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89 嫌な予感です
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家に帰るとすぐに久美ちゃんが玄関で待っていました。
「大丈夫ですか」
「うん。いつの間にか護衛の人たちに守られていて安心したよ」
そうなのです。いつの間にかやってきた護衛の方々のおかげで、はじめこそびっくりしましたがそこまで怖くなかったのです。いつも見守っていてくださったのですね。ありがとうございます。
私は久美ちゃんに話を聞くべく、部屋にお茶をお願いしました。久美ちゃんなら、先ほど声をかけてきた人の事をすでに知っているでしょうからね。
久美ちゃんがカートを押して私の部屋に入ってきました。おおっ、今日はスイーツティーですね。キャラメルのいい香りが私の元まで漂ってきます。
「おいしい」
「よかったです。これお土産です。この前航さんのご実家に行った時にいただいたんです」
「そう。ありがとう」
そういえば私とお兄様が別荘に行っているときに、久美ちゃんと航さんは航さんの実家に行っていたんでしたね。きっと叔母様が持たせたんでしょうね。叔母様は無類の紅茶好きですからね。
私と久美ちゃんは、紅茶の香りをゆっくりと楽しみました。珍しいことに久美ちゃんが今日の出来事について話すのをためらっています。いつもならすぐに切り出すんですが。なんだか嫌な予感がします。
「先ほど声をかけてきた人ですが、ご存知ですか? アメリカの巨大企業バークレーは? 彼は次期社長と噂されているジェフ・バークレーです」
「そうなの?」
さすがに私もその企業の名前ぐらいは聞いたことがあります。アメリカでもっとも巨大な企業として有名ですからね。でもどうしてそんな大企業の御曹司が今日本にいるの? ましてやあんな小さな会社の前に? 私の顔が?マークでいっぱいなのを見た久美ちゃんはくすりと笑いました。
「実は、二年ほど前からわが社にバークレー社から業務提携の話がきているんです。ですが、相手は巨大企業です。下手をしたら買収されてしまうかもしれません。うちも日本最大ですが、相手はアメリカ最大いえ世界最大の企業のひとつなんです」
「でもそんな巨大企業がどうして?」
「たぶんお嬢様のいいなずけ解消を聞いて、行動を起こしたのかもしれません。水面下ではいろいろ動きがあったようですから」
「そうなの?」
「ええ。もしかしたらお嬢様との婚約が目的なのかもしれません」
「えっー!」
久美ちゃんの話を聞いて思わず叫んでいました。だって先ほどちらりとですが見た彼は、まるで王子様の様なきれいな顔立ちだったのですから。
「彼に婚約者はいないの? さっきちょっとだけ見たけれど、すごくかっこよかったわよ。女性ならほおってはおかないぐらいには」
「そうですね。彼はモデルばりに人気がありますから。アメリカでは彼が記事になると、雑誌でも新聞でも飛ぶように売れるそうですよ」
「へえ~」
それほど人気がある人がわざわざ日本まで来て、私と婚約? ありえなくない?
私が思ったことを口に出す前に、久美ちゃんが説明してくれました。相手としては、単なる業務提携よりも確固たる信頼関係、より強いきずながほしいらしいとのこと。それにしてもうちの会社大丈夫でしょうか? 世界最大級となれば、太刀打ちできるのでしょうか? 政略結婚なんてことになったら目も当てられません。だってあんなかっこいい人だったら、女性が寄ってきて仕方ないじゃないですか。私といえば東洋人らしく平べったいお顔に寸胴な体形。自分で言っていて悲しくなりますが。
いやだ~! あんな人と結婚した日には、毎日涙で枕がぐっしょりになりそうです。
私がいろいろ想像して、顔が険しくなっていくのを見ていた久美ちゃんがそっと私の手を握ってくれました。
「大丈夫ですよ。こちらも対策を始めております。うちの会社をなめてもらっては困ります。ありがたいことにうちに協力してくれるという会社もいくつか出ていますから」
「そうなの? 大丈夫?」
「ええ。任せてください!」
久美ちゃんがそう言い切ってくれました。心強い限りです。とはいえ、相手が相手ですからね。本当に大丈夫でしょうか? まあ私があがいたところで何の役にも立てませんから、皆さんを信じて待つほかないですね。
夕食には父もお兄様も仕事で帰ってきませんでした。きっと対策会議でもしているのでしょうか。ごめんなさい。頑張ってくださいね。ただその分母と久美ちゃんが、いたわりの言葉をかけてくれて、ずいぶん気が休まりました。
その夜は、心配で眠れないと思っていましたが気が付けばぐっすり眠っていて、気が付けば朝になっていました。朝も父やお兄様はすでに会社に行ったらしく会うことができませんでした。
「おはようございます」
「おはよう」
会社に行くと、いつもの日常でした。すでに席に着いていた青木さんが、すこし心配そうな顔をして私を見てきます。きっと話を聞いたんでしょうね。私がいつものように挨拶すると、ほっとしたようでした。
それからは何事もなく過ぎていきましたが、昼前の事です。突然一階が騒がしくなりました。
「どうしたのかしら?」
「見てきましょうかね」
まず下の騒ぎに気が付いた近藤さんが怪訝な顔を浮かべています。すぐに小田係長が下に走っていきました。
「もしかしてこの前来たあの御曹司がまた来たのかしら~」
近藤さんが、笑いながら私や鈴木課長に言ってきました。ですが私はなんだか嫌な予感がします。こういう時だけは当たるんですよね~。
「大丈夫ですか」
「うん。いつの間にか護衛の人たちに守られていて安心したよ」
そうなのです。いつの間にかやってきた護衛の方々のおかげで、はじめこそびっくりしましたがそこまで怖くなかったのです。いつも見守っていてくださったのですね。ありがとうございます。
私は久美ちゃんに話を聞くべく、部屋にお茶をお願いしました。久美ちゃんなら、先ほど声をかけてきた人の事をすでに知っているでしょうからね。
久美ちゃんがカートを押して私の部屋に入ってきました。おおっ、今日はスイーツティーですね。キャラメルのいい香りが私の元まで漂ってきます。
「おいしい」
「よかったです。これお土産です。この前航さんのご実家に行った時にいただいたんです」
「そう。ありがとう」
そういえば私とお兄様が別荘に行っているときに、久美ちゃんと航さんは航さんの実家に行っていたんでしたね。きっと叔母様が持たせたんでしょうね。叔母様は無類の紅茶好きですからね。
私と久美ちゃんは、紅茶の香りをゆっくりと楽しみました。珍しいことに久美ちゃんが今日の出来事について話すのをためらっています。いつもならすぐに切り出すんですが。なんだか嫌な予感がします。
「先ほど声をかけてきた人ですが、ご存知ですか? アメリカの巨大企業バークレーは? 彼は次期社長と噂されているジェフ・バークレーです」
「そうなの?」
さすがに私もその企業の名前ぐらいは聞いたことがあります。アメリカでもっとも巨大な企業として有名ですからね。でもどうしてそんな大企業の御曹司が今日本にいるの? ましてやあんな小さな会社の前に? 私の顔が?マークでいっぱいなのを見た久美ちゃんはくすりと笑いました。
「実は、二年ほど前からわが社にバークレー社から業務提携の話がきているんです。ですが、相手は巨大企業です。下手をしたら買収されてしまうかもしれません。うちも日本最大ですが、相手はアメリカ最大いえ世界最大の企業のひとつなんです」
「でもそんな巨大企業がどうして?」
「たぶんお嬢様のいいなずけ解消を聞いて、行動を起こしたのかもしれません。水面下ではいろいろ動きがあったようですから」
「そうなの?」
「ええ。もしかしたらお嬢様との婚約が目的なのかもしれません」
「えっー!」
久美ちゃんの話を聞いて思わず叫んでいました。だって先ほどちらりとですが見た彼は、まるで王子様の様なきれいな顔立ちだったのですから。
「彼に婚約者はいないの? さっきちょっとだけ見たけれど、すごくかっこよかったわよ。女性ならほおってはおかないぐらいには」
「そうですね。彼はモデルばりに人気がありますから。アメリカでは彼が記事になると、雑誌でも新聞でも飛ぶように売れるそうですよ」
「へえ~」
それほど人気がある人がわざわざ日本まで来て、私と婚約? ありえなくない?
私が思ったことを口に出す前に、久美ちゃんが説明してくれました。相手としては、単なる業務提携よりも確固たる信頼関係、より強いきずながほしいらしいとのこと。それにしてもうちの会社大丈夫でしょうか? 世界最大級となれば、太刀打ちできるのでしょうか? 政略結婚なんてことになったら目も当てられません。だってあんなかっこいい人だったら、女性が寄ってきて仕方ないじゃないですか。私といえば東洋人らしく平べったいお顔に寸胴な体形。自分で言っていて悲しくなりますが。
いやだ~! あんな人と結婚した日には、毎日涙で枕がぐっしょりになりそうです。
私がいろいろ想像して、顔が険しくなっていくのを見ていた久美ちゃんがそっと私の手を握ってくれました。
「大丈夫ですよ。こちらも対策を始めております。うちの会社をなめてもらっては困ります。ありがたいことにうちに協力してくれるという会社もいくつか出ていますから」
「そうなの? 大丈夫?」
「ええ。任せてください!」
久美ちゃんがそう言い切ってくれました。心強い限りです。とはいえ、相手が相手ですからね。本当に大丈夫でしょうか? まあ私があがいたところで何の役にも立てませんから、皆さんを信じて待つほかないですね。
夕食には父もお兄様も仕事で帰ってきませんでした。きっと対策会議でもしているのでしょうか。ごめんなさい。頑張ってくださいね。ただその分母と久美ちゃんが、いたわりの言葉をかけてくれて、ずいぶん気が休まりました。
その夜は、心配で眠れないと思っていましたが気が付けばぐっすり眠っていて、気が付けば朝になっていました。朝も父やお兄様はすでに会社に行ったらしく会うことができませんでした。
「おはようございます」
「おはよう」
会社に行くと、いつもの日常でした。すでに席に着いていた青木さんが、すこし心配そうな顔をして私を見てきます。きっと話を聞いたんでしょうね。私がいつものように挨拶すると、ほっとしたようでした。
それからは何事もなく過ぎていきましたが、昼前の事です。突然一階が騒がしくなりました。
「どうしたのかしら?」
「見てきましょうかね」
まず下の騒ぎに気が付いた近藤さんが怪訝な顔を浮かべています。すぐに小田係長が下に走っていきました。
「もしかしてこの前来たあの御曹司がまた来たのかしら~」
近藤さんが、笑いながら私や鈴木課長に言ってきました。ですが私はなんだか嫌な予感がします。こういう時だけは当たるんですよね~。
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