お隣さんはヤのつくご職業

古亜

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お隣さんは吹き飛んだ5

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「うぉぉ……」

結果、飲みすぎた。
遅刻ギリギリに起きて、二日酔いの頭痛と戦いながら私は会社にダッシュする。
なんとか滑り込んでタイムカードを押す。始業1分前、危なかった。

「はぁ、間に合った……」

デスクに座って思わずそう呟いたら、となりの席の山下くんがなんとも冷めた目で私を見ていた。

「間に合ったじゃないですよ。ただでさえ月末で忙しいんですから、もっと時間に余裕を持ってください」
「す、すみません……」

遅刻しかけたの今日が初めてなんですけど、なんてこのピリピリした状況で言えるはずもなく、私は素直に謝った。まあ、夜中の2時まで飲んでいたのはさすがにまずかったかなと思うけど。
お隣さんが次から次へとおつまみを作って持ってきてくれるものだから、ついついお酒が進んでしまったのだ。
軽く炙った海苔にチーズを挟んだやつ、冷奴、即席のキュウリの漬物、ふわっふわのだし巻き卵……
途中で私の冷蔵庫の中のお酒がなくなったので、その後はお隣さんが出してきた日本酒で宴は続いた。
何かを話したりは特にしていない。たぶん私がひたすら仕事の愚痴をヤクザさん2人にしていただけ。
そう、今思うとあのお2人はなんだか聞き上手だったんだよなぁ。たぶん自分たちのことは喋りにくかったんだろうけど。
このところ忙しすぎて誰かと飲むなんてしてなかったから、聞かれてもいないのにぺらぺら喋ってしまった。
……今さらながら、なんだかすみませんでした。
おかげで二日酔いだけど心は結構すっきりしている。さすがに冷静になって今考えると、もう一度あの方々と飲むということはないだろうけど、割と楽しかった。
大破した壁については、ヤクザさんたちの馴染みの左官屋さんの人が直してくれるとのこと。ヤクザさんの馴染みってなんか怖いけど、腕は確かでバレないようにこそっと直してくれるらしい。
大家さんにバレて私までとばっちり受けたらたまらないし、ヤクザさんと仲良くお酒飲んでたとか言えないので、壁についてはお任せした。まあ、私は壁については何も悪くないですけど!
そんなことを思いながら、私はキーボードを叩く。
うう、二日酔い兼睡眠不足にこれ辛い。

「……佐伯さん、さっきの資料フォントサイズ合ってなかったから修正してよ」
「はい」
「佐伯、メールの返信は終わったのか?」
「はい、今書いてます」
「ちょっと誰か外線出てくれない?」
「はい」

はいはい言いすぎて、何か言われたら自動的にそう返事をしてしまいそうだ。いかんいかん、切り替えないと。
フロアの自動販売機で買った水をぐいっと飲んで、デスクの引き出しに入れてあったのど飴を口に放り込んで噛み砕く。
そうして私は再び作業に戻った。
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