4 / 8
4 夢じゃなかった
しおりを挟む
再び私は目を開けた。天井の模様が目に飛び込んできた。見慣れた木の木目の天井じゃない。もう一度強く目をつぶる。そして目を開けた。やはりそこには大きなきらきらしたシャンデリアが天井につるされていた。いつもの天井ではなかった。
それと同時に首にちりっと痛みを感じた。手を首に持っていくと、やはり首には包帯がまかれている。真上に見えるきらきらしたシャンデリアがにじんでぼやけて見えた。どれくらいそうしていただろうか。
部屋に誰か静かに入ってきた。
「目を覚まされたんですね」
そういって近寄ってきた女の人が、私を見て思わずといった風で足を止めた。
「泣いてらっしゃったんですね。もう大丈夫ですよ」
その女の人は、私を抱き起し優しく抱きしめてくれた。私はその時初めて自分が泣いていることを感じた。そしてそれが抑えきれなくなった。
「わあぁああぁぁ___」
その女の人は、私が泣き止むまで優しく背中をなでてくれていた。泣き疲れた私は、やっと我に返った。それまで抱きしめていてくれた女性もそんな私に気が付いて体を離してくれた。
「すっ、すみません。ありがとうございます」
私がお礼を言うとその人はニコッと微笑んでくれた。その人は先ほど起きた時に私に水を差し出してくれた人だった。
「お水また飲みます?」
私がうなづくとまたその女性はコップに入った水をくれた。前に飲んだ時と同じレモンが入った水のようなすっきりとした味がする。
「おいしい」
私がすべて飲んでしまうと、その女性は空になったコップを受け取った。
その女性は、ベッドのそばにあった椅子に座った。
「いきなりでびっくりされたでしょうね。私は、アリーと申します。これからお嬢様のお世話をさせていただきます。何でもおっしゃってくださいね。しばらく寝ていらしたので、お腹がすきませんか? よろしければ今何かお持ちしますね」
アリーと名乗った女性が、そういうと確かに私のお腹は空いているようだった。
「ぐぅぅうう___」
急にお腹の音が静かな部屋中に響き渡った。私はずいぶん図太い性格をしているらしい。こんな時にもお腹が空いたと主張している。
「すみません」
私が謝ると、アリーは首を振った。
「いえいえ、丸二日も寝ていらしたんです。お腹がすくのは当たり前ですよ。ちょっと待っててくださいね」
そういってアリーは部屋を出ていった。
私は、アリーが言った丸二日という言葉にびっくりしてそれどころではなかった。
「ここはどこなの?」
その時初めて部屋を見回した。少し離れたテーブルにあの青い石のネックレスが置いてあった。窓からは外の景色が見える。太陽がきらきら輝く湖とさわさわと風に葉を揺らしている木々が見えた。
私が外の景色をぼーと眺めている間に、アリーはお盆にいい匂いがするものをのせて戻ってきた。
「さあ、お食事ですよ。胃がびっくりしますからね。胃に優しいものを持ってまいりました」
そうして私の前にお盆を置いた。お盆の中にはお粥のようなものが入っていた。アリーにスプーンをもらい、お粥のようなものをすくう。口の中に一口入れると、それはリゾットを薄くしたような優しい味だった。気が付けばパクパクと食べていて器はいつの間にか空になっていた。アリーは空になった器をお盆さら下げて、今度はカップを渡してきた。何やら赤い液体が入っている。
「どうぞ。これも胃に優しいんですよ。でも栄養があるんです」
そういわれて一口飲むとイチゴのような味がした。甘くておいしくてごくごくと飲んでしまった。そしてアリーに優しく手や口を拭かれて、また横にさせられた。
「もうちょっとおやすみくださいませ」
私は、聞きたいことがいっぱいあったはずなのに気が付けばまた眠りの世界に旅立っていた。
アリーは、空になったお盆を持ってそっと部屋を出た。廊下に出てしばらく行くと、声をかけられた。
「どうだった?」
「泣いておられましたよ」
「そうか、びっくりしただろうね。何か言っていたかい?」
「いえ、何も。今はまたお休みになっておられます」
「そうか」
「あのお方はやはり?」
「たぶん。着ていたものは、この国にはない素材でできている。ただ春子様が着ていたものとは少し違うようだ」
「そうなんですね。でもまだいろいろお聞きするのはおやめくださいませ。そうでなくてもあのお方にはショックが大きいようでしたので」
「そうだな。確かにあのお方は、春子様がいた世界とは違うのかもしれないが、あのお方もときびと様なのだからね」
「ブレック様にご報告は?」
「しないよ。ときびと様にあんなことをしてしまったんだ。すぐには会わさないよ。それにまた会わせたらまた何をするか...」
「そうですね」
二人は、そううなづきあって廊下を歩いていったのだった。
それと同時に首にちりっと痛みを感じた。手を首に持っていくと、やはり首には包帯がまかれている。真上に見えるきらきらしたシャンデリアがにじんでぼやけて見えた。どれくらいそうしていただろうか。
部屋に誰か静かに入ってきた。
「目を覚まされたんですね」
そういって近寄ってきた女の人が、私を見て思わずといった風で足を止めた。
「泣いてらっしゃったんですね。もう大丈夫ですよ」
その女の人は、私を抱き起し優しく抱きしめてくれた。私はその時初めて自分が泣いていることを感じた。そしてそれが抑えきれなくなった。
「わあぁああぁぁ___」
その女の人は、私が泣き止むまで優しく背中をなでてくれていた。泣き疲れた私は、やっと我に返った。それまで抱きしめていてくれた女性もそんな私に気が付いて体を離してくれた。
「すっ、すみません。ありがとうございます」
私がお礼を言うとその人はニコッと微笑んでくれた。その人は先ほど起きた時に私に水を差し出してくれた人だった。
「お水また飲みます?」
私がうなづくとまたその女性はコップに入った水をくれた。前に飲んだ時と同じレモンが入った水のようなすっきりとした味がする。
「おいしい」
私がすべて飲んでしまうと、その女性は空になったコップを受け取った。
その女性は、ベッドのそばにあった椅子に座った。
「いきなりでびっくりされたでしょうね。私は、アリーと申します。これからお嬢様のお世話をさせていただきます。何でもおっしゃってくださいね。しばらく寝ていらしたので、お腹がすきませんか? よろしければ今何かお持ちしますね」
アリーと名乗った女性が、そういうと確かに私のお腹は空いているようだった。
「ぐぅぅうう___」
急にお腹の音が静かな部屋中に響き渡った。私はずいぶん図太い性格をしているらしい。こんな時にもお腹が空いたと主張している。
「すみません」
私が謝ると、アリーは首を振った。
「いえいえ、丸二日も寝ていらしたんです。お腹がすくのは当たり前ですよ。ちょっと待っててくださいね」
そういってアリーは部屋を出ていった。
私は、アリーが言った丸二日という言葉にびっくりしてそれどころではなかった。
「ここはどこなの?」
その時初めて部屋を見回した。少し離れたテーブルにあの青い石のネックレスが置いてあった。窓からは外の景色が見える。太陽がきらきら輝く湖とさわさわと風に葉を揺らしている木々が見えた。
私が外の景色をぼーと眺めている間に、アリーはお盆にいい匂いがするものをのせて戻ってきた。
「さあ、お食事ですよ。胃がびっくりしますからね。胃に優しいものを持ってまいりました」
そうして私の前にお盆を置いた。お盆の中にはお粥のようなものが入っていた。アリーにスプーンをもらい、お粥のようなものをすくう。口の中に一口入れると、それはリゾットを薄くしたような優しい味だった。気が付けばパクパクと食べていて器はいつの間にか空になっていた。アリーは空になった器をお盆さら下げて、今度はカップを渡してきた。何やら赤い液体が入っている。
「どうぞ。これも胃に優しいんですよ。でも栄養があるんです」
そういわれて一口飲むとイチゴのような味がした。甘くておいしくてごくごくと飲んでしまった。そしてアリーに優しく手や口を拭かれて、また横にさせられた。
「もうちょっとおやすみくださいませ」
私は、聞きたいことがいっぱいあったはずなのに気が付けばまた眠りの世界に旅立っていた。
アリーは、空になったお盆を持ってそっと部屋を出た。廊下に出てしばらく行くと、声をかけられた。
「どうだった?」
「泣いておられましたよ」
「そうか、びっくりしただろうね。何か言っていたかい?」
「いえ、何も。今はまたお休みになっておられます」
「そうか」
「あのお方はやはり?」
「たぶん。着ていたものは、この国にはない素材でできている。ただ春子様が着ていたものとは少し違うようだ」
「そうなんですね。でもまだいろいろお聞きするのはおやめくださいませ。そうでなくてもあのお方にはショックが大きいようでしたので」
「そうだな。確かにあのお方は、春子様がいた世界とは違うのかもしれないが、あのお方もときびと様なのだからね」
「ブレック様にご報告は?」
「しないよ。ときびと様にあんなことをしてしまったんだ。すぐには会わさないよ。それにまた会わせたらまた何をするか...」
「そうですね」
二人は、そううなづきあって廊下を歩いていったのだった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜
ぐう
恋愛
アンジェラ編
幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど…
彼が選んだのは噂の王女様だった。
初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか…
ミラ編
婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか…
ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。
小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
伯爵令嬢の苦悩
夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。
婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる