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69 やっと終わりました
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私たちは、社用車に乗り込んで会社に戻りました。青木さんは私たちを先に玄関先でおろそうと、玄関横に車を横づけしてくれました。
その時です。玄関から飛び出てくる人たちがいました。見ると、どうやら朝お見送りをしてくれた人たちが今まで清徳さんを待っていたようです。
「「「お帰りなさいませ」」」
清徳さんが降りてくるなり、待ち構えていた人たちが一斉に声を上げました。皆ぴったりと息があっていて、まるでつい先ほどまで練習をしていたんじゃないかと思うぐらいです。
さすが清徳さんは、慣れているのかそんな人たちの前にもかかわらず堂々と社用車から降りてきました。車さえ見なければ、颯爽と降りてくる姿はまさしく御曹司の風格を漂わせています。先ほどまでの検針の時とは大違いです。
「お疲れさまでした」
それに続いて私と杉さんも降ります。杉さんに気が付いた人たちは、杉さんにも皆ねぎらいの言葉をかけています。系列会社の社長さんが、何か清徳さんに声をかけていました。清徳さんは、やってきた押村さんに作業着を渡しています。
駐車場に社用車を置いてきた青木さんもやってきました。私の横に立って清徳さんを中心とした人だかりを見ています。
「今日はありがとう」
どこに目が付いているのか、先ほどまで清徳さんと一緒にいたはずの押村さんが、青木さんのもとにやってきました。
「お疲れさま。正樹、思ったより機嫌がいいな。一日終わってぐったりしているかと思ったが」
「そうだな」
押村さんは青木さんの方を見て笑いながら言ってきましたが、私と青木さんの顔を見てにやっと笑いました。
「拓弥たちの方がお疲れ気味だな」
私と青木さんの顔色を見て今日一日の様子を察したようです。私たちが押村さんと話していると、清徳さんがやってきました。
「今日はありがとう」
私と青木さんにあの清徳さんがお礼を言ってきました。私はびっくりして清徳さんをまじまじと見てしまいました。私の驚きようを間近で見た押村さんがぷっと吹き出し、清徳さんはばつの悪そうな顔をしました。
黒塗りのいつもの車が玄関先に滑らかに入ってきました。清徳さんは、後ろに控えていた人たちに片手を上げます。
「今日はありがとう。また来ます」
そういって車に乗り込みました。押村さんも後に続いて助手席に乗り込みました。
「じゃあ」
押村さんは私たちにそういって、黒塗りの車は私たちが見送る中去っていきました。ただ車が見えなくなった時です。
「今また来るって言わなかったか?」
「言いましたね」
「言いましたよ」
見送りをしていた社長さんが、横に控えていた人たちに確認しています。横にいた人たちも他の人たちに確認しています。周りで確認していた人たちを見ていた社長さんは、その言葉を聞いてなんだか体が揺れた気がしました。
「今日はごくろうさま」
社長さんの横にいたお偉いさんが、私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてくれました。ただまだ体がおぼつかない社長さんが私たちを見て言いました。
「なんだかまた来るそうだから、その時にはよろしく頼むよ」
社長さんは先ほどの衝撃が収まらないのか、まだおぼつかない足取りでほかの人たちと帰っていきました。私と青木さんも会社に戻っていきます。杉さんはと見ればすでにもう会社に戻ったようで姿が見えませんでした。ずいぶんお疲れしていたようですしね。
「今日は大変だったね。ありがとう」
フロアーに入るなり、鈴木課長が私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてきました。たぶんお見送りに出ていたであろう鈴木課長や小田係長そして近藤さんはすでにフロアーに戻っています。
「御曹司、ご機嫌だったわね」
「そうだね。いい対応だったようだとお偉いさんもほめていたよ」
近藤さんは先ほどの清徳さんの様子を見たようで私たちに言ってきました。鈴木課長もお偉いさんに言われたのかほめてくれました。終わりよければすべてよしですね。
私と青木さんはずいぶん振り回された気がしますが、まあ終わったので良しとしましょうか。ですが次回はないといいですね。
それから一週間私と青木さんは検針業務をしました。もちろん私たち二人だけです。仕事がサクサクと進みました。
「今週末のパーティー出席する?」
お昼の時です。公園のベンチでお昼を食べているときに青木さんに聞かれました。
「はい。出席しますよ。青木さんも?」
「ああ。親父に出るように言われているから」
「そうなんですね」
今週末の土曜日にはまたパーティーがあります。今度のパーティーはうちの系列会社が新しく事業を立ち上げたので、そのお披露目なんです。私はもちろん出る予定ですが、青木さんも出るんですね。その事業の立ち上げには、久美ちゃんも関わっているので私も気合を入れて出席させていただきますよ。
「そういえば夏休みには、あの別荘に行くの?」
「ええ。ちょうど花火大会があるそうなんです。今まで見たことがなかったので、今から楽しみです」
「そうか。実は母親の実家も近くに持ってるんだ」
「そうなんですか? 機会があればあの絵画見てください!」
「じゃあ、千代子さんが別荘に行くときに僕も行こうかな」
「まあ、その時にはぜひうちに来て見てください。そうそう、青木さんは花火大会見たことあります?」
「ああ。子どものころはよく行っていたから確か何度か見た気がする」
そうなんですね。あの辺りは、避暑地で有名ですからね。それから私は、青木さんから花火大会の様子を聞きました。おまけに子どものころの話も聞くことが出来ました。ずいぶんやんちゃだったんですね。
その時です。玄関から飛び出てくる人たちがいました。見ると、どうやら朝お見送りをしてくれた人たちが今まで清徳さんを待っていたようです。
「「「お帰りなさいませ」」」
清徳さんが降りてくるなり、待ち構えていた人たちが一斉に声を上げました。皆ぴったりと息があっていて、まるでつい先ほどまで練習をしていたんじゃないかと思うぐらいです。
さすが清徳さんは、慣れているのかそんな人たちの前にもかかわらず堂々と社用車から降りてきました。車さえ見なければ、颯爽と降りてくる姿はまさしく御曹司の風格を漂わせています。先ほどまでの検針の時とは大違いです。
「お疲れさまでした」
それに続いて私と杉さんも降ります。杉さんに気が付いた人たちは、杉さんにも皆ねぎらいの言葉をかけています。系列会社の社長さんが、何か清徳さんに声をかけていました。清徳さんは、やってきた押村さんに作業着を渡しています。
駐車場に社用車を置いてきた青木さんもやってきました。私の横に立って清徳さんを中心とした人だかりを見ています。
「今日はありがとう」
どこに目が付いているのか、先ほどまで清徳さんと一緒にいたはずの押村さんが、青木さんのもとにやってきました。
「お疲れさま。正樹、思ったより機嫌がいいな。一日終わってぐったりしているかと思ったが」
「そうだな」
押村さんは青木さんの方を見て笑いながら言ってきましたが、私と青木さんの顔を見てにやっと笑いました。
「拓弥たちの方がお疲れ気味だな」
私と青木さんの顔色を見て今日一日の様子を察したようです。私たちが押村さんと話していると、清徳さんがやってきました。
「今日はありがとう」
私と青木さんにあの清徳さんがお礼を言ってきました。私はびっくりして清徳さんをまじまじと見てしまいました。私の驚きようを間近で見た押村さんがぷっと吹き出し、清徳さんはばつの悪そうな顔をしました。
黒塗りのいつもの車が玄関先に滑らかに入ってきました。清徳さんは、後ろに控えていた人たちに片手を上げます。
「今日はありがとう。また来ます」
そういって車に乗り込みました。押村さんも後に続いて助手席に乗り込みました。
「じゃあ」
押村さんは私たちにそういって、黒塗りの車は私たちが見送る中去っていきました。ただ車が見えなくなった時です。
「今また来るって言わなかったか?」
「言いましたね」
「言いましたよ」
見送りをしていた社長さんが、横に控えていた人たちに確認しています。横にいた人たちも他の人たちに確認しています。周りで確認していた人たちを見ていた社長さんは、その言葉を聞いてなんだか体が揺れた気がしました。
「今日はごくろうさま」
社長さんの横にいたお偉いさんが、私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてくれました。ただまだ体がおぼつかない社長さんが私たちを見て言いました。
「なんだかまた来るそうだから、その時にはよろしく頼むよ」
社長さんは先ほどの衝撃が収まらないのか、まだおぼつかない足取りでほかの人たちと帰っていきました。私と青木さんも会社に戻っていきます。杉さんはと見ればすでにもう会社に戻ったようで姿が見えませんでした。ずいぶんお疲れしていたようですしね。
「今日は大変だったね。ありがとう」
フロアーに入るなり、鈴木課長が私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてきました。たぶんお見送りに出ていたであろう鈴木課長や小田係長そして近藤さんはすでにフロアーに戻っています。
「御曹司、ご機嫌だったわね」
「そうだね。いい対応だったようだとお偉いさんもほめていたよ」
近藤さんは先ほどの清徳さんの様子を見たようで私たちに言ってきました。鈴木課長もお偉いさんに言われたのかほめてくれました。終わりよければすべてよしですね。
私と青木さんはずいぶん振り回された気がしますが、まあ終わったので良しとしましょうか。ですが次回はないといいですね。
それから一週間私と青木さんは検針業務をしました。もちろん私たち二人だけです。仕事がサクサクと進みました。
「今週末のパーティー出席する?」
お昼の時です。公園のベンチでお昼を食べているときに青木さんに聞かれました。
「はい。出席しますよ。青木さんも?」
「ああ。親父に出るように言われているから」
「そうなんですね」
今週末の土曜日にはまたパーティーがあります。今度のパーティーはうちの系列会社が新しく事業を立ち上げたので、そのお披露目なんです。私はもちろん出る予定ですが、青木さんも出るんですね。その事業の立ち上げには、久美ちゃんも関わっているので私も気合を入れて出席させていただきますよ。
「そういえば夏休みには、あの別荘に行くの?」
「ええ。ちょうど花火大会があるそうなんです。今まで見たことがなかったので、今から楽しみです」
「そうか。実は母親の実家も近くに持ってるんだ」
「そうなんですか? 機会があればあの絵画見てください!」
「じゃあ、千代子さんが別荘に行くときに僕も行こうかな」
「まあ、その時にはぜひうちに来て見てください。そうそう、青木さんは花火大会見たことあります?」
「ああ。子どものころはよく行っていたから確か何度か見た気がする」
そうなんですね。あの辺りは、避暑地で有名ですからね。それから私は、青木さんから花火大会の様子を聞きました。おまけに子どものころの話も聞くことが出来ました。ずいぶんやんちゃだったんですね。
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