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16 夏祭りは浴衣で
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私は美香ちゃんに引っ張られながら、聞かずにはいられなかった。
「ねえ美香ちゃん、なんであんなこと言ったの?」
美香ちゃんは急に立ち止まりきっとして私を見た。
「なに言ってるの?ことちゃん、岡本君の言葉にさっきずいぶん落ち込んでいたじゃない。私自分でもいい仕事したと思ってるわよ。じゃあ何?ことちゃん、岡本君と夏祭り行きたくないの?りんご飴や綿菓子食べたくないの?」
「食べたい!し、夏祭り行きたいかも?!」
「そうでしょう!」
美香ちゃんは得意げな顔をして私を見た。
「ねえ、だけどどうして俊介も一緒に行かなくちゃあいけないの?いやだなあ~」
「まあそれは想定外だけど、葉ケ井君がすぐ賛成してくれたから決まったものだし、まあよしとしなくっちゃあ。大丈夫、葉ケ井君はことちゃんに近づけないから」
どうやら美香ちゃんは私のナイト役になってくれるらしい。
「ねえ、夏祭り浴衣着ちゃう?もしことちゃんが着るんなら私も着ようかなあ」
「美香ちゃん持ってるの?」
「うん、去年作ったんだ~。おばあちゃんちに行ったときおばあちゃんが作ってくれたの」
「ふ~ん、いいなあ。私持ってないんだよね」
「ことちゃんが着ないなら私も着ないよ」
美香ちゃんはそういってくれたが、浴衣を着たそうだった。なんとなく口ぶりでわかってしまった。
「浴衣ってどう?」
「うんとね、なんとなくしゃきっとするかな。背筋も伸びる感じ。あとちょっとだけ大人になれる気がする。不思議だね~」
「へえ~そんなものなんだね」
美香ちゃんとはお盆に入ってすぐ会う約束をした。またショッピングセンターに行く予定だ。夏祭りのことを話し合うつもりでいる。
私は、家に帰るとすぐ母に聞いてみた。
「ねえ美香ちゃんと神社の夏祭り行きたいんだけど。美香ちゃん浴衣持ってるって。私もほしいかも」
「そうなの?じゃあ今度買いに行きましょうか?」
「でも私に似合う浴衣あるのかなあ」
そうなのだ。私はすごく心配している。前に見たかぐや姫もあの着物姿はとっても似合わなかった。今の私は健康優良児だし、似合う浴衣なんてあるのかすごく自信がない。美香ちゃんは、色白だしかわいいしいっぱいあるだろうけど。なんだか考えたら、ずんと落ち込んできた。
そんな私を見ていた母は、しばらく思案していたが、いいことを思い付いたという様に笑顔で私に言ってきた。
「そういえば、私やおばあちゃんが着た浴衣があるのよ。あれは作りがいいものだから上品なものよ。きっとことちゃんにも似合うわ。ちょっと待ってて、いま見せてあげるわ」
そういうなり母は、クローゼットへと走って行ってしまった。確かに母やおばあちゃん地味ーズが似合っていたのなら、もしかしたら私にも似合うかもしれない。でも私は地味ーズの中でも特に地味っ子ちゃんだ。半信半疑で母を待っていた。しばらくして息を切らして母がたとう紙を手にしてやってきた。
テーブルの上にたとう紙を置いた。そしてゆっくりと開いていく。
中には、淡く薄い水色で下に行くにしたがって濃い藍色へと変化している浴衣があった。模様は波のようなもののみのシンプルなものだった。
「ちょっとあててみましょう」
母は、そういって私にその浴衣を肩からそっとかけてみた。
「よく似合うわよ。見てみたらどう?」
母が嬉しそうな声を出したので、私もその恰好のまま姿見のある所まで移動した。日に焼けた私でもおかしくない色あいで、ちょっとだけ似合っているように思えた。
「どう?似合ってるでしょ!」
「そう?似合う?」
「似合うわよ。おばあちゃんにお直ししてもらいましょう!今おばあちゃん呼んでくるから」
そういって母はおばあちゃんを呼びに行った。私は誰もいなくなったところで、その浴衣を羽織ってみた。意外と似合うかも?自分でもそう思えてきた。早くこの浴衣を着てみたくなった。
「どれどれ見せてみて、ことちゃん。あ~ほんとよく似合うわよ」
おばあちゃんが母に連れられてやってきた。おばあちゃんも嬉しそうに目を細めて私と浴衣を見てきた。おばあちゃんがお直ししてくれるということで、そのままお直しをしてもらう事になった。おばあちゃんが待ち針で印をつけていく。
「仮縫いしたらまた着てみてね」
そういっておばあちゃんはその浴衣をもって自分の部屋に戻っていった。
「よかったわね。そうそうこれが帯よ」
そういって母が持っていたのは、山吹色の鮮やかな帯だった。よく見ると帯に複雑な模様がついている。素人の私でもわかる凝った作りの帯だった。
「なんか高そうな帯だね。これどうしたの?」
「確かこの帯と浴衣は人間国宝の人が作った品だったらしいわよ。これはいただきものだったと思うわ。あとお母さん、ことちゃんと美香ちゃんの髪飾りを作ってあげるわ。楽しみにしていてね」
「うん」
私は浴衣を着て夏祭りに行くのがすごく楽しみになったのだった。
「ねえ美香ちゃん、なんであんなこと言ったの?」
美香ちゃんは急に立ち止まりきっとして私を見た。
「なに言ってるの?ことちゃん、岡本君の言葉にさっきずいぶん落ち込んでいたじゃない。私自分でもいい仕事したと思ってるわよ。じゃあ何?ことちゃん、岡本君と夏祭り行きたくないの?りんご飴や綿菓子食べたくないの?」
「食べたい!し、夏祭り行きたいかも?!」
「そうでしょう!」
美香ちゃんは得意げな顔をして私を見た。
「ねえ、だけどどうして俊介も一緒に行かなくちゃあいけないの?いやだなあ~」
「まあそれは想定外だけど、葉ケ井君がすぐ賛成してくれたから決まったものだし、まあよしとしなくっちゃあ。大丈夫、葉ケ井君はことちゃんに近づけないから」
どうやら美香ちゃんは私のナイト役になってくれるらしい。
「ねえ、夏祭り浴衣着ちゃう?もしことちゃんが着るんなら私も着ようかなあ」
「美香ちゃん持ってるの?」
「うん、去年作ったんだ~。おばあちゃんちに行ったときおばあちゃんが作ってくれたの」
「ふ~ん、いいなあ。私持ってないんだよね」
「ことちゃんが着ないなら私も着ないよ」
美香ちゃんはそういってくれたが、浴衣を着たそうだった。なんとなく口ぶりでわかってしまった。
「浴衣ってどう?」
「うんとね、なんとなくしゃきっとするかな。背筋も伸びる感じ。あとちょっとだけ大人になれる気がする。不思議だね~」
「へえ~そんなものなんだね」
美香ちゃんとはお盆に入ってすぐ会う約束をした。またショッピングセンターに行く予定だ。夏祭りのことを話し合うつもりでいる。
私は、家に帰るとすぐ母に聞いてみた。
「ねえ美香ちゃんと神社の夏祭り行きたいんだけど。美香ちゃん浴衣持ってるって。私もほしいかも」
「そうなの?じゃあ今度買いに行きましょうか?」
「でも私に似合う浴衣あるのかなあ」
そうなのだ。私はすごく心配している。前に見たかぐや姫もあの着物姿はとっても似合わなかった。今の私は健康優良児だし、似合う浴衣なんてあるのかすごく自信がない。美香ちゃんは、色白だしかわいいしいっぱいあるだろうけど。なんだか考えたら、ずんと落ち込んできた。
そんな私を見ていた母は、しばらく思案していたが、いいことを思い付いたという様に笑顔で私に言ってきた。
「そういえば、私やおばあちゃんが着た浴衣があるのよ。あれは作りがいいものだから上品なものよ。きっとことちゃんにも似合うわ。ちょっと待ってて、いま見せてあげるわ」
そういうなり母は、クローゼットへと走って行ってしまった。確かに母やおばあちゃん地味ーズが似合っていたのなら、もしかしたら私にも似合うかもしれない。でも私は地味ーズの中でも特に地味っ子ちゃんだ。半信半疑で母を待っていた。しばらくして息を切らして母がたとう紙を手にしてやってきた。
テーブルの上にたとう紙を置いた。そしてゆっくりと開いていく。
中には、淡く薄い水色で下に行くにしたがって濃い藍色へと変化している浴衣があった。模様は波のようなもののみのシンプルなものだった。
「ちょっとあててみましょう」
母は、そういって私にその浴衣を肩からそっとかけてみた。
「よく似合うわよ。見てみたらどう?」
母が嬉しそうな声を出したので、私もその恰好のまま姿見のある所まで移動した。日に焼けた私でもおかしくない色あいで、ちょっとだけ似合っているように思えた。
「どう?似合ってるでしょ!」
「そう?似合う?」
「似合うわよ。おばあちゃんにお直ししてもらいましょう!今おばあちゃん呼んでくるから」
そういって母はおばあちゃんを呼びに行った。私は誰もいなくなったところで、その浴衣を羽織ってみた。意外と似合うかも?自分でもそう思えてきた。早くこの浴衣を着てみたくなった。
「どれどれ見せてみて、ことちゃん。あ~ほんとよく似合うわよ」
おばあちゃんが母に連れられてやってきた。おばあちゃんも嬉しそうに目を細めて私と浴衣を見てきた。おばあちゃんがお直ししてくれるということで、そのままお直しをしてもらう事になった。おばあちゃんが待ち針で印をつけていく。
「仮縫いしたらまた着てみてね」
そういっておばあちゃんはその浴衣をもって自分の部屋に戻っていった。
「よかったわね。そうそうこれが帯よ」
そういって母が持っていたのは、山吹色の鮮やかな帯だった。よく見ると帯に複雑な模様がついている。素人の私でもわかる凝った作りの帯だった。
「なんか高そうな帯だね。これどうしたの?」
「確かこの帯と浴衣は人間国宝の人が作った品だったらしいわよ。これはいただきものだったと思うわ。あとお母さん、ことちゃんと美香ちゃんの髪飾りを作ってあげるわ。楽しみにしていてね」
「うん」
私は浴衣を着て夏祭りに行くのがすごく楽しみになったのだった。
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