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家の中は?そしてバスクのもとへ
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マークは家の中を案内して回った。
「わあ~広いな」
みんな興味津々で部屋の中を見て回った。シムの妻のアンは、特にキッチンに驚き備え付けの棚の扉を開けたりして中を見ていた。すぐ生活できるように皿や食器、はたまた調味料や食材まで準備されていた。
イソベラとアルは、自分の部屋があると聞いてそちらに飛んでいった。それぞれ小さいながらも自分の部屋ができて嬉しそうだった。特にアルは勉強机を、イソベラは小さいながらも姿見があるのがうれしいようだった。シムは夫婦の寝室を見た。寝室にはちゃんと大き目なベビーベッドが置いてありすぐに双子を寝かせてみたが、双子ちゃんは気に入ったらしくきゃあきゃあ喜んでくれていた。アンを呼んで双子を見てもらっている間に、キャスリンとマークはシムを家の外にある小屋に案内した。小屋といっても水回りもきちんと整備されていて、薬草を乾燥させるための部屋まであってシムは隅から隅までじっくりと見て回っていた。
そしてあらかたシムが見終わったのを確認してキャスリンが言った。
「シムさん、あなたに作ってもらいたい薬があるの。うちの厩舎で働いているバスクという人がいるんだけど、その人の奥さんが重い病気にかかっているの。助けてあげられないかしら」
「はい、私にできることでしたらなんでもしますよ」
「ありがとう。実はバスク達もほらあそこに見えるでしょ。あの家に住んでもらおうと思ってるの。あなたの近くならその人をよく見てあげられるし、薬も出しやすいでしょ。ただまだその人以外に薬を作るのは控えてほしいの。また変な噂になってもいけないから。すべて片付くまでの事だけど。それまで個々の村の人たちに読み書きを教えてあげてくれない?」
「はい、マークから聞いてます。よろしくお願いします。本当にありがとうございました」
キャスリンとシムが話していると、家の玄関のドアが開いてイソベラが飛び出してきた。
「キャスリン様ありがとうございます。クローゼットの中にかわいいお洋服まで入っていました」
「いえ、気にいってくれたかしら?」
「はい、とっても嬉しいです」
「よかったわ、じゃあそれを着てさっそく学校に通わなくちゃあね。アルとね」
「はい!」
イソベラの顔はストラ男爵家にいた時よりずいぶん明るくなったように見えた。先ほども荷物の整理の時に見たが、イソベラの洋服も家族の洋服もずいぶん少なかった。キャスリンは父のスコットにあらかじめお願いしておいてよかったと思ったのだった。
キャスリンとマークは、シムたち家族に見送られながら転移した。キャスリン達はキャスリンの部屋に戻った。
「私たちいい仕事したわね~。でもさすがに今日は疲れたわ。バスクには明日話しましょう」
「そうですね。今日はごゆっくりなさってください。旦那様には私からご報告しておきます」
キャスリンはバスクの事は明日にすることにした。早めの食事をとり早めにお風呂に入り寝ることにした。やはり疲れていたのか、ベッドに入ってすぐ眠りについてしまった。
翌日は朝からマークとバスクの元へ向かった。バスクが出勤する前にバスクの家を訪問したのだった。いきなりダイモック公爵令嬢と執事のマークが現れて、バスクはびっくりしたようだったが家の小さい居間に通してくれた。
「どうかしましたか」
バスクがなんだか青ざめた顔で訪ねてきた。バスクはつい先日自分に声をかけてきたクミールが死んだことを知った。悪いことだとは知りながらクミールの言う通り、賭博場に案内してもらおうと思っていた矢先の事だった。
「ねえバスク、私たちならあなたの奥さんの病気を助けてあげられると思うの。ただしあることに協力してくれたらね」
「あることとは?」
バスクはキャスリンの提案に食いつき気味で訪ねてきた。よほど切羽詰まっているらしい。マークが話し始めた。それを聞いているうちにバスクが少し不審げにしたので、キャスリンはこの部屋に時を止める魔法を施した。
そしてイソベラにも見せたように大きな黒い箱を魔法で出し、バスクに映像を見せた。バスクの未来を。
はじめこそびくりしていたバスクだったが、次第に顔が青くなりしまいにはがたがたと震えだした。
「私はそんなことをするんですか...」
そしていきなりバスクは立ち上がると、急に床に座り頭を床にこすりつけ懇願しだした。
「どうかお願いです。家族は何も悪くないんです。私一人の責任です。どうかどうか家族は助けてください。私の命ならいくらでも差し上げますから。どうかお願いします」
バスクの必死の懇願にマークが席を立ちバスクもとに向かい、バスクを立ち上がらせて再び椅子に座らせた。しかしバスクは先ほど見た映像にあまりに衝撃を受けたのかいまだ手が震えているようだった。
「ねえバスク」
キャスリンの言葉にバスクの体がびくっとなった。しかしキャスリンはそのまま言葉をつづけた。
「言い方が悪かったわね。ごめんなさい。私たちあなたに協力してもらいたいの。未来がこうならないように」
キャスリンはあらかじめ考えていたことを提案した。
キャスリンの話を聞くうちにバスクの目に光が戻ってきたのだった。
「わあ~広いな」
みんな興味津々で部屋の中を見て回った。シムの妻のアンは、特にキッチンに驚き備え付けの棚の扉を開けたりして中を見ていた。すぐ生活できるように皿や食器、はたまた調味料や食材まで準備されていた。
イソベラとアルは、自分の部屋があると聞いてそちらに飛んでいった。それぞれ小さいながらも自分の部屋ができて嬉しそうだった。特にアルは勉強机を、イソベラは小さいながらも姿見があるのがうれしいようだった。シムは夫婦の寝室を見た。寝室にはちゃんと大き目なベビーベッドが置いてありすぐに双子を寝かせてみたが、双子ちゃんは気に入ったらしくきゃあきゃあ喜んでくれていた。アンを呼んで双子を見てもらっている間に、キャスリンとマークはシムを家の外にある小屋に案内した。小屋といっても水回りもきちんと整備されていて、薬草を乾燥させるための部屋まであってシムは隅から隅までじっくりと見て回っていた。
そしてあらかたシムが見終わったのを確認してキャスリンが言った。
「シムさん、あなたに作ってもらいたい薬があるの。うちの厩舎で働いているバスクという人がいるんだけど、その人の奥さんが重い病気にかかっているの。助けてあげられないかしら」
「はい、私にできることでしたらなんでもしますよ」
「ありがとう。実はバスク達もほらあそこに見えるでしょ。あの家に住んでもらおうと思ってるの。あなたの近くならその人をよく見てあげられるし、薬も出しやすいでしょ。ただまだその人以外に薬を作るのは控えてほしいの。また変な噂になってもいけないから。すべて片付くまでの事だけど。それまで個々の村の人たちに読み書きを教えてあげてくれない?」
「はい、マークから聞いてます。よろしくお願いします。本当にありがとうございました」
キャスリンとシムが話していると、家の玄関のドアが開いてイソベラが飛び出してきた。
「キャスリン様ありがとうございます。クローゼットの中にかわいいお洋服まで入っていました」
「いえ、気にいってくれたかしら?」
「はい、とっても嬉しいです」
「よかったわ、じゃあそれを着てさっそく学校に通わなくちゃあね。アルとね」
「はい!」
イソベラの顔はストラ男爵家にいた時よりずいぶん明るくなったように見えた。先ほども荷物の整理の時に見たが、イソベラの洋服も家族の洋服もずいぶん少なかった。キャスリンは父のスコットにあらかじめお願いしておいてよかったと思ったのだった。
キャスリンとマークは、シムたち家族に見送られながら転移した。キャスリン達はキャスリンの部屋に戻った。
「私たちいい仕事したわね~。でもさすがに今日は疲れたわ。バスクには明日話しましょう」
「そうですね。今日はごゆっくりなさってください。旦那様には私からご報告しておきます」
キャスリンはバスクの事は明日にすることにした。早めの食事をとり早めにお風呂に入り寝ることにした。やはり疲れていたのか、ベッドに入ってすぐ眠りについてしまった。
翌日は朝からマークとバスクの元へ向かった。バスクが出勤する前にバスクの家を訪問したのだった。いきなりダイモック公爵令嬢と執事のマークが現れて、バスクはびっくりしたようだったが家の小さい居間に通してくれた。
「どうかしましたか」
バスクがなんだか青ざめた顔で訪ねてきた。バスクはつい先日自分に声をかけてきたクミールが死んだことを知った。悪いことだとは知りながらクミールの言う通り、賭博場に案内してもらおうと思っていた矢先の事だった。
「ねえバスク、私たちならあなたの奥さんの病気を助けてあげられると思うの。ただしあることに協力してくれたらね」
「あることとは?」
バスクはキャスリンの提案に食いつき気味で訪ねてきた。よほど切羽詰まっているらしい。マークが話し始めた。それを聞いているうちにバスクが少し不審げにしたので、キャスリンはこの部屋に時を止める魔法を施した。
そしてイソベラにも見せたように大きな黒い箱を魔法で出し、バスクに映像を見せた。バスクの未来を。
はじめこそびくりしていたバスクだったが、次第に顔が青くなりしまいにはがたがたと震えだした。
「私はそんなことをするんですか...」
そしていきなりバスクは立ち上がると、急に床に座り頭を床にこすりつけ懇願しだした。
「どうかお願いです。家族は何も悪くないんです。私一人の責任です。どうかどうか家族は助けてください。私の命ならいくらでも差し上げますから。どうかお願いします」
バスクの必死の懇願にマークが席を立ちバスクもとに向かい、バスクを立ち上がらせて再び椅子に座らせた。しかしバスクは先ほど見た映像にあまりに衝撃を受けたのかいまだ手が震えているようだった。
「ねえバスク」
キャスリンの言葉にバスクの体がびくっとなった。しかしキャスリンはそのまま言葉をつづけた。
「言い方が悪かったわね。ごめんなさい。私たちあなたに協力してもらいたいの。未来がこうならないように」
キャスリンはあらかじめ考えていたことを提案した。
キャスリンの話を聞くうちにバスクの目に光が戻ってきたのだった。
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