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一回目のキャスリンの人生1
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「死んでるってどういうことですか?」
スティーブはキャスリンがぽろっと言った一言に身を乗り出して聞いてきた。犬のキャスリンに。
「キャスリン2号は16歳になったらあのくそ第二王子と婚約するのよ」
「えっどういうことですか?」
キャスリンは一回目の人生で自分が死ぬまでの事を話し始めた。
マークとバーバラが不慮の事故で亡くなった後は、ダイモック公爵家に次々に不幸が襲った。
マーク達が亡くなってすぐこの国ナクビル国に謎の病気が蔓延した。
初めに王家の王と王妃が病に倒れた。そしてダイモック公爵家当主であるスコットとミシェル。次々に貴族たちが病に倒れていった。スコットの弟であるバリントン伯爵家当主ジェームスも。
そして王が病で倒れた後、国を支えていた嫡子であり第一皇太子であるジョージ王子が、不慮の事故でこの世を去った。婚約者であったロスタル侯爵のサーシャも病に倒れ亡くなった。
今まで王家を支えてきた貴族たちも次々に謎の病に倒れていった。
そこで台頭してきたのがハビセル侯爵家だった。
ハビセル侯爵家は側妃キーラ妃の実家であり第二王子メルビス王子の後ろ盾となっていた。
まずは混乱した国を残った貴族で支えようと、病に倒れた王の代わりに実権を握り始めたハビセル侯爵の入れ知恵か側妃キーラ妃の要請で、ダイモック公爵家のキャスリンと第一王子がなくなったため皇太子となったメルビス王子の婚約がなされた。
兄のクロードは最後まで反対したが、キャスリンは自分が王家に入り少しでも今の混乱したこの国を守ろうと婚約したのだった。第二王子だったメルビスは昔からあまり有能ではないと評価されていて、彼が王太子になることに反対の貴族たちも少なからずあったのだ。キャスリンとの婚約は、その疑念を払しょくする意味合いも大きかったといえる。
しかしその婚約がキャスリンへの死へとつながっていく。
メルビル王子はまだ学園に通っていた。帝王学を学ぶため忙しいはずなのに、なぜか取り巻きを引き連れて我が物顔で学園を闊歩していた。今までは、第二王子ということでいさめるものもいたが、王太子となり次期国王となるものに物言えるものはいなかった。唯一いえるのが、次期王妃であり婚約者のキャスリンだった。
「メルビス様、最近執務室に行っておられますか。書類が滞っていると役人が申しておりました」
「今宰相であるロングがやってくれている。お前はうるさい」
「この国の事は父がしっかりと行っております。なのに何が不満なのですか」
キャスリンは、今の国の混乱を憂いてたびたびメルビス王太子に助言や忠告をした。しかしそれを嫌った王太子はキャスリンを見るだけで顔をしかめるようになり、キャスリンを遠ざけた。取り巻きの筆頭はハビセル侯爵家嫡男のオルコットであり、ハビセル侯爵家に近くて地位の高い貴族の息子たちがいつもメルビス王太子を守っていた。
宰相になったハビセル侯爵のロングは、自分と敵対していた貴族、主に王妃寄りの貴族を次々と中央政権から排除していき自分の子飼いの貴族たちを入れていった。王が病に倒れるまでは王が絶対であり、宰相という職はなかった。しかしハビセル侯爵のロングは王が病であることを理由に強硬に自分が宰相となったのである。
そのうちにメルビス王太子のそばには、ストラ男爵令嬢であるイソベラがいつもいるようになった。しかもメルビス王太子の取り巻きたちもいさめるどころか、イソベラを女神のようにあがめている始末だった。
確かにイソベラは気の強い顔をしているキャスリンとは違い、きゃしゃではかなそうな顔だちの令嬢だった。キャスリンも他の人たちにイソベラについて忠告されたこともあったが、男爵令嬢という身分もあってあまり気にも留めていなかったのだ。その頃は、学園に行くより王宮にある執務室に行く方が多くなっていた。最近きな臭いといわれ始めた隣国ペジタ国の事に追われていたのも大きかったのかもしれない。
そしてとうとうペジタ国に接しているトレント辺境伯の領地でいくつか暴動が起こった。トレント辺境伯は第一王子の婚約者であったロスタル家とも縁続きの代々王家に重用されてきた名門である。しかしその当主も今病に倒れており、まだ年若い嫡男が家を継いだばかりだった。ちょうどそれを見越したように暴動が起きたのだ。
そしてそれを制圧すべく数少なくなった王妃寄りのダイモック公爵家を含む貴族たちが、トレント辺境伯領に行かされることになった。
「お兄様、大丈夫ですか。心配ですわ」
「キャスリン、とにかくトレント辺境伯領の暴動を治めなくてはいけないんだ。今隣国であるペジタ国も何やら怪しい動きをしていると聞く。今こそ国を安定させなくては。スティーブ、私の代わりにキャスリンを守ってくれ」
「はい、命に代えましてもお守りいたします」
そうしてダイモック公爵家はじめいくつかの貴族たちがトレント辺境伯領へと向かい王都を離れていった。その中にはハビセル侯爵家寄りの貴族たちはいなかった。
それからすぐの事だった。それは、キャスリンが王宮の執務室に行こうと王宮の広場を横切ろうとした時だった。
「キャスリン・ダイモック!貴様は私の大切なイソベラ・ストアを殺そうとしたな。なんて卑劣な奴だ。貴様はナクビル国王妃にふさわしくない。貴様との婚約は破棄する。次期国王である私メルビスにはこのイソベラ・ストアがふさわしい。キャスリン・ダイモック、貴様は殺人を犯そうとした罪を償わなくてはいけない。こいつを牢屋へ連れていけ」
