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60 クッションを決めました
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次の日デパートの外商の人がカタログを持って家にやってきました。結構な数のカタログですね。すっかり憂いのなくなった私は、そのカタログを久美ちゃんとちょうど家にいた母と三人で見ました。
「これなんか素敵じゃない?」
「ほんと! これと一緒のベッドカバーもある! 久美ちゃんどう?」
「いいですね」
母が、次々とカタログから選んだものを私と久美ちゃんに見せてきます。母はセンスがいいので、久美ちゃんも嬉しそうです。よかったです。私一人で選ばなくて。
私たち三人は、気が付けばメインのクッション選びから他のカタログを真剣に見てしまっていました。母はアクセサリーのカタログを、私と久美ちゃんはお洋服のカタログです。
外商の人が帰るときには、外商の人が一押しだと言って持ってきていたアクセサリーを母が、私と久美ちゃんはバッグを購入していました。
「久美ちゃん、これ色違いのおそろいね。今度は、これに合うお洋服を買おうね」
「私もおそろいで嬉しいです」
私はオレンジ色を久美ちゃんはベージュの色のバッグです。
「きっとすぐにまたそのバッグに合うお洋服を持ってきてくれるわよ」
今日買ったネックレスをさっそく身に着けたご機嫌な母が言いました。確かにすぐにでも持ってきそうですね。私がついつぶやいてしまった言葉を聞き逃していなさそうですもんね。
今日買ったこのバッグは、デザインがシンプルなのでいろいろなシーンで使えそうです。
「青木さんとのデートの時に使えそうですね」
私が一人にまにましていると、久美ちゃんが私が思っていたことをズバッと言って、びっくりしてしまいました。思わず顔が赤くなってしまいます。もう久美ちゃんたら。
それにしてもクッションを選ぶことが出来て良かったです。今日注文したクッションは、新居にお届けしてくれるそうです。合わせて購入したベッドカバーと一緒に。
月曜日会社に行くと、さっそく昼休みの終わりに青木さんが聞いてきました。
「どうだった? まあその顔色だと心配はいらなさそうだけどね」
「はい。絵画は大丈夫だったようです。今度夏休みにその別荘に行って、ちゃんとこの目で確かめてきます」
「夏休み、その別荘に行くの?」
「はい。その予定です」
「ふ~ん。そうなんだ」
青木さんはしばらく考え込むようにしましたが、そのあと何も言わずに自分の席に戻って行ってしまいました。
それからまたいつもの日常が始まりました。今月もまた検針の日があるなあとその時まではのんきに考えていました。
ある日、鈴木課長が突然内線電話で呼ばれたかと思うと、慌ててフロアーを出て行ってしまいました。
「あんなに急いで、何かあったのかしらね」
近藤さんが小田係長に聞いています。小田係長もわからないらしく頭を傾げています。残された私たちが仕事をしていると、鈴木課長が戻ってきました。ほんのちょっと見ないだけなのにずいぶんやつれた顔をしています。
「どうかしたんですか?」
近藤さんが聞きました。私たち皆の視線が鈴木課長に集まります。
「参ったよ」
鈴木課長は椅子に座るなり大きくため息をつきました。
「何かあったんですか?」
今度は小田係長が催促します。
「いやね、今聞かされたんだけど。今度上の方が、検針業務を実際に体験したいと言われてね」
「そうなんですか。それが? 前にもありましたよね」
近藤さんが不思議そうな顔をしています。過去にも上役の人が視察という名のもとに来たことがあったようです。まあ上の人といってもこの系列会社の本社にいる次期部長さんとかですが。視察といっても検針する人に付いて、半日ぐらい見学するという事だったそうです。近藤さんが、私と青木さんに話してくれました。
というのも鈴木課長がまだ精神的に立ち直れていないようなのです。仕方なく私たちは鈴木課長が話してくれるまで待つことにしました。
急に近藤さんが席を立ちました。私にも合図を送ります。近藤さんについていった先は、給湯室でした。
「たまにはお茶じゃなくてコーヒーを入れましょうか。確か来客用のインスタントのコーヒーパックがあるのよ。たまにはいいわよね。日付も切れるといけないしね」
そういって近藤さんは、棚から人数分のコーヒーパックを取り出しました。二人でコーヒーカップの上に紙のコーヒーパッグをのせました。給茶機のお湯を次々にコーヒーカップに注いでいきます。インスタントながらもコーヒーのいい香りが給湯室に充満しました。近藤さんはいつの間に持ってきたのかカップの横に小袋に入ったクッキーをのせていきました。
「これ、あのお高いスーパーのクッキーよ。今日は特別大放出!」
近藤さんが私の分と自分の分として一枚多くのせてくれました。このクッキーおいしいんですよね。ありがとうございます、近藤さん!
皆さんブラックということで、このままお盆に乗せて運びます。私と近藤さんの二人で手分けして運びました。フロアーに入ると、コーヒーのいい香りに真っ先に気が付いた小田係長が目を輝かせています。
私は、鈴木課長の机にコーヒーを置きました。鈴木課長もどうやらコーヒーの香りに気が付いたようです。
「いい香りだ。いただきます」
鈴木課長はゆっくりとコーヒーを飲みました。もちろん私たちも席についていただきます。小田係長は顔をほころばせても飲んでいます。私もいい香りをかぎながらゆっくりと味わうように飲みました。
「今回は体験に来るんだよ。体験だよ。しかも来るのは親会社の社長のご子息だよ。この前に一度視察に来たあの方がまた来るそうだ。しかも今度は実際に検針業務をやりたいとおっしゃっているそうなんだよ」
「まいっちゃうよな」と言いながら、鈴木課長が困ったような顔をして私たちに言ってきました。どうやらコーヒーのおかげで、少しは気持ちに余裕が出たようですね。よかったです。
鈴木課長の復活とは反対に、今度は近藤さんと小田係長が固まっています。
私と青木さんは、思わず顔を見合わせました。この前のパーティーで言っていた通り、本当に来る気なんですね。どうしましょうね。
「これなんか素敵じゃない?」
「ほんと! これと一緒のベッドカバーもある! 久美ちゃんどう?」
「いいですね」
母が、次々とカタログから選んだものを私と久美ちゃんに見せてきます。母はセンスがいいので、久美ちゃんも嬉しそうです。よかったです。私一人で選ばなくて。
私たち三人は、気が付けばメインのクッション選びから他のカタログを真剣に見てしまっていました。母はアクセサリーのカタログを、私と久美ちゃんはお洋服のカタログです。
外商の人が帰るときには、外商の人が一押しだと言って持ってきていたアクセサリーを母が、私と久美ちゃんはバッグを購入していました。
「久美ちゃん、これ色違いのおそろいね。今度は、これに合うお洋服を買おうね」
「私もおそろいで嬉しいです」
私はオレンジ色を久美ちゃんはベージュの色のバッグです。
「きっとすぐにまたそのバッグに合うお洋服を持ってきてくれるわよ」
今日買ったネックレスをさっそく身に着けたご機嫌な母が言いました。確かにすぐにでも持ってきそうですね。私がついつぶやいてしまった言葉を聞き逃していなさそうですもんね。
今日買ったこのバッグは、デザインがシンプルなのでいろいろなシーンで使えそうです。
「青木さんとのデートの時に使えそうですね」
私が一人にまにましていると、久美ちゃんが私が思っていたことをズバッと言って、びっくりしてしまいました。思わず顔が赤くなってしまいます。もう久美ちゃんたら。
それにしてもクッションを選ぶことが出来て良かったです。今日注文したクッションは、新居にお届けしてくれるそうです。合わせて購入したベッドカバーと一緒に。
月曜日会社に行くと、さっそく昼休みの終わりに青木さんが聞いてきました。
「どうだった? まあその顔色だと心配はいらなさそうだけどね」
「はい。絵画は大丈夫だったようです。今度夏休みにその別荘に行って、ちゃんとこの目で確かめてきます」
「夏休み、その別荘に行くの?」
「はい。その予定です」
「ふ~ん。そうなんだ」
青木さんはしばらく考え込むようにしましたが、そのあと何も言わずに自分の席に戻って行ってしまいました。
それからまたいつもの日常が始まりました。今月もまた検針の日があるなあとその時まではのんきに考えていました。
ある日、鈴木課長が突然内線電話で呼ばれたかと思うと、慌ててフロアーを出て行ってしまいました。
「あんなに急いで、何かあったのかしらね」
近藤さんが小田係長に聞いています。小田係長もわからないらしく頭を傾げています。残された私たちが仕事をしていると、鈴木課長が戻ってきました。ほんのちょっと見ないだけなのにずいぶんやつれた顔をしています。
「どうかしたんですか?」
近藤さんが聞きました。私たち皆の視線が鈴木課長に集まります。
「参ったよ」
鈴木課長は椅子に座るなり大きくため息をつきました。
「何かあったんですか?」
今度は小田係長が催促します。
「いやね、今聞かされたんだけど。今度上の方が、検針業務を実際に体験したいと言われてね」
「そうなんですか。それが? 前にもありましたよね」
近藤さんが不思議そうな顔をしています。過去にも上役の人が視察という名のもとに来たことがあったようです。まあ上の人といってもこの系列会社の本社にいる次期部長さんとかですが。視察といっても検針する人に付いて、半日ぐらい見学するという事だったそうです。近藤さんが、私と青木さんに話してくれました。
というのも鈴木課長がまだ精神的に立ち直れていないようなのです。仕方なく私たちは鈴木課長が話してくれるまで待つことにしました。
急に近藤さんが席を立ちました。私にも合図を送ります。近藤さんについていった先は、給湯室でした。
「たまにはお茶じゃなくてコーヒーを入れましょうか。確か来客用のインスタントのコーヒーパックがあるのよ。たまにはいいわよね。日付も切れるといけないしね」
そういって近藤さんは、棚から人数分のコーヒーパックを取り出しました。二人でコーヒーカップの上に紙のコーヒーパッグをのせました。給茶機のお湯を次々にコーヒーカップに注いでいきます。インスタントながらもコーヒーのいい香りが給湯室に充満しました。近藤さんはいつの間に持ってきたのかカップの横に小袋に入ったクッキーをのせていきました。
「これ、あのお高いスーパーのクッキーよ。今日は特別大放出!」
近藤さんが私の分と自分の分として一枚多くのせてくれました。このクッキーおいしいんですよね。ありがとうございます、近藤さん!
皆さんブラックということで、このままお盆に乗せて運びます。私と近藤さんの二人で手分けして運びました。フロアーに入ると、コーヒーのいい香りに真っ先に気が付いた小田係長が目を輝かせています。
私は、鈴木課長の机にコーヒーを置きました。鈴木課長もどうやらコーヒーの香りに気が付いたようです。
「いい香りだ。いただきます」
鈴木課長はゆっくりとコーヒーを飲みました。もちろん私たちも席についていただきます。小田係長は顔をほころばせても飲んでいます。私もいい香りをかぎながらゆっくりと味わうように飲みました。
「今回は体験に来るんだよ。体験だよ。しかも来るのは親会社の社長のご子息だよ。この前に一度視察に来たあの方がまた来るそうだ。しかも今度は実際に検針業務をやりたいとおっしゃっているそうなんだよ」
「まいっちゃうよな」と言いながら、鈴木課長が困ったような顔をして私たちに言ってきました。どうやらコーヒーのおかげで、少しは気持ちに余裕が出たようですね。よかったです。
鈴木課長の復活とは反対に、今度は近藤さんと小田係長が固まっています。
私と青木さんは、思わず顔を見合わせました。この前のパーティーで言っていた通り、本当に来る気なんですね。どうしましょうね。
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