11 / 91
本の中身はこうでした
しおりを挟む
キャスリンは目を開けた。もう何度経験しただろうか気が付いたらまたベッドの上にいた。
もう何度目だろう、気を失ったのは。起き上がり、ついこの前までは気を失ったことなど一度もなかったのにとひとり苦笑いを浮かべていると、ドアのノックの音がしてバーバラは入ってきた。
「お嬢様、お体の具合はいかがですか」
「なんともないわ。ありがとう」
このやり取りも何度目だろうと思いながらバーバラを見ると、バーバラもそう思ったのか、キャスリンを見て笑った。
「お嬢様、大変でしたね」
「そうね。ねえバーバラお茶が飲みたいわ。もってくてくれる?」
「はい」
そういってバーバラは部屋を出ていき、部屋にはキャスリン一人になった。
改めて腕にはまっている腕輪を見る。きれいな装飾が施された小さな腕輪だった。真ん中に黄色い石がはめ込まれている。まるでアシュイラの花の色の様だった。先ほどの出来事が夢ではなかったことを物語っていた。
時計を見るとマークの家に行ってから1時間ぐらいしかたっていない。キャスリンは本を手に取ってからの事を思い返した。
キャスリンは真っ白な中にいた。次第に景色が浮かび上がってきた。
「ここはどこなの?」
キャスリンではない声がした。どうやら森の中にいるようで、木々の緑と土の深い匂いがした。声の様子から女性らしいとキャスリンは思った。その声の主はいろいろつぶやきながら歩いていく。
「誰かいませんか?」
時々誰か助けを呼んでいるのか声が聞こえた。しかしうっそうと木々が茂った森の中は、彼女の歩く足音と木々の葉が風にそよぐ音しか聞こえない。
「もう、嫌になっちゃうわ。靴も泥だらけ」
そういってその女性は大きな木にもたれかかって座った。キャスリンはその泥だらけの靴を見て驚いた。何やら変な履物を穿いている。紐が靴に巻かれていて、靴は布なのか小さな穴がぽつぽつ開いている。見たこともない不思議なものだった。もっとへんなのはその靴をキャスリンが履いているのである。もっというと女性が履いている靴をキャスリンも見ている。
「あ~あ、洋服も汚れちゃった。それにしてもここどこよ。アマゾンか何か?私東京にいたのに」
女性は意味不明なことをぶつぶつ言っていた。まるでキャスリンが言っているようにすぐ近くで聞こえる。キャスリンはその女性に話しかけようとした。しかし声が出せない。手も足も動かせない。自分の体を見ようとしたが見ることができない。
女性は変わった洋服の中から四角い小さなものを取り出した。
「ここ圏外?いやだぁ、どこにいるのかわからないじゃない」
女性は途方に暮れたようだ。その悲しくて苦しい気持ちがキャスリンに伝わってきた。
キャスリンはその女性に話しかけようと頑張ったが、どうもキャスリンの意思は通じないようだった。
それからその女性とキャスリンは一緒に過ごした、というよりその女性の頭の中にキャスリンの意思だけがあるということがわかってきた。
どうやらその女性は別の場所から来たらしく、森を抜けやっと町に着いた時には町の様子を見てへたり込んだ。
「ここどこよ~」
ただ女性は森の中で不思議なことをしていた。どうやら女性が願うとほしいものが出てくるらしく、木を触ると不思議なものがぶら下がって女性は喜んでそれを食べたり飲んだりしていた。
「私ってチート?」
そしてそのたびに謎の言葉をつぶやいていた。それからキャスリンは何度もこの言葉を聞くことになるが、この時の女性のあまりの喜びに、訳が分からないキャスリンまでうれしくなった。
女性は汚れた洋服と靴を変えるため、村の人たちに何やら不思議なものと交換していた。木からぶら下がった変なものを同じく木からぶら下がっていた変な入れ物に入れて、背中に背負い旅をした。
途中危ない目にも何度もあったが、女性の持つ不思議な力で解決していった。
それでも女性はたまにすごく悲しくなることがあるらしく、キャスリンにまでその気持ちが流れ込んできた。そんな時にはキャスリンは聞こえていないと思いながらも、自分が小さい時に母親から聞かせてもらった子守唄を歌った。すると女性は何だか少し元気が出るようだった。
次第にキャスリンは、女性が住んでいた世界を見ることができるようになった。
女性が眠っているとき夢で見ているのだろうか、女性が住んでいた世界を知った。この世界とはあまりに違い、初めてその世界の様子を見た時には、女性と一緒にいていろいろびっくりしていたキャスリンも、これ以上ないほど驚くこととなった。
四角い黒いものから景色や人が映ったり声がした。夜には部屋がものすごく明るくなったり、外には大きな不思議な建物がいっぱい立っていた。さらには馬車ではない不思議な乗り物が動いており、空にも不思議な乗り物が鳥のように飛んでいた。
お店と呼ばれるところには、色とりどりの不思議な洋服や食べ物やらありとあらゆるものが売っていた。
その女性が住んでいた世界は、平和で皆が楽しく暮らしているようにキャスリンには思えた。しかし女性が家族であろう人達や学校で戦争の話をしたりするのを聞いた。不思議な四角い黒いものからも戦争の話が出てきた。しかしその戦争は、この世界の争いというものとは程遠いもっと怖くて危ないものだった。
女性はあるときこの世界で一人の男性と会った。その男性と一緒にいるようになったころから、楽しいうれしいという感情がキャスリンにも流れてきた。
2人は、いつも一緒に行動するようになって、いつの間にかその女性は家族を持っていた。
女性は自分の持っている不思議な力で、次々にいろいろなものを作っていった。そして周りの人たちに分け与えていった。そうして二人は仲良く年を取っていった。
ついに男性が先に死んでしまい、しばらく女性は嘆き悲しんでいたが家族に見守られて亡くなった。
そこでキャスリンは目が覚めたのだった。
そして一つの事実を知った。
これってアシュイラ皇国建国の王と王妃の事だったの?キャスリンは今では神話のように伝説となったアスイラ皇国の裏話を知ってがっくりきたのだった。
アシュイラって名前、彼女が口の中にものをいっぱい入れて話したときに、聞いた人がうっかり聞き間違えてつけられた名前だったの?
もう何度目だろう、気を失ったのは。起き上がり、ついこの前までは気を失ったことなど一度もなかったのにとひとり苦笑いを浮かべていると、ドアのノックの音がしてバーバラは入ってきた。
「お嬢様、お体の具合はいかがですか」
「なんともないわ。ありがとう」
このやり取りも何度目だろうと思いながらバーバラを見ると、バーバラもそう思ったのか、キャスリンを見て笑った。
「お嬢様、大変でしたね」
「そうね。ねえバーバラお茶が飲みたいわ。もってくてくれる?」
「はい」
そういってバーバラは部屋を出ていき、部屋にはキャスリン一人になった。
改めて腕にはまっている腕輪を見る。きれいな装飾が施された小さな腕輪だった。真ん中に黄色い石がはめ込まれている。まるでアシュイラの花の色の様だった。先ほどの出来事が夢ではなかったことを物語っていた。
時計を見るとマークの家に行ってから1時間ぐらいしかたっていない。キャスリンは本を手に取ってからの事を思い返した。
キャスリンは真っ白な中にいた。次第に景色が浮かび上がってきた。
「ここはどこなの?」
キャスリンではない声がした。どうやら森の中にいるようで、木々の緑と土の深い匂いがした。声の様子から女性らしいとキャスリンは思った。その声の主はいろいろつぶやきながら歩いていく。
「誰かいませんか?」
時々誰か助けを呼んでいるのか声が聞こえた。しかしうっそうと木々が茂った森の中は、彼女の歩く足音と木々の葉が風にそよぐ音しか聞こえない。
「もう、嫌になっちゃうわ。靴も泥だらけ」
そういってその女性は大きな木にもたれかかって座った。キャスリンはその泥だらけの靴を見て驚いた。何やら変な履物を穿いている。紐が靴に巻かれていて、靴は布なのか小さな穴がぽつぽつ開いている。見たこともない不思議なものだった。もっとへんなのはその靴をキャスリンが履いているのである。もっというと女性が履いている靴をキャスリンも見ている。
「あ~あ、洋服も汚れちゃった。それにしてもここどこよ。アマゾンか何か?私東京にいたのに」
女性は意味不明なことをぶつぶつ言っていた。まるでキャスリンが言っているようにすぐ近くで聞こえる。キャスリンはその女性に話しかけようとした。しかし声が出せない。手も足も動かせない。自分の体を見ようとしたが見ることができない。
女性は変わった洋服の中から四角い小さなものを取り出した。
「ここ圏外?いやだぁ、どこにいるのかわからないじゃない」
女性は途方に暮れたようだ。その悲しくて苦しい気持ちがキャスリンに伝わってきた。
キャスリンはその女性に話しかけようと頑張ったが、どうもキャスリンの意思は通じないようだった。
それからその女性とキャスリンは一緒に過ごした、というよりその女性の頭の中にキャスリンの意思だけがあるということがわかってきた。
どうやらその女性は別の場所から来たらしく、森を抜けやっと町に着いた時には町の様子を見てへたり込んだ。
「ここどこよ~」
ただ女性は森の中で不思議なことをしていた。どうやら女性が願うとほしいものが出てくるらしく、木を触ると不思議なものがぶら下がって女性は喜んでそれを食べたり飲んだりしていた。
「私ってチート?」
そしてそのたびに謎の言葉をつぶやいていた。それからキャスリンは何度もこの言葉を聞くことになるが、この時の女性のあまりの喜びに、訳が分からないキャスリンまでうれしくなった。
女性は汚れた洋服と靴を変えるため、村の人たちに何やら不思議なものと交換していた。木からぶら下がった変なものを同じく木からぶら下がっていた変な入れ物に入れて、背中に背負い旅をした。
途中危ない目にも何度もあったが、女性の持つ不思議な力で解決していった。
それでも女性はたまにすごく悲しくなることがあるらしく、キャスリンにまでその気持ちが流れ込んできた。そんな時にはキャスリンは聞こえていないと思いながらも、自分が小さい時に母親から聞かせてもらった子守唄を歌った。すると女性は何だか少し元気が出るようだった。
次第にキャスリンは、女性が住んでいた世界を見ることができるようになった。
女性が眠っているとき夢で見ているのだろうか、女性が住んでいた世界を知った。この世界とはあまりに違い、初めてその世界の様子を見た時には、女性と一緒にいていろいろびっくりしていたキャスリンも、これ以上ないほど驚くこととなった。
