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かん子の家にごあいさつ
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かん子は、いったいどれくらいぼ~と立っていたのだろうか。
目の前の男が、天敵であったひきがえるの正也だとわかってから、記憶の旅をしていたようである。
「おいっ!いつまで遠い目をしてるんだよ!」
気がつけば正也にほっぺをぎゅっとつねられていた。かん子は思いっきりその手を払い落し叫んだ。
「痛いじゃん!よくも乙女の顔にさわったわね!」
「ぷうっ、ははっ!乙女ってがらかよ。いつまでもぼ~としてるからだろ。さあ行くぞ!」
正也はにやっと笑った。
「いくぞってどこにいくのよ!」
正也が歩いている方向には、かん子の家の玄関しかない。
「一応挨拶しておくのさ、おばさんに。」
そうだった。あまりのびっくりに忘れていたが、目の前にいる正也のお母さんに会社を紹介されたんだった。
なんだか腑に落ちないが、うちの母親の手前もある。ここでむげにするのもよくないと思いなおし、かん子は玄関のドアを開けた。
後ろには正也がくっついている。
「ただいま~!」
「おかえりなさい!どうだった会社一日目は!」
母親が、玄関にやってきた。そしてかん子の後ろに目をやる。背が高いのでいやでも目立っていたが。
「お久しぶりです、朝居正也です」
「あらっ、正也君。お久しぶりね、元気だった?かん子と一緒だったのね」
(えっえ~?いつ会ってたんだんだろう?)
二人の会話にかん子は驚いていた。しかも母親が、かん子のほうをみて意味深な笑いをしたのだ。
「さあ、正也君あがってお茶でも飲んで行って!」
「いえっ、今日は!帰ります。明日研修なので」
正也は、爽やかに母親にいった。かん子には見せたことのない好感度いっぱいの笑顔をしている。
(くそっ!なんだ無駄に爽やかな笑みは。これじゃあコロってだまされるしかないじゃん)
かん子は心の中で毒づいた。
正也の「今日は!」といった言葉がやけに強調されていたように感じたのは、気のせいだろうかと思ったかん子であった。
「研修先Aだろ!明日7時に迎えに来るから」
正也は当たり前のように言って、
「じゃあまた明日。失礼します」
勝手に帰ろうとしていた。
「ありがとう正也君。かん子をよろしくね」
かん子の意見も聞かずに、母親と正也は二人会話をしていた。母親もちっとも驚いている風ではない。まるでさも当たり前のような感じで、かん子のほうがあっけにとられていた。
「ちょっと二人で勝手に決めないでよ!一緒に行くなんて言ってないし。それに仲も良くないんだよ」
「あらっ!これから仲良くなれば何の問題もないわよねえ正也君!」
「じゃあ明日な」
正也は玄関から出て行った。かん子は、呆然と後ろ姿を見送ったのだった。
「さあ早くあがって、会社のお話聞かせて!」
母親は、まるで小さい子供にさとすようにいって、奥へといってしまった。
一人ポツンと玄関に残されたかん子が、自分を取り戻すまでにあと少しかかるのだった。
目の前の男が、天敵であったひきがえるの正也だとわかってから、記憶の旅をしていたようである。
「おいっ!いつまで遠い目をしてるんだよ!」
気がつけば正也にほっぺをぎゅっとつねられていた。かん子は思いっきりその手を払い落し叫んだ。
「痛いじゃん!よくも乙女の顔にさわったわね!」
「ぷうっ、ははっ!乙女ってがらかよ。いつまでもぼ~としてるからだろ。さあ行くぞ!」
正也はにやっと笑った。
「いくぞってどこにいくのよ!」
正也が歩いている方向には、かん子の家の玄関しかない。
「一応挨拶しておくのさ、おばさんに。」
そうだった。あまりのびっくりに忘れていたが、目の前にいる正也のお母さんに会社を紹介されたんだった。
なんだか腑に落ちないが、うちの母親の手前もある。ここでむげにするのもよくないと思いなおし、かん子は玄関のドアを開けた。
後ろには正也がくっついている。
「ただいま~!」
「おかえりなさい!どうだった会社一日目は!」
母親が、玄関にやってきた。そしてかん子の後ろに目をやる。背が高いのでいやでも目立っていたが。
「お久しぶりです、朝居正也です」
「あらっ、正也君。お久しぶりね、元気だった?かん子と一緒だったのね」
(えっえ~?いつ会ってたんだんだろう?)
二人の会話にかん子は驚いていた。しかも母親が、かん子のほうをみて意味深な笑いをしたのだ。
「さあ、正也君あがってお茶でも飲んで行って!」
「いえっ、今日は!帰ります。明日研修なので」
正也は、爽やかに母親にいった。かん子には見せたことのない好感度いっぱいの笑顔をしている。
(くそっ!なんだ無駄に爽やかな笑みは。これじゃあコロってだまされるしかないじゃん)
かん子は心の中で毒づいた。
正也の「今日は!」といった言葉がやけに強調されていたように感じたのは、気のせいだろうかと思ったかん子であった。
「研修先Aだろ!明日7時に迎えに来るから」
正也は当たり前のように言って、
「じゃあまた明日。失礼します」
勝手に帰ろうとしていた。
「ありがとう正也君。かん子をよろしくね」
かん子の意見も聞かずに、母親と正也は二人会話をしていた。母親もちっとも驚いている風ではない。まるでさも当たり前のような感じで、かん子のほうがあっけにとられていた。
「ちょっと二人で勝手に決めないでよ!一緒に行くなんて言ってないし。それに仲も良くないんだよ」
「あらっ!これから仲良くなれば何の問題もないわよねえ正也君!」
「じゃあ明日な」
正也は玄関から出て行った。かん子は、呆然と後ろ姿を見送ったのだった。
「さあ早くあがって、会社のお話聞かせて!」
母親は、まるで小さい子供にさとすようにいって、奥へといってしまった。
一人ポツンと玄関に残されたかん子が、自分を取り戻すまでにあと少しかかるのだった。
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