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15 弟がきました
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ここ最近、夢を見る。朝起きるときには、もう覚えていないのだが、なんだか悲しい気持ちが残っている。
今朝は、__帰りたい__という気持ちが、朝まで残っていた。
( 今週、実家に帰るからなのかなあ。帰る前からホームシック? )
木曜日には、会社の帰りに大きな駅によって、テレビ番組でもよく紹介されている有名なお土産品をいくつか買った。
実家に持って帰る予定なのだ。ミーハーな母が、喜ぶ顔が浮かぶ。
家に帰ると、実家に持っていくものを準備した。
明日は、弟が来るので、ばたばたしたらいやだなあと思ったのだ。
クローゼットを開けたら、この前玉山さんとのドライブに着ていった洋服が、目に入った。
( 洋服最近買ってないなあ。来週か再来週には、洋服でも見に行こうかな。いいのあったら買おうかな。 )
そう思った自分がなんだかすごく恥ずかしくなって、決して玉山さんには、関係ないと心に言い聞かせた。
金曜日の朝、会社の支度をしていると、インターホンが鳴った。
「 俺、俺。 」
玄関の戸を開けると、もう弟の聡が立っている。
「 早かったねえ。 」
慌てて中に入れた。
「 ねえちゃんが、会社行く前にと思って急いできたんだ。大家さんに鍵借りてもよかったんだけど、悪いからさ。 」
さすが田舎住まいの弟である。朝早く起きるのは、苦にならないらしい。
とはいえ、朝というより、まだ夜の間に、家を出たというほうがいい時間だろうが。
「 道路もすいてるしね。 」
「 昨日の間に連絡してくれればよかったのに。朝ご飯まだ食べてないでしょ? 」
「 サービスエリアで食べてきたよ。それよりねえちゃん、仕事だろ。 」
「 そうよ、じゃあ合鍵おいていくわね。ねえ、今日の予定は? 」
「 友達に会いに行くから、帰りは夜の9時ぐらいかな。食べてくるよ。 」
「 そうなの。お昼は? 」
「 朝から出かける。久しぶりだから、有給とってくれたんだそいつも。楽しみだぜ。 」
「 よかったね。じゃあ行ってくる。 」
「 いってらっしゃい。 」
弟とはいえ、いつも一人暮らしなだけに、朝からあいさつされて、見送られるのは、なかなかうれしかった。
それにしても夜運転してきて、朝から出かけるとは、若いなあと思った敦子だった。
仕事が終わって、アパートに戻った、敦子の家には、弟はまだ帰っていなかった。
敦子が、お風呂に入り、寝ようとしたころ、弟の聡が戻ってきた。
夜の10時を回っていた。
「 ごめん、寝てた? 」
部屋に入ってきた聡を、部屋着で出迎えた敦子に、聡はそうわびた。
「 今寝るところ。お布団ひいといたから。」
「 ありがとう。お風呂に入ってくる。」
そういって、聡は、風呂場に入ろうとしたが、ふと敦子のほうを見ていった。
「 お隣の人って、男の人なんだね。 」
「 えっ、そうよ。 」
急に玉山さんのことを言われて、なんとなく焦ってしまった。
聡は、そんな敦子を気にした風でもなく、しかし何か思うところがあったのか、また言った。
「 ふ~ん、なんだか視線感じてさ。ねえちゃん、お隣さんとなんかトラブルはないよね。 」
「 そんなのないわよ。お隣さんは、大家さんの親戚の人よ。 」
「 へえ~、そうなんだ。 」
なんだか思案顔で、聡は風呂場に行ってしまった。
敦子は、さすがに一度ドライブしたり、ご飯をごちそうになったり、ご飯をごちそうしたわよなんて言えなかった。
次の日、寝起きのいい聡と朝食をとった。
「 ねえちゃんの料理の味、やっぱ母さんに似てるよね。 」
「 そお? まあかあさんに教わったからね。 」
「 うん、まさしく田舎料理って感じの味だね。 」