四角い黒いものから景色や人が映ったり声がした。夜には部屋がものすごく明るくなったり、外には大きな不思議な建物がいっぱい立っていた。さらには馬車ではない不思議な乗り物が動いており、空にも不思議な乗り物が鳥のように飛んでいた。
お店と呼ばれるところには、色とりどりの不思議な洋服や食べ物やらありとあらゆるものが売っていた。
その女性が住んでいた世界は、平和で皆が楽しく暮らしているようにキャスリンには思えた。しかし女性が家族であろう人達や学校で戦争の話をしたりするのを聞いた。不思議な四角い黒いものからも戦争の話が出てきた。しかしその戦争は、この世界の争いというものとは程遠いもっと怖くて危ないものだった。
女性はあるときこの世界で一人の男性と会った。その男性と一緒にいるようになったころから、楽しいうれしいという感情がキャスリンにも流れてきた。
2人は、いつも一緒に行動するようになって、いつの間にかその女性は家族を持っていた。
女性は自分の持っている不思議な力で、次々にいろいろなものを作っていった。そして周りの人たちに分け与えていった。そうして二人は仲良く年を取っていった。
ついに男性が先に死んでしまい、しばらく女性は嘆き悲しんでいたが家族に見守られて亡くなった。
そこでキャスリンは目が覚めたのだった。
そして一つの事実を知った。
これってアシュイラ皇国建国の王と王妃の事だったの?キャスリンは今では神話のように伝説となったアスイラ皇国の裏話を知ってがっくりきたのだった。
アシュイラって名前、彼女が口の中にものをいっぱい入れて話したときに、聞いた人がうっかり聞き間違えてつけられた名前だったの?
12
お気に入りに追加
2,278
あなたにおすすめの小説
【完結】醜い豚公爵様と結婚することになりましたが愛してくれるので幸せです
なか
恋愛
自分の事だけが大好きで
極度のナルシストの婚約者のレオナード様に告げた
「婚約破棄してください」と
その結果お父様には伯爵家を勘当され
更には他貴族達にも私のあらぬ噂をレオナード様に広めまれた
だけど、唯一
私に手を差し伸べてくれたのは
醜い豚公爵と陰で馬鹿にされていたウィリアム様だけだ
彼の元へと嫁ぐ事になり馬鹿にされたが
みんなは知らないだけ
彼の魅力にね
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
【完結】他の令嬢をひいきする婚約者と円満に別れる方法はありますか?
曽根原ツタ
恋愛
マノンの婚約者デリウスは、女友達のルチミナばかりえこひいきしている。『女友達』というのは建前で、本当は彼女に好意を寄せているのをマノンは察していた。彼はマノンにはひどい態度を取るのに、ルチミナのことをいつも絶賛するし優先し続けた。
そんなあるとき、大事件発生。
デリウスがなんと、マノンにふさわしい婿を決めるための決闘を新大公から申し込まれて……?
★他の令嬢をひいきする婚約者と(ちょっと物騒な方法で)すっぱり別れ、新しい恋をする話。
小説家になろうでも公開中
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
「おまえを愛している」と言い続けていたはずの夫を略奪された途端、バツイチ子持ちの新国王から「とりあえず結婚しようか?」と結婚請求された件
ぽんた
恋愛
「わからないかしら? フィリップは、もうわたしのもの。わたしが彼の妻になるの。つまり、あなたから彼をいただいたわけ。だから、あなたはもう必要なくなったの。王子妃でなくなったということよ」
その日、「おまえを愛している」と言い続けていた夫を略奪した略奪レディからそう宣言された。
そして、わたしは負け犬となったはずだった。
しかし、「とりあえず、おれと結婚しないか?」とバツイチの新国王にプロポーズされてしまった。
夫を略奪され、負け犬認定されて王宮から追い出されたたった数日の後に。
ああ、浮気者のクズな夫からやっと解放され、自由気ままな生活を送るつもりだったのに……。
今度は王妃に?
有能な夫だけでなく、尊い息子までついてきた。
※ハッピーエンド。微ざまぁあり。タイトルそのままです。ゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる