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サミエル・コールマスのその後
助言
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「今度ございますパーティーですが、ご出席なさいますか?」
執事がパーティーの招待状を持ってきた。サミエルが招待状を見ると、わが公爵家に親しいものが主催するようだ。サミエルはふとアミエ嬢の顔が思い浮かんだ。婚約破棄してからは、自分から懇願して出たものをの除いては家族からの要望で2回ほど一緒に出席したことがあったが、最近はパーティー自体に出席していなかった。ちょうど閑散期に入っていたことも大きいのだが、誰からも言われなかったのも大きい。
わが公爵家にも招待状が来ているとなると、アミエの家の侯爵家にも来ているだろう。今日は、ちょうどアミエ嬢が来る予定だったので、聞いてみることにした。
「アミエ嬢、今度のパーティーには出席する?」
サミエルは、いつものようにブラックを連れてきたアミエに尋ねた。いつもならすぐ返事があるのだが、今日のアミエはなぜかサミエルのほうを見ずに、じゃれついてくる犬たちの方を見たまま答えた。
「...ええ、出席いたします」
「そうか、私も出席する予定なんだ。もしよければ一緒に...」
サミエルは、一緒に行かないかというつもりだったが、アミエにさえぎられてしまった。
「そのパーティーは、他の方と一緒に行くことになっておりますの」
「そうなのか」
サミエルは、その時は別段気にしていなかった。親戚か弟と行くのかと思っていたのだ。アミエには弟がいる。この前社交界デビューしたばかりだ。
サミエルがパーティーに着くと、フロアにはもう何組か踊っている者たちがいた。その一組に思わず目がいっ た。どう見てもアミエが男性と踊っている。アミエが楽しそうに踊っているのを見たサミエルは、自分がどんな顔をしていたのかわからなかった。
「やあサミエル」
サミエルに声をかけてきたのは、親しい友人だった。以前の婚約破棄の時にも助言や苦言をしてくれた大切な友人だ。
「やあ」
「アミエ嬢、いつにもましてきれいだな」
その友人が感心したように言った。サミエルもアミエの様子をじっと見る。ここ一年犬の事でよく会っていたが、その時のアミエは犬を連れていたため軽装のドレス姿だった。今日のような正装を見たのは久しぶりだ。サミエルがアミエから視線を外せずにいると、友人が自分を凝視しているのに気が付いた。
サミエルが友人を見ると、その友人は呆れたような顔になった。
「サミエル、今お前自分がどんな顔しているか知ってるか?まるで嫉妬しているようなすごい形相になっていたぞ」
「嫉妬?誰に?」
サミエルは、友人が言った言葉に理解できずつぶやいた。友人はそれを見てやれやれといった顔をした。
「お前、自覚してないのか?早く自分の気持ちに気がつかないと手遅れになるぞ」
まるで小さい子供でも諭すようにサミエルに言った友人は、他の人に声をかけられてその人と別の話を始めた。サミエルは、先ほど友人が言った言葉に戸惑っていたが、その時こちらにやってきたご婦人から声をかけられた。どうやらダンスを踊ってほしい様子だ。サミエルがどうやって断ろうかと思案しているうちに、先ほどの友人の話は、すっかり頭の中から消えていた。
ただアミエの事が気になり、どうしても見てしまう自分がいた。特に男が、アミエにきやすく腰に手を当てているのを見た時には、そばに言ってはたいてやろうとまで思う自分がいた。
結局パーティーでは、サミエルは少しも楽しめずに帰ることとなった。帰るときもアミエを探したが、一足先に会場を出たようで、姿が見えなかった。
屋敷に戻ったサミエルは、今度アミエがきたら絶対にパーティーに一緒に参加しようと言おうと決意した。しかしそのパーティーを境に、アミエがサミエルの屋敷に来ることはなかった。
そして一か月がたった。母にアミエの事を聞こうかとも思ったが、なかなか切り出せずにいた。その時にまたパーティーの招待状を受け取った。今回も公爵家寄りの貴族が主催するらしい。たぶんアミエも来るだろうと思い、参加することにした。
会場に着くとすぐにアミエを探した。まだアミエは来ていないようで見当たらなかった。話しかけてくるものをうまくかわしながら、アミエが来るのを今か今かと待っていた。その時だ。
「これはこれは、コールマス次期公爵ではありませんか」
話しかけてきたのは、エドワルド・ウィシュカム子爵だった。
「お久しぶりです」
サミエルが一応挨拶すると、エドワルドが横に並んできた。今日は彼も一人で来たようだった。
「誰かをお探しですか?」
「いえ」
サミエルが、パーティー会場の入り口に目を配っているのを見ていった。
「逃した魚は大きいですよ。きちんと自分の心に向き合って後悔なさらないように」
「えっ?」
エドワルドが、サミエルに言った。サミエルは何の事かとエドワルドのほうをじっと見た。
「まるで自覚がおありにならないんですね。周りのほうがはるかにわかっているというのに」
エドワルドは、サミエルを見て苦笑いをした。この時サミエルは、初めてエドワルドの年相応の表情を見た気がした。
「まさか私もあなたに、こんなアドバイスをするなんて思ってもいませんでしたが。私が言ったことを忘れないでくださいね」
そういってエドワルドはサミエルの元から離れていった。それからすぐにひとりでいるサミエルの元には、何人もの女性がやってきたのだが、サミエルが軽くあしらうと皆残念そうに去っていった。
アミエは結局そのパーティーにはやってこなかった。そういえばエドワルドと話したのに、モリッシュの事は少しも思い出すことはなかったと後で気が付いたサミエルだった。
執事がパーティーの招待状を持ってきた。サミエルが招待状を見ると、わが公爵家に親しいものが主催するようだ。サミエルはふとアミエ嬢の顔が思い浮かんだ。婚約破棄してからは、自分から懇願して出たものをの除いては家族からの要望で2回ほど一緒に出席したことがあったが、最近はパーティー自体に出席していなかった。ちょうど閑散期に入っていたことも大きいのだが、誰からも言われなかったのも大きい。
わが公爵家にも招待状が来ているとなると、アミエの家の侯爵家にも来ているだろう。今日は、ちょうどアミエ嬢が来る予定だったので、聞いてみることにした。
「アミエ嬢、今度のパーティーには出席する?」
サミエルは、いつものようにブラックを連れてきたアミエに尋ねた。いつもならすぐ返事があるのだが、今日のアミエはなぜかサミエルのほうを見ずに、じゃれついてくる犬たちの方を見たまま答えた。
「...ええ、出席いたします」
「そうか、私も出席する予定なんだ。もしよければ一緒に...」
サミエルは、一緒に行かないかというつもりだったが、アミエにさえぎられてしまった。
「そのパーティーは、他の方と一緒に行くことになっておりますの」
「そうなのか」
サミエルは、その時は別段気にしていなかった。親戚か弟と行くのかと思っていたのだ。アミエには弟がいる。この前社交界デビューしたばかりだ。
サミエルがパーティーに着くと、フロアにはもう何組か踊っている者たちがいた。その一組に思わず目がいっ た。どう見てもアミエが男性と踊っている。アミエが楽しそうに踊っているのを見たサミエルは、自分がどんな顔をしていたのかわからなかった。
「やあサミエル」
サミエルに声をかけてきたのは、親しい友人だった。以前の婚約破棄の時にも助言や苦言をしてくれた大切な友人だ。
「やあ」
「アミエ嬢、いつにもましてきれいだな」
その友人が感心したように言った。サミエルもアミエの様子をじっと見る。ここ一年犬の事でよく会っていたが、その時のアミエは犬を連れていたため軽装のドレス姿だった。今日のような正装を見たのは久しぶりだ。サミエルがアミエから視線を外せずにいると、友人が自分を凝視しているのに気が付いた。
サミエルが友人を見ると、その友人は呆れたような顔になった。
「サミエル、今お前自分がどんな顔しているか知ってるか?まるで嫉妬しているようなすごい形相になっていたぞ」
「嫉妬?誰に?」
サミエルは、友人が言った言葉に理解できずつぶやいた。友人はそれを見てやれやれといった顔をした。
「お前、自覚してないのか?早く自分の気持ちに気がつかないと手遅れになるぞ」
まるで小さい子供でも諭すようにサミエルに言った友人は、他の人に声をかけられてその人と別の話を始めた。サミエルは、先ほど友人が言った言葉に戸惑っていたが、その時こちらにやってきたご婦人から声をかけられた。どうやらダンスを踊ってほしい様子だ。サミエルがどうやって断ろうかと思案しているうちに、先ほどの友人の話は、すっかり頭の中から消えていた。
ただアミエの事が気になり、どうしても見てしまう自分がいた。特に男が、アミエにきやすく腰に手を当てているのを見た時には、そばに言ってはたいてやろうとまで思う自分がいた。
結局パーティーでは、サミエルは少しも楽しめずに帰ることとなった。帰るときもアミエを探したが、一足先に会場を出たようで、姿が見えなかった。
屋敷に戻ったサミエルは、今度アミエがきたら絶対にパーティーに一緒に参加しようと言おうと決意した。しかしそのパーティーを境に、アミエがサミエルの屋敷に来ることはなかった。
そして一か月がたった。母にアミエの事を聞こうかとも思ったが、なかなか切り出せずにいた。その時にまたパーティーの招待状を受け取った。今回も公爵家寄りの貴族が主催するらしい。たぶんアミエも来るだろうと思い、参加することにした。
会場に着くとすぐにアミエを探した。まだアミエは来ていないようで見当たらなかった。話しかけてくるものをうまくかわしながら、アミエが来るのを今か今かと待っていた。その時だ。
「これはこれは、コールマス次期公爵ではありませんか」
話しかけてきたのは、エドワルド・ウィシュカム子爵だった。
「お久しぶりです」
サミエルが一応挨拶すると、エドワルドが横に並んできた。今日は彼も一人で来たようだった。
「誰かをお探しですか?」
「いえ」
サミエルが、パーティー会場の入り口に目を配っているのを見ていった。
「逃した魚は大きいですよ。きちんと自分の心に向き合って後悔なさらないように」
「えっ?」
エドワルドが、サミエルに言った。サミエルは何の事かとエドワルドのほうをじっと見た。
「まるで自覚がおありにならないんですね。周りのほうがはるかにわかっているというのに」
エドワルドは、サミエルを見て苦笑いをした。この時サミエルは、初めてエドワルドの年相応の表情を見た気がした。
「まさか私もあなたに、こんなアドバイスをするなんて思ってもいませんでしたが。私が言ったことを忘れないでくださいね」
そういってエドワルドはサミエルの元から離れていった。それからすぐにひとりでいるサミエルの元には、何人もの女性がやってきたのだが、サミエルが軽くあしらうと皆残念そうに去っていった。
アミエは結局そのパーティーにはやってこなかった。そういえばエドワルドと話したのに、モリッシュの事は少しも思い出すことはなかったと後で気が付いたサミエルだった。
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