スティーブはキャスリンがぽろっと言った一言に身を乗り出して聞いてきた。犬のキャスリンに。
「キャスリン2号は16歳になったらあのくそ第二王子と婚約するのよ」
「えっどういうことですか?」
キャスリンは一回目の人生で自分が死ぬまでの事を話し始めた。
マークとバーバラが不慮の事故で亡くなった後は、ダイモック公爵家に次々に不幸が襲った。
マーク達が亡くなってすぐこの国ナクビル国に謎の病気が蔓延した。
初めに王家の王と王妃が病に倒れた。そしてダイモック公爵家当主であるスコットとミシェル。次々に貴族たちが病に倒れていった。スコットの弟であるバリントン伯爵家当主ジェームスも。
そして王が病で倒れた後、国を支えていた嫡子であり第一皇太子であるジョージ王子が、不慮の事故でこの世を去った。婚約者であったロスタル侯爵のサーシャも病に倒れ亡くなった。
今まで王家を支えてきた貴族たちも次々に謎の病に倒れていった。
そこで台頭してきたのがハビセル侯爵家だった。
ハビセル侯爵家は側妃キーラ妃の実家であり第二王子メルビス王子の後ろ盾となっていた。
まずは混乱した国を残った貴族で支えようと、病に倒れた王の代わりに実権を握り始めたハビセル侯爵の入れ知恵か側妃キーラ妃の要請で、ダイモック公爵家のキャスリンと第一王子がなくなったため皇太子となったメルビス王子の婚約がなされた。
兄のクロードは最後まで反対したが、キャスリンは自分が王家に入り少しでも今の混乱したこの国を守ろうと婚約したのだった。第二王子だったメルビスは昔からあまり有能ではないと評価されていて、彼が王太子になることに反対の貴族たちも少なからずあったのだ。キャスリンとの婚約は、その疑念を払しょくする意味合いも大きかったといえる。
しかしその婚約がキャスリンへの死へとつながっていく。
メルビル王子はまだ学園に通っていた。帝王学を学ぶため忙しいはずなのに、なぜか取り巻きを引き連れて我が物顔で学園を闊歩していた。今までは、第二王子ということでいさめるものもいたが、王太子となり次期国王となるものに物言えるものはいなかった。唯一いえるのが、次期王妃であり婚約者のキャスリンだった。
「メルビス様、最近執務室に行っておられますか。書類が滞っていると役人が申しておりました」
「今宰相であるロングがやってくれている。お前はうるさい」
「この国の事は父がしっかりと行っております。なのに何が不満なのですか」
キャスリンは、今の国の混乱を憂いてたびたびメルビス王太子に助言や忠告をした。しかしそれを嫌った王太子はキャスリンを見るだけで顔をしかめるようになり、キャスリンを遠ざけた。取り巻きの筆頭はハビセル侯爵家嫡男のオルコットであり、ハビセル侯爵家に近くて地位の高い貴族の息子たちがいつもメルビス王太子を守っていた。
宰相になったハビセル侯爵のロングは、自分と敵対していた貴族、主に王妃寄りの貴族を次々と中央政権から排除していき自分の子飼いの貴族たちを入れていった。王が病に倒れるまでは王が絶対であり、宰相という職はなかった。しかしハビセル侯爵のロングは王が病であることを理由に強硬に自分が宰相となったのである。
そのうちにメルビス王太子のそばには、ストラ男爵令嬢であるイソベラがいつもいるようになった。しかもメルビス王太子の取り巻きたちもいさめるどころか、イソベラを女神のようにあがめている始末だった。
確かにイソベラは気の強い顔をしているキャスリンとは違い、きゃしゃではかなそうな顔だちの令嬢だった。キャスリンも他の人たちにイソベラについて忠告されたこともあったが、男爵令嬢という身分もあってあまり気にも留めていなかったのだ。その頃は、学園に行くより王宮にある執務室に行く方が多くなっていた。最近きな臭いといわれ始めた隣国ペジタ国の事に追われていたのも大きかったのかもしれない。
そしてとうとうペジタ国に接しているトレント辺境伯の領地でいくつか暴動が起こった。トレント辺境伯は第一王子の婚約者であったロスタル家とも縁続きの代々王家に重用されてきた名門である。しかしその当主も今病に倒れており、まだ年若い嫡男が家を継いだばかりだった。ちょうどそれを見越したように暴動が起きたのだ。
そしてそれを制圧すべく数少なくなった王妃寄りのダイモック公爵家を含む貴族たちが、トレント辺境伯領に行かされることになった。
「お兄様、大丈夫ですか。心配ですわ」
「キャスリン、とにかくトレント辺境伯領の暴動を治めなくてはいけないんだ。今隣国であるペジタ国も何やら怪しい動きをしていると聞く。今こそ国を安定させなくては。スティーブ、私の代わりにキャスリンを守ってくれ」
「はい、命に代えましてもお守りいたします」
そうしてダイモック公爵家はじめいくつかの貴族たちがトレント辺境伯領へと向かい王都を離れていった。その中にはハビセル侯爵家寄りの貴族たちはいなかった。
それからすぐの事だった。それは、キャスリンが王宮の執務室に行こうと王宮の広場を横切ろうとした時だった。
「キャスリン・ダイモック!貴様は私の大切なイソベラ・ストアを殺そうとしたな。なんて卑劣な奴だ。貴様はナクビル国王妃にふさわしくない。貴様との婚約は破棄する。次期国王である私メルビスにはこのイソベラ・ストアがふさわしい。キャスリン・ダイモック、貴様は殺人を犯そうとした罪を償わなくてはいけない。こいつを牢屋へ連れていけ」
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