明日は明日の夢がある

にいるず

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22 フィギュアが癒してくれました

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 私が家に入ると、母が出てきた。

 「どうだった?楽しかった?」

 すぐ聞いてきたが、私の泣きはらした顔を見て目を丸くした。そして手に持ってる金魚がいっぱい入ったビニール袋とお菓子とフィギュアの入った袋を見てちょっと首を傾げた。聞こうかどうしようかとちょっと悩んでいる様子だった。しかし奥からどたどたと足音がして、父親がやってきたことで雰囲気が一変した。

 「おかえり、ことちゃん。楽しかった?」

 やってくるなり父親はそういったが、私の泣きはらした顔を見て絶句した。

 「どうしたの?どうかしたの?」

 急に慌てふためいてひとりおろおろしている。その様子に私は、思わず吹き出してしまった。

 「お父さん、慌てないでよ。ただ失恋しただけなんだから」

 「し つ れ ん?失恋?えっ!___」

 私の言葉を聞いて先ほどとは違う意味で慌てている。そんな父親を見て、母はかえって冷静になったようだ。

 「さあさあ、着替えましょ。それにこんなたくさんの金魚、こんなに小さいビニール袋に入れたままじゃあ可哀想でしょ」

 母は金魚の袋を私から受け取り、私は洗面所で着替えて、顔や手を洗った。さっぱりしたら気分もよくなった。
金魚を外の池に放してあげようと母を探した。母と父は居間にいた。

 「まああなた、そんなにおろおろしないで」

 「だってことちゃんがあんなに泣いていたんだよ。いったい誰なんだ。あんなにかわいいことちゃんを振ったやつは!」

 「まあよかったじゃない。当分私たちだけのことちゃんよ」

 母の言葉に急に嬉しそうな顔をした父はうんうんひとりうなづいた。

 「そうだね、まだ彼氏なんて早いよね。よかった、よかった」 

 「よくないよ。まったく!」

 私はぷんぷん怒ったふりをしながら部屋に入っていった。

 「ことちゃ~ん、ごめんごめん」

 父親は先ほどの話を聞かれてしまい、ちょっと申し訳なさそうな顔をしている。

 「ねえ、お母さん。金魚今から池に放してきていい?」

 「そうね、私も行くわ」

 「父さんも行くよ」

 結局私と母と父家族三人で、庭にある池に金魚を放してやることにした。もともと私がお祭りでとってきた金魚を飼うためにおじいちゃんが作ってくれた池だ。うちは家は小さいが土地だけは広い。神社の裏山もうちの所有なぐらいだ。池を作る場所だけはあるのだ。
 私が金魚を放してやると、金魚は嬉しそうに泳ぎ回っていたが、すぐに見えなくなってしまった。池のところに明かりはあるが、今は夜だし月も三日月なので暗いのだ。

 「さあ、もう入りましょ」

 母の一言で家族は家に戻った。私はお祭りでいろいろ食べたせいか、お腹がいっぱいなのでお風呂に入ることにした。お風呂に入ると、また先ほどの事が思い出されてちょっとだけ涙が出てきた。顔をバシャバシャ洗い涙も悲しみもさっぱりと洗い流してやった。
 
 自分の部屋に戻り、ベッドに寝転ぶとテーブルの横に転がっている袋に気が付いた。ひとつはお菓子。もう一つは先ほど俊介がくれたフィギュアが入っている。

 「そうだ。フィギュアだ!」

 私は急いでフィギュアの袋のところに飛んで行って、袋からフィギュアを取り出した。フィギュアをテーブルの上において眺めた。

 「やっぱりいいよね~」

 フィギュアを眺めているうちに、そういえばと思いだしたことがあった。玄関まで送ってくれた俊介、何かいってたよな。なんだっけ。そうだ、浴衣かわいいって言ってたっけ!えっ!___。かわいいっていわれたぁ!

 私はフィギュアをつかんで、フィギュアを持ったまま身もだえしてしまった。励ましの意味だと思うが、今まで生きてきて家族以外異性からかわいいなんて言われたことがない。しかも言ったのはあの天敵俊介だ。そう思ったらすごく恥ずかしくなってベッドの上でごろごろ転がりまくった。

 「痛っ痛っ」

 たたフィギュアを抱きしめて転がったせいで、体にフィギュアが刺さって時々痛かった。痛かったせいで少しずつ冷静になった自分がいた。よく考えたら、あの俊介が私にかわいいなんて言うなんて、よほど私がかわいそうな子に見えたに違いない。そう考えたら、少し落ち込んでしまった。さっきはずいぶん女々しいところをみせてしまったしなあ。

 よし、明日は髪を切って気分を一新してやる!女々しいところを見せるもんか。

 そう思ったら、さっきの失恋が少しいえた気がした。

 翌日朝から、美容院に行って髪をバッサリ切って今までのベリーショートに戻した。ずいぶん軽くなった髪にちょっとだけ違和感を感じたが、頭が涼しくなった気がして意気揚々と家に帰った。

 「今さっき美香ちゃんが家に来たわよ。なんか深刻そうだったわよ」

 母が美容院から帰った私に美香ちゃんが家に来たことを告げた。一瞬昨日の事が思い出されちょっと苦く感じたが、私は美香ちゃんの家に行くことにした。

 「お母さん、ちょっと出かけてくる!」

 「行ってらっしゃい、気を付けてね」

 私は美香ちゃんの家に走っていったのだった。




 
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