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かん子の天敵朝居正也 その3
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かん子は中学生になった。
兄の俊史が行っている同じ中高一貫校の中等部にいくことになった。ありがたいことに、そこはかん子の家から近く、仲良しの子たちも何人か行くことになったのでかん子はうれしかった。
その中学校は、今まで行っていた小学校とは逆方向にある。
あのひきがえること朝居正也とは会わなくなった。あだ名で呼ばれることもなくなって、毎日すがすがしく感じた。
特に学校の帰りに、嫌な思いをしなくていいのである。
(なんて素敵な毎日なんだろう~)
今までは正也の嫌がらせから早く逃れたくて、とにかく急ぎ足で家に帰っていたのである。最近では近所の犬にさえ愛想を振りまいて、のんびり学校から帰っている。
ただ同じ小学校からの友達が、たまに正也のことを話題にするときだけは、以前感じたもやもやした気分が蘇るのだった。
とはいえかん子も中学校を謳歌していく。この頃は、今とは違い花も恥じらう乙女であった。
かん子にも好きな男の子がはじめてできたのである。
そんなこんなで正也のことは、すっかり記憶から消えていったのであった。
かん子はソフトボール部に入った。本当はテニス部に入りたかったのだが、あまりに入部希望者が多くじゃんけんで負けてしまいソフトボール部にはいったのである。
別にテニス部にどうしても入りたいといったわけではなく、ただテニス部という響きがいいというだけで決めたので、ソフトボール部になってもよかった。
それにそのおかげでかん子は初恋をしたのであった。
テニス部は専用コートがあってそこで練習しているのだが、ソフトボール部はサッカー部と練習するグラウンドが同じだった。
ソフトボール部も他の部活と同じで、一年生は玉拾いと体力づくりが毎日のメニューであった。体力作りは主にグラウンドの隅、グラウンドの真ん中で練習をしているサッカー部に目がいくようになった。
その中でもひときわ輝いている男の子がいた。
1学年上の子だった。背が高く太陽の光にさらさらの髪が輝いている。一生懸命ボールを追っている姿がカッコよかった。
かん子は、毎日毎日彼を目で追うようになった。
もちろんそれだけ輝いている彼である。熱い視線を送っているのは、もちろんかん子だけであるはずがなくファンが大勢いた。
しかも風の噂で、彼女までいるらしいことまで聞こえてきた。
それでもかん子はよかった。ただ見ているだけで幸せだった。かん子にとって彼は、たぶんテレビの中のアイドル的存在だったのかもしれない。
そうして一年が過ぎた。
かん子も2年生になった。かん子の学校では、入学式の準備を2年生がお手伝いをすることになっている。
かん子は、当日正門で新入生を案内する係となった。正門横には大きな桜の木があった。
今年はちょうど今、桜が満開だった。
まだ早い時間だったせいか、新入生はちらほらしかこない。
その時強い風が吹いてきて、風が桜の花びらを散らした。
かん子が立っている場所にも桜の花びらが舞ってきた。
しかも華吹雪のようにいっぱいの花びらが、かん子の前で揺れながら地面に落ちていった。
ついそれに見とれてしまった。
だから後ろから声がした時にはびくっとしてしまった。
「おい!缶づめかん子!ちゃんと案内しろよ!」
(え___!ちょっと待って___?!)
兄の俊史が行っている同じ中高一貫校の中等部にいくことになった。ありがたいことに、そこはかん子の家から近く、仲良しの子たちも何人か行くことになったのでかん子はうれしかった。
その中学校は、今まで行っていた小学校とは逆方向にある。
あのひきがえること朝居正也とは会わなくなった。あだ名で呼ばれることもなくなって、毎日すがすがしく感じた。
特に学校の帰りに、嫌な思いをしなくていいのである。
(なんて素敵な毎日なんだろう~)
今までは正也の嫌がらせから早く逃れたくて、とにかく急ぎ足で家に帰っていたのである。最近では近所の犬にさえ愛想を振りまいて、のんびり学校から帰っている。
ただ同じ小学校からの友達が、たまに正也のことを話題にするときだけは、以前感じたもやもやした気分が蘇るのだった。
とはいえかん子も中学校を謳歌していく。この頃は、今とは違い花も恥じらう乙女であった。
かん子にも好きな男の子がはじめてできたのである。
そんなこんなで正也のことは、すっかり記憶から消えていったのであった。
かん子はソフトボール部に入った。本当はテニス部に入りたかったのだが、あまりに入部希望者が多くじゃんけんで負けてしまいソフトボール部にはいったのである。
別にテニス部にどうしても入りたいといったわけではなく、ただテニス部という響きがいいというだけで決めたので、ソフトボール部になってもよかった。
それにそのおかげでかん子は初恋をしたのであった。
テニス部は専用コートがあってそこで練習しているのだが、ソフトボール部はサッカー部と練習するグラウンドが同じだった。
ソフトボール部も他の部活と同じで、一年生は玉拾いと体力づくりが毎日のメニューであった。体力作りは主にグラウンドの隅、グラウンドの真ん中で練習をしているサッカー部に目がいくようになった。
その中でもひときわ輝いている男の子がいた。
1学年上の子だった。背が高く太陽の光にさらさらの髪が輝いている。一生懸命ボールを追っている姿がカッコよかった。
かん子は、毎日毎日彼を目で追うようになった。
もちろんそれだけ輝いている彼である。熱い視線を送っているのは、もちろんかん子だけであるはずがなくファンが大勢いた。
しかも風の噂で、彼女までいるらしいことまで聞こえてきた。
それでもかん子はよかった。ただ見ているだけで幸せだった。かん子にとって彼は、たぶんテレビの中のアイドル的存在だったのかもしれない。
そうして一年が過ぎた。
かん子も2年生になった。かん子の学校では、入学式の準備を2年生がお手伝いをすることになっている。
かん子は、当日正門で新入生を案内する係となった。正門横には大きな桜の木があった。
今年はちょうど今、桜が満開だった。
まだ早い時間だったせいか、新入生はちらほらしかこない。
その時強い風が吹いてきて、風が桜の花びらを散らした。
かん子が立っている場所にも桜の花びらが舞ってきた。
しかも華吹雪のようにいっぱいの花びらが、かん子の前で揺れながら地面に落ちていった。
ついそれに見とれてしまった。
だから後ろから声がした時にはびくっとしてしまった。
「おい!缶づめかん子!ちゃんと案内しろよ!」
(え___!ちょっと待って___?!)
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