「 憎まれ口叩かずに、そこにあるバッグ、先に車に入れてきてね。お土産もあるし。 」
「 わかったよ。 」
お互い支度して、玄関を出た。
ちょうどそのとき隣からも物音がして、隣の玄関が開いた。
玉山だった。
「 おはようございます。 」
先に玄関に出ていた、聡が玉山に挨拶した。
「 おはようございます。 」
玉山も挨拶するが、なんだか声が低かった。
敦子は、その声を聴いて、昨日は仕事が忙しかったのかしらと思った。
敦子たちが先に行けるように譲るつもりなのか、玉山が、玄関前から動かないので、敦子も靴を履いて玄関を出た。
「 おはようございます。弟の聡です。 」
「 どうも、いつも姉がお世話になってます。 」
社会人になってから、急に大人びた聡も挨拶する。
「 おはようございます。玉山です。弟さんなんですか。そうか・・・ 」
玉山さんは、外に出て日の光を浴びて、すっかり目が覚めたのか、いつもの調子で明るく返事をしてくれた。
「 今日から姉と実家に帰るんです。三日ぐらい留守をしますので、よろしくお願いします。 」
聡が、役場で鍛えたであろう世間話をした。
「 はいっ、気を付けていますね。 」
玉山も笑顔で返してくれた。
敦子と聡は、玉山の前を歩き始めた。
一階の玄関先で、見送られて別れた。
先に車に乗り込んだ敦子は、つい玉山のほうを見てしまった。
玉山は、なぜか駐車場の前に立っていて、車が出るのを見送ってくれる。
敦子は、なんとなく恥ずかしくて、小さく手を振って、頭を下げた。
玉山も手を振ってくれていた。
車が、ずいぶん走ったところで、今まで横で、すべてを見ていた聡が、やけににやにやしながら言った。
「 ねえちゃん、玉山さんだっけ。イケメンだね。さすが都会だ。それにずいぶん親しいみたいだけど。 」
きっと敦子が、恥ずかしそうに手を振る姿を見ていたのだろう。
聡が、すごく聞きたそうな顔を敦子に向けた。
敦子は、仕方なく偶然が重なって、食事を招待したこと、食事をごちそうになったことだけを言った。
さすがに空を飛んで、それを見られたことは、弟とはいえ言えなかった敦子だった。
今朝は、__帰りたい__という気持ちが、朝まで残っていた。
( 今週、実家に帰るからなのかなあ。帰る前からホームシック? )
木曜日には、会社の帰りに大きな駅によって、テレビ番組でもよく紹介されている有名なお土産品をいくつか買った。
実家に持って帰る予定なのだ。ミーハーな母が、喜ぶ顔が浮かぶ。
家に帰ると、実家に持っていくものを準備した。
明日は、弟が来るので、ばたばたしたらいやだなあと思ったのだ。
クローゼットを開けたら、この前玉山さんとのドライブに着ていった洋服が、目に入った。
( 洋服最近買ってないなあ。来週か再来週には、洋服でも見に行こうかな。いいのあったら買おうかな。 )
そう思った自分がなんだかすごく恥ずかしくなって、決して玉山さんには、関係ないと心に言い聞かせた。
金曜日の朝、会社の支度をしていると、インターホンが鳴った。
「 俺、俺。 」
玄関の戸を開けると、もう弟の聡が立っている。
「 早かったねえ。 」
慌てて中に入れた。
「 ねえちゃんが、会社行く前にと思って急いできたんだ。大家さんに鍵借りてもよかったんだけど、悪いからさ。 」
さすが田舎住まいの弟である。朝早く起きるのは、苦にならないらしい。
とはいえ、朝というより、まだ夜の間に、家を出たというほうがいい時間だろうが。
「 道路もすいてるしね。 」
「 昨日の間に連絡してくれればよかったのに。朝ご飯まだ食べてないでしょ? 」
「 サービスエリアで食べてきたよ。それよりねえちゃん、仕事だろ。 」
「 そうよ、じゃあ合鍵おいていくわね。ねえ、今日の予定は? 」
「 友達に会いに行くから、帰りは夜の9時ぐらいかな。食べてくるよ。 」
「 そうなの。お昼は? 」
「 朝から出かける。久しぶりだから、有給とってくれたんだそいつも。楽しみだぜ。 」
「 よかったね。じゃあ行ってくる。 」
「 いってらっしゃい。 」
弟とはいえ、いつも一人暮らしなだけに、朝からあいさつされて、見送られるのは、なかなかうれしかった。
それにしても夜運転してきて、朝から出かけるとは、若いなあと思った敦子だった。
仕事が終わって、アパートに戻った、敦子の家には、弟はまだ帰っていなかった。
敦子が、お風呂に入り、寝ようとしたころ、弟の聡が戻ってきた。
夜の10時を回っていた。
「 ごめん、寝てた? 」
部屋に入ってきた聡を、部屋着で出迎えた敦子に、聡はそうわびた。
「 今寝るところ。お布団ひいといたから。」
「 ありがとう。お風呂に入ってくる。」
そういって、聡は、風呂場に入ろうとしたが、ふと敦子のほうを見ていった。
「 お隣の人って、男の人なんだね。 」
「 えっ、そうよ。 」
急に玉山さんのことを言われて、なんとなく焦ってしまった。
聡は、そんな敦子を気にした風でもなく、しかし何か思うところがあったのか、また言った。
「 ふ~ん、なんだか視線感じてさ。ねえちゃん、お隣さんとなんかトラブルはないよね。 」
「 そんなのないわよ。お隣さんは、大家さんの親戚の人よ。 」
「 へえ~、そうなんだ。 」
なんだか思案顔で、聡は風呂場に行ってしまった。
敦子は、さすがに一度ドライブしたり、ご飯をごちそうになったり、ご飯をごちそうしたわよなんて言えなかった。
次の日、寝起きのいい聡と朝食をとった。
「 ねえちゃんの料理の味、やっぱ母さんに似てるよね。 」
「 そお? まあかあさんに教わったからね。 」
「 うん、まさしく田舎料理って感じの味だね。 」
「 憎まれ口叩かずに、そこにあるバッグ、先に車に入れてきてね。お土産もあるし。 」
「 わかったよ。 」
お互い支度して、玄関を出た。
ちょうどそのとき隣からも物音がして、隣の玄関が開いた。
玉山だった。
「 おはようございます。 」
先に玄関に出ていた、聡が玉山に挨拶した。
「 おはようございます。 」
玉山も挨拶するが、なんだか声が低かった。
敦子は、その声を聴いて、昨日は仕事が忙しかったのかしらと思った。
敦子たちが先に行けるように譲るつもりなのか、玉山が、玄関前から動かないので、敦子も靴を履いて玄関を出た。
「 おはようございます。弟の聡です。 」
「 どうも、いつも姉がお世話になってます。 」
社会人になってから、急に大人びた聡も挨拶する。
「 おはようございます。玉山です。弟さんなんですか。そうか・・・ 」
玉山さんは、外に出て日の光を浴びて、すっかり目が覚めたのか、いつもの調子で明るく返事をしてくれた。
「 今日から姉と実家に帰るんです。三日ぐらい留守をしますので、よろしくお願いします。 」
聡が、役場で鍛えたであろう世間話をした。
「 はいっ、気を付けていますね。 」
玉山も笑顔で返してくれた。
敦子と聡は、玉山の前を歩き始めた。
一階の玄関先で、見送られて別れた。
先に車に乗り込んだ敦子は、つい玉山のほうを見てしまった。
玉山は、なぜか駐車場の前に立っていて、車が出るのを見送ってくれる。
敦子は、なんとなく恥ずかしくて、小さく手を振って、頭を下げた。
玉山も手を振ってくれていた。
車が、ずいぶん走ったところで、今まで横で、すべてを見ていた聡が、やけににやにやしながら言った。
「 ねえちゃん、玉山さんだっけ。イケメンだね。さすが都会だ。それにずいぶん親しいみたいだけど。 」
きっと敦子が、恥ずかしそうに手を振る姿を見ていたのだろう。
聡が、すごく聞きたそうな顔を敦子に向けた。
敦子は、仕方なく偶然が重なって、食事を招待したこと、食事をごちそうになったことだけを言った。
さすがに空を飛んで、それを見られたことは、弟とはいえ言えなかった敦子だった。
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