁についてはお任せした。まあ、私は壁については何も悪くないですけど!
そんなことを思いながら、私はキーボードを叩く。
うう、二日酔い兼睡眠不足にこれ辛い。
「……佐伯さん、さっきの資料フォントサイズ合ってなかったから修正してよ」
「はい」
「佐伯、メールの返信は終わったのか?」
「はい、今書いてます」
「ちょっと誰か外線出てくれない?」
「はい」
はいはい言いすぎて、何か言われたら自動的にそう返事をしてしまいそうだ。いかんいかん、切り替えないと。
フロアの自動販売機で買った水をぐいっと飲んで、デスクの引き出しに入れてあったのど飴を口に放り込んで噛み砕く。
そうして私は再び作業に戻った。
10
お気に入りに追加
1,854
あなたにおすすめの小説
我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!
真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。
そこで目撃してしまったのだ。
婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。
よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!
長くなって来たので長編に変更しました。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
よくできた"妻"でして
真鳥カノ
ライト文芸
ある日突然、妻が亡くなった。
単身赴任先で妻の訃報を聞いた主人公は、帰り着いた我が家で、妻の重大な秘密と遭遇する。
久しぶりに我が家に戻った主人公を待ち受けていたものとは……!?
※こちらの作品はエブリスタにも掲載しております。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
親父が超絶美人なせいで俺は恋愛ができない
八壁ゆかり
キャラ文芸
香坂輝(こうさか・てる)は、どこにでもいる極々普通の高校二年生……
……ではないっ。
何故なら彼の父は「暁みちる」、男性役も女性役も圧巻の演技力でこなす「ジェンダーレス俳優」として活動している超絶美形パパであり、その性別を超えた美しさと天才的演技力でアカデミー賞にまでノミネートされる、世界的役者なのだ。
「日本はミチル・アカツキの美しさを国家レベルで守らなければならない」とまで言われる父の美しさを見て育った輝は、まだ初恋すらしたことがない。
親友の暉隆(きりゅう)、輝にフラれた学年一の美少女・あやめ、輝の秘密の友人・詩雨とその姉・詩日、輝と暉隆をライバル視する残念なイケメン、果ては父の友人=ハリウッドスターまで来日する中で、はたして輝は恋愛を謳歌することができるのか?
……というラブコメです。
恋愛モノもコメディもライトな文体も連載も門外漢&初挑戦ですが、読んでくださる方がクスリとでも笑ってくれるなら僥倖、是非ご笑覧ください。
※作者、年寄りなので若者言葉の誤用などございましたらお知らせください※
※2019/07/15、展開変更に伴い一部修正※
異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜
カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。
その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。
落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。
(本編完結・番外編不定期更新)愛を教えてくれた人
青空一夏
ライト文芸
紬は多動性発達障害で実の親から捨てられた。捨てられた先は、お祖母ちゃんの家だった。そこは牧場でお母さんの妹の礼子さんと弟、お祖母さんが住んでいた。
礼子さんは実は有名な画家でお金持ち、たくさんのお弟子さんがいるすごい人。お医者さん一家やレストランのオーナー一家との交流や、お祖母ちゃんや叔父さんとの交流を通して、成長していく物語。
これは暗い話ではありません。現実よりも明るめの展開かもしれません。周りの人間に恵まれて、すくすくと育っていき、才能を開花させていくようなお話の流れです。
自然とのふれあい。人間同士の絆。ボランティア活動。芸術に癒やされる的展開。恋もあり。
ざまぁ要素あり。毒親以外、善人多めなお話展開です。
※最初、悲しいです。胸くそ注意! 毒親に注意……
いったん本編完結とします。6月からは不定期で番外編を投稿予定です。
私の守護者
安東門々
青春
大小併せると二十を超える企業を運営する三春グループ。
そこの高校生で一人娘の 五色 愛(ごしき めぐ)は常に災難に見舞われている。
ついに命を狙う犯行予告まで届いてしまった。
困り果てた両親は、青年 蒲生 盛矢(がもう もりや) に娘の命を護るように命じた。
二人が織りなすドタバタ・ハッピーで同居な日常。
「私がいつも安心して暮らせているのは、あなたがいるからです」
今日も彼女たちに災難が降りかかる!
※表紙絵 もみじこ様
※本編完結しております。エタりません!
※ドリーム大賞応募作品!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる