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5 やはり家族の誰にも見えませんでした

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 (今日も、見えるょ...)

 それからも不思議なことに、あち子にだけ茶色い靄が見えた。
 最近ではその靄だが、少し濃くなってきた気がする。

 これだけ濃くなってきたから、家族の一人ぐらい見えるんじゃないか。
 しかも健太の靴下がお気に入りなのか、健太の靴下の上に靄は出てくるのだ。
 あち子はあの靄は、なにかぽちと関係あるのではないかと思っている。

 そこで家族が揃っていたとき、わざわざ健太に履いている靴下を脱がせてクッションの上におかせた。
 父牧夫と母の美佐子はテレビを見ていて、二人のやり取りを気にもしていなかった。
 健太もいぶかしがりながらもいつもしていたことなので、おとなしくいうことを聞いてくれる。
 そこであち子は、いつものようにじっと見ていることにした。家族にも靴下の上を見るように言った。

 しかしである。
 いっこうに茶色い靄は、靴下をクッションから落とさないし、やはり誰にも茶色い靄は見えなかった。

 「ぽち___!ぽち___!」

 あち子は、しまいにはあの茶色い靄に向かって叫んでみたりした。

 しかし何も起こらなかった。

 ただ家族に、かわいそうな子を見るような目で見られただけだった。
 家族からしたら変な行動を数回繰り返した後、あち子はこれは自分にしか見えないんじゃないかという結論に達した。
 しかもあの茶色い靄の好物は健太の靴下。健太の靴下が動くところを見ると、やはりなにかぽちが関係しているのではないかとしか思えてならない。

 (でもどうしてみんなには見えないんだろう。みんなだってかわいがってたのに。やっぱりあれ?。私って心が清らかだから?)

 家族が聞いたら、絶対に白い目で見られるだろうことを考えていた。


 そんなことがあっってから何日かたったある日、あち子が一人リビングでごろごろしていると、茶色い靄が出てきたと思ったら、どんどん濃くなってきて何か形ができてきた。
 何かに似ているなあと思っていたら、そのなにかはふよふよとこちらに浮かんできた。

 ぎょっとしている間に、そのふよふよしたなにかは、あち子がいるソファの手すりに留まった。
 大きさは、10センチぐらいだろうか。
 近くに来て、やっとそのなにかが何に似ているのか分かった。

 どう見ても、てるてる坊主に見える。

 しかもてるてる坊主に、短い割りばしの手と足を付けたような形をしている。
 色は茶色い。
 割りばしのようなものは小さくて、てるてる坊主の洋服?のようなものからちょこんと出ている。顔は、点がついているのみ。

 ただうまく点が配置されていて、まるで目・鼻・口のように見えるから不思議だ。

 よく見ていると、止まりながらも少しゆらゆらしていた。

 あち子は好奇心に駆られて、つい手を伸ばしてみたら手が突き抜けてしまった。


 あれ?と思う間もなく、てるてる坊主もどきは消えてしまったのだった。
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