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アミエ・ナダタル編
償い
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それからも私は、サミエル様のもとへ何度も訪れました。ですが会ってくださることもありませんでした。公爵夫人からは、謝罪を受けました。サミエル様の願いの元、もう一度モリッシュ様と婚約をさせてあげたいと告げられました。
私ももちろん同意しました。話を聞く限りサミエル様はとても憔悴なさっているようです。私のせいでもあるのです。父からも謝られました。
「アミエ、すまなかった。家のためとはいえお前を悲しませる羽目になってしまった。本当に申し訳ない」
「いえ、お父様。私も悪かったのです。サミエル様に恋をしてしまいました。婚約者がおられるというのに。だから気にしないでください」
公爵家からは正式にお詫びがあり、再び婚約なさるのかしらと思っておりましたが、モリッシュ様はエドワルド様とご婚約なさいました。
それを聞いたサミエル様の嘆きは大変だったようです。
しばらくたったある日、私のもとにお手紙が届きました。サミエル様のご友人からでした。サミエル様のことをとても心配なさってることが文面からでも伝わってきました。ただ一つ妙だったのは、サミエル様をモリッシュ様に近づけないでほしいとあったのです。
そのお手紙が来たすぐ後でした。公爵様からも父にお願いがあったようでした。サミエル様をモリッシュ様に近づけないように、今度のパーティーでは一緒に参加してほしいと。
「お父様、どういうことですの?」
「ああ、モリッシュ嬢と婚約されたウィシュカム次期子爵のことなんだがな。どうやら公爵が、再びモリッシュ嬢と婚約させようとしたことに激怒しているようなんだ。いろいろなところから公爵家に圧力がかかっているらしい。さすがの公爵家も恐れをなして、サミエル様にあきらめるよう説得を始めたそうだ」
「でもお相手は子爵家では?」
貴族の爵位はとても厳しいものです。子爵家が、公爵家にそんなことが果たしてできるのでしょうか?
「ウィシュカム子爵家は、隣国の王家や他国の高位貴族ともつながりがあるそうだ。それにこの国の貴族たちにもずいぶん顔が利く。だから子爵家の機嫌を損ねないように、お前に今度のパーティーにはサミエル様と一緒に出席してほしいそうだ。ただうちもそんなことに巻き込まれるのは御免だ。だから出席しないと言っておいた」
「私、サミエル様と出席しますわ」
「いいのか?無理はするな」
「ええ、大丈夫です。サミエル様をお守りするのは、私の償いですから」
サミエル様は、皆の反対を押し切ってでもパーティーに参加したいといったそうです。それほどひと目モリッシュ様にお会いしたいと思っておられるようでした。私が一緒にパーティーに行くことで、公爵当主様もやっとお許しになりました。
パーティーでは、サミエル様はずっとモリッシュ様をご覧になっておりました。隣にいる私のことは見てもくれません。
久しぶりに見るモリッシュ様は、それはそれはお美しくなっておられました。輝くばかりの笑顔にこれまた贅をつくしたドレス。エドワルド様が、生地からお選びになった特注だそうです。至ることろにまばゆいばかりの宝石がちりばめられたそのドレスは、エドワルド様のモッリッシュ様への深い愛情が伝わってきました。
その愛情を一身に受けられているモリッシュ様は、ずいぶん雰囲気がお変わりになっておりました。
以前お見かけた時には、おしとやかでおとなしい方だったようにお見受けしたのですが、今日見た限りではとても元気で少しおてんばになられておりました。
でもこれが素のように私には感じられました。なぜといわれましても困るのですが、あまりに自然だったのです。エドワルド様の注意も聞かず、お菓子をそれはそれはおいしそうにお食べになっております。それを注意しながらもエドワルド様の嬉しそうな笑顔。私はこの時ほどうらやましく感じることはありませんでした。
モリッシュ様も、気安くエドワルド様になにか言っておられます。お二人の仲の良さがとてもよくわかりました。
それを遠くから見ることしかできないサミエル様は、ほんとにつらい表情をなさっておりました。モリッシュ様の様子を一つも見逃さないように目に焼き付けておこうとなさっておられるかのようです。
私は、正直そんなサミエル様を見ているのがとてもつらく感じました。そのせいです。少しだけサミエル様から目を離してしまいました。気が付けばサミエル様が、おひとりになったモリッシュ様のところにいました。
私は急いでサミエル様のところへ飛んでいきました。
「サミエル様!」
サミエル様は、どうやらモリッシュ様の頬をなでられたようです。それをエドワルド様が、はたから見てもわかるほど心の底から怒っておいでになるのが見て取れました。私が叫んだのを聞いて、エドワルド様も少し怒りを抑えられました。すんでのところで回避できたことに私は安堵しました。そしてエドワルド様は、モリッシュ様を連れて行ってしまわれました。
「サミエル様」
私が呼んでも、サミエル様は自分の手をずっと眺めております。モリッシュ様に触れた手を。
「わたくしサミエル様のことが好きです」
私を見てほしくてつい言ってしまいました。しかしサミエル様は、私を冷たいまなざしで見るだけでした。
それからサミエル様は、屋敷にこもってしまわれました。このままでは、いけないと思い、私は何度もサミエル様の元へ向かいましたが、サミエル様が私を見てくださることはありませんでした。
「もうこれ以上、公爵家にはいかないほうがいい。アミエ、お前も自分の幸せを考えなさい」
父にはそういわれました。でもどうしてもサミエル様をお助けしたかったのです。それが私の償いなのです。
私ももちろん同意しました。話を聞く限りサミエル様はとても憔悴なさっているようです。私のせいでもあるのです。父からも謝られました。
「アミエ、すまなかった。家のためとはいえお前を悲しませる羽目になってしまった。本当に申し訳ない」
「いえ、お父様。私も悪かったのです。サミエル様に恋をしてしまいました。婚約者がおられるというのに。だから気にしないでください」
公爵家からは正式にお詫びがあり、再び婚約なさるのかしらと思っておりましたが、モリッシュ様はエドワルド様とご婚約なさいました。
それを聞いたサミエル様の嘆きは大変だったようです。
しばらくたったある日、私のもとにお手紙が届きました。サミエル様のご友人からでした。サミエル様のことをとても心配なさってることが文面からでも伝わってきました。ただ一つ妙だったのは、サミエル様をモリッシュ様に近づけないでほしいとあったのです。
そのお手紙が来たすぐ後でした。公爵様からも父にお願いがあったようでした。サミエル様をモリッシュ様に近づけないように、今度のパーティーでは一緒に参加してほしいと。
「お父様、どういうことですの?」
「ああ、モリッシュ嬢と婚約されたウィシュカム次期子爵のことなんだがな。どうやら公爵が、再びモリッシュ嬢と婚約させようとしたことに激怒しているようなんだ。いろいろなところから公爵家に圧力がかかっているらしい。さすがの公爵家も恐れをなして、サミエル様にあきらめるよう説得を始めたそうだ」
「でもお相手は子爵家では?」
貴族の爵位はとても厳しいものです。子爵家が、公爵家にそんなことが果たしてできるのでしょうか?
「ウィシュカム子爵家は、隣国の王家や他国の高位貴族ともつながりがあるそうだ。それにこの国の貴族たちにもずいぶん顔が利く。だから子爵家の機嫌を損ねないように、お前に今度のパーティーにはサミエル様と一緒に出席してほしいそうだ。ただうちもそんなことに巻き込まれるのは御免だ。だから出席しないと言っておいた」
「私、サミエル様と出席しますわ」
「いいのか?無理はするな」
「ええ、大丈夫です。サミエル様をお守りするのは、私の償いですから」
サミエル様は、皆の反対を押し切ってでもパーティーに参加したいといったそうです。それほどひと目モリッシュ様にお会いしたいと思っておられるようでした。私が一緒にパーティーに行くことで、公爵当主様もやっとお許しになりました。
パーティーでは、サミエル様はずっとモリッシュ様をご覧になっておりました。隣にいる私のことは見てもくれません。
久しぶりに見るモリッシュ様は、それはそれはお美しくなっておられました。輝くばかりの笑顔にこれまた贅をつくしたドレス。エドワルド様が、生地からお選びになった特注だそうです。至ることろにまばゆいばかりの宝石がちりばめられたそのドレスは、エドワルド様のモッリッシュ様への深い愛情が伝わってきました。
その愛情を一身に受けられているモリッシュ様は、ずいぶん雰囲気がお変わりになっておりました。
以前お見かけた時には、おしとやかでおとなしい方だったようにお見受けしたのですが、今日見た限りではとても元気で少しおてんばになられておりました。
でもこれが素のように私には感じられました。なぜといわれましても困るのですが、あまりに自然だったのです。エドワルド様の注意も聞かず、お菓子をそれはそれはおいしそうにお食べになっております。それを注意しながらもエドワルド様の嬉しそうな笑顔。私はこの時ほどうらやましく感じることはありませんでした。
モリッシュ様も、気安くエドワルド様になにか言っておられます。お二人の仲の良さがとてもよくわかりました。
それを遠くから見ることしかできないサミエル様は、ほんとにつらい表情をなさっておりました。モリッシュ様の様子を一つも見逃さないように目に焼き付けておこうとなさっておられるかのようです。
私は、正直そんなサミエル様を見ているのがとてもつらく感じました。そのせいです。少しだけサミエル様から目を離してしまいました。気が付けばサミエル様が、おひとりになったモリッシュ様のところにいました。
私は急いでサミエル様のところへ飛んでいきました。
「サミエル様!」
サミエル様は、どうやらモリッシュ様の頬をなでられたようです。それをエドワルド様が、はたから見てもわかるほど心の底から怒っておいでになるのが見て取れました。私が叫んだのを聞いて、エドワルド様も少し怒りを抑えられました。すんでのところで回避できたことに私は安堵しました。そしてエドワルド様は、モリッシュ様を連れて行ってしまわれました。
「サミエル様」
私が呼んでも、サミエル様は自分の手をずっと眺めております。モリッシュ様に触れた手を。
「わたくしサミエル様のことが好きです」
私を見てほしくてつい言ってしまいました。しかしサミエル様は、私を冷たいまなざしで見るだけでした。
それからサミエル様は、屋敷にこもってしまわれました。このままでは、いけないと思い、私は何度もサミエル様の元へ向かいましたが、サミエル様が私を見てくださることはありませんでした。
「もうこれ以上、公爵家にはいかないほうがいい。アミエ、お前も自分の幸せを考えなさい」
父にはそういわれました。でもどうしてもサミエル様をお助けしたかったのです。それが私の償いなのです。
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