明日は明日の夢がある

にいるず

文字の大きさ
上 下
45 / 58

45 お昼です

しおりを挟む
 私たちは、お昼を食べるべく書店から近いバーガー屋さんに向かった。お昼前だったおかげで席が空いていた。私たちは席の椅子に教科書を置いて、注文をしに行った。私たちの前に2、3人ほど順番を待っている。
 私がおもむろにチラシを広げて、俊介を除く二人に見せた。

 「どれにする?」

 「どれどれ?」

 俊介が私たちが見ているところに割り込んできた。

 「もう~!」

 私がみんなを代表して文句を言ってやった。俊介は私の文句を聞き流して反対に聞いてきた。

 「これか?期間限定って」
 
 「そうそう、これ。おいしそうだよね」

 気が付けば私は、この期間限定のバーガーについて熱く語ってしまっていた。結局私の熱い思いに打たれたのか、皆期間限定バーガーを選んでいた。飲み物はそれぞれ思い思いのものを注文した。私は飲み物についてはあまりこだわりがないのだ。私が選んだのは、もちろんアイスティーだが。
 
 「おいしい!」

 私は席についてすぐバーガーにかじりつく。思わず声が出た。

 「ほんとおいしいね」

 美香ちゃんも私を見て言ってきた。おいしかったようで顔が緩んでいる。私たちは黙々とバーガーを食べた。食べ終わり、飲み物を飲んでいた時だ。

 「昨日の雷すごかったね」

 「ほんと、うちの近くに落ちた見たいだった。すごい音したよね。ことちゃんも聞いたでしょ?」

 岡本君が不意に言ってきた。美香ちゃんもそう思ったようで、私に話を振ってきた。

 「ブッ____!」

 「げっほ、げっほ、げっほ」

 思い切り俊介が飲んでいたコーヒーを吹き出した。席の前に座っている私にだ。私も飲み物がむせてしまった。
 
 「ことちゃん大丈夫?」

 「ぼく、何か言った?」

 俊介が急に吹き出したのを見て、美香ちゃんは私を心配してくれた。岡本君は、どうして俊介が急に吹き出したのか訳が分からず慌てていた。私は、むせてしまいそれどころではなかった。
 やっとむせが収まった私に、美香ちゃんがいってくれた。

 「葉ヶ井君が急に吹き出すから~。ことちゃんびっくりしたよね」

 私はという言葉にびっくりしてむせたのだが、美香ちゃんは俊介が吹き出して私がびっくりしたと思っている。

 「笹竹さん、むせ大丈夫?顔が赤いけど、まだのどが変?」

 「ううん、もう何ともない」
 
 岡本君も私がなににびっくりしてむせたのかわかっていないようで、少し安心した。そのおかげで顔のほてりも収まってきた。
 俊介は、黙々とテーブルを拭いている。私がちらっと俊介を見ると、俊介も私の視線を感じたのかこちらをむいた。しかし私と目が合うと、すぐに視線をそらした。私も慌てて別なほうを見た。
 まさかそんな様子を美香ちゃんによく見られていたとは思いもしなかった。

 私が落ち着いたところで、みんな店を出た。バス停に向かう。途中書店の前を通ったが、まだ買いに来た人達でにぎやかだった。
 バス停についてバスを待っている間に私は、美香ちゃんに聞いてみることにした。

 「参考書何買う?」

 「翔也君が使った参考書聞いてあるの。よかったらことちゃんに教えてあげる?」

 「うん、お願い!」

 「でもさ~。それってあの超難関大学いった先輩が使ってたやつだろう?」

 美香ちゃんと私が話しているところに俊介が割り込んできた。私はむっとしたが、確かに俊介の言う事にも一理ある。というか十理ぐらいあるかもしれない。そんな頭のいい人が使っていた参考書を、私が使いこなせるとはとても思えない。まあ頭のいい美香ちゃんなら話は別だが。私がうんうんと考え込んでいると、ひとり考え込んでいた姿を見た岡本君が私に言ってきた。

 「はじめは、教科書会社が出している教科書に沿った参考書がいいかもね。特に数学なんかは」

 「確かに~。さすが岡本君!」

 「そこまで感心される事じゃあないよ」

 私は、岡本君の的を得たアドバイスに感心した。尊敬のまなざしで岡本君を見ると、岡本君も私のよいしょにまんざらでもないようだった。

 「誰でも思いつくんじゃねえ。そんな単純なこと思いつかないのはことだけだって」

 私と岡本君のやり取りを黙って見ていた俊介が横やりを入れてきた。

 「さっき葉ヶ井君がいったことに、もうちょっとアドバイス的なものを入れてあげたら、葉ヶ井君の株も上がったのに残念だったわね」

 美香ちゃんが小憎らしいことを言った俊介にそういった。俊介はふんといった態度を見せたが、ちらっと私を見た。私は美香ちゃんが言ってくれたことで溜飲が下がって、俊介を嘲笑ってやった。

 「俊介って、意地悪だもんしょうがないよ。まあ私は大人だから、大目に見てあげるけど」

 「どこが大人なんだよ」

 俊介の言葉は、どう見ても負け犬の遠吠えだった。

 私たちは、それからも高校生活についてあれこれ言い合ってお互い帰路についたのだった。

 
 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

ご存知ないようですが、父ではなく私が当主です。

藍川みいな
恋愛
旧題:ご存知ないようですが、父ではなく私が侯爵です。 タイトル変更しました。 「モニカ、すまない。俺は、本物の愛を知ってしまったんだ! だから、君とは結婚出来ない!」 十七歳の誕生日、七年間婚約をしていたルーファス様に婚約を破棄されてしまった。本物の愛の相手とは、義姉のサンドラ。サンドラは、私の全てを奪っていった。 父は私を見ようともせず、義母には理不尽に殴られる。 食事は日が経って固くなったパン一つ。そんな生活が、三年間続いていた。 父はただの侯爵代理だということを、義母もサンドラも気付いていない。あと一年で、私は正式な侯爵となる。 その時、あなた達は後悔することになる。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。

さくしゃ
恋愛
「婚約破棄だ!」 素直であるが故に嘘と見栄で塗り固められた貴族社会で嫌われ孤立していた"主人公「セシル」"は、そんな自分を初めて受け入れてくれた婚約者から捨てられた。 唯一自分を照らしてくれた光を失い絶望感に苛まれるセシルだったが、家の繁栄のためには次の婚約相手を見つけなければならず……しかし断られ続ける日々。 そんなある日、ようやく縁談が決まり乗り気ではなかったが指定されたレストランへ行くとそこには、、、 「れ、レント!」 「せ、セシル!」 大嫌いなアイツがいた。抵抗するが半ば強制的に婚約することになってしまい不服だった。不服だったのに……この気持ちはなんなの? 大嫌いから始まるかなり笑いが入っている不器用なヒロインと王子による恋物語。 15歳という子供から大人へ変わり始める時期は素直になりたいけど大人に見られたいが故に背伸びをして強がったりして素直になれないものーーそんな感じの物語です^_^

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...