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3 秘密のネックレス
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部屋に戻った私は、すぐに日記を読もうと思ったがお風呂に入らなくてはいけなかった。思ったより祖母の部屋で長い時間しゃべってしまっていたのだ。
お風呂を出てから、ベッドの上でゆっくり日記を読もうとしたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。
春休みである朝はだらけてしまい、つい起きるのが遅くなる。今日も遅くまで寝ていたので、母に起こされた。寝ぼけながら朝ご飯を食べる。
「早く支度しないと、鏡台運んであげないわよ」
母のその一言で、私はこれ以上ないほど急いで支度を始めた。母にびっくりされるほど、すばやく支度を終えた私は、お蔵に走っていった。そこにはもう父や祖父がいた。父と祖父は、鏡台を鏡と下の台座がつながれている部分を外していた。私と母は台座の部分の引き出しをとり出した。
「ねえお母さん、この引き出し鍵が付いていてあかない」
「本当ね。まあこの引き出しだけなら小さいしそのままでいいでしょ」
こうして私たちは家族総出で鏡台を私の部屋に運び込んだ。いざ私の部屋に運び込まれた鏡台は、昨日磨きに磨いたこともあってとてもきれいだった。あちこちに施されている彫刻の飾りが優雅だ。
「この部屋に合うわね」
母は、鏡台を見ていった。
「それはそうよ。もともとこの部屋に合わせて、この鏡台は作られたそうだから」
祖母が私の部屋に運び込まれた鏡台を見てそう言った。我が家は、もともと明治時代に建てられた屋敷だ。あちこち修復や改築を重ねて今に至る。この部屋は、もともとひいおばあちゃんが使っていた部屋らしい。私も気にいているが、実にレトロで遊びに来た友達皆が、うらやましがるのだ。鏡台は、そんな部屋にこれ以上ないほどしっくりしている。
皆が運び終えた部屋で、私は一人鏡台に座ってみた。椅子もお蔵にあったものをきれいに拭いて持ってきた。木の一枚板でできた座面はとても座り心地がいい。しばらく椅子の座り心地や鏡台の彫刻何度を見ていたが、ふと引き出しが気になった。それは、先ほど鍵がかかっているために開かなかった引き出しだ。
私は引き出しをグイッとひっぱってみたが、びくともしなかった。不意に鏡の横の方がきらっと光った気がした。思わずその光った鏡の方に手を伸ばした。鏡を支えている木の棒に指を突っ込んでみる。何か小さいものが指に当たった。かろうじて指が当たるそれをつまんだ。指につまんだものを見ると、それは細い細い棒のような鍵だった。
その鍵を先ほどのカギのかかっている引き出しの鍵穴にそっと入れてみる。カチッと音がした。
どうしてかわからないが、心臓の音が高鳴る気がした。引き出しをそおっと開けた。しかし中は空だった。
「空じゃん」
思い切り期待を裏切られて失望の声が出た。引き出しをしまおうとした時だ。その引き出しの奥行きが鏡台に対して少し小さいことに気が付いた。
「あれっ」
私は引き出しを鏡台の上に置き、引き出しがあった場所を覗き込んだ。板が見えるだけで何も見えない。今度は手を入れてみた。やはり板が指に当たる。板に指を滑らせてみた。すると、板の端に切れ目があって、指一本分だけはいる隙間があった。その隙間に指を押し込むと何やらボタンのようなものに当たってカチッとまた音がかすかに聞こえた。すると、今まであった板が取れた。奥に何かあるようだ。また指を突っ込むと、また何かに当たった。今度はそれを慎重に取り出した。
出てきたのは木でできた箱だった。どうやら隠された引き出しのようだ。その箱は小さいにもかかわらず重かった。上がふたのようになっている。ドキドキする心臓の音を聞きながら、ふたを開けた。
そこには真ん中にきれいな青い石が置かれていて、その左右に二個ずつの真ん中よりは小さな青い石が配置されているネックレスが入っていた。私がそのネックレスを持ち上げると、青い石がきらきら光った。ネックレスはその石たちでずっしりと重い。その青い石は、晴れ渡った真っ青い空に近い色をしている。
もしひいおばあちゃんの時代のものだったらずいぶん前のものだろうに、それは真新しく見えた。ネックレスのチェーンも古びていない。
「この石、宝石かなぁ?」
私は、そのネックレスを眺めたり太陽の光にかざしたりして見た。見ているだけで吸い込まれそうな青い色だった。
不意にそれを付けてみたい衝動に駆られて、気が付けばネックレスの留め具を首の後ろに回していた。
「つけたままでお母さんのところに行ったら驚くだろうな」
その時にはそう単純に考えていた。首の後ろにある繊細な留め具をきちんとつけた時だった。
窓は閉め切って風はないはずなのに、突然強い風を顔に感じた。思わず目を閉じた。体がぐわんと揺れた。
どれくらいそうしていたのだろう。気が付けば私は、今までいた自分の部屋ではなく知らない場所に立っていたのだった。
お風呂を出てから、ベッドの上でゆっくり日記を読もうとしたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。
春休みである朝はだらけてしまい、つい起きるのが遅くなる。今日も遅くまで寝ていたので、母に起こされた。寝ぼけながら朝ご飯を食べる。
「早く支度しないと、鏡台運んであげないわよ」
母のその一言で、私はこれ以上ないほど急いで支度を始めた。母にびっくりされるほど、すばやく支度を終えた私は、お蔵に走っていった。そこにはもう父や祖父がいた。父と祖父は、鏡台を鏡と下の台座がつながれている部分を外していた。私と母は台座の部分の引き出しをとり出した。
「ねえお母さん、この引き出し鍵が付いていてあかない」
「本当ね。まあこの引き出しだけなら小さいしそのままでいいでしょ」
こうして私たちは家族総出で鏡台を私の部屋に運び込んだ。いざ私の部屋に運び込まれた鏡台は、昨日磨きに磨いたこともあってとてもきれいだった。あちこちに施されている彫刻の飾りが優雅だ。
「この部屋に合うわね」
母は、鏡台を見ていった。
「それはそうよ。もともとこの部屋に合わせて、この鏡台は作られたそうだから」
祖母が私の部屋に運び込まれた鏡台を見てそう言った。我が家は、もともと明治時代に建てられた屋敷だ。あちこち修復や改築を重ねて今に至る。この部屋は、もともとひいおばあちゃんが使っていた部屋らしい。私も気にいているが、実にレトロで遊びに来た友達皆が、うらやましがるのだ。鏡台は、そんな部屋にこれ以上ないほどしっくりしている。
皆が運び終えた部屋で、私は一人鏡台に座ってみた。椅子もお蔵にあったものをきれいに拭いて持ってきた。木の一枚板でできた座面はとても座り心地がいい。しばらく椅子の座り心地や鏡台の彫刻何度を見ていたが、ふと引き出しが気になった。それは、先ほど鍵がかかっているために開かなかった引き出しだ。
私は引き出しをグイッとひっぱってみたが、びくともしなかった。不意に鏡の横の方がきらっと光った気がした。思わずその光った鏡の方に手を伸ばした。鏡を支えている木の棒に指を突っ込んでみる。何か小さいものが指に当たった。かろうじて指が当たるそれをつまんだ。指につまんだものを見ると、それは細い細い棒のような鍵だった。
その鍵を先ほどのカギのかかっている引き出しの鍵穴にそっと入れてみる。カチッと音がした。
どうしてかわからないが、心臓の音が高鳴る気がした。引き出しをそおっと開けた。しかし中は空だった。
「空じゃん」
思い切り期待を裏切られて失望の声が出た。引き出しをしまおうとした時だ。その引き出しの奥行きが鏡台に対して少し小さいことに気が付いた。
「あれっ」
私は引き出しを鏡台の上に置き、引き出しがあった場所を覗き込んだ。板が見えるだけで何も見えない。今度は手を入れてみた。やはり板が指に当たる。板に指を滑らせてみた。すると、板の端に切れ目があって、指一本分だけはいる隙間があった。その隙間に指を押し込むと何やらボタンのようなものに当たってカチッとまた音がかすかに聞こえた。すると、今まであった板が取れた。奥に何かあるようだ。また指を突っ込むと、また何かに当たった。今度はそれを慎重に取り出した。
出てきたのは木でできた箱だった。どうやら隠された引き出しのようだ。その箱は小さいにもかかわらず重かった。上がふたのようになっている。ドキドキする心臓の音を聞きながら、ふたを開けた。
そこには真ん中にきれいな青い石が置かれていて、その左右に二個ずつの真ん中よりは小さな青い石が配置されているネックレスが入っていた。私がそのネックレスを持ち上げると、青い石がきらきら光った。ネックレスはその石たちでずっしりと重い。その青い石は、晴れ渡った真っ青い空に近い色をしている。
もしひいおばあちゃんの時代のものだったらずいぶん前のものだろうに、それは真新しく見えた。ネックレスのチェーンも古びていない。
「この石、宝石かなぁ?」
私は、そのネックレスを眺めたり太陽の光にかざしたりして見た。見ているだけで吸い込まれそうな青い色だった。
不意にそれを付けてみたい衝動に駆られて、気が付けばネックレスの留め具を首の後ろに回していた。
「つけたままでお母さんのところに行ったら驚くだろうな」
その時にはそう単純に考えていた。首の後ろにある繊細な留め具をきちんとつけた時だった。
窓は閉め切って風はないはずなのに、突然強い風を顔に感じた。思わず目を閉じた。体がぐわんと揺れた。
どれくらいそうしていたのだろう。気が付けば私は、今までいた自分の部屋ではなく知らない場所に立っていたのだった。
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