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21 おいしかったようです
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「歓迎会ありがとうございました」
月曜日会社に行くと、すぐに同じ部署の方々にお礼を言いました。
「いや、こちらこそ」
「楽しかったね。また行こうね」
鈴木課長をはじめ小田係長が笑顔で言ってくれました。近藤さんはにこにこしています。うん? 何か聞きたくてうずうずしている気がします。まあ何かあればお昼に聞いてくるからいいでしょう。
一応席について青木さんにも言っておくことにしました。
「ありがとうございました」
「いや。こっちこそありがとう」
青木さんは、どうしたことか私ににこやかに笑みをかえしてくれました。あれ? 明日は雨でしょうか? ここ最近眉間にしわのよったお顔しか見ていなかったので、びっくりです。でもまあ機嫌がいいことはいいことです。
お昼になりました。階段で三階に行く途中に、近藤さんはもう待ちきれないといった風で聞いてきました。
「あの後、青木君が柳さんのところに行ったけど、どうだった?」
「えっ?」
近藤さんが言った意味がわからずに、つい近藤さんの顔をよく見てしまいました。
「こなかったの? あのあとね、青木さん柳さんが一人でお兄さんを待ってるのが心配だからってまた戻っていったのよ」
「そうなんですか? お会いしませんでした」
「そうなの~?」
近藤さんの顔がとても残念そうです。でも聞き捨てなりません。青木さんとはお会いしていませんが、まさか見られていませんよね。兄を。でも兄の顔を見てもわからないですよね。パーティーでも青木さんとお会いしたことは今までなかった気がするのですから。そう思いながらもちょっと心配になりました。まさかばれていませんよね。
昼には、金曜日に開かれた割烹九十九の話題で持ちきりでした。
「料理おいしかったわね。ねえ杉さん!」
「そうですね」
同じ庶務の新山さんが杉さんに話を振ります。でも杉さんはスマホとにらめっこをしながらお弁当を食べているので、話が盛り上がりません。そして杉さんはいつものように食べ終わった後、そそくさと席を立って行ってしまいました。
「どうだったの?」
杉さんがいなくなったのを確認してから、すかさず近藤さんがみんなを代表して聞きいてくれます。
「やっぱりおいしかったわよ~。お料理。しかもお高いコースだったんじゃない? ねえ桧垣さん!」
「そうそう。品数も多かったもの。家に帰ってつい店のHPで確認しちゃった。もうきっと一生食べれないわ~」
新山さんと桧垣さんは、食べたお料理を思い出しているのでしょうか。うっとりとした顔をしています。
「そうなの。で、会の様子は?」
近藤さんが先を催促してくれます。そうです。お料理もいいですが、会の様子も気になります。
「ああ、歓迎会ね。あれは楽だったわよね~」
「ほんと。私たち食べるのに集中できたしね」
桧垣さんと新山さんが顔を見合わせてうなづいています。聞けば杉さんの両側にお偉い方々が陣取って、ほかの方々も杉さん詣でと称して、杉さんのところにみんな押しかけていたようです。
新山さんと桧垣さんは、関係ないとばかりに次々に出てくるお料理に舌鼓を打っていたようです。杉さんご苦労様でした。私が心の中で杉さんに頭を下げていた時です。
「本社の若い男の子たちも駆り出されたのか何人か来ていてね。杉さんのところに侍っていたわ。まるでホストクラブのようだったわよ。しかもイケメンぞろい!」
「「「そうなの!」」」
これにはほかの人たちも食いついてきました。もちろん近藤さんも鼻息荒く詳しく聞きたがっています。私もすました顔をしながらも聞き耳を立てていますよ。もちろん!
同じテーブルにいる皆のテンションが上がっていたからでしょうか。それとも知らず知らず声も大きくなっていたからでしょうか。ほかのテーブルにいる男性社員がちらちらとこちらを見ています。ただみなさん、目が少し細くなっていますね。笑っていませんよ。青木さんもこちらを見ています。あらっ、また眉間に少ししわが。朝はあんなに笑顔だったのに残念ですね。
ただ私たちのテーブルの皆さんは、そんな視線はどこへやら全然気にしていないようです。それよりイケメンさんのお話ですね。
「杉さんの横にいるお偉いさん方が、イケメン君たちに杉さんのお酌をするように言ってたの。杉さんもご機嫌だったわね~」
「そうだったわね。私たちは横目で見ていただけだったけど」
「そうそう。あとその輪に入らなかった人もいてね。ぽつぽつ空いた席でのんびりみんなお料理を食べていたわ」
「ふうん」
近藤さんは少し残念そうです。でもどっちにでしょうね。お料理でしょうかそれともイケメンズにでしょうか。ただこの後の桧垣さんと新山さんの言葉に、近藤さんの顔がぱっと明るくなりました。
「でもね、あなたたちの部署にいる青木君だったっけ、彼よりかっこいい子はいなかったわよ」
「確かに~。青木君って別格よね」
さすがに青木さんに聞こえないようにか二人は、小声で話してくれました。近藤さんは至極満足そうな顔をしてから私を見ました。
いやいや、青木さん別格だそうですよ。やっぱりもてそうですよ。すみません、近藤さん。私では無理っぽいです。
月曜日会社に行くと、すぐに同じ部署の方々にお礼を言いました。
「いや、こちらこそ」
「楽しかったね。また行こうね」
鈴木課長をはじめ小田係長が笑顔で言ってくれました。近藤さんはにこにこしています。うん? 何か聞きたくてうずうずしている気がします。まあ何かあればお昼に聞いてくるからいいでしょう。
一応席について青木さんにも言っておくことにしました。
「ありがとうございました」
「いや。こっちこそありがとう」
青木さんは、どうしたことか私ににこやかに笑みをかえしてくれました。あれ? 明日は雨でしょうか? ここ最近眉間にしわのよったお顔しか見ていなかったので、びっくりです。でもまあ機嫌がいいことはいいことです。
お昼になりました。階段で三階に行く途中に、近藤さんはもう待ちきれないといった風で聞いてきました。
「あの後、青木君が柳さんのところに行ったけど、どうだった?」
「えっ?」
近藤さんが言った意味がわからずに、つい近藤さんの顔をよく見てしまいました。
「こなかったの? あのあとね、青木さん柳さんが一人でお兄さんを待ってるのが心配だからってまた戻っていったのよ」
「そうなんですか? お会いしませんでした」
「そうなの~?」
近藤さんの顔がとても残念そうです。でも聞き捨てなりません。青木さんとはお会いしていませんが、まさか見られていませんよね。兄を。でも兄の顔を見てもわからないですよね。パーティーでも青木さんとお会いしたことは今までなかった気がするのですから。そう思いながらもちょっと心配になりました。まさかばれていませんよね。
昼には、金曜日に開かれた割烹九十九の話題で持ちきりでした。
「料理おいしかったわね。ねえ杉さん!」
「そうですね」
同じ庶務の新山さんが杉さんに話を振ります。でも杉さんはスマホとにらめっこをしながらお弁当を食べているので、話が盛り上がりません。そして杉さんはいつものように食べ終わった後、そそくさと席を立って行ってしまいました。
「どうだったの?」
杉さんがいなくなったのを確認してから、すかさず近藤さんがみんなを代表して聞きいてくれます。
「やっぱりおいしかったわよ~。お料理。しかもお高いコースだったんじゃない? ねえ桧垣さん!」
「そうそう。品数も多かったもの。家に帰ってつい店のHPで確認しちゃった。もうきっと一生食べれないわ~」
新山さんと桧垣さんは、食べたお料理を思い出しているのでしょうか。うっとりとした顔をしています。
「そうなの。で、会の様子は?」
近藤さんが先を催促してくれます。そうです。お料理もいいですが、会の様子も気になります。
「ああ、歓迎会ね。あれは楽だったわよね~」
「ほんと。私たち食べるのに集中できたしね」
桧垣さんと新山さんが顔を見合わせてうなづいています。聞けば杉さんの両側にお偉い方々が陣取って、ほかの方々も杉さん詣でと称して、杉さんのところにみんな押しかけていたようです。
新山さんと桧垣さんは、関係ないとばかりに次々に出てくるお料理に舌鼓を打っていたようです。杉さんご苦労様でした。私が心の中で杉さんに頭を下げていた時です。
「本社の若い男の子たちも駆り出されたのか何人か来ていてね。杉さんのところに侍っていたわ。まるでホストクラブのようだったわよ。しかもイケメンぞろい!」
「「「そうなの!」」」
これにはほかの人たちも食いついてきました。もちろん近藤さんも鼻息荒く詳しく聞きたがっています。私もすました顔をしながらも聞き耳を立てていますよ。もちろん!
同じテーブルにいる皆のテンションが上がっていたからでしょうか。それとも知らず知らず声も大きくなっていたからでしょうか。ほかのテーブルにいる男性社員がちらちらとこちらを見ています。ただみなさん、目が少し細くなっていますね。笑っていませんよ。青木さんもこちらを見ています。あらっ、また眉間に少ししわが。朝はあんなに笑顔だったのに残念ですね。
ただ私たちのテーブルの皆さんは、そんな視線はどこへやら全然気にしていないようです。それよりイケメンさんのお話ですね。
「杉さんの横にいるお偉いさん方が、イケメン君たちに杉さんのお酌をするように言ってたの。杉さんもご機嫌だったわね~」
「そうだったわね。私たちは横目で見ていただけだったけど」
「そうそう。あとその輪に入らなかった人もいてね。ぽつぽつ空いた席でのんびりみんなお料理を食べていたわ」
「ふうん」
近藤さんは少し残念そうです。でもどっちにでしょうね。お料理でしょうかそれともイケメンズにでしょうか。ただこの後の桧垣さんと新山さんの言葉に、近藤さんの顔がぱっと明るくなりました。
「でもね、あなたたちの部署にいる青木君だったっけ、彼よりかっこいい子はいなかったわよ」
「確かに~。青木君って別格よね」
さすがに青木さんに聞こえないようにか二人は、小声で話してくれました。近藤さんは至極満足そうな顔をしてから私を見ました。
いやいや、青木さん別格だそうですよ。やっぱりもてそうですよ。すみません、近藤さん。私では無理っぽいです。
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