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29 とうとう試験です
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私は俊介を置いてひとりとっとと歩いていった。しかし俊介は直ぐ追いついてきた。
「おい、待てよ」
私が無言なのをいいことに言いたい放題話し始めた。
「さっきは悪かっよ」
「そう怒るなって」
いつの間にか私の横に並んでいる。私は俊介を無視してすたすた歩いていると、今日受験する高校の正門が見えてきた。校門の前に学校の子達がいるのが見えた。私がそちらに行こうと走りかけた時だ。
「こと、今日の試験頑張ろうな」
先ほどとは全く違い急にまじめな声で言う俊介の声で、私はおもわず立ち止まって俊介を見た。俊介がまっすぐにこちらをみていた。私はなんだか急に気恥ずかしくなり「うん」とだけ言って思いっきり走ってみんなの元へ向かった。
校門の前には、美香ちゃんと岡本君もいた。
「おはよう、ことちゃん」
「おはよう」
美香ちゃんと岡本君が挨拶してきた。
「おはよう、今日の試験頑張ろうね」
私も二人に挨拶した。二人の顔を見るといつもよりちょっと緊張して見えた。二人の緊張した姿を見たらなんだか安心した自分がいた。こんなに頭のよい二人も緊張するなら自分が緊張するのも仕方ないと思ったらかえって気持ちが楽になった気がした。
「おはよう!」
後ろから相変わらず能天気な声がした。すぐに追いついてきた俊介も二人に挨拶している。そうしていると、先生方もやってきてみんなひとりひとりに応援してくれた。
私たちは応援してくれている先生方に見送られ学校に入っていった。試験に臨むべく教室に入っていく。こうして試験が始まった。
「あ~あ、終わった~!」
私は学校の校門を出ながら、伸びをした。入るときには緊張してよく見ていなかったので、振り返って学校を見た。ここに登校することになるかもしれない。そう思ったら、なんだか目の前の学校も少し輝いて見えた。
「どうしたの?」
横にいた美香ちゃんが、急に立ち止まって振り向いて校舎を感慨深げに見ている私に声をかけてきた。
「なんだかここでもいい気がしてきた」
「そうだね、ほんとそう思う」
美香ちゃんもそう思ったようだ。そう考えたら、なんだか気持ちが楽になった。
「美香ちゃん、ちょっと気持ちが楽になったね」
「うん、ほんと!」
私たちがそう話している時だ。
「こと、どうだった?俺満点かも」
自信満々に言ってきたのは俊介だった。
「満点?」
つい俊介に聞いてしまった。私も少しはできたかなと思ったけれど、みんなそんなにできたのだろうか。ちょっと不安になってしまった。
「嘘だよ。そんな心配そうな顔するなよ」
自分で言っておいて、俊介は私が情けない顔を見てからからと笑っていった。
「葉ヶ井くん、嫌な冗談辞めてよ」
「そうだぞ」
美香ちゃんと後ろからちょうど来た岡本君が俊介に怒ってくれた。
「冗談だったんだよ。悪い悪い」
少しも悪びれてない調子で言う俊介に、腹が立った私は俊介に空手チョップをしてやった。
「いてーなー」
俊介は大げさに痛がって、私たちは大笑いしながら帰っていった。
それから1週間後に私たちは合格通知を受け取った。思わずうるっとした私に、美香ちゃんやほかのみんなも集まってきてみんなで喜びあった。
息つく暇もなく本命の学校の試験が近づいてきた。みんな一応一校は合格しているので、殺伐とした雰囲気はないことが救いだ。ゲン担ぎということで家では、この前やった激励会を父とやった。もちろん日の丸のはち巻きをつけてだ。おいしい母の手作りハンバーグも食べた。ただ少しだけ緊張していたせいか、寝るのがちょとだけ遅くなってしまった。
本命の高校の試験日当日、この前と同じで俊介が勝手に我が家にやってきた。今回はもちろんはち巻きをしていない。さっきまでしていたのだが、玄関のチャイムを聞いてすぐに取った。しかし今回はそのはち巻きを鞄に忍ばせた。せっかく父が買ってきてくれたものだ。今回ははち巻きにも私のそばで応援してもらうつもりだ。
「こと、昨日眠れた?」
「ううん、ちょっと寝るのが遅くなった」
「俺も」
この前と違うのは、俊介もやっぱり今回は少しばかり緊張しているようでこの前より会話が普通だった。そんなところも私にとってちょっと緊張がなくなったのに役立った。俊介のような合格圏内の人でも緊張するのだと思ったら、私が緊張するのは当たり前だと思えたことが大きい。学校の校門の前では、美香ちゃんと岡本君が待っていてそれもこの前と同じだった。
ただし会ったとたん、美香ちゃんが鞄からおもむろに何かをとり出した。それはお正月に四人で買った黄色いお守りだった。美香ちゃんはお守りを手からぶらぶらさせていった。
「みんな頑張ろうね」
「うん」
「おう」
「頑張ろう」
私も俊介も岡本君も皆美香ちゃんのように鞄からお守りを取り出し見せあった。なんだかお守りから元気をもらった気がした。先生たちも前回同様やってきてみんなを激励してくれた。特に私への激励が一番多かった気がするのはきっと気のせいだ。
何事もなく試験は無事終わった。帰るときには、もうヘロヘロでこのまま倒れてしまいそうだった。
「終わったな!」
「終わったね」
「やっとだね」
「うん」
俊介、美香ちゃん、岡本君、私とそれぞれ感想を漏らした。ヘロヘロな私はうなづくだけがやっとだった。明日は土曜日だ。もう一日中寝ていようと決意した私だった。
「おい、待てよ」
私が無言なのをいいことに言いたい放題話し始めた。
「さっきは悪かっよ」
「そう怒るなって」
いつの間にか私の横に並んでいる。私は俊介を無視してすたすた歩いていると、今日受験する高校の正門が見えてきた。校門の前に学校の子達がいるのが見えた。私がそちらに行こうと走りかけた時だ。
「こと、今日の試験頑張ろうな」
先ほどとは全く違い急にまじめな声で言う俊介の声で、私はおもわず立ち止まって俊介を見た。俊介がまっすぐにこちらをみていた。私はなんだか急に気恥ずかしくなり「うん」とだけ言って思いっきり走ってみんなの元へ向かった。
校門の前には、美香ちゃんと岡本君もいた。
「おはよう、ことちゃん」
「おはよう」
美香ちゃんと岡本君が挨拶してきた。
「おはよう、今日の試験頑張ろうね」
私も二人に挨拶した。二人の顔を見るといつもよりちょっと緊張して見えた。二人の緊張した姿を見たらなんだか安心した自分がいた。こんなに頭のよい二人も緊張するなら自分が緊張するのも仕方ないと思ったらかえって気持ちが楽になった気がした。
「おはよう!」
後ろから相変わらず能天気な声がした。すぐに追いついてきた俊介も二人に挨拶している。そうしていると、先生方もやってきてみんなひとりひとりに応援してくれた。
私たちは応援してくれている先生方に見送られ学校に入っていった。試験に臨むべく教室に入っていく。こうして試験が始まった。
「あ~あ、終わった~!」
私は学校の校門を出ながら、伸びをした。入るときには緊張してよく見ていなかったので、振り返って学校を見た。ここに登校することになるかもしれない。そう思ったら、なんだか目の前の学校も少し輝いて見えた。
「どうしたの?」
横にいた美香ちゃんが、急に立ち止まって振り向いて校舎を感慨深げに見ている私に声をかけてきた。
「なんだかここでもいい気がしてきた」
「そうだね、ほんとそう思う」
美香ちゃんもそう思ったようだ。そう考えたら、なんだか気持ちが楽になった。
「美香ちゃん、ちょっと気持ちが楽になったね」
「うん、ほんと!」
私たちがそう話している時だ。
「こと、どうだった?俺満点かも」
自信満々に言ってきたのは俊介だった。
「満点?」
つい俊介に聞いてしまった。私も少しはできたかなと思ったけれど、みんなそんなにできたのだろうか。ちょっと不安になってしまった。
「嘘だよ。そんな心配そうな顔するなよ」
自分で言っておいて、俊介は私が情けない顔を見てからからと笑っていった。
「葉ヶ井くん、嫌な冗談辞めてよ」
「そうだぞ」
美香ちゃんと後ろからちょうど来た岡本君が俊介に怒ってくれた。
「冗談だったんだよ。悪い悪い」
少しも悪びれてない調子で言う俊介に、腹が立った私は俊介に空手チョップをしてやった。
「いてーなー」
俊介は大げさに痛がって、私たちは大笑いしながら帰っていった。
それから1週間後に私たちは合格通知を受け取った。思わずうるっとした私に、美香ちゃんやほかのみんなも集まってきてみんなで喜びあった。
息つく暇もなく本命の学校の試験が近づいてきた。みんな一応一校は合格しているので、殺伐とした雰囲気はないことが救いだ。ゲン担ぎということで家では、この前やった激励会を父とやった。もちろん日の丸のはち巻きをつけてだ。おいしい母の手作りハンバーグも食べた。ただ少しだけ緊張していたせいか、寝るのがちょとだけ遅くなってしまった。
本命の高校の試験日当日、この前と同じで俊介が勝手に我が家にやってきた。今回はもちろんはち巻きをしていない。さっきまでしていたのだが、玄関のチャイムを聞いてすぐに取った。しかし今回はそのはち巻きを鞄に忍ばせた。せっかく父が買ってきてくれたものだ。今回ははち巻きにも私のそばで応援してもらうつもりだ。
「こと、昨日眠れた?」
「ううん、ちょっと寝るのが遅くなった」
「俺も」
この前と違うのは、俊介もやっぱり今回は少しばかり緊張しているようでこの前より会話が普通だった。そんなところも私にとってちょっと緊張がなくなったのに役立った。俊介のような合格圏内の人でも緊張するのだと思ったら、私が緊張するのは当たり前だと思えたことが大きい。学校の校門の前では、美香ちゃんと岡本君が待っていてそれもこの前と同じだった。
ただし会ったとたん、美香ちゃんが鞄からおもむろに何かをとり出した。それはお正月に四人で買った黄色いお守りだった。美香ちゃんはお守りを手からぶらぶらさせていった。
「みんな頑張ろうね」
「うん」
「おう」
「頑張ろう」
私も俊介も岡本君も皆美香ちゃんのように鞄からお守りを取り出し見せあった。なんだかお守りから元気をもらった気がした。先生たちも前回同様やってきてみんなを激励してくれた。特に私への激励が一番多かった気がするのはきっと気のせいだ。
何事もなく試験は無事終わった。帰るときには、もうヘロヘロでこのまま倒れてしまいそうだった。
「終わったな!」
「終わったね」
「やっとだね」
「うん」
俊介、美香ちゃん、岡本君、私とそれぞれ感想を漏らした。ヘロヘロな私はうなづくだけがやっとだった。明日は土曜日だ。もう一日中寝ていようと決意した私だった。